68 / 330
二章
六十三話 行動指針
しおりを挟む
「ここが俺の家な」
「エリスとハティも一緒に住んでるのー」
村長の家からの帰り道、遠回りしながらこの村の施設の位置を一通り説明しながら歩いて、ついに一週間ぶりの我が家への帰還である。
久々の帰宅で家に風通しを良くしつつ、屋内は狭いので外の洗い場で話し合うことにした。
一戸建てとはいえ、ぶっちゃけ掘っ立て小屋で間仕切りとかはないから、中は少し広いワンルームと対して変わらんのだ。
エリスがハティと一緒に寝たがるので、ハティの巨体で寝転がる都合上ぶっちゃけ現代日本の一般人の部屋に比べて極端に物が少ない。
この村では珍しい靴を脱いで上がる居室空間を設けてあるが、部屋の中にあるのはぶっちゃけちゃぶ台的な机だけだ。
バッグとかは部屋の隅に置いてあるし、その一角に小型の氷室もどきが置いてあるだけの非常に簡素な部屋である。
今まで泊まっていた宿屋と見比べるとその何も無さが妙に目立った。
……でも、何かモノ増やしてもハティが寝る時に引っかかって倒れる未来しか見えないんだよなぁ。
入り口はハティが潜り込んでも壊れないように多少補強はしたが、家のサイズ自体をホイホイ変えられるわけもなく、ハティが丸くなると部屋がちょうど埋まってしまうくらいにデカイのだ。
もうちょっと広くて立派な家建てたいなぁ。
アラマキさんからの建築技術の勉強、勧めてもらわんとな。
「わたし、サリちゃんのところに戻ってきたって挨拶してくるね~」
「おう、いってらっしゃい。ついでにガーヴさん居たら俺が戻ってることやチェリーさん連れてきたこととかも挨拶ついでに伝えておいてくれな」
「はーい!」
「ワウッ!」
元気な返事と共にハティの背中にまたがって一緒に走り去っていってしまった。
まぁ今後の話とかエリスにとっては退屈な内容だろうし丁度いいだろう。
子供は同世代の友だちと遊ぶのが一番いい…………と思う。
エリスを見送り、視線を戻すとチェリーさんは俺の家をしげしげと眺めていた。
「俺が初心者木工で建てた掘っ立て小屋なんでしょぼいのに関しては突っ込まないで」
「え? この家借り物じゃなくてキョウさんが建てたの? というか、こっちだとハウジング機能が普通にあるの!?」
「え、うん……そうだけど正式版だとないの?」
「ないない。というか好き放題家立てたら大変なことになっちゃうし、正式版だと家を建てる専用エリアが用意されるんじゃないかと思ってるよ。少なくともこんな自由に村の中に家を建てれるとかはないと思う」
そりゃそうか。
プレイ人口が今後も増えてく可能性も考えると、自由に家が建てれると利便性の良い所にプレイヤーの家が乱立してエライことになりそうだ。
ダンジョン前にファンシーな家とかあったら雰囲気ぶち壊しだ。
まぁ個人的にはそういうカオスっぷりも嫌いじゃないが。
「まぁ、正式版だと駄目でもこっちだと大丈夫だからそういうものだという事で」
「……そうだね、使えるものは取り敢えずそういうものだと思っておく」
深く考えたら負けだ。
このゲームに関して言えばかなりの部分でその言葉が当てはまるような気がする。
例えば、本来なら絶対ありえない別エリアのボスモンスターが、ゲームの運営側が全く解明できない謎の要因のせいでただのテストプレイヤーである俺やバディに懐いて寝食共にする現状とかな!
運営ですら想定外ってそれただのバグじゃねーか! と言いたくもなるが、AIの思考能力が高すぎて簡単にバグと言い切れないところがあるのが、ある意味このゲームの恐ろしい所なんだよなぁ。
「で、取り敢えずこの辺りで活動するための拠点という意味ではこの村で問題ないと思うけど、今後どうしていきたい?」
「どう、とは?」
む、ちょっと聞き方がおおざっくり過ぎたか。
「キャンペーン活動ってのもあるけど、どういう生活していきたいのかなってこと。例えば俺は実際に狩りに混ぜてもらったりして、狩り方や解体の仕方とかサバイバル技術とか教えてもらってるんだわ。合間に家の作り方とかも習ったりしてるけど」
「ああ、活動方針とかそーいうやつですね? うぅん、暫くは……というかソチラが嫌でなければこっちのサーバでは、なにか理由がない限りはずっと一緒に行動したいと考えているんですけど、駄目かな?」
「いや? 俺はそれでも特に困らないし、そうしたいのならそれで全然構わないよ。むしろ俺のほうがゲームの中とは言え声優が素人とずっと一緒の行動とか外聞的に良くないんじゃないかって思うくらいなんだけど……」
俺はオタクではあるけど、ゲーオタ方面なんで実は声優とかそこまで詳しくない。
俺の知ってる声優なんて十年くらい前にゲームやアニメにドハマリした直後の時代の有名どころしか名前は知らないんだよな。
最近の女性声優で名前知ってるのは本当に有名で色んな作品で主役やってるような人数人だけだし、普段テレビ見ないからネットの生放送とかで出ているのしか見たことないし、知識だってその程度だ。
「俺、声優方面とかは全然詳しくないんだけどさ? アイドル声優なんて言葉は知ってるけど、アイドルなんて呼ばれるくらいなんだから当然素人だろうが声優だろうが芸能人だろうがあまり男の影とかを匂わせるようなことはしないに越したことはないじゃないの?」
「ああ、そういう娘も確かに居るねー。というか表に顔をだすような娘はほとんどそんな感じかもしれないけど、私の場合は顔出しあまりしてないし、お調子者系のキャラでやってるんで変に隠さずに、むしろコレでもかってくらい仲良くやってますアピールしていこうと思ってるんだけど、もしかして駄目だった?」
「いや、そっちがそれでいいなら俺的には特に問題ないかな。さっきも言ったけど事務所から怒られるのが怖いだけで、俺自身は特に困ることなんてなにもない訳だし」
「あっはははは、そういうのが駄目ならそもそもこの企画自体に事務所NG出てるって」
「あぁ、それもそうか」
俺とのペア行動を望んだのはチェリーさんだったって話だ。
という事は事務所側もそれを知った上でこの仕事を許可したってことだから大丈夫ってことなのか。
ちょっとだけ肩の荷が下りたような気がするわ。
「じゃあ、今後は俺とチェリーさんでペア……といってもエリスも居るか。まぁ一緒に過ごすというのがまず一点か。じゃあ、コレを前提条件として当面の活動指針はどうする?」
「うぅん、最初にコレ! って決めずに、少しの間このサーバで過ごして色々知ってから決めたいかな」
その方が良いかもしれないな。
βでかなりやりこんでたみたいだけど、もしかしたらその慣れが逆効果になるかもしれないし。
「わかった、じゃぁそれで行こう。確かにこっちのサーバと製品版とでは似ているようでかなり違う部分が多いだろうし、チェリーさんの場合センサーとかが普通のテスターよりも多くなってる訳だから、違和感とかもかなり出ると思うしね」
「だよねー。だからちょっと試運転の帰還が欲しいかなって」
お試し帰還は重要だ。
漠然と「なにかしてくれ」と言われても「何をしろというんだ?」ってな感じで困るってものだ。
一つでも何か方針が決まっているなら、少なくともある程度は行動の方向性くらいはなんとか見えてくるだろうしな。
「じゃあ、来週から街の祭りに招待されてるし、その祭りが終わるまでという事で一度期限を区切ってみるか。そこには俺も行ったことも経験したこともない新天地的なイベントだから活動の方向性決める区切りにはちょうどいいと思うし」
「わかった。うん、それでいこう」
「今話すべきことはコレくらいかな。あとは聴きたいことなんかはある?」
助言はするけど基本的な行動方針は出来るだけチェリーさんに決めてもらいたい。
俺の行動に合わせるとは言ってたけど、変にあれこれ言うと行動のクセみたいなのが俺の方針に寄っちまうかもしれないし、ヤバそうな時以外はできるだけ口を出さない方針で行くつもりだ。
なので、何かアクション起こす時も「こうしてくれ」よりも「どうしたい?」の方で行動を決めていくつもりだ。
「今は思いつくことは……あ、この辺りの手頃な狩場教えてほしいかな。筐体が変わって情報量が増えたせいで感覚とかもかなり違ってるから少し感覚を掴んでおきたいかも」
「狩場か……そうだなぁ、まずは村からそう遠くない所でヤギとか狙ってみようか。レベルは俺より高いけど、装備とかは初期状態だしあまり強いやつと戦うより弱いのでβテストとALPHAの違いを体感したほうが良いだろうし。それに、旅に出るからって残ってた干し肉とかも全部食べちゃったし、食料確保のためにもちょうどいいし」
氷室の肉は普通の氷とは別に魔法でも冷凍保管されてるから、冷凍庫ほどガチガチに凍ってる訳じゃない。
量は一ヶ月近く食っていけるだけの量とか言ってたから大丈夫としても、賞味期限的な問題で一ヶ月ももつかはかなり怪しい。
そういう肉を食い続けてきたこの村の人達はともかく、俺の腹が冷凍ではなく冷蔵保存に近い形で二週間や三週間も経った肉を食って平気かどうか正直判らないんだよな。
このアバターボディはかなり頑丈なのは確認済みだけど、それが病気や腹痛みたいな内側からくるものに対しても強靭なのかどうかわからないままで試す度胸は持ち合わせていない。
少しずつ安全圏を探るつもりではあるけど、安全に食料を確保できるなら安全な方を選びたいんだよな。
「ヤギ? 群れボスでも居るの?」
「うんにゃ、ただのヤギ」
「ただのヤギで手慣らしになるの?」
「このゲームの装備補正は結構シャレにならないんですよ? 高レベルだと行っても初期装備だってことを忘れちゃいけない。それに……」
多分、チェリーさんが思ってるほど簡単に狩れないと思うし、ヤギ。
製品版でそれなりに敵を狩ったけど、同じ初期モンスターでも強さに雲泥の差がある。
街から日帰りで行ける一番遠くまで出かけた所に居たレアモンスターよりも、こっちで最初に戦ったネズミの方が遥かに強く感じたくらいだ。
ステータス差もあるから、俺の時ほど苦戦することはまず無いと思うが、ノンアクティブのモンスターはコチラが攻撃するまではどれだけ近づいてもノンビリと歩いている製品版と同じ感覚でいると、狩る狩らない位前にまともに遭遇すら出来ない可能性もあるんじゃないかと思ってる。
そもそも、チェリーさんが想像以上に強かったとして、二人で群れボスなんて倒しても俺の未熟な解体技術じゃ群れ一つ分なんて解体しきれないしな。
「まぁ、実際やってみれば判ると思う。最初は口出しせずに見守るから自分がやり慣れた方法でやってみて」
「わかった。それじゃ、早速狩場に案内してもらえる?」
「了解」
「エリスとハティも一緒に住んでるのー」
村長の家からの帰り道、遠回りしながらこの村の施設の位置を一通り説明しながら歩いて、ついに一週間ぶりの我が家への帰還である。
久々の帰宅で家に風通しを良くしつつ、屋内は狭いので外の洗い場で話し合うことにした。
一戸建てとはいえ、ぶっちゃけ掘っ立て小屋で間仕切りとかはないから、中は少し広いワンルームと対して変わらんのだ。
エリスがハティと一緒に寝たがるので、ハティの巨体で寝転がる都合上ぶっちゃけ現代日本の一般人の部屋に比べて極端に物が少ない。
この村では珍しい靴を脱いで上がる居室空間を設けてあるが、部屋の中にあるのはぶっちゃけちゃぶ台的な机だけだ。
バッグとかは部屋の隅に置いてあるし、その一角に小型の氷室もどきが置いてあるだけの非常に簡素な部屋である。
今まで泊まっていた宿屋と見比べるとその何も無さが妙に目立った。
……でも、何かモノ増やしてもハティが寝る時に引っかかって倒れる未来しか見えないんだよなぁ。
入り口はハティが潜り込んでも壊れないように多少補強はしたが、家のサイズ自体をホイホイ変えられるわけもなく、ハティが丸くなると部屋がちょうど埋まってしまうくらいにデカイのだ。
もうちょっと広くて立派な家建てたいなぁ。
アラマキさんからの建築技術の勉強、勧めてもらわんとな。
「わたし、サリちゃんのところに戻ってきたって挨拶してくるね~」
「おう、いってらっしゃい。ついでにガーヴさん居たら俺が戻ってることやチェリーさん連れてきたこととかも挨拶ついでに伝えておいてくれな」
「はーい!」
「ワウッ!」
元気な返事と共にハティの背中にまたがって一緒に走り去っていってしまった。
まぁ今後の話とかエリスにとっては退屈な内容だろうし丁度いいだろう。
子供は同世代の友だちと遊ぶのが一番いい…………と思う。
エリスを見送り、視線を戻すとチェリーさんは俺の家をしげしげと眺めていた。
「俺が初心者木工で建てた掘っ立て小屋なんでしょぼいのに関しては突っ込まないで」
「え? この家借り物じゃなくてキョウさんが建てたの? というか、こっちだとハウジング機能が普通にあるの!?」
「え、うん……そうだけど正式版だとないの?」
「ないない。というか好き放題家立てたら大変なことになっちゃうし、正式版だと家を建てる専用エリアが用意されるんじゃないかと思ってるよ。少なくともこんな自由に村の中に家を建てれるとかはないと思う」
そりゃそうか。
プレイ人口が今後も増えてく可能性も考えると、自由に家が建てれると利便性の良い所にプレイヤーの家が乱立してエライことになりそうだ。
ダンジョン前にファンシーな家とかあったら雰囲気ぶち壊しだ。
まぁ個人的にはそういうカオスっぷりも嫌いじゃないが。
「まぁ、正式版だと駄目でもこっちだと大丈夫だからそういうものだという事で」
「……そうだね、使えるものは取り敢えずそういうものだと思っておく」
深く考えたら負けだ。
このゲームに関して言えばかなりの部分でその言葉が当てはまるような気がする。
例えば、本来なら絶対ありえない別エリアのボスモンスターが、ゲームの運営側が全く解明できない謎の要因のせいでただのテストプレイヤーである俺やバディに懐いて寝食共にする現状とかな!
運営ですら想定外ってそれただのバグじゃねーか! と言いたくもなるが、AIの思考能力が高すぎて簡単にバグと言い切れないところがあるのが、ある意味このゲームの恐ろしい所なんだよなぁ。
「で、取り敢えずこの辺りで活動するための拠点という意味ではこの村で問題ないと思うけど、今後どうしていきたい?」
「どう、とは?」
む、ちょっと聞き方がおおざっくり過ぎたか。
「キャンペーン活動ってのもあるけど、どういう生活していきたいのかなってこと。例えば俺は実際に狩りに混ぜてもらったりして、狩り方や解体の仕方とかサバイバル技術とか教えてもらってるんだわ。合間に家の作り方とかも習ったりしてるけど」
「ああ、活動方針とかそーいうやつですね? うぅん、暫くは……というかソチラが嫌でなければこっちのサーバでは、なにか理由がない限りはずっと一緒に行動したいと考えているんですけど、駄目かな?」
「いや? 俺はそれでも特に困らないし、そうしたいのならそれで全然構わないよ。むしろ俺のほうがゲームの中とは言え声優が素人とずっと一緒の行動とか外聞的に良くないんじゃないかって思うくらいなんだけど……」
俺はオタクではあるけど、ゲーオタ方面なんで実は声優とかそこまで詳しくない。
俺の知ってる声優なんて十年くらい前にゲームやアニメにドハマリした直後の時代の有名どころしか名前は知らないんだよな。
最近の女性声優で名前知ってるのは本当に有名で色んな作品で主役やってるような人数人だけだし、普段テレビ見ないからネットの生放送とかで出ているのしか見たことないし、知識だってその程度だ。
「俺、声優方面とかは全然詳しくないんだけどさ? アイドル声優なんて言葉は知ってるけど、アイドルなんて呼ばれるくらいなんだから当然素人だろうが声優だろうが芸能人だろうがあまり男の影とかを匂わせるようなことはしないに越したことはないじゃないの?」
「ああ、そういう娘も確かに居るねー。というか表に顔をだすような娘はほとんどそんな感じかもしれないけど、私の場合は顔出しあまりしてないし、お調子者系のキャラでやってるんで変に隠さずに、むしろコレでもかってくらい仲良くやってますアピールしていこうと思ってるんだけど、もしかして駄目だった?」
「いや、そっちがそれでいいなら俺的には特に問題ないかな。さっきも言ったけど事務所から怒られるのが怖いだけで、俺自身は特に困ることなんてなにもない訳だし」
「あっはははは、そういうのが駄目ならそもそもこの企画自体に事務所NG出てるって」
「あぁ、それもそうか」
俺とのペア行動を望んだのはチェリーさんだったって話だ。
という事は事務所側もそれを知った上でこの仕事を許可したってことだから大丈夫ってことなのか。
ちょっとだけ肩の荷が下りたような気がするわ。
「じゃあ、今後は俺とチェリーさんでペア……といってもエリスも居るか。まぁ一緒に過ごすというのがまず一点か。じゃあ、コレを前提条件として当面の活動指針はどうする?」
「うぅん、最初にコレ! って決めずに、少しの間このサーバで過ごして色々知ってから決めたいかな」
その方が良いかもしれないな。
βでかなりやりこんでたみたいだけど、もしかしたらその慣れが逆効果になるかもしれないし。
「わかった、じゃぁそれで行こう。確かにこっちのサーバと製品版とでは似ているようでかなり違う部分が多いだろうし、チェリーさんの場合センサーとかが普通のテスターよりも多くなってる訳だから、違和感とかもかなり出ると思うしね」
「だよねー。だからちょっと試運転の帰還が欲しいかなって」
お試し帰還は重要だ。
漠然と「なにかしてくれ」と言われても「何をしろというんだ?」ってな感じで困るってものだ。
一つでも何か方針が決まっているなら、少なくともある程度は行動の方向性くらいはなんとか見えてくるだろうしな。
「じゃあ、来週から街の祭りに招待されてるし、その祭りが終わるまでという事で一度期限を区切ってみるか。そこには俺も行ったことも経験したこともない新天地的なイベントだから活動の方向性決める区切りにはちょうどいいと思うし」
「わかった。うん、それでいこう」
「今話すべきことはコレくらいかな。あとは聴きたいことなんかはある?」
助言はするけど基本的な行動方針は出来るだけチェリーさんに決めてもらいたい。
俺の行動に合わせるとは言ってたけど、変にあれこれ言うと行動のクセみたいなのが俺の方針に寄っちまうかもしれないし、ヤバそうな時以外はできるだけ口を出さない方針で行くつもりだ。
なので、何かアクション起こす時も「こうしてくれ」よりも「どうしたい?」の方で行動を決めていくつもりだ。
「今は思いつくことは……あ、この辺りの手頃な狩場教えてほしいかな。筐体が変わって情報量が増えたせいで感覚とかもかなり違ってるから少し感覚を掴んでおきたいかも」
「狩場か……そうだなぁ、まずは村からそう遠くない所でヤギとか狙ってみようか。レベルは俺より高いけど、装備とかは初期状態だしあまり強いやつと戦うより弱いのでβテストとALPHAの違いを体感したほうが良いだろうし。それに、旅に出るからって残ってた干し肉とかも全部食べちゃったし、食料確保のためにもちょうどいいし」
氷室の肉は普通の氷とは別に魔法でも冷凍保管されてるから、冷凍庫ほどガチガチに凍ってる訳じゃない。
量は一ヶ月近く食っていけるだけの量とか言ってたから大丈夫としても、賞味期限的な問題で一ヶ月ももつかはかなり怪しい。
そういう肉を食い続けてきたこの村の人達はともかく、俺の腹が冷凍ではなく冷蔵保存に近い形で二週間や三週間も経った肉を食って平気かどうか正直判らないんだよな。
このアバターボディはかなり頑丈なのは確認済みだけど、それが病気や腹痛みたいな内側からくるものに対しても強靭なのかどうかわからないままで試す度胸は持ち合わせていない。
少しずつ安全圏を探るつもりではあるけど、安全に食料を確保できるなら安全な方を選びたいんだよな。
「ヤギ? 群れボスでも居るの?」
「うんにゃ、ただのヤギ」
「ただのヤギで手慣らしになるの?」
「このゲームの装備補正は結構シャレにならないんですよ? 高レベルだと行っても初期装備だってことを忘れちゃいけない。それに……」
多分、チェリーさんが思ってるほど簡単に狩れないと思うし、ヤギ。
製品版でそれなりに敵を狩ったけど、同じ初期モンスターでも強さに雲泥の差がある。
街から日帰りで行ける一番遠くまで出かけた所に居たレアモンスターよりも、こっちで最初に戦ったネズミの方が遥かに強く感じたくらいだ。
ステータス差もあるから、俺の時ほど苦戦することはまず無いと思うが、ノンアクティブのモンスターはコチラが攻撃するまではどれだけ近づいてもノンビリと歩いている製品版と同じ感覚でいると、狩る狩らない位前にまともに遭遇すら出来ない可能性もあるんじゃないかと思ってる。
そもそも、チェリーさんが想像以上に強かったとして、二人で群れボスなんて倒しても俺の未熟な解体技術じゃ群れ一つ分なんて解体しきれないしな。
「まぁ、実際やってみれば判ると思う。最初は口出しせずに見守るから自分がやり慣れた方法でやってみて」
「わかった。それじゃ、早速狩場に案内してもらえる?」
「了解」
2
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる