ν - World! ――事故っても転生なんてしなかった――

ムラチョー

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二章

六十六話 地味な鍛錬

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「んん~! ストレッチは終わったよ。それでそれで? なにするの?」
「じゃあ、俺がやってるのと同じことやるか」
「わたしもやるー」
「はいはい、エリスは最近ずっと一緒にやってるだろ」

 チェリーさんが好きそうな身体を酷使するようなのは……多分今のチェリーさんには早いよな。
 やっぱり、地味且つ堅実な……要するにいつも通りで良いか。

「それじゃあ、――まずは片足立ちになる」
「ほうほう」

 やることは簡単だ。

「その状態から【踏み込み】で前に出て、次の一歩を片足立ちになる」
「ふむふむ」

 言われた通り、前に飛び出すチェリーさんだが、そんな勢いで前に出たら……

「よっ……ほっ……とわっ!?」

 まぁ止まれないよな。
 ズッコケずにたたらを踏む程度でとどまったのはさすがのバランス感覚だけど。

「これ、片足で本当に止まれるの!? 一歩で止まるには勢いがありすぎると思うんだけど?」
「んじゃ、エリス、やってみ?」
「はーい。せーの……とうっ」

 ピョンと飛び出したエリスは、軽くつんのめりながらも片足でちょちょんと止まる。
 我ながら擬音系表現がアホっぽい気がしないでもないが、そう表現するのが一番しっくりする、そんな動き何だから仕方ない。

「ええっ!? 今のって【踏み込み】発動してたの? かるく一歩飛んだようにしか見えなかったんだけど」
「スキル発動エフェクト出てたから間違いないよ」

 【踏み込み】や【飛影】といった急加速系スキルの特徴は踏切足の足元に光が弾けるような独特なエフェクトが出るので、見ていればすぐに分かる。
 このエフェクトは移動系に限らず全てのスキルに共通する。
 それは戦闘系スキルに限らず、例えば木工スキルでものこぎりの刃を引く時にも派手に光が散ったりと、あらゆるスキルに共通する事象だ。

「でも【踏み込み】とは明らかに突進速度が違ったように見えるけど」
「そりゃ、限界まで突進力を絞ってたからねぇ」
「え、スキルに加減なんて出来るの?」
「そりゃ出来るでしょ、動かすのは自分の体なんだし」

 一歩を踏み出す力を押さえれば当然勢いだって減る。
 抑えすぎるとスキルが発動せずにそれこそただの一歩になってしまうけど。

「え、でもスキル選択した時点でもう身体が前に飛び出してない?」
「スキルを……選択?」
「え?」

 あれ、なんか意思の疎通が取れてない? 認識に齟齬があるような。

「えっと、チェリーさんってどうやってスキル使ってるんです?」
「そりゃ、ショートカットから即座に使えるように、使用頻度多い順で並べてるんだけど……」

 んんん?

「ショートカット……? それってネトゲによくあるあのスキルアイコンが並んでるアレ?」
「ソレ以外のショートカットバーを私は知らないんですけど……」
「身体動かすだけでスキル発動できるこのゲームで、どうしてわざわざショートカットなんて使ってるんですかね?」

 攻撃中に技を出すたびにショートカット選ぶとか、頭混乱しないんだろうか。
 というか選び損なったら大惨事になるような気がするんだが……

「え、ちょっとまって? キョウさんってまさかスキル仕様方法、マニュアル操作なんですか!?」
「うん。デフォルト設定でそうなってたし、一度スキルウィンドウからスキル使ってみたことはあるけど、なにかするたびにウィンドウ選択するのがストレスだったんだよね。ショートカットならスキルウィンドウを開く手間は省けるかもしれないけど、結局は行動中に選ばされるのは変わらんし。なによりこのほうが楽だし便利だから選択の余地なんて無いと思うんだけど……」
 
 いちいち技を使おうとするたびに右手家左手のどっちかの手を止めて、その手でスキル選択操作をするとか、それだけで2手分行動が遅れると思うんだが……?
 戦闘系のチェリーさんはその致命的な遅れが気にならないんだろうか。
 自分が格ゲー脳だからってのもあるけど、相手は発生3fの技もってるのに、自分の技は最速でも発生5fとかその時点で対策考えるレベルなんだが……

「マニュアル操作でのスキル発動って、不発とかもあるから怖くて使えなくないですか!?」
「いや、そんなことはないと思うけど……」

 試しに一歩ずつスキップの要領でスキルを切り替えてみせる。
 エリスは隣で俺の真似しているが、連続で切り替えるのはまだ出来ないのか一歩ずつフラフラしている。
 しかしスキルの不発は起きていない。

「えぇぇぇ、マジで? 私なんて技使おうと剣振ったらただの攻撃が出たせいで止め刺し損ねてやられたり、ちょっと走るつもりが【踏み込み】発動して思いっきりずっこけたりで、意図的なタイミングでスキルが出てくれなかったからショートカット使ってたんですけど……」
「そりゃ使い方が悪かったとしか言いようが……基本的には意思通りに発動するから、強くなりたいならこっちになれたほうが絶対有利だと思うよ?」

「うぅ……そこまで言うなら私もやってみる」

 ううむ、俺は最初からコレだし、帰るつもりもなかったから体で覚えてるけど、チェリーさんは妙な苦手意識持ってるみたいだし、発動のコツのところから教えたほうが良いのかな?

「じゃあ、なんか暴発を怖がってるみたいだしまずはマニュアル発動のコツからやろう。……という事で一度洗い場の周りを一周してみて。軽くジョギングぐらいの速度で」
「え? うん……」

 言われてチェリーさんは走り始めた。まぁ洗い場の周りなんて大した広さはないから10秒もかからず一周してくる。
 その前に、地面に二本線を引く。
 距離は凡そ1mといった所か。

「そのまま、この二本の線を飛び越えてもう一周ね」
「えぇ? まぁ良いけど」

 ピョンと飛び越えもう一周走り出す。
 その間に、二本目の線の反対側に同じくらいの距離でもう一本線を付け足す。
 これだ大体2m前後だ。

「もう一回飛んで。今度はちょっと距離が開いてるよ」
「わかった! ってちょっとじゃなくない!?」

 言いつつも、ジョギングの勢いを使ってそのまま飛び越える。
 うむ、普通に飛び越せたな。
 特におかしな事はなかった。

「言われたとおりにやってみたけど、コレ何を試してたの?」
「まぁまぁ、コレは準備だから。口ではちょっと説明しにくいから、疑問はあるだろうけどもうちょっと付き合ってよ」
「んん? わかった付き合う。次は何やるの?」
「それじゃ、次はこの線の前に立ってみて」
「この辺りでいい?」
「おけおけ」

 先の手前にチェリーさんを立たせ、俺は物干し台から一本引き抜き、物干し竿をチェリーさんの前方に掲げる。
 高さはちょうどチェリーさんの頭の位置と同じくらいの高さだ。

「じゃあ次はこの物干し竿に頭ぶつけないように先を飛び越えてみて。さっきと違って助走なしの立ち幅跳びの要領だけどね」
「普通にジャンプしたら物干し竿に頭打つわねそれ……」

 そう、何も考えずに飛び越えようとすれば、物干し竿に激突するだろう。
 となれば飛ぶべきは上ではなく、より前に、より遠くにという事になる。
 ゲームアバターなのでリアルボディに比べれば遥かに性能が高いとはいえ、高さ制限付きの立ち幅跳びで2mという距離は、さっきの助走付きとは違い鼻歌交じりで気楽にできるものじゃない。
 つまりは――

「よっ……とわっ!?」
「よし、ちゃんと発動したな」

 意識的な踏み込みの発動に繋がるわけだ。

「今のどういう事!? 【踏み込み】スキル使おうとか考えてないのに勝手にスキルが暴発したんだけど!?」
「いや、暴発じゃないよ。今のがマニュアル操作での正しいスキル発動手順なんだって」
「えぇ? どういうことなの?」

 別に難しいことじゃない。

「簡単には飛び越えられない全力で飛ぶと頭ぶつけるから無理矢理にでも前に距離を稼ごうとして、ジャンプする直前身体が力んだだろ? その力みがスキル発動のトリガーだと俺は捉えてるんだよ」
「力み? というか捉えてるって、感覚的な話? マニュアルにはないの?」
「マニュアル……ああ、説明書の方のマニュアルか。そっちは読めないからオンラインマニュアル読むしか無いんだけど、ログアウト出来ないから読めないんだなぁこれが。まぁそもそも海鮮が専用回線でサーバ直結だから勝手にブラウザ開いたり出来ないらしいけどね」
「説明書を『見てない』んじゃなくて、『見れない』とか流石に想定外なんですけど」

 いつかマニュアル見れるようにするとか言ってたけど未だに連絡がないってことは目処が立ってないってことだろう。
 製品版にあるゲーム内ヘルプを適応させるとかそんな話だったはずだが……
 そもそも、ゲーム起動してると別窓みたいなの開けない仕様になってるから、ログアウトできない俺にとってはブラウザだろうがデータであろうが関係なく見れないんだけど、ソレって結局俺の特殊な状況が問題な訳だ。
 俺個人のために後付機能の追加とかとなると当然スケジュールやら工数やらの問題で後回しになるだろうから正直マニュアルに関しては全く期待してないんだよな。

「まぁマニュアルに関してはこの際どうでも良いから置いておくとしてだ」
「あ、そうそう……なんだっけ、力み? だっけ。」
「そう。『コレは簡単に飛び越えられない』って認識から、力を振り絞るために踏切足がかなり力んだだろ?」

 理屈だけなら簡単だ。
 日常的ではない負荷がかかったから、ソレに対して必要なスキルが発動する。

「マニュアル操作でのスキル発動というのは言ってみればアシスト機能みたいなもので、パラメータ不足の行動を無理やり取ろうとする時に該当スキルがあれば、自動的に足りない分をスキルの発動で埋めてくれるってイメージかな。今回の件で言えば普通に飛んでも届かない位置へのジャンプを【踏み込み】のスキルで補ったと言うわけ」

 当然無理やり埋め合わせるだけなので、スキルを使っても届かないような場合でもきっちりスキルは発動する。
 結果は失敗になるが。

「そんな曖昧なトリガーで発動するんじゃやっぱり暴発しまくるんじゃないの? さっき一周してから飛び越えたときだって、ジャンプするためには当然足に力入れるし、力みとかあった筈でしょ? でもさっきはスキル発動しなかったよね、それって思ったように発動しないって事で、ソレってつまり暴発ではないけど不発って事じゃないの?」
「助走付きで飛び越えた時にスキルが発動しなかったのは、自分のステータスだけで実行可能だったからだよ。不発と言うか不必要だったから発動しなかったんだわ」

 最初に飛んだ時は助走付きで、しかも高さ制限もなかったため、特にスキルを使うまでもなく気楽に飛び越えられた。
 力んで、でもその『力み』のみで飛び越えれると無意識に理解していたからスキルは発動しなかったわけだ。

「んん~……話を聞くとたしかにアシストで発動するっていうのはしっくり来るかもしれないけど……、じゃあさっきエリスちゃんの踏み込みはどうして発動したの?、ショートカットで発動させた私と違って一歩分の距離しか無いのに【踏み込み】のスキルが発動するのは理屈と合わないと思うんだけど」
「そこはちょっとだけ応用編になるから、詳しい話は後で。まぁ、凄いざっくりと説明するとわざと足りない力加減で一歩を踏んで無理やりスキルを発動させたって事」
「あぁ、だから加減………」

 そういうことだ。
 スキルの効果を力加減するんじゃなく、スキルの発動条件になる行動を加減するのだ。

「ん、なんとなく解ってきた。要するに、自力では失敗するような行動した時にもスキルを持っていいた場合に限り、上方判定値が加算……的な?」
「うん、その認識で合ってる」

 さっき同じこと言ったハズだったんだけどな。
 俺の説明がド下手くそすぎるって事か……?
 実際チェリーさんの答えのほうが言葉数少なくて内容自体も的確なんだけど。
 わざわざTRPGっぽい言い回しで答えたってことは自分のわかりやすい言葉に置き換えて理解してただけかもしれないか。

「だから、出来るか出来ないかの見極めが出来るようになる必要があるんだけど、日常生活ではほとんど困ることはないんじゃないかな。慣れないうちは急いでる時に加速系のスキルが発動して転びそうになったり、攻撃スキル持ってる人が料理中に力入れすぎてまな板ごとぶった切る事案が想像できるくらい?」
「なるほどねぇ。転ぶのは嫌だけど、そこまで厄介じゃないのかな……?」
「何事も慣れだよ、慣れ。実際俺もエリスもチェリーさんの前で一度も暴発させてないでしょ?」
「そういやそうだね」
「わたしの事呼んだ~?」
「呼んでないよ。ちょっと説明してただけ」
「そっかー」

 そう、慣れは重要だ。
 格ゲー初心者が623+P、所謂昇竜コマンドを出そうとして別の技を暴発させたり、そもそも技が出なくてオタついてたりするのに、暫くやっていれば自然と236+Pといった似たような飛び道具コマンドと要所でしっかり使い分けたり出来るようになるのと同じだ。
 感覚を体で覚えてしまえば、以前は無理だと思っていたことが深く考えずに実行できるようになる。
 まぁ、出来ることと出来ないことは当然あるんだが。

「大抵、マニュアルでもスキルの発動で諦める人って、思うように攻撃スキルが発動しないからだと思うんだけどさ。攻撃スキルのマニュアル発動が難しい原因は、例えば強撃系のスキルと速攻系のスキルの違いを意識した身体の動きが出来てないからだとおもうよ。威力の高い攻撃用の『力み』と素早く攻撃するための『力み』じゃ使う筋力とか体重移動とかは違うから、速攻技を使おうとして『早く剣振るためには全力で武器を振ればいい』なんて認識でやったら、当然ながら高攻撃系の技が発動しちゃって、それを技が暴発した……みたいに認識しちゃってるんじゃないかなぁと。まぁコレは俺の想像だけどさ」

 根拠とかはまだないし証明もできない。
 そもそも『力み』の方法でスキル発動の種類別判定されてるっていうのも俺の仮説なだけで、実際は別の要素かもしれないしな。
 ただ、ど真ん中正解って訳じゃないだろうが、この推測がいい線いっているっていう確信はあるんだよなぁ。

「街の剣術道場みたいな所でスキルが学べるって別のテスターから聞いたんだけど、ネットゲームで覚えるスキルって、大抵スキルショップや、レベルアップによる自動取得だろ? でもわざわざ道場なんて施設があるっていうことは、それってワンボタンで技を覚えるんじゃなくて、道場でその技の動きをちゃんと身につけることが前提にあるから、だから道場なんてものが成立するんじゃないのかと思うんだ」
「確かに、スキルショップでボタンポチって覚えるだけなら道場なんていらないよね。たとえ道場のような施設はあっても、スキル自体は受け付けで購入したり、クエストで入手とかだし」
「うん。だからNPCはみんなそうやって実践して力をつけていくんだと思う。NPCにできることがプレイヤーにも可能だっていうのは俺自身が確認済みなんで、同じ方法でやれば道場でマニュアル操作のスキル使用法が獲得できると思ったわけ」

 というかガーヴさんとの稽古がまさにそれを証明してるんだよな。

「はぇー、そこまで考えてやってるんだ」
「別に研究とかしてるわけじゃないよ? 単に『こうしたら出来るかな?』とか思いつきを試してるだけ」
「思いつきの実践かぁ」

 成功するかはわからないけど、試しにやってみる。
 失敗するかもしれないけど、どんな結果が出るだろう?
 そんな風に試してみれば、思いもつかない結果が出ることだってあるだろう。
 そういうつもりで取り敢えず思いついたら試しているだけなんだよな。
 つまり、その時点では深く考えていない。
 頭をつかうのはその結果からどうするのかを考える段階になってからでいいと思うんだ。
 まずは試す。
 試し、失敗し、そしたら考えて、対策して、また試す。

「よし、それじゃ今教えたことを頭に入れて、もう一回片足飛びを試してみようか」
「おお、やるやる。よーし今度こそ」

 再び片足立ちになって、今度は慎重に加減を確認するチェリーさん。
 色々加減するために動いてるけど、やってることはアレ片足のスクワットだ。
 疲れないんだろうか……? 多分疲れないんだろうなぁ。
 これがフィジカルパラメータの差か。

「ていっ! ……ってあれ? 発動しない」
「さっきと違ってジャンプするべき位置をちゃんと意識したのは良かったけど、そこまでのジャンプに必要十分な力で飛んじゃったんだな」
「ふむふむ、だったら……これくらいか……なっ、と!」

 お、今度はちゃんとスキルエフェクトが出た。

「おおっ、成功……ってうわっ!?」
「残念、スキルの発動は成功したけど、着地には失敗したね」
「ぐぬぬ、悔しい……もう一回!」
「何度でもどうぞ?」

 コツを語ることは幾らでもできるけど、これは本当に体に覚え込ませるのが一番の近道だからなぁ。
 自転車と同じで、体が覚えてしまいさえすれば出来て当然のように使えるようになる。
 まぁこの練習は本来はバランス強化のものなんだけど、スキルと非スキルの切り替えを意図的にできるようになるための訓練にもなるからな。

「やった、できた!」
「おっ、流石ゲーマー。感覚を掴むのが早いな」
「フフフ、自分で言うのも何だけどニワカとは違うのですよ私は」
「まぁ、それを一歩ずつ交互に繰り返していくと、バランスとスキル切り替えの感覚が掴めていく筈だよ。んで、慣れてくると……」

 片足飛びの【飛影】で3m近くの距離を飛び、次の一歩で元の位置に戻ってみせる。

「これくらいの距離を無反動で飛べるようになる訳だ」
「おおー! もしかしてこれを極めるとあのジグザグダッシュが出来るようになるの!?」
「まぁ、そうだね。今やったのは一歩ずつ【踏み込み】系のスキルを刻んでるんだけど、イベントで見せたあれば、一歩目で【飛影】、二歩目以降は【疾駆】で方向を変えたい時に次の一歩でまた【飛影】って感じに切り替えることで速度を落とさずに進行方向を変えてたんよ」
「おおお、覚える! 私もアレ使えるようになりたい!」

 そういえば他のプレイヤーもあの走り方真似してたって言ってたな。
 チェリーさんもその一人だったようだ。

「アレは基礎的なムーブだから、この訓練やるだけである程度行けるようになると思うよ」
「よーし、餌がみえてモチベが上がった!やる気出てきた!」

 自分で餌とか言うのはどうなんだろうか。
 ……まぁそれでモチベが上がるなら俺からなにか言うようなことでもないか……

「急にやりすぎると次の日内ももがバッキバキになるから、一度に頑張りすぎないようにな。そうだなぁ……早朝と夕食後の鍛錬では20回に制限しよう」
「ええ、たった20回!?」
「身体に覚え込ませるといっても、無駄に繰り返すだけだと変な癖が付きかねないし、一回一回を考えて、工夫しながらやればそれだけ上達も早くなるだろ?」
「む……確かに」

 間違った方法で100回繰り返すより、微調整を繰り返しながらでも正解に向かって20回のほうが遙かに建設的だ。
 スランプに陥ったとか、正解が判った上での反復訓練以外で我武者羅に一つのことを繰り返すのはあまり良いことだと俺は思っていない。

「じゃ、頑張れ。俺も自分の分をこなしてるから、何か気になったことがあったら聞いてくれ」
「わかったわ!」
「私もやるー!」
「ウォン!」

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