178 / 330
三章
百六十九話 技
しおりを挟む
「ここなら良いかしら?」
「だな。周りに人もいないし、初心者が狩るようなモンスターも見当たらない」
どういう訳か、門を出てすぐ近くの広場には人が集まって妙に賑やかしていたので、仕方なく少し離れた場所まで歩く羽目になった。
ここなら門からも適度に離れてるし、クエストの多い森からも距離があるから、誰かの邪魔になるという事もないはずだ。
「それじゃ、今から攻撃するから防御してみてね?」
「お、おう」
「別に変に受けにくい攻撃するわけじゃないから、普通に防いでもらって大丈夫だよ」
そうは言っても、突きを受け止めるのってそう簡単なものでもないんだけどな! 点を線で受けるようなものなんだから。
「ソレじゃ行くよ~……せいっ!」
「ぐ、ぬ」
相変わらず重い。めちゃくちゃ重い。訓練用にある程度手を抜いてるんだろうが、それでもガードの上からダメージが入るレベルのパワーだ。
俺とチェリーさんのステータス差もあるが、そのステータス差以上に、以前に比べて明らかに攻撃が重くなっている。これは多分ガーヴさん効果だろう。俺も歩法一つでだいぶ変わったからなぁ。
「今のが私の本気攻撃ね」
「いや、本気かよ!? 訓練でする攻撃じゃなくねぇか!?」
「いやぁ、キョウくん相手ならそれくらいで丁度良いかなって」
「いや、チェリーさんの方がレベル高いからな? 条件無しで殴り合ったら俺とか勝ち目無いからな?」
これだけのステータス差だと、普通に当たれば死にかねねぇんですけど?
訓練でタマ獲りに来てどうするよ!?
「まぁまぁ、今のはただの前置きだから。本命はこの後!」
「えぇ……?」
全力でぶん殴っておいて前置きってどういうことよ?
「次、同じ風にちょっと違う攻撃するから、もう一度防いでみて?」
「え、本気攻撃よりも厄介な攻撃するって事? 死ぬんじゃね? 俺」
「受けにくい攻撃するわけじゃないから! ほら、行くよ?」
それさっきと同じセリフ……確かに受けにくくはないけど、防御してもクソ痛いから勘弁してほしいんだが。
「ほい!」
「ちょっ!? おわぁ!」
いや、準備できたとか言ってなんだが!? 防御が間に合ったから良いものの、いきなりぶん殴るやつが……って?
「どう?」
「いや、どうじゃなくて……うぉぉぉ……腹に来た……」
「強さ的には全く同じ強さで攻撃したけど、防御貫通したでしょ?」
「ああうん。確かに貫通したけど、まずはソレを先に説明してほしかったんですけど? ぐ……クソ、マジで立てないんだが」
「そんな大げさな……」
大げさでも何でもねぇよ、マジで。
こっちではALPHAのような鮮明なダメージ表現がかなりフィルタ掛かってるのか鈍さには確かになってる。
なってるが、ダメージが無い訳じゃぁない。今の一撃だって鳩尾にボディブロウぶち込まれたような「オエェ」と来る気持ち悪さがしっかり届いている。
ダメージ感覚が鈍っているこのサーバでこれだけのダメージとか、向こうなら内蔵痛めて血反吐まき散らしてたかもしれんぞ。
一体どれだけのダメージを受けたのかと久々にステータスを覗いてみれば……
キョウ
人間:男:クフタリアの強者
Lv2
HP :39/782
SP :72/72
空腹値 :80/100
疲労値 :11
STR :32
VIT :25
DEX :29
AGE :31
INT :11
MND :19
やっぱり死にかけじゃねぇか!? 冗談じゃねぇぞ。
こっちのサーバでも死んだときの復旧にまだ不安があるのに、味方に殺されて再起不能とか笑い話にもなりゃしねぇ。
「これが大げさなんですかねぇ?」
流石にこれ以上やられると殺されかねんので、ステータスウィンドウを突き付ける。
「え? ……うっ!? マジで?」
「俺、もうこれ以上ないってくらい口を酸っぱくして言ってるよね? 俺とチェリーさんのレベル差について」
「いやぁ、今までいくら攻撃しても全く効かなかったからさー」
「効かないように必死に受け流してたんだよ! そういう勘違いしてると思ったから、事ある毎にレベル差、ステータス差について言い続けてきたんですけど? 俺、ゲーム内で死んだ時どうなるかわからないって何度も言ったよな!?」
「ご、ごめんね? ちょっと考えが甘かったっていうか、認識にズレがあったっていうか……これからはもうちょっと加減を考えるようにするから」
頼むぜマジで。今ので死んでたら本気で洒落にならんぞ。いくらなんでも流石にキレるわ。
「ま、まぁそれはごめんなさいという事で、そんな事より今は技の方よ!」
「そんな事……?」
「ご、ごめんて……いえ、ごめんなさい。本当に悪いと思ってるから、まずは話を聞いて? ね?」
ほんとに解ってるんか……?
ちゃんと謝ったからこれ以上くどくど言わんけど……
「……はぁ……食らってみた感じ、防御を貫通する技って事だよな?」
「そ、そう! 正確には防御を貫通しているというよりもダメージ判定の一部をずらす技って感じかな?」
「なるほど、それで俺はチェリーさんの攻撃を食らっても即死しなかったという訳か」
判定の一部をずらす……つまり、防御を突破してくるのは実際のダメージの一部だけという事だ。
一発目の攻撃は本気だと言ってたし、2発目も同じだけの威力は乗っていたと思う。その攻撃がもろに決まっていれば、俺のHPは今頃全部消し飛んでいただろうからな。
「攻撃を受けた柄の所に伝わる筈の衝撃の一部を、キョウくんの腹の位置にズラした訳。実際はずらすというよりも、遠くまで衝撃が届くようにブチ込むって感じなんだけどね」
「あれか、遠当てとか浸透勁とかみたいな奴。漫画とかで見た覚えがある」
「多分その認識で間違ってないと思う。まぁ、遠当てとかは私も漫画で知ってるけど、本物の技の理屈はサッパリ知らないから、これが本当に同一の技かどうかは判らないけどね。でもイメージ的には間違ってないと思うよ」
拳法家って訳じゃないから、技の術理なんて一介のゲーマーに判る訳はないわな。
「剣と魔法のファンタジーなだけあって、そんなバトル漫画みたいな必殺技も覚えれるのか。しかもエフェクトが出なかったって事はスキルじゃないよなこれ」
システムからアクティブスキル扱いとして判定された場合、スキル専用のエフェクトが発生する。これはバレたら効果半減の暗殺系の必殺技であっても、視認しにくいというだけでエフェクト表示のルールからは逃れられない。
なので、エフェクト有無を見てスキルの発動を認識する事が出来る。
チェリーさんの技は一見必殺技のような強力な威力を持っているが、エフェクトが一切なかった。という事はアクティブ系の必殺技スキルではない通常行動であると判断できる訳だ。
「そう! かなり強力な技だけど、必殺技扱いじゃないからSPとかも消費しないし、超便利なの!」
「まぁ、確かに便利な技だな。でも、チェリーさんの全力攻撃で俺が即死しなかったってことは威力自体は分散するってことだよな?」
「あー……それは私が使いこなせてないからだと思う。私も覚えたてで完璧とは程遠いから。ガーヴさんのデモンストレーションだと衝撃がそのまま貫通してる感じだったし」
「技量によっては防御自体は貫通するけどダメージのすべてが貫通するとは限らないって事か。なら俺が覚えてもしばらくはそうなるだろうな」
とはいえ、これだけの技をスキル無しで、しかも数日程度習っただけで、訓練したからとホイホイ覚えられるとは思えない。
という事は、エフェクト表示のされない身体操作系のパッシブスキルを組み合わせた複合的な攻撃方法ということだろう。俺のフェイント歩法の攻撃版といった所か。
つか、こんな重要な技を、何でハイナ村を出てから今まで、タイミングはあった筈なのに黙ってたのか。
……最初は単に伝え忘れてたけど、チェリーさんの性格的に、闘技大会以降は思い出していても俺を倒すために隠してたとかなんだろうなぁ。
まぁ、俺が習得のチャンスを逃してたんだから、そこに文句言うつもりはないけど。
「なるほど、たしかにこの技は覚えて損は無さそうだ。チェリーさんが大会終わるまで隠してた理由も分かるわ」
文句は言わないが、この技があればもうちょっとキルシュとマシに張り合えた可能性が無きにしもあらずなので、嫌味くらいは言うけどな!
「あ、あはは……バレてる?」
「モロバレ。むしろバレないと思ってた事に驚きだわ」
あれ? そもそもチェリーさんはガーヴさんから俺に伝えるように言われてたのに、それを隠して今まで黙ってたんだから文句言う筋合いも十分にあるんじゃ……?
「ごめんなさいって~。今からはちゃんとガーヴさんに教わったの全て伝えるからさぁ」
「一撃ぶちかましてネタバラシまで済んだ状態で、まだ隠し通せるならそれはそれである種の才能だと思うけどな。……まぁ、この期に及んでまだ渋るようなら今後の付き合い方を考える必要があるけど」
俺の体に直接ブチ込んでデモンストレーションまでしてくれたんだ。これでやっぱりナシとか言い出したら、流石の俺もキレるわ。
「大丈夫! もう手取り足取り教えちゃうから!」
そう言うと表情を引き締めて槍を構え直す。
真面目モードで誤魔化すつもりだな? 誤魔化しているつもりかもしれんが、目元がヒクヒクしてんぞ。
まぁ、これ以上いじめても話が進まんし、ここは流れに乗ってやるか。
「じゃあ、まずはこの槍を全力で……」
そこから2~3時間ほどチェリーさんの指導を受けて、色々な訓練をしてみた。
練り上げた力をロス無く攻撃に転化させるための身体の使い方、その力を衝撃として相手にぶつける為の重心移動や攻撃方法等、基本的な事は全て詰め込んでの短期集中特訓だ。
――でまぁ、結論から言うと、とても3時間じゃ物に出来るような技術じゃ無いよねという話だ。
練り上げた力の操作の段階で躓いてしまい、思ったように訓練が進まなかった。
相手に触れていれば、その練り上げた衝撃を伝えることまでは出来たが、その打点をズラすといった真似は全く出来る気がしなかったんだよなぁ。
それでも、思ったのとはだいぶ違う……というか、完全に技の不発や暴発の類なんだが、中々面白げな技を思いついたので、試し打ち出来る明日がちょっと楽しみになった。
「だな。周りに人もいないし、初心者が狩るようなモンスターも見当たらない」
どういう訳か、門を出てすぐ近くの広場には人が集まって妙に賑やかしていたので、仕方なく少し離れた場所まで歩く羽目になった。
ここなら門からも適度に離れてるし、クエストの多い森からも距離があるから、誰かの邪魔になるという事もないはずだ。
「それじゃ、今から攻撃するから防御してみてね?」
「お、おう」
「別に変に受けにくい攻撃するわけじゃないから、普通に防いでもらって大丈夫だよ」
そうは言っても、突きを受け止めるのってそう簡単なものでもないんだけどな! 点を線で受けるようなものなんだから。
「ソレじゃ行くよ~……せいっ!」
「ぐ、ぬ」
相変わらず重い。めちゃくちゃ重い。訓練用にある程度手を抜いてるんだろうが、それでもガードの上からダメージが入るレベルのパワーだ。
俺とチェリーさんのステータス差もあるが、そのステータス差以上に、以前に比べて明らかに攻撃が重くなっている。これは多分ガーヴさん効果だろう。俺も歩法一つでだいぶ変わったからなぁ。
「今のが私の本気攻撃ね」
「いや、本気かよ!? 訓練でする攻撃じゃなくねぇか!?」
「いやぁ、キョウくん相手ならそれくらいで丁度良いかなって」
「いや、チェリーさんの方がレベル高いからな? 条件無しで殴り合ったら俺とか勝ち目無いからな?」
これだけのステータス差だと、普通に当たれば死にかねねぇんですけど?
訓練でタマ獲りに来てどうするよ!?
「まぁまぁ、今のはただの前置きだから。本命はこの後!」
「えぇ……?」
全力でぶん殴っておいて前置きってどういうことよ?
「次、同じ風にちょっと違う攻撃するから、もう一度防いでみて?」
「え、本気攻撃よりも厄介な攻撃するって事? 死ぬんじゃね? 俺」
「受けにくい攻撃するわけじゃないから! ほら、行くよ?」
それさっきと同じセリフ……確かに受けにくくはないけど、防御してもクソ痛いから勘弁してほしいんだが。
「ほい!」
「ちょっ!? おわぁ!」
いや、準備できたとか言ってなんだが!? 防御が間に合ったから良いものの、いきなりぶん殴るやつが……って?
「どう?」
「いや、どうじゃなくて……うぉぉぉ……腹に来た……」
「強さ的には全く同じ強さで攻撃したけど、防御貫通したでしょ?」
「ああうん。確かに貫通したけど、まずはソレを先に説明してほしかったんですけど? ぐ……クソ、マジで立てないんだが」
「そんな大げさな……」
大げさでも何でもねぇよ、マジで。
こっちではALPHAのような鮮明なダメージ表現がかなりフィルタ掛かってるのか鈍さには確かになってる。
なってるが、ダメージが無い訳じゃぁない。今の一撃だって鳩尾にボディブロウぶち込まれたような「オエェ」と来る気持ち悪さがしっかり届いている。
ダメージ感覚が鈍っているこのサーバでこれだけのダメージとか、向こうなら内蔵痛めて血反吐まき散らしてたかもしれんぞ。
一体どれだけのダメージを受けたのかと久々にステータスを覗いてみれば……
キョウ
人間:男:クフタリアの強者
Lv2
HP :39/782
SP :72/72
空腹値 :80/100
疲労値 :11
STR :32
VIT :25
DEX :29
AGE :31
INT :11
MND :19
やっぱり死にかけじゃねぇか!? 冗談じゃねぇぞ。
こっちのサーバでも死んだときの復旧にまだ不安があるのに、味方に殺されて再起不能とか笑い話にもなりゃしねぇ。
「これが大げさなんですかねぇ?」
流石にこれ以上やられると殺されかねんので、ステータスウィンドウを突き付ける。
「え? ……うっ!? マジで?」
「俺、もうこれ以上ないってくらい口を酸っぱくして言ってるよね? 俺とチェリーさんのレベル差について」
「いやぁ、今までいくら攻撃しても全く効かなかったからさー」
「効かないように必死に受け流してたんだよ! そういう勘違いしてると思ったから、事ある毎にレベル差、ステータス差について言い続けてきたんですけど? 俺、ゲーム内で死んだ時どうなるかわからないって何度も言ったよな!?」
「ご、ごめんね? ちょっと考えが甘かったっていうか、認識にズレがあったっていうか……これからはもうちょっと加減を考えるようにするから」
頼むぜマジで。今ので死んでたら本気で洒落にならんぞ。いくらなんでも流石にキレるわ。
「ま、まぁそれはごめんなさいという事で、そんな事より今は技の方よ!」
「そんな事……?」
「ご、ごめんて……いえ、ごめんなさい。本当に悪いと思ってるから、まずは話を聞いて? ね?」
ほんとに解ってるんか……?
ちゃんと謝ったからこれ以上くどくど言わんけど……
「……はぁ……食らってみた感じ、防御を貫通する技って事だよな?」
「そ、そう! 正確には防御を貫通しているというよりもダメージ判定の一部をずらす技って感じかな?」
「なるほど、それで俺はチェリーさんの攻撃を食らっても即死しなかったという訳か」
判定の一部をずらす……つまり、防御を突破してくるのは実際のダメージの一部だけという事だ。
一発目の攻撃は本気だと言ってたし、2発目も同じだけの威力は乗っていたと思う。その攻撃がもろに決まっていれば、俺のHPは今頃全部消し飛んでいただろうからな。
「攻撃を受けた柄の所に伝わる筈の衝撃の一部を、キョウくんの腹の位置にズラした訳。実際はずらすというよりも、遠くまで衝撃が届くようにブチ込むって感じなんだけどね」
「あれか、遠当てとか浸透勁とかみたいな奴。漫画とかで見た覚えがある」
「多分その認識で間違ってないと思う。まぁ、遠当てとかは私も漫画で知ってるけど、本物の技の理屈はサッパリ知らないから、これが本当に同一の技かどうかは判らないけどね。でもイメージ的には間違ってないと思うよ」
拳法家って訳じゃないから、技の術理なんて一介のゲーマーに判る訳はないわな。
「剣と魔法のファンタジーなだけあって、そんなバトル漫画みたいな必殺技も覚えれるのか。しかもエフェクトが出なかったって事はスキルじゃないよなこれ」
システムからアクティブスキル扱いとして判定された場合、スキル専用のエフェクトが発生する。これはバレたら効果半減の暗殺系の必殺技であっても、視認しにくいというだけでエフェクト表示のルールからは逃れられない。
なので、エフェクト有無を見てスキルの発動を認識する事が出来る。
チェリーさんの技は一見必殺技のような強力な威力を持っているが、エフェクトが一切なかった。という事はアクティブ系の必殺技スキルではない通常行動であると判断できる訳だ。
「そう! かなり強力な技だけど、必殺技扱いじゃないからSPとかも消費しないし、超便利なの!」
「まぁ、確かに便利な技だな。でも、チェリーさんの全力攻撃で俺が即死しなかったってことは威力自体は分散するってことだよな?」
「あー……それは私が使いこなせてないからだと思う。私も覚えたてで完璧とは程遠いから。ガーヴさんのデモンストレーションだと衝撃がそのまま貫通してる感じだったし」
「技量によっては防御自体は貫通するけどダメージのすべてが貫通するとは限らないって事か。なら俺が覚えてもしばらくはそうなるだろうな」
とはいえ、これだけの技をスキル無しで、しかも数日程度習っただけで、訓練したからとホイホイ覚えられるとは思えない。
という事は、エフェクト表示のされない身体操作系のパッシブスキルを組み合わせた複合的な攻撃方法ということだろう。俺のフェイント歩法の攻撃版といった所か。
つか、こんな重要な技を、何でハイナ村を出てから今まで、タイミングはあった筈なのに黙ってたのか。
……最初は単に伝え忘れてたけど、チェリーさんの性格的に、闘技大会以降は思い出していても俺を倒すために隠してたとかなんだろうなぁ。
まぁ、俺が習得のチャンスを逃してたんだから、そこに文句言うつもりはないけど。
「なるほど、たしかにこの技は覚えて損は無さそうだ。チェリーさんが大会終わるまで隠してた理由も分かるわ」
文句は言わないが、この技があればもうちょっとキルシュとマシに張り合えた可能性が無きにしもあらずなので、嫌味くらいは言うけどな!
「あ、あはは……バレてる?」
「モロバレ。むしろバレないと思ってた事に驚きだわ」
あれ? そもそもチェリーさんはガーヴさんから俺に伝えるように言われてたのに、それを隠して今まで黙ってたんだから文句言う筋合いも十分にあるんじゃ……?
「ごめんなさいって~。今からはちゃんとガーヴさんに教わったの全て伝えるからさぁ」
「一撃ぶちかましてネタバラシまで済んだ状態で、まだ隠し通せるならそれはそれである種の才能だと思うけどな。……まぁ、この期に及んでまだ渋るようなら今後の付き合い方を考える必要があるけど」
俺の体に直接ブチ込んでデモンストレーションまでしてくれたんだ。これでやっぱりナシとか言い出したら、流石の俺もキレるわ。
「大丈夫! もう手取り足取り教えちゃうから!」
そう言うと表情を引き締めて槍を構え直す。
真面目モードで誤魔化すつもりだな? 誤魔化しているつもりかもしれんが、目元がヒクヒクしてんぞ。
まぁ、これ以上いじめても話が進まんし、ここは流れに乗ってやるか。
「じゃあ、まずはこの槍を全力で……」
そこから2~3時間ほどチェリーさんの指導を受けて、色々な訓練をしてみた。
練り上げた力をロス無く攻撃に転化させるための身体の使い方、その力を衝撃として相手にぶつける為の重心移動や攻撃方法等、基本的な事は全て詰め込んでの短期集中特訓だ。
――でまぁ、結論から言うと、とても3時間じゃ物に出来るような技術じゃ無いよねという話だ。
練り上げた力の操作の段階で躓いてしまい、思ったように訓練が進まなかった。
相手に触れていれば、その練り上げた衝撃を伝えることまでは出来たが、その打点をズラすといった真似は全く出来る気がしなかったんだよなぁ。
それでも、思ったのとはだいぶ違う……というか、完全に技の不発や暴発の類なんだが、中々面白げな技を思いついたので、試し打ち出来る明日がちょっと楽しみになった。
2
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる