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四章
二百二話 初めてのダンジョンⅢ
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しかし、外壁を見たときから何となくそんな気がしてたが、これは……
「間違いない、この建物の特徴は天人の遺跡のものだ」
「そうなんです……?」
「ええ。以前天人の遺跡に入ったことがあるからね」
つまりはあれか。イダの言う通りここが天人の遺跡というのであれば、天人とやらはずいぶんと進んだ文明社会に生きていた古代種族って奴だな。
なんせこの遺跡、見た目がもうあからさまにSF的なんだもの。
ファンタジー物につきものの、超古代の遺失文明ってやつか。一度先端技術で発達した文明があって、世界大戦か何かが起きてそれらが滅び、そこから長い年月が過ぎたのが今俺たちの過ごす時代というやつ。
SFとファンタジーの地続き設定ってジャンル違いの筈なのに遥か昔から存在するよなぁ。
っと、ジャンル云々はともかくとして今のこの現状だ。
外観からではコンクリート壁の廃工場……いやオフィスか? まぁそんな程度の情報しか得られない。これだけじゃ未来の工場なのか、昭和時代の工業レベルなのか判断がつかないが、そこかしこに転がってるぶっ壊れたアイテムを見るに少し不思議な雰囲気なのできっと未来技術だ。
……あれ、そうなるとこの世界観にSFみたいな装備も存在する可能性もあるのか?
もしSFのビームサーベルみたいな武器があるとしたら……
「……やっべ、ちょっと欲しいなソレ」
「うん? 何か言ったかい?」
「いや、何でもないっす」
確か手で持てる範囲であれば一つだけ持ち出していいって契約だった筈だ。これはちょっと楽しみが増えたな。
槍やナイフじゃなければ良いが……ってそもそも在るのかどうかも分からないし期待しすぎか。
しっかし、この現代建築っぽい遺跡の見た目と雑魚モンスターの居ないこの状況も相まって、RPGっていうよりもホラーゲームっぽいんだよな……
魔物の姿もなんかバイオな研究で生まれたキメラっぽい感じだし余計なぁ。
電気……で動いていたかは知らないが、明かりは当然ながら死んでるし、ランタンの明かりで照らされるだけの廃墟ってのは見通しが悪すぎて同じ真っ暗な洞窟よりも遮蔽物が多くて注意が必要だな。
姿を隠すというだけでなく、攻撃を遮る障害物としてもかなり面倒そうだ。
どれくらい脆くなっているか分からないが、入り口に居た魔物であれば簡単にぶち抜けそうな気がする。壁越しに襲われたらかなり厄介だ。
「エリス、何か気配を感じるか?」
「うぅ~ん……何かは居そうだけど、気配が薄い」
という事は、近くに潜んでいない……?
いや、壁越しなら気配だって遮られる可能性もある。ここまで壁と小部屋の多い場所では油断は禁物か……
「悪いけど索敵に気を配ってくれ。こんな所で不意打ちを食らうのは流石に勘弁だ」
「わかった!」
言わなくても多分普段から周囲に気を配ってるんだろうけど、ここは念を入れて口に出しておいた。
口に出して言わなきゃ伝わってるかどうかも分からないものな。
「しっかし、随分と大きな遺跡だね。今まで見てきた中でも飛び切りだよこれは」
「そうなんスか?」
「あんた、ウチのリーダーみたいになってるわよ」
「おっと?」
そんなつもりは無かったんだが、そういえば会社だとこういう喋り方だったな。同僚とかと話してるみたいな雰囲気だとつい癖みたいに出ちまうのかもしれんな。
自覚が無いから何とも言えんが……
「それで、普通の遺跡ってどれくらいなんです?」
「そうねぇ、しっかりした形で残ってる遺跡っていうのがそもそも少ないんだけど、その中でも今まで見てきた中で一番大きいので小さな宿屋くらいかしら」
「民間居住区画といった感じで?」
「区画……? そうじゃなくて大体3部屋くらいの宿屋程のサイズよ?」
「……うん? 建物がいくつも連なっているわけではなく?」
「5度は遺跡探索やってきたけど、そんな遺跡群、私は見たことないわねぇ」
それは、一軒家サイズの建物が一つぽつんと建っていたって事か? それが普通?
どういう事だ? 街の遺跡が見つかっていないだけ? だが戸建ての家は何度も見つかっているという話だし、そんな事があり得るのか? 古代人は人口が極端に少ない……? ファンタジー物だと希少種族みたいなのも確かに居るが、そんな少数民族がこんな大規模な施設を建造できるものなのか?
それに、随分と劣化しているみたいだが、一体どれくらい埋まってたんだこの施設は。
もし長い時間をかけて地殻変動なんかで地中に埋まったとしたら、とんでもない時間が経過したという事になる。100年どころの話ではないだろう。
ただ地下に埋まっては居たが、最初から地下に作られた施設の可能性もあるか。
分からない事、不自然な事が多すぎる。一体どうなってるんだ?
そこまで設定が練られていないだけ? このリアリティを病的に追及されているALPHAでか? あり得ないだろ。
学者先生が施設の機械とかを調べれば、おおよその時間とかもわかるのかね?
「キョウ」
「ん? どうした?」
「おや、行き止まりかい?」
エリスの呼びかけに前を見てみると、そこにあるのは行き止まり。
いや、扉……か?
模様という訳ではない筈だ。自動式の扉……しかも病院やビルのような一般的なガラス扉ではなく、対災害用のシェルターか何かに使う防火扉のような頑丈なやつだ。
「こりゃ、そう簡単に空けれそうにないな……」
「おいおい、いくら行き止まりにぶち当たったからって壁をぶち抜くつもり? それはちょいと強引すぎるんじゃないかい?」
「え? いや……扉が……」
「扉? ……リコ」
「へいへい、ちょいと待ってな」
あれ、もしかしてこれ、扉じゃないのか?
でも、どう見ても……
「どうしたんだ? 何かトラブルが?」
判断に迷っていたら、後続のカイン達が追い付いてきてしまった。
「いや、コイツがこの行き止まりが壁に見えるってんで、リコが調べてるところ」
「ほう? 何故そう思ったんだ?」
「何でって言われても……まぁ、そう見えたからとしか言いようが無いんだが……」
どう答えるべきか。
冒険初心者の俺が、あまり知られていないような知識を知っているのもおかしいよな。
でも、下手に嘘をついても簡単にばれそうだしなぁ……特にこのヤクザ相手には。
「そういや魔物は初めてという話だったが、もしかして遺跡探索の経験があるのか?」
「いや、そういう訳じゃないんだが、似たようなものを見たことがあったからもしかしたら……と」
「ふむ……」
これで誤魔化せるか……?
「おい、確かにこいつは扉かもしれねぇ。継ぎ目の位置が不自然だ」
「マジかい?」
お、良いタイミング。丁度リコが扉を調べ終わったみたいだな。
つか、案の定扉だったか。こんな所に行き止まりがあるのがそもそも不自然ってのもあるが、SF映画の宇宙船の中とかでこんなデザインの扉見たことあったんだよなぁ。
「そうか、なら一度調査する必要があるな。……お前ら」
「はい」
カインの指示で、取り巻き達が扉を調べ始める。
まぁ、そうそう簡単にぶち抜けるような扉には見えないし、専門知識を持った奴に空けてもらうのが一番手っ取り早いか。
もしかしたら、現代的な知識で空ける方法が判るかもしれんが、あくまでファンタジー世界の中のSF要素だからなぁ。似ているからと言って俺の知識が通じるとは思わない方がいいか。
むしろ、迂闊に手を出して壊したりしたら目も当てられない。素人知識で手を出すのは最後の手段にしたい。
「やっ、キョウくん。調子はどう?」
最後尾に居たチェリーさんも追いついたのか。
「調子も何も、ろくに戦闘も無かったし、てくてく散歩してただけなんだよなぁ」
索敵をエリスに任せて楽してる感じがして……というか、実際任せっきりで良い訳の使用が無いところがちょっとアレだが。
「ろくに戦闘が無かったって、魔物倒したのは君なんじゃないっスか?」
「いや、倒したには倒したけど、大したことない奴一匹だけだべ?」
「俺が見たのは死体だけっスけど、十分大したことある一体だと思うっスけどね……」
イダもそんな事言ってたような……でも
「ハイナ村で戦った獣とかの方が手強かったと思うけど」
「あー、それってガーヴさんが言ってた襲撃されたって時の奴?」
「うん。というかチェリーさんにわかるやつで言えば、クフタリアに行く直前に狩った狒々の方がはるかに強かったぜ?」
「あぁ、あのボス猿……アレは確かにデカくて強かったわねぇ」
「おい?」
いやまぁ、あの時はチェリーさん的にも偶発的な遭遇戦だったとは思うけどさ?
パワーレベリングってのは本来引率の高レベルが余裕で殴り倒せるモンスターを使うのが普通だろ。どう考えても狩場チョイス間違ってたんだっていう自白だよな?
「一体君たちは駆け出しの身でどんな修羅場をくぐってるんスか……」
俺個人の感想で言えば、好き好んでくぐってる訳じゃないんだよなぁ。
「間違いない、この建物の特徴は天人の遺跡のものだ」
「そうなんです……?」
「ええ。以前天人の遺跡に入ったことがあるからね」
つまりはあれか。イダの言う通りここが天人の遺跡というのであれば、天人とやらはずいぶんと進んだ文明社会に生きていた古代種族って奴だな。
なんせこの遺跡、見た目がもうあからさまにSF的なんだもの。
ファンタジー物につきものの、超古代の遺失文明ってやつか。一度先端技術で発達した文明があって、世界大戦か何かが起きてそれらが滅び、そこから長い年月が過ぎたのが今俺たちの過ごす時代というやつ。
SFとファンタジーの地続き設定ってジャンル違いの筈なのに遥か昔から存在するよなぁ。
っと、ジャンル云々はともかくとして今のこの現状だ。
外観からではコンクリート壁の廃工場……いやオフィスか? まぁそんな程度の情報しか得られない。これだけじゃ未来の工場なのか、昭和時代の工業レベルなのか判断がつかないが、そこかしこに転がってるぶっ壊れたアイテムを見るに少し不思議な雰囲気なのできっと未来技術だ。
……あれ、そうなるとこの世界観にSFみたいな装備も存在する可能性もあるのか?
もしSFのビームサーベルみたいな武器があるとしたら……
「……やっべ、ちょっと欲しいなソレ」
「うん? 何か言ったかい?」
「いや、何でもないっす」
確か手で持てる範囲であれば一つだけ持ち出していいって契約だった筈だ。これはちょっと楽しみが増えたな。
槍やナイフじゃなければ良いが……ってそもそも在るのかどうかも分からないし期待しすぎか。
しっかし、この現代建築っぽい遺跡の見た目と雑魚モンスターの居ないこの状況も相まって、RPGっていうよりもホラーゲームっぽいんだよな……
魔物の姿もなんかバイオな研究で生まれたキメラっぽい感じだし余計なぁ。
電気……で動いていたかは知らないが、明かりは当然ながら死んでるし、ランタンの明かりで照らされるだけの廃墟ってのは見通しが悪すぎて同じ真っ暗な洞窟よりも遮蔽物が多くて注意が必要だな。
姿を隠すというだけでなく、攻撃を遮る障害物としてもかなり面倒そうだ。
どれくらい脆くなっているか分からないが、入り口に居た魔物であれば簡単にぶち抜けそうな気がする。壁越しに襲われたらかなり厄介だ。
「エリス、何か気配を感じるか?」
「うぅ~ん……何かは居そうだけど、気配が薄い」
という事は、近くに潜んでいない……?
いや、壁越しなら気配だって遮られる可能性もある。ここまで壁と小部屋の多い場所では油断は禁物か……
「悪いけど索敵に気を配ってくれ。こんな所で不意打ちを食らうのは流石に勘弁だ」
「わかった!」
言わなくても多分普段から周囲に気を配ってるんだろうけど、ここは念を入れて口に出しておいた。
口に出して言わなきゃ伝わってるかどうかも分からないものな。
「しっかし、随分と大きな遺跡だね。今まで見てきた中でも飛び切りだよこれは」
「そうなんスか?」
「あんた、ウチのリーダーみたいになってるわよ」
「おっと?」
そんなつもりは無かったんだが、そういえば会社だとこういう喋り方だったな。同僚とかと話してるみたいな雰囲気だとつい癖みたいに出ちまうのかもしれんな。
自覚が無いから何とも言えんが……
「それで、普通の遺跡ってどれくらいなんです?」
「そうねぇ、しっかりした形で残ってる遺跡っていうのがそもそも少ないんだけど、その中でも今まで見てきた中で一番大きいので小さな宿屋くらいかしら」
「民間居住区画といった感じで?」
「区画……? そうじゃなくて大体3部屋くらいの宿屋程のサイズよ?」
「……うん? 建物がいくつも連なっているわけではなく?」
「5度は遺跡探索やってきたけど、そんな遺跡群、私は見たことないわねぇ」
それは、一軒家サイズの建物が一つぽつんと建っていたって事か? それが普通?
どういう事だ? 街の遺跡が見つかっていないだけ? だが戸建ての家は何度も見つかっているという話だし、そんな事があり得るのか? 古代人は人口が極端に少ない……? ファンタジー物だと希少種族みたいなのも確かに居るが、そんな少数民族がこんな大規模な施設を建造できるものなのか?
それに、随分と劣化しているみたいだが、一体どれくらい埋まってたんだこの施設は。
もし長い時間をかけて地殻変動なんかで地中に埋まったとしたら、とんでもない時間が経過したという事になる。100年どころの話ではないだろう。
ただ地下に埋まっては居たが、最初から地下に作られた施設の可能性もあるか。
分からない事、不自然な事が多すぎる。一体どうなってるんだ?
そこまで設定が練られていないだけ? このリアリティを病的に追及されているALPHAでか? あり得ないだろ。
学者先生が施設の機械とかを調べれば、おおよその時間とかもわかるのかね?
「キョウ」
「ん? どうした?」
「おや、行き止まりかい?」
エリスの呼びかけに前を見てみると、そこにあるのは行き止まり。
いや、扉……か?
模様という訳ではない筈だ。自動式の扉……しかも病院やビルのような一般的なガラス扉ではなく、対災害用のシェルターか何かに使う防火扉のような頑丈なやつだ。
「こりゃ、そう簡単に空けれそうにないな……」
「おいおい、いくら行き止まりにぶち当たったからって壁をぶち抜くつもり? それはちょいと強引すぎるんじゃないかい?」
「え? いや……扉が……」
「扉? ……リコ」
「へいへい、ちょいと待ってな」
あれ、もしかしてこれ、扉じゃないのか?
でも、どう見ても……
「どうしたんだ? 何かトラブルが?」
判断に迷っていたら、後続のカイン達が追い付いてきてしまった。
「いや、コイツがこの行き止まりが壁に見えるってんで、リコが調べてるところ」
「ほう? 何故そう思ったんだ?」
「何でって言われても……まぁ、そう見えたからとしか言いようが無いんだが……」
どう答えるべきか。
冒険初心者の俺が、あまり知られていないような知識を知っているのもおかしいよな。
でも、下手に嘘をついても簡単にばれそうだしなぁ……特にこのヤクザ相手には。
「そういや魔物は初めてという話だったが、もしかして遺跡探索の経験があるのか?」
「いや、そういう訳じゃないんだが、似たようなものを見たことがあったからもしかしたら……と」
「ふむ……」
これで誤魔化せるか……?
「おい、確かにこいつは扉かもしれねぇ。継ぎ目の位置が不自然だ」
「マジかい?」
お、良いタイミング。丁度リコが扉を調べ終わったみたいだな。
つか、案の定扉だったか。こんな所に行き止まりがあるのがそもそも不自然ってのもあるが、SF映画の宇宙船の中とかでこんなデザインの扉見たことあったんだよなぁ。
「そうか、なら一度調査する必要があるな。……お前ら」
「はい」
カインの指示で、取り巻き達が扉を調べ始める。
まぁ、そうそう簡単にぶち抜けるような扉には見えないし、専門知識を持った奴に空けてもらうのが一番手っ取り早いか。
もしかしたら、現代的な知識で空ける方法が判るかもしれんが、あくまでファンタジー世界の中のSF要素だからなぁ。似ているからと言って俺の知識が通じるとは思わない方がいいか。
むしろ、迂闊に手を出して壊したりしたら目も当てられない。素人知識で手を出すのは最後の手段にしたい。
「やっ、キョウくん。調子はどう?」
最後尾に居たチェリーさんも追いついたのか。
「調子も何も、ろくに戦闘も無かったし、てくてく散歩してただけなんだよなぁ」
索敵をエリスに任せて楽してる感じがして……というか、実際任せっきりで良い訳の使用が無いところがちょっとアレだが。
「ろくに戦闘が無かったって、魔物倒したのは君なんじゃないっスか?」
「いや、倒したには倒したけど、大したことない奴一匹だけだべ?」
「俺が見たのは死体だけっスけど、十分大したことある一体だと思うっスけどね……」
イダもそんな事言ってたような……でも
「ハイナ村で戦った獣とかの方が手強かったと思うけど」
「あー、それってガーヴさんが言ってた襲撃されたって時の奴?」
「うん。というかチェリーさんにわかるやつで言えば、クフタリアに行く直前に狩った狒々の方がはるかに強かったぜ?」
「あぁ、あのボス猿……アレは確かにデカくて強かったわねぇ」
「おい?」
いやまぁ、あの時はチェリーさん的にも偶発的な遭遇戦だったとは思うけどさ?
パワーレベリングってのは本来引率の高レベルが余裕で殴り倒せるモンスターを使うのが普通だろ。どう考えても狩場チョイス間違ってたんだっていう自白だよな?
「一体君たちは駆け出しの身でどんな修羅場をくぐってるんスか……」
俺個人の感想で言えば、好き好んでくぐってる訳じゃないんだよなぁ。
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