艶めく竜が愛すは…

イセヤ レキ

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本編

艶めく竜が愛すは護衛猫人・1

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今日も淫猥な水音が、華美に飾られた客間に響く。


ぐちゅん、ぱちゅん、ぐっちゅぐっちゅ‥‥
「うにゃ、そこ、すきにゃの、もっと、してぇっ」
「はい、いくらでも、突いて差し上げますね」

ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ
「にゃうん、にゃん、きもち、いいにゃ‥‥!!」
「クロシュの膣内ナカも、熱くて、私の形にぴったりで、絞り取る様に動いて、とても気持ち良いですよ」


ベッドで激しく睦み合うのは、美しい竜人と、猫耳尻尾付きの黒猫人だ。

じゅぶじゅぶと竜人の楔が猫の蜜壺に出這入りする度、猫は気持ち良さそうに啼いている。

猫人の顔は赤く、普段キツめの猫目はトロンとして、表情は蕩けそうだ。
まるで、夢見心地であるかの様に、その焦点は定まらない。


彼女は、竜人の精液が媚薬である事を知らない。
そして、その媚薬が強制的に自分を、発情状態にしている事も‥‥




✰✰✰




(‥‥面倒な事になったなぁ‥‥)

朝、起きて最近毎日思うのがこれだ。
クロシュは頭を抱えていた。
シルフィと交じわうと、なぜあんなに乱れてしまうのか、全くわからない。
記憶がしっかり残っているのが、むしろ辛い。
どうせ狂うなら、そのまま記憶も彼方にやりたかった。


‥‥やはり、最初の夜が、拙かったのか。


シルフィから夜這いをうけたのは、今から2ヶ月は前の事。
あの日から、なし崩し的に毎晩躰を重ねる羽目になっている。
どうやらクロシュの躰が気に入ったらしく、その後も毎日毎日、シルフィから求められる様になってしまったのだ。
勿論最初は断っていたが、文化の違いを持ち出されると、悪く思って結局セックスをしてしまう。


‥‥どうしたものか。


これが普通の相手なら、そこまで貞操観念がある訳でもないし、きっと「セフレが出来た」くらいで終わっていたかもしれない。
だが、相手は竜人。
その血は万能薬とされ、この世界で最も稀有な種族にあたるとされているのだ。
クロシュが生まれたハスラー王国でも、シルフィは国賓だった。


それが何故か‥‥恐らく、騎士であるクロシュがシルフィを暴漢から守ったという縁がもとで、宰相と騎士隊長から、世話係に任命されてしまったのだ。


竜人は、命の恩人には体で礼を返す文化があるらしい。
夜這いを受けなければ、シルフィが仲間内から誹られると聞いては、断る訳にはいかなかった。


シルフィの扱い次第では、最悪自分の首が胴体と離れる事になるかもしれないし、よくても職を失うかもしれない事もあり、下手に断れないのが現状だった。





☆☆☆





(何だか、長い付き合いになりそうだなぁ‥‥)
クロシュが初めてシルフィと体を繋げた翌日、ニコニコと満面の笑みを浮かべて仕立ての良い服を羽織るシルフィを見て、フとそんな予感がした。
シルフィは後2、3日もすれば出立すると騎士団長から聞いているから、そんな筈はないのだが‥‥


「‥‥私が護衛として、シルフィに同行を?」


クロシュがシルフィの世話係を王命で受けてから三日後、例によって宰相と騎士団長に再度呼ばれ命を受けた。


「そうだ。シルフイージス殿はお前の腕を見込んでご本人直々、国王に嘆願された。勿論、我が国として断る余地はない。ハスラー王国の為に存分に奉仕せよ」
シルフィ、とクロシュが呼んだ事を咎めるかの様にジロリと威圧的に睨みながら「シルフイージス殿」と強調して宰相が言う。


「任期はどれ程でしょうか?」
「シルフイージス殿が任を解かれるまでだ」
「‥‥それは、実質私の雇い主はシルフイージス様になるという事でしょうか?」
「いや、お前の籍は勿論騎士団に属したままだ。‥‥そうだな、任期のない出向みたいなものだな」

ふぅ、と漏れそうになるため息を必死で止めて敬礼した。

「畏まりました、精一杯勤めさせて頂きます」

ミスっても首と胴体だけは繋げてくれ、と願いを込めながら。




☆☆☆




クロシュがシルフィの旅での護衛依頼を受けて、シルフィはハスラー王国を直ぐに出立したいと言い出した。


「面倒に巻き込んですみません、クロシュ。しかし貴方がいて下さるなら安心です」


淑女の様にたおやかに、シルフィはクロシュに向かって頭を下げた。


慌ててそれを手で制止しながらクロシュは聞いた。
「シルフィ、任期はないと聞いたのだが‥‥実際、旅はどれ位かかる予定なんだ?」
「そうですね‥‥旅は・・一年程でしょうか」
シルフィはニコリと笑って答える。
思っていたよりも、早く任務が終わりそうで安心した。

宰相から話を聞いた時には、二度とここに戻れない‥‥そんな気分にさせられたからだ。

「女性に長旅はお辛いでしょう?野宿などはせずに、ゆっくり廻りたいと思いますので。‥‥あぁ、こちらでクロシュの旅装は全て用意させますが、何か御入り用の物はありますか?」
「‥‥いや、特にない。ただ、1日だけ時間を頂けたら嬉しい。今までお世話になった人達に、一言挨拶だけしたいんだ」
「勿論です、クロシュ。‥‥私もハスラー王国の見学がてら、同行させて頂いても?」
「シルフィが?私は構わないが‥‥下町のレストランや鍛冶屋に行くだけだぞ?」
シルフィが行く様なところではない、と言外に匂わせたがシルフィが同行を取り止める事はなかった。




☆☆☆




「あれまあクロシュ!!こんな美形を連れてこんな時間にどうしたんだい?」
馴染みのレストラン兼居酒屋に入ると、人間であるおかみさんが声を掛けてきた。
午後の3時。
甘味を扱わない為、店は開いているが客はおらず閑散としている。
クロシュはホッとしておかみさんと話し出した。
「ああ、こちらはシルフイージス殿。ハスラー滞在中私がお世話をさせて頂くのだが、今は少し私の挨拶まわりにお付き合い頂いている」
シルフィはクロシュの紹介を受けて優雅な動作でおかみさんに頭を下げたので、おかみさんはあわあわしながらペコリとお辞儀した。
しかし、話は聞いていた様だ。
「挨拶まわり?」
「急な話だが、護衛任務で一年程ハスラー王国を離れる事になりそうなんだ」
「えぇっ!?それは本当に急な話だねぇ‥‥寂しくなるよ」
「私も、おかみさんの卵料理とビーズリー酒をしばらく飲み食い出来なくなるかと思うと辛い」
「体に気を付けて、元気に行っておいでね。戻ってきたら、是非また顔を見せとくれ」
「はい。それは勿論」


クロシュはおかみさんと軽く抱擁を交わして、店を後にする。

後に、厳つい熊人が国王の文書をちらつかせながら、卵料理のレシピと、ビーズリー酒を大量に買い取り、更に、とある国との継続的な輸出の話をしに来るなど、二人は思いもしなかった。




☆☆☆




同じ様なやりとりを鍛冶屋で済ませ、クロシュは部屋に戻り、旅支度をまとめた。
もともと騎士団の部屋を借りて生活をしている為、持ち出す荷物は比較的少ない。
旅の間はシルフィが衣食住の面倒を見てくれるとの事なので、持ち前の服何着かと護衛用の装備を鞄に突っ込むだけだった。



シルフィは飽きもせずに、ニコニコしたままクロシュの周りをウロチョロしている。
何が楽しくて、人の荷造りを見学しているのかクロシュにはさっぱり理解出来なかった。


そして、あっさりとハスラー王国出立の日となった。
長旅開始の前日までも散々シルフィに体を夜中まで攻め立てられ、寝不足で馬に股がる羽目になり、ついシルフィを見る目は恨めしいものとなったが、シルフィ自身はどこまでも爽やかに清々しく、クロシュは首を傾げた。




☆☆☆




シルフィと、シルフィの側近である熊人ガッシュ。
それと何人かの従者という非常に身軽な形で旅が始まり、クロシュはやや拍子抜けした。
何処へ行っても国賓扱いされる竜人なのだから、もっと物々しく仰々しく旅をするのかと思ったからだ。

しかし良く考えると、王城の騎士だったクロシュですら、シルフィの来賓を知らなかったのだ。
そんなに仰々しい訳がない。


何日か同行すれば、竜人としてはその質素な印象すら受ける旅装に納得がいった。


何処でも国賓扱いだから、必要以上の食糧や衣類は必要がない。
どんな街でも、一番ランクの高い宿屋に泊まるのだから、全てがフルセットでついてくる。

また、安全面も考慮されて、旅先では逆に御触れを出していない。
しかし、どれだけ急な来訪であっても、行く先々で最高のサービスを受ける。


ここ2ヶ月、普通に…そう、全く傲る様子もなく、友人を通り越して恋人や家族の様にシルフィが接してくるからつい忘れそうになるが、シルフィは竜人であり、本来ならクロシュと人生が交わることのない、稀有な人なのだ。



(‥‥そんな人と、長い付き合いになるわけがないか)
多少情を交わしたとはいえ、この一年の長旅が終われば縁も切れる。
クロシュは自らの直感に対して流石にそれはないだろう、と戒めた。 




☆☆☆




「シルフイージス様は、どちらに向かわれているのですか?」
クロシュは旅に護衛としてついてから初めて、シルフィの旅の目的を聞いた。
隣で馬を横並びに歩ませるシルフィに聞こえなかった筈はないのに、彼は答えない。
「シルフイージス様?」
「‥‥シルフィと呼んで下さい、クロシュ」
「元々、シルフイージスには婚約者の竜人がいてな。その方と面会する為の旅だったんだ」
「ガッシュ、余計な事を言うな」
シルフィがギロリとガッシュを睨んだ。


旅に同行してからわかった事だが、彼の丁寧な物言いは素ではなさそうだ。
シルフィとその従者であるガッシュとのやり取りを見た後に、シルフィと自分が話すと他人行儀の様に感じて少し寂しく‥‥いや、もとから他人で単なる護衛なのだから、気にする事ではないとクロシュは思い直す。

旅の始めから護衛役だった熊人のガッシュからすれば、クロシュは邪魔な存在だろうに、友好的に接してくれるのはとても有り難い。

しかし‥‥そうか、婚約者。シルフィには婚約者がいたのか。

「珍しいな、クロシュ殿がそんな事を聞いてくるのは」
「ああ‥‥この先には、別名《蛇国》と呼ばれる程蛇人が多い国があるから、他の道を使えないかと思ったんだ」

竜人と蛇人は、仲が悪いと聞く。
仲が悪いというより、蛇人が一方的に竜人を嫌っているというべきか。


「そうだな。なあ、シルフイージス。クロシュ殿もこう言っている事だし、多少時間はかかるが海路を使わないか?」
ガッシュの提案に、シルフィは頷いた。
「クロシュがそう言うのであれば。クロシュに何かあったら大変ですからね、危険は避けましょう」

‥‥ん?私は護衛なのだが??

言いかけた台詞を必死でとどめた。
危ない危ない。
余計な事を言って不敬と取られるのは得策ではない。
シルフィなら大丈夫だろうが、ガッシュや周りの従者がどう捉えるかは別だ。




☆☆☆




「今日はしたくない」
クロシュは、私の目を真っ直ぐに見て言い放った。

私のつがいは、凛としたこんな態度もとても似合う。
つい、見惚れてしまいそうだが‥‥

「何故ですか?」
「シルフィには、婚約者がいるのだろう?」
「前は、です」
「‥‥?」
「元、婚約者であって、今は違いますよ?」

クロシュと出会ってから即、婚約は解消した。
因みに元婚約者からは、「おめでとう!」と番に会えた奇跡を共に喜ぶ内容の手紙へんじを受け取っている。

「‥‥そう、なのか?」
「ええ。‥‥少しは、妬いてくれましたか?」
「‥‥」

顔を赤くして、プイッと顔を背ける。
そんな子供っぽい仕草も、愛らしい。

ちゅ、とこちらに向いている左の黒猫耳にキスを落とし。
優しく猫耳の付け根を撫でながら、ぬちゅ、と耳の中に舌を這わせた。

「‥‥っっ!!」

きゅ、と目を瞑ったクロシュが全身をぶるりと震わせる。
耳と尻尾の付け根は、クロシュが敏感に感じる箇所だ。

感じてくれるクロシュが可愛くて、ニコリと微笑んでゆっくりとベッドに押し倒す。
クロシュは抵抗するかの様に、うつ伏せになった。

私は、うつ伏せたクロシュの寝間着の襟首をそのままそっと下げて、口付けた。
クロシュには見えない、首の後ろと背中の間。
そこには、「私の番」である証拠の3枚の鱗が、現れている。

綺麗な小麦色の肌に、私と同じ白の鱗。
後少し。
後少しで、この鱗の印も完成する。

クロシュつがいの全てが愛しくて、背中じゅうにキスの雨を降らし、丹念に舌を這わせた。

「‥‥んっ」

クロシュが微かに身動ぎをした瞬間に、今度は下半身へと手を滑らせる。

「っあ!」
くちゅ

「濡れていますね」
「言うな」

くちゅ、くちゅ‥‥

指で軽く泉の表面だけをなぞれば、クロシュの愛らしいジュースは直ぐ様溢れ、まとわりついた。

今日は何となく。
優しく抱くより、私を刻み込みたい気分だった。
恐らく、久しぶりに「したくない」と直球の断り文句を言われたからだろう。


「クロシュ。腰をあげて」
「‥‥」

私のもたらす快感は麻薬の様なもので。
クロシュは無言で抵抗はしたが、身体は素直に言うことを聞いた。

尻尾の付け根をきゅ、と痛くない程に、しかししっかりと握りしめた瞬間に。
ずらした下履きの隙間から、私の分身をクロシュに突き入れた。


「ーーーっ!!!」
クロシュの美しい背中が仰け反り、私は腰をしっかり支えて後ろから攻め立てる。


じゅぶ じゅぶ じゅぶ
「あ、あ、あんっ!あ!」

潤いきった陰裂から響く愛液の音色も、快楽を滲ませたクロシュの嬌声も、私の耳に心地よく届く。

じゅぶん!じゅぶん!じゅぶん!
「にゃ、ん、いぃ、シルフィぃ‥‥」

クロシュの声には発情の傾向が見え隠れし出す。
どうやら私のペニスから精液びやくが染みだし、直ぐ様クロシュの膣に吸収された様だ。
何て、貪欲なおまんこなんだろう。
そんなところも、好ましい。

「おや、今日は、したくなかったのでは?」
「にゃんっ!う、嘘っ、だにゃ、シルフィ、欲しいにゃっ」
ずっちゅ ずっちゅ ずっちゅ
「嘘をつくなんて‥‥いけないコですね」
「ごめにゃ、だって、シルフィ、婚約者、いると思ってっ!!」
ずっちゅ ずっちゅ ずっちゅ
「そうでしたね。では、可愛くおねだりして下さい?上手に出来たら、貴女の欲しいものを差し上げますね」
「えぇ‥‥は、い‥‥んと、おねがい、しま、すにゃ」
ずっちゅ ずっちゅ ピタッ
「何を?」
「にゃ!?やめにゃ、いでぇ‥‥」
「やめませんよ。とめただけです」
「うにゃぁ‥‥ん、シルフィの、おちんちんで、突いて欲しいの」
ぐちゅん!! 
「あぁっ!そう、今、みたいに、沢山、してにゃあ‥‥」
「クロシュの、おまんこかき混ぜてと言いなさい」
「クロシュの、おまんこ、かき混ぜて‥‥下さいにゃあん」
「はぁ‥‥凛とした貴女も、発情した貴女も、本当にたまりません‥‥」

言葉攻めは好きだが、私もこれ以上は待てない。
クロシュの膣内ナカが先程からうねうねとうねり、私の精液を搾り取ろうとしているからだ。

「よく、言えましたね‥‥」

両耳の付け根を舐め上げてから、本格的に腰を振る。

「にゃ、にゃ、きもち、いぃ‥‥!!」
「ここですか?あぁ、良い締め付けですね」

ぐっちゃ ぐっちゃ ぐっちゃ
パン!パン!パン!パン!

「あ、あ、にゃ、にゃーーーー!!!」
「っく‥‥‥!!」

先にイッたクロシュに凄い勢いで絞られ、私はクロシュの最奥に白濁を解き放った。




☆☆☆




今夜は3回の熱をクロシュの膣内ナカに注ぎ込み、まぁまぁ満足した私はぐったりしたクロシュの背筋を指先でなぞっていた。

そのままクロシュの背部にある鱗に口付ける。
私の鱗に酷似し、まだ白銀の輝きまではいかないものの、輝きはかなり増した。
後、一週間前後で完成、といったところか。

最短記録では1ヶ月以内というから、2ヶ月以上かかっている私は不甲斐ないのかもしれない。
しかし、クロシュの体力を考えるとこれ以上は無理させられない。


「‥‥あれ?シルフィって、そんな鱗の色だったか??」
うつ伏せにぐったりしていたクロシュが、その美しい顏をつい、とあげて私を真っ直ぐに見ていた。
正確には、私の額にある鱗を。
「初めて会った時、ピンクだった気がするんだが‥‥」
「そうですね。あの時は、ピンクでしたね。しかし私は元々は白銀なのです」
クロシュは特に話を掘り下げる事もなく、「なんだ、白銀だったなら間違えなかったかもしれないのに‥‥」とブツブツ呟いている。

明日からは、海の上だ。
クロシュの体力を考えて、3回にとどめておいたが‥‥
「クロシュ、思ったより元気そうですね?もう1回、しましょうか?」

私はありったけの甘さを含めて優しく微笑んだが、クロシュはピキ、と固まった。




☆☆☆




目的地に向けて、海路を選択した事を個人的には酷く後悔していた。
いや、シルフィやといぬしの安全には変えられないが。

野営生活もした事があるし、一年位の旅なら大丈夫、とたかをくくっていたが、意外と疲労が溜まっていたのか、ここ最近特にダルさが続いていた。

最初は夜毎の営みのせいで体調不良なのかと思っていたが、シルフィと交わった後は、むしろ調子が良い。
首を傾げながらも、しかしまさか護衛として付いてきているのに不調を訴える訳にもいかず、何も言わなかったが‥‥


「クロシュ、大分顔色が悪いですが‥‥大丈夫ですか?」
「は、い。大丈夫、です」
「おい、休んでおけよ。俺がいるからさ。つか、どっからどー見ても船酔いしてんだろ?」


面目無い。
その通りだ。
気持ち悪すぎる。


普段、私が傍にいない事を極端に嫌うシルフィも、今回はガッシュを支持した。
「クロシュ、無理せずに休んで下さい。私の部屋の鍵を‥‥」
「それは、ご遠慮致します。しかし‥‥すみません、少し自室で休ませて頂いても、よろしいでしょうか?」


シルフィの部屋は当然最高級だ。
風呂でも何でも、バーみたいなものまで備え付けられている。
私には2等級下のランクの部屋が与えられたが、それでも十分、騎士の宿舎よりよっぽど寝心地の良さそうなベッドが設えてあった。
もっとも、夜はシルフィの部屋に拉致られるので、私がその与えられた部屋のベッドで寝たことはない。


シルフィはこれから船長の接待を受けるのだが、それをやめると言い出したので、私はガッシュさんに全てを任せて逃げる様に一人その部屋に向かった。




☆☆☆




仮眠を少しとれば、幾分気分は良くなっていた。
時計を見れば、一時間程は寝ていたらしい。

少し汗をかいたのか、身体中がベタベタする。
さっさとシャワーを浴びて、シルフィの元へ戻らねば‥‥と思ったところで思い出した。
この部屋には、風呂は勿論、シャワーもついていない。

どうする?
シャワーは諦めて、このままシルフィの元へ‥‥いや、接待を受けている最中に汗臭いまま護衛に戻るのは失礼にあたるかもしれない。

いつも通り、さっさと済ませれば後15分もかかるまい。
私は準備を早業で済ませ、共同風呂に向かった。




☆☆☆




共同風呂は、思っていたより広かった。
湯気がもうもうと立ち上がり、気持ち良さそうだ。

湯船には用はないのでさっさとシャワーを浴びようとキョロキョロすれば、空きだらけのシャワーは簡単に使用する事が出来た。


ザー、と湯をかぶっていると、何やら近くから女性の声が聞こえて思わず振り向く。

すると、必要以上の近さでこちらを見ている蛇人の女性達と目があった。

‥‥?


猫人と蛇人は、とりたてて仲が悪い訳ではない。
しかし、何故あの女性達はこちらを睨み付けていたのだろう?
私が竜人シルフィの護衛だと知っているからか?

まぁ、さっさと出れば良いか。


私はかなりのスピードで身体を洗い、共同風呂を後にした。
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