度を越えたシスコン共は花嫁をチェンジする

イセヤ レキ

文字の大きさ
69 / 99

-69-

しおりを挟む
「キャロライン、何処に行ってたんだ!心配したよ?仕事場に行っても、外に出たきり帰って来てないって聞いて……!!」

私が住むには質素で狭く、そして地味で不釣り合いな部屋には呼んでもいない背の低い男がいた。

「私がどこにいようが自由でしょう?それより、勝手に部屋に入らないで下さる?」

私は先程、傷んでいた髪の毛をこの田舎にある唯一の美容院サロンで艶を出し、綺麗に編み上げさせ、爪も磨かせた。
服は、こんなところで買うよりも伯爵家に奉公していた時に持ち出した服の方がまだマシだから、着替える為に帰宅したのだ。

キャロラインと呼ばれた女は、先程ユリアナが着ていたドレススカートを思い出して、歯軋りする。

あれは、私の様な女が着てこそ、本当にその仕立ての良さがわかると言うものだ。
あんな、胸も小さければ、女としての魅力を全く感じられない小娘が着ても、宝の持ち腐れとしか言いようがない。
私がサージス様と添い遂げる事になったら、あのドレススカートは私のものに……いえ、小娘のお下がりなんて私には似合わない。新しく買って頂けば良いのだわ。


━━とにかく、今はこの背の低い男が邪魔だ。
さっさと出ていって欲しい。
着替えが出来ないではないか。


「そりゃ、この家はキャロラインに貸したけど……元々僕の実家だし、帰ってきても良いだろう?」
「……」

五月蝿いわね。
人に貸した時点で、あんたの家じゃないって事がわからないのかしら?
明日にでも、鍵を替えてやる。

「ああ、そんな事より……大変だ、今この町にサージス様がいらっしゃっているんだ。キャロライン、君が見つかれば、どんな目に合うかわからない。今すぐ隣町に行こう。僕が馬車を借りてくるから」
「は?何を馬鹿な事言ってるの?サージス様は、私を探しに来て下さったのでしょう?」
男は驚愕したが、それは女の神経を逆撫でさせた。

「あんたの話を鵜呑みにした私が馬鹿だったのよ!サージス様が私を罰するなんて……こんな田舎でこの私が畑仕事だなんて……本当はあんたが私とサージス様の仲を引き裂いただけでしょう!?」
「キャロライン、君こそ何を言っているんだ!!あんな事をしておいて、まだあの家で働けるとでも思っていたのか?」
「当たり前でしょう!結果として、あの小娘はピンピンしているのだし、サージス様はこの私が好きなのよ?私がいなくなってからも、サージス様の色恋の噂なんて耳に入ってこないじゃないの!!」

「……サージス様は、ご結婚されたよ」

今度は女が驚愕した。

「は!?……そ、そんなの嘘よ!!誰とよ!?」
「こちらの領地を治めるガルダー伯爵の長女、サラ様とだよ」
「……あの、幼なじみの女……?まさか、嘘よ。サージス様は、あの女に全くご興味なかったわ」
「そうかもしれない。けど、ご結婚されたのは事実だよ」
「そんな……!!では、ここへは何しに……!?」
「わからない。目的地は教わるけど、目的は聞いたことがないから」
「使えないわねぇっ!!……いいわよ、なら私が直接聞くわ。どうせ、政略結婚でしょう!?私が見つかれば、離婚なさるわ!」

顔色を真っ青にさせた男を無理矢理部屋から追い出して、女は急いで着替えた。

ああもう、余計な時間をとられたわ!!
早く急いで戻らないと……!
サージス様が、私を探しに移動されているかもしれない!!

女は、取るものも取らずに部屋の外に出た。
ドアの前には男がいたが、悲鳴をあげながら走り去れば、追ってくる事はなかった。



☆☆☆



キャロラインは急いで先程サージスを見かけた菓子屋に向かったが、既にサージスの姿はなかった。

ああもう、何処にいらっしゃるのかしら……!!

時間は夕刻。
店の前でキョロキョロと見回したが、普段の10倍多い観光客は、皆同じ方向へと歩いて行く。

……そうだ、今日は花火大会だ。

とすれば、サージス様が私を探しにきたのでなければ、花火目的で来た可能性が高い。
今日はきっと、宿屋に泊まるだろう。

この田舎で一番高い宿屋は……

キャロラインは、顔を正面に向けた。
そこには両開きの大きなドアが開放されており、中の様子がうかがえる。
キャロラインは、ドアからそろりと中を覗きこんだ。
直ぐ正面にはフロントがあり、長いカウンターが備えられている。
左側にはトイレ。
右側には広々したロビーがあった。


ロビーを確認したキャロラインは、瞳を輝かせた。


ああ、サージス様……!!


直ぐ様駆け寄ろうとしたが、サージスは一人ではなかった。
ロビーの円卓を6人で囲んでいる。

サージスはキャロラインに対して真後ろを向いて座っており、左隣にユリアナ、右隣にカダルが座っている。カダルの反対隣にいるのはサラだが、ユリアナの隣は見たことのない少女で、少女とサラの間に座るのは一際ひときわ体格の良い、がっしりとした野性味溢れる男だった。


━━やはり、体裁を保つ為の偽装結婚ね。夫婦だと言うのに、隣にすら座らないだなんて。


キャロラインは、ニヤリと嗤う。
知らない面子が二人いて一瞬躊躇したが、直ぐに気を取り直した。
この機会を逃せば、次またいつサージスと会えるのかわかったものではないからだ。
コホン、と咳払いし、走って少し乱れた髪を細部まで整えた。荒い呼吸を落ち着かせて、美しい所作でサージスに近寄る。


「━━サージス様、ご無沙汰しております」


美しいと持て囃された微笑をそのかんばせに貼り付け、小鳥の様と讃えられた声に最大限の媚をのせて、キャロラインは愛しい人との再会を果たした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...