[R-18] おれは狼、ぼくは小狼

山葉らわん

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第一章 海軍の男

5 バットは鮮やかな薄紅色

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「今井先輩、来ないなあ」
 康太が呟いた。
「そのうち来るんじゃねえの?」
 健司は素っ気なくこう云うと、頭のうしろで両手を組んで目を閉じた。
 康太は湯のなかで膝を抱えた。そして浴室の戸口を拝むように見つめた。
 ――今日こそ、今井先輩の背中を流して自己アピールしなくっちゃ……。
 康太は焦っていた。これから同じ男子寮で過ごすことになる先輩たちと顔をあわせるのは、夕食から消灯までのほんの数時間に限られていた。消灯の時間になると監視役を担当する四年の寮長と日替わりで寮長を補佐する三年の先輩ふたりを残して、あとは男子寮へ帰ってゆく。今井のように多忙のため一度も来ない先輩もいたし、夕食後に男子寮にそそくさと戻ってしまう先輩もいた。全員揃うのは、最終日の今日だけだった。
 ――それにしても、健司は余裕だな。
 康太は健司に目を移した。健司は目を閉じ、口を半開きにしている。完全にリラックスし、無防備な状態だ。露わになったその腋窩には、細い毛がまばらに生えていた。
 康太は左腕を上げ、自分の腋窩を見た。
 ――皆んなから揶揄われたもんな、おまえには似合わないって。
 康太は、健司の胸から腹へと目線を下ろしていった。筋肉の隆起以外に飾りのない裸かだ。目線は自然とさらに下へ進んだ。
「康太、そんなに気になるなら触らしてやろうか?」
 健司が云った。その突然の声に康太は慌てて、
「いや、そんなんじゃなくて、ただ……」
「触られたからって減るもんじゃねえし」健司は康太の左手を取って導いた。「一緒にAV観て、ヌイたことだってあるじゃん」
 幼馴染のものはすでに康太の手のなかにあった。康太は周囲を見まわして誰も見ていないのを確認した。それから包皮の剥けあがった部分を、親指の腹でゆっくりと撫でまわした。
「こうしても本当に痛くないの?」
「ちっとも痛かねえよ。こすっても平気さ」
 康太はゆっくりとこすってみた。健司は涼しい顔をしている。それならと剥き出しになったその部分を握って手を上下に動かしてみたが、健司はまったく痛がる様子もなく平然としていた。康太はムキになった。どうにかして痛がらせてやろうと、硬くなった健司のものを右手に持ちかえ、目のまえの一点に全神経を集中させて手の動きを速め、何度もこすった。
「や、やっべえ。こっ、康太、出すぞ」
 健司の掠れ声に康太は、はっと、我にかえった。
 健司が、うっ、と呻いた。
 剥き出しの先端から白濁液が勢いよく溢れ出した。
 それを見て、康太は慌てて手を放した。
 ふぅ、と健司が深呼吸をした。
 ふたりはすぐ周囲を見回したが、誰にも気づかれていないようだった。
「健司、ごめんな」
「つぎはおまえの番な。ちゃんと剥けるようになったか、みてやるよ」
 包皮が健司の手で徐々に剥かれていった。先端の丸みが半分ほど顔を出した。
「あともう少しだ。康太、一気にいくぞ」
 健司が力を込めた。瞬間、康太の股間に皮膚が引き裂かれるような痛みがはしった。
 康太は思わず身を屈めて股間をおさえた。それを見た健司は、いじわるそうな顔で揶揄った。
「硬式野球部期待の新人が包茎とか、情けねえなあ」
「やめろ」
「野球のバットばっかり磨いてないで、そのでっかいバットも、ちゃんと磨けよ」
「やめろってば」
「悪りぃ、悪りぃ。でも早いうちに剥けるようにしておいたほうがいいぜ。夏とか蒸れるし。それにおまえ――」
 健司は声をひそめ、康太の耳許で囁いた。
「まだ童貞だろ?」
 康太は自分と健司の股間を見比べた。まだ経験のない彼の先端は、鮮やかな薄紅色をしていた。一方、健司の先端は、それなりに経験があるのか、同じ薄紅色でも少し燻んでみえる。顔を上げると健司が誇らしそうに笑みを浮かべていた。
 ――包茎だとか、童貞だとか。事実なんだけどさ……。
 康太がため息を吐いた丁度そのとき、戸口がガラガラッと勢いよく開いて真裸かの男たちが数名どやどやと這入はいってきた。
 ふたりは何ごともなかったかのようにそっとはなれ、くびまで湯につかった。ゼリーのように固まった白いものが、彼らを取り囲むように湯のなかを漂っていた。
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