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第五章 お紅茶は如何かしら?
トレーニング後
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「親分、会員になったらどうですか?」
若い男性トレーナーから筋膜リリースを受けながら柳川が云った。短パン一枚の状態でベッドにうつ伏せになって、バターナイフを大きくしたような金属のヘラで背中をさすってもらっている。
「そうだな……」健悟も同じように短パン一枚の姿だ。彼は、もうひとりの若い男性トレーナーに促されて、右側を下にして横向けになった。左腕を上げて手を後頭部に添える。「まあ、考えておくかな……くううっ!」
「息をゆっくり吐いてください」健悟を担当しているトレーナーが、自転車のハンドルのような金属の棒を、毛むくじゃらの素肌の上で辷らせる。「すごいガタイですね」
「これが消防士の軀ってやつだ」健悟は満更でもない顔つきで云った。
若いトレーナーは、羨ましそうに健悟の腕から肘までの筋肉を指で撫であげた。「お仕事でこうなるんですね」そして施術を続ける。
一時間ほど柳川と同じメニューをこなしたあとだった。こうして筋膜リリースを受けているのは、スミ婆ぁがスタッフに命じたのだろう。筋トレのときはパーソナルトレーナーはついていなかったし、筋膜リリースを受けるのは柳川もはじめてだったらしく、トレーナーたちから、こちらへ、と誘われて驚いていた。
柳川が自分のトレーナーに云った。「三ヶ月で、こうなれるかな?」
「お連れ様の筋肉は、一朝一夕に作られたものではありません。二十代の若い消防隊員に相応しい筋肉があると思いますよ」実に叮嚀に応える。「さあ、横向きになってください。左側を下にして」
ふたりは向かいあわせに寝転ぶ形となった。柳川が照れくさそうに健悟から目をそらす。健悟は、ふっ、と笑って目を閉じた。
健悟は、心地好い倦怠感を味わった。素肌の上を金属の棒が辷る。ときおりほぐれ具合を確かめるように、トレーナーの手のひらが素肌を撫でさする。
「仰向けになってください」
トレーナーのこの言葉を最後に、健悟は深い眠りへと落ちていった。
「お疲れさまでした」
肩を叩かれて、健悟は目を覚ました。頭がぼうっとしている。
トレーナーがやさしく声を掛けた。「ゆっくり起きあがってください」
「お、おう……」
健悟は顔を起こした。
——やっちまったな、相棒。
——生理現象だ。男しかいないから問題ない。
短パンの中央が大きく盛りあがっていた。血行が良くなったせいか、股間の相棒に血液が流れこんでパンパンになっているのだった。下帯が貞操帯代わりになってくれてはいるが、テントを張っているのは隠しようがなかった。
健悟は、ごく自然に起きあがってベッドの上で胡座をかいた。
見るとトレーナーたちが互いに顔を見合わせている。目の前では、柳川がぼうっとした顔で健悟を見ている。さっさとここから退散したほうが良さそうな雰囲気だった。
健悟は柳川と一緒にトレーナーたちに礼を云い、それからシャワールームに向った。シャワーブースは、ふたり並んで使った。脱衣場に這入ったときから他に会員の姿はなかったので、健悟は安心して下帯をほどき、ギンギンに屹立した相棒を隠しもせずに堂々と振る舞った。
二基のシャワーが、いっせいに湯を噴き出し、もうもうと湯煙を立てている。
「親分、さっきのふたり——」柳川が云いかけて笑った。健悟のブースを覗きこんで、「びっくりしてましたね。親分の火炎放射器を見て」
健悟が云い返した。「放水ホースだろ。消防士が火をつけてどうする」健悟は、背中に湯を浴びるためにくるりと回った。「おいおい、何してんだ?」
柳川が隣りのブースから身を乗り出して覗きこんでいた。「親分。今、俺たちしかいないっすよ」
「見るだけにしておけ」健悟は、湯を浴びる過程で自然にそうなったかのように、熱り勃つ相棒を手のひらで軽くさすった。「ここは公共のスペースだからな」
柳川はそれでも凝っと健悟を眺めている。今すぐにでも扉を開けて這入ってきそうな雰囲気だ。それでも理性が残っているのか、お預けを喰らった仔犬のように目を輝かせて待てをしている。
健悟は、ここまでだ、と云わんばかりに——柳川にとっては無情に——、シャワーのほうを向き、ボディソープを手に取った。湯を飛ばしながら全身を豪快に洗い、鼻歌まで歌う。すると柳川も諦めたのか、自分のブースへ戻った。
なるほど、そういうことか。
健悟は湯を浴びながらひとり納得した。
ジムスペースには女性トレーナーも女性会員もいた。しかし誰ひとりとして健悟に艶目を使う者はいなかった。それは、空調が適度に効いていて汗をかくこともなく、雄のフェロモンが噴き出さなかったからだろう。そして筋膜リリースをしてくれた男性トレーナーたちは、単に同じ男として健悟の相棒に興味を持ったに過ぎなかった。それはちょうど銭湯で客たちがギョッとして健悟を見るのと変わりない。
ところが今はどうだ。熱いシャワーを浴びている。汗はすぐに流れ落ちても、軀じゅうの毛穴という毛穴から雄のフェロモンがダダ洩れになっている。それで隣りにいる柳川が——男にも有効だとは柳川と出逢うまで識らなかったが——、健悟に絆されているのだ。これをうまく利用すれば、柳川を夢中にさせて、うえの璃子から引き離すことが出来る。
——だけどな、健悟……。
——どうした、相棒。
——いつまでもセックスの真似事じゃすまなそうだぞ。
——わかってる。
健悟は湯を止め、バスタオルで全身を拭い、そしてシャワーブースから出た。軀じゅうから湯気が立っている。その匂いに釣られるように柳川も湯を止めた。
「柳川、先に上がってるぞ」
「あっ、親分。俺も出ます」
ふたりは肩にバスタオルを引っ掛けて脱衣室へ戻ろうとした。すると、脱衣室の入り口のほうから、失礼します、タオルの補充です、と声がした。ふたりはバスタオルを腰に巻いて、若干前屈みになりながら洗面台の鏡の前に立ち、ドライヤーで髪を乾かした。そのあいだに、さっき健悟の筋膜リリースを担当したトレーナーが手早くタオルを補充し、失礼しました、と云ってそそくさと出ていった。
「親分の裸か、見にきたんじゃ?」柳川が無邪気に笑った。
「んなことあるわけねえだろ」健悟は呆れた口調で云った。「さっさと着替えるぞ。マネージャーが待っている」
若い男性トレーナーから筋膜リリースを受けながら柳川が云った。短パン一枚の状態でベッドにうつ伏せになって、バターナイフを大きくしたような金属のヘラで背中をさすってもらっている。
「そうだな……」健悟も同じように短パン一枚の姿だ。彼は、もうひとりの若い男性トレーナーに促されて、右側を下にして横向けになった。左腕を上げて手を後頭部に添える。「まあ、考えておくかな……くううっ!」
「息をゆっくり吐いてください」健悟を担当しているトレーナーが、自転車のハンドルのような金属の棒を、毛むくじゃらの素肌の上で辷らせる。「すごいガタイですね」
「これが消防士の軀ってやつだ」健悟は満更でもない顔つきで云った。
若いトレーナーは、羨ましそうに健悟の腕から肘までの筋肉を指で撫であげた。「お仕事でこうなるんですね」そして施術を続ける。
一時間ほど柳川と同じメニューをこなしたあとだった。こうして筋膜リリースを受けているのは、スミ婆ぁがスタッフに命じたのだろう。筋トレのときはパーソナルトレーナーはついていなかったし、筋膜リリースを受けるのは柳川もはじめてだったらしく、トレーナーたちから、こちらへ、と誘われて驚いていた。
柳川が自分のトレーナーに云った。「三ヶ月で、こうなれるかな?」
「お連れ様の筋肉は、一朝一夕に作られたものではありません。二十代の若い消防隊員に相応しい筋肉があると思いますよ」実に叮嚀に応える。「さあ、横向きになってください。左側を下にして」
ふたりは向かいあわせに寝転ぶ形となった。柳川が照れくさそうに健悟から目をそらす。健悟は、ふっ、と笑って目を閉じた。
健悟は、心地好い倦怠感を味わった。素肌の上を金属の棒が辷る。ときおりほぐれ具合を確かめるように、トレーナーの手のひらが素肌を撫でさする。
「仰向けになってください」
トレーナーのこの言葉を最後に、健悟は深い眠りへと落ちていった。
「お疲れさまでした」
肩を叩かれて、健悟は目を覚ました。頭がぼうっとしている。
トレーナーがやさしく声を掛けた。「ゆっくり起きあがってください」
「お、おう……」
健悟は顔を起こした。
——やっちまったな、相棒。
——生理現象だ。男しかいないから問題ない。
短パンの中央が大きく盛りあがっていた。血行が良くなったせいか、股間の相棒に血液が流れこんでパンパンになっているのだった。下帯が貞操帯代わりになってくれてはいるが、テントを張っているのは隠しようがなかった。
健悟は、ごく自然に起きあがってベッドの上で胡座をかいた。
見るとトレーナーたちが互いに顔を見合わせている。目の前では、柳川がぼうっとした顔で健悟を見ている。さっさとここから退散したほうが良さそうな雰囲気だった。
健悟は柳川と一緒にトレーナーたちに礼を云い、それからシャワールームに向った。シャワーブースは、ふたり並んで使った。脱衣場に這入ったときから他に会員の姿はなかったので、健悟は安心して下帯をほどき、ギンギンに屹立した相棒を隠しもせずに堂々と振る舞った。
二基のシャワーが、いっせいに湯を噴き出し、もうもうと湯煙を立てている。
「親分、さっきのふたり——」柳川が云いかけて笑った。健悟のブースを覗きこんで、「びっくりしてましたね。親分の火炎放射器を見て」
健悟が云い返した。「放水ホースだろ。消防士が火をつけてどうする」健悟は、背中に湯を浴びるためにくるりと回った。「おいおい、何してんだ?」
柳川が隣りのブースから身を乗り出して覗きこんでいた。「親分。今、俺たちしかいないっすよ」
「見るだけにしておけ」健悟は、湯を浴びる過程で自然にそうなったかのように、熱り勃つ相棒を手のひらで軽くさすった。「ここは公共のスペースだからな」
柳川はそれでも凝っと健悟を眺めている。今すぐにでも扉を開けて這入ってきそうな雰囲気だ。それでも理性が残っているのか、お預けを喰らった仔犬のように目を輝かせて待てをしている。
健悟は、ここまでだ、と云わんばかりに——柳川にとっては無情に——、シャワーのほうを向き、ボディソープを手に取った。湯を飛ばしながら全身を豪快に洗い、鼻歌まで歌う。すると柳川も諦めたのか、自分のブースへ戻った。
なるほど、そういうことか。
健悟は湯を浴びながらひとり納得した。
ジムスペースには女性トレーナーも女性会員もいた。しかし誰ひとりとして健悟に艶目を使う者はいなかった。それは、空調が適度に効いていて汗をかくこともなく、雄のフェロモンが噴き出さなかったからだろう。そして筋膜リリースをしてくれた男性トレーナーたちは、単に同じ男として健悟の相棒に興味を持ったに過ぎなかった。それはちょうど銭湯で客たちがギョッとして健悟を見るのと変わりない。
ところが今はどうだ。熱いシャワーを浴びている。汗はすぐに流れ落ちても、軀じゅうの毛穴という毛穴から雄のフェロモンがダダ洩れになっている。それで隣りにいる柳川が——男にも有効だとは柳川と出逢うまで識らなかったが——、健悟に絆されているのだ。これをうまく利用すれば、柳川を夢中にさせて、うえの璃子から引き離すことが出来る。
——だけどな、健悟……。
——どうした、相棒。
——いつまでもセックスの真似事じゃすまなそうだぞ。
——わかってる。
健悟は湯を止め、バスタオルで全身を拭い、そしてシャワーブースから出た。軀じゅうから湯気が立っている。その匂いに釣られるように柳川も湯を止めた。
「柳川、先に上がってるぞ」
「あっ、親分。俺も出ます」
ふたりは肩にバスタオルを引っ掛けて脱衣室へ戻ろうとした。すると、脱衣室の入り口のほうから、失礼します、タオルの補充です、と声がした。ふたりはバスタオルを腰に巻いて、若干前屈みになりながら洗面台の鏡の前に立ち、ドライヤーで髪を乾かした。そのあいだに、さっき健悟の筋膜リリースを担当したトレーナーが手早くタオルを補充し、失礼しました、と云ってそそくさと出ていった。
「親分の裸か、見にきたんじゃ?」柳川が無邪気に笑った。
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