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11巻
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しおりを挟む第一話 GO Back Home
冒険者チーム『邪香猫』に所属する僕、ミナト・キャドリーユが、あの火山島での調査任務からチームの皆とともに帰還して……早いもので、もう数日。
休暇を楽しむつもりで行ったのに、結局……全然満喫できなかったな。
まあ、最初のうちはよかった。懐かしい面々と再会できたし、楽しくおしゃべりなんかして過ごせた。任務も、ちょっと退屈だったけどそれなりに楽しんでやれた。
けど、あのチラノースの連中が絡んできたところで、雲行きが怪しくなってきて、次々に面倒ごとが起こって……しまいには秘密結社『ダモクレス』まで巻き込んだ三つ巴バトルである。
おまけに、最後の最後には地震やら噴火やらで任務が強制終了になっちゃったり……と、ここまで考えた所で、ふいに思考を中断させられた。
また、『地震』か……。
なんか最近、地震にあったり、それに関連する話を聞いたりすることがやけに多い気がする。
最初のは実家の洋館を出てすぐの時。僕の相棒兼ツッコミ担当のエルクに出会った頃に、彼女から地震が起こったって聞いた。
『ナーガの迷宮』ではボス蛇を、そして、『リトラス山』では崖崩れを起こさせてアルバを目覚めさせるきっかけになった地震だ。
次は、ちょっと間は開くけど……王都に行った時。王女様に連れられて行った狩場で、黒トカゲとの戦いの後に襲ってきた地震。土砂崩れとかで大変だったっけ。
……そういやその前に、あの狩場の近くで別の地震が起こってたって王女様が言ってたな。
そしてこの間、サンセスタを噴火させた地震。
僕が把握してるだけでも、それなりの規模の地震がもう四回も起きている。
僕の前世……地震大国とまで言われた日本では、体感しないものも含めると、年間で数千回もの地震が起こっている。
けど、山崩れを起こすほどの規模なんて、そうあるもんじゃない。
以前にもエルクが「地震なんて珍しい」的なことを言っていた覚えがあるから、ここアルマンド大陸ではそう頻繁に起こるもんじゃないと思われる。
そんな自然現象が、この決して長くない期間に四回、か。
発生場所はばらばらだし、規模もそれなりに大きいことを考えると……頻発どころじゃない気が。
偶然時期が重なっただけなのか、それとも……。
「あら何、眉間にしわなんか寄せちゃって。また何か悪巧みかしら?」
そんな声とともに……シャワー室の扉が開いて、中からバスタオル姿のエルクが出てきた。メガネは装着済みである。
あ、言ってなかったけど……ここは、『オルトヘイム号』の僕の部屋だ。
『ウォルカ』に帰還後、『バミューダ亭』の後にお世話になる宿が結局決まらなかった僕らは、当初は半分冗談だったアイデアを採用し――といっても、あくまで暫定だけども――このオルトヘイム号を拠点としている。
ウォルカから少し離れた所を流れている川の上流の、人気のない湖で。
全員分の個室はあるので、それぞれの部屋を使って生活してるわけだけど……エルクの場合、僕の部屋で過ごしたり、泊まったりすることも多い。
今もそんな感じで、僕の部屋の風呂を借りて汗を流していた所だ。
エルクはバスタオル姿のまま、ソファに座っている僕の隣に腰を下ろすと……持っていた小瓶を差し出してきた。
「ごめん、またお願いできる? コレ」
「ん? ああ、OK。いいよ」
そう言って僕は、エルクが差し出してきた塗り薬のビンを受け取り、蓋を開ける。
その中には、打ち身や筋肉痛に効くジェル状の塗り薬が入っている。
治癒の魔法は傷を早く治せる代わりに「超回復」が起こりづらくなるため、筋肉の発達が遅くなる。こうやってきちんと薬や休養、自然治癒力で回復させることが、戦闘力はともかく肉体を成長させるためには重要なのである。
その塗り薬を指ですくっている間に、エルクはバスタオルをはらりとほどいて背中……自分の手が届かないところを僕に向ける。
細身で色白のきれいな背中に、よーく見ると薄い紫色の痣がある。
何度見ても魅惑的、かつ刺激的な色白の裸体にぐっとくる男の本能を抑えつつ、痣とその周辺に薬を塗りこんでいく。
ほどなくして、患部がほんのり熱を帯び始めたのを確認。薬が効き始めた証拠だ。
僕が終わったことを告げると、エルクはバスタオルを巻き直し、そのままスタスタと歩いて衣装ケースの棚の引き出しを開けた。
そしてその中から、女物の上下の下着を取り出す。さらに別の段からは部屋着を。
……繰り返しになるが、彼女はよく僕の部屋に宿泊する。なので、この部屋の衣装ケースには、僕のだけじゃなくてエルクの服も何セットか常備してあるのだ。
エルクはそれに着替えると、再び僕の隣に腰掛け、楽な姿勢になってリラックスし始める。
「くつろいでんねー、遠慮なく、他人の部屋で」
「あら、迷惑だった?」
「全然。むしろ、そのままこっちに『こてん』って来てくれると更に嬉しいかも」
「あらそう。じゃせっかくだし、部屋の主のリクエストに応えてあげるわ」
有言実行。そのままこっちに体を倒して、こてん、とエルクの頭が僕の肩に乗っかった。
女の子特有のいいにおいと、今さっき使ったのであろうシャンプーとボディソープの匂いが僕の鼻をくすぐる。あー、幸せ……落ち着く。
だらけた表情の僕を見て、「やれやれ」とでも言いたげなため息をついたエルクは、ふと思いついたように話を切り出す。
「そういえばさ……休暇のつもりで火山島に遊びに行ったのに、結局騒動に巻き込まれちゃったわけだけど、どうすんの? このまま復帰する? それとも今度こそ息抜きする?」
「あー、ちょうどそれも考えてたんだよね……」
結局休めなかったしな……クエストのついでに休もうとしたのがまずかったんだろうか? でも、そのくらいやらないと、僕らに安息の地は最早ないというか……。
娯楽だけが目的なら、クエストを休んでどこか観光地にでも行けばいい。
けど、僕の敵は多忙ではなく野次馬。観光地に行こうが、この容姿で気づかれてしまうため、遊ぶことはできても安息を得ることはできない。
いや、遊ぶことさえ満足にできない可能性が大だな。
まあ、服は替えればいいし、その気になれば僕は体組織の色素を操作して髪の長さや色、瞳の色も変えられるので、変装するのは朝飯前なんだけど……わざわざ変装して休暇過ごすってなんか嫌だし、最近は僕以外の面子も有名になってきてる。
ホント、どこに行って休めばいいんだろう……。
ため息をついていると、その様子を見かねたのか、はたまた頭の斜め上で辛気臭い音がするのがいやだったのか、「気分転換に何か飲みましょ」と言って、エルクがテーブルの上に置いてあったハンドベルをちりん、と鳴らした。
「はいはーい、何でしょーか、ご主人様っ♪ ……って、あら? お邪魔だった?」
ベルを鳴らした数十秒後、ハイテンションでおなじみの茶髪のポニーテール娘、ターニャちゃんが部屋に入ってきた。
「別に。つか、こっちが呼んだんだからそんな状況なわけないでしょうが。全く……職場が変わってもあんたのテンションは変わんないのね、ターニャ」
「まーね。それでお姉さま、何か用?」
おなじみのエプロンをつけたターニャちゃんは、人懐っこくイタズラっぽい笑みを浮かべつつも、背筋を伸ばして真面目に話を聞く姿勢になった。
何で彼女がこの船にいるかっていうと、ターニャちゃんを僕ら『邪香猫』が雇用することになったからである。家政婦として。
現在、暫定的な拠点としてこの『オルトヘイム号』を使っているわけだけど、この船を管理するには、僕ら『邪香猫』とセレナ義姉さんの合計七人だけじゃ、ちょっと人手が足りない。
当たり前だ、この規模の帆船なんてのは本来、専用のドックで数十人で修理や整備を行うもんなんだから。
いくら、オーバーテクノロジーにより、普通よりも遥かに管理が楽だって言っても、さすがに七人は厳しい。しかもその七人は別にドック職員とかじゃないので、専門的な技術もない。
更に言えば、今まで僕らは宿屋を利用してた。
すなわち、炊事・洗濯・掃除の全てを、お金を払うことで宿の職員さんにやってもらっていたということである。自分達専用の拠点……『我が家』に住むなら、それらも自分達でやらなければならない。
ダメな思考であることを承知で言おう……ぶっちゃけ面倒である。
依頼から帰ってきて疲れていたら、そういうことをできないだろうし……ってことで、家政婦の必要性が浮き彫りになったわけだ。
こうして、僕ら『邪香猫』は、家の中のことを任せられる人員を二人雇うことにした。
一人は、今目の前にいるこのターニャちゃん。
今まで『バミューダ亭』でお世話になっていたからよく知ってるけど、彼女の家事スキルはかなり高い。
早起きも得意だし、掃除もあの宿の全ての部屋をほぼ一人でやってたから、手際がいい。洗濯もまた同様だ。
ただ、さすがに空間歪曲でかなり広くなっているこの船を、一人でやってもらうのはどうかなって思って聞いてみたんだけど、彼女曰くこのくらいなら全然平気だという。
何でも、冒険者ってのは宿屋の備品やベッドを乱雑に使う人が多いらしく、それらの整頓からベッドメイクまでやるのが日々の業務。
ソファやカーペットは、疲れて帰ってきた冒険者がそのまま寝転んで泥や汗まみれになったりするし、床の掃除では頑固な汚れを相手にしなければならない。時には……宿に娼婦その他を連れ込んだ後のシーツを処理したりもする。
そんな宿で家事全般を担っていたターニャちゃんからすれば、使い方が丁寧な上に、もともと汚れにくい特殊素材を使ってるこの船での家政婦仕事は、広いわりには非常にラクチンなのだそうだ。
そしてもう一人。厨房主任およびその他雑務担当として、シェーンにもこの船に来てもらうことになっている。
もともと『カーンネール海賊団』……というか、この『オルトヘイム号』で海賊見習いとして雑用その他をやっていただけあって、彼女の家事スキルは高い。加えて、船に関すること全般にも精通している。海の上を航海する時とか、頼りになりそうだ。
さらに、料理の腕は僕らはもちろんのこと、キーラ姉さんも認めるほど。
ターニャちゃんとともにこの船の家事を任せる上で、これほどぴったりの人材はいないだろうってことでスカウトしてみたら、OKがもらえたのだ。
理由としては、色んなところを旅して様々な料理と出会いたいから、らしい。
王都で学べるスキルはもう吸収しつくしたらしいので、そろそろ拠点を移すつもりだったんだそうだ。
それだけなら普通に旅の料理人でもやってればいいんだろうけど、このご時勢、女の子が一人旅をするのはちょっと危険である。かと言って、護衛を雇うのはお金がかかるし。
だったら、色んな所を旅できる上に、気心の知れた仲間が一緒で安心できるこの職場で働いてみるのもいいかな、と思ったそうだ。
それともう一つ、根拠はないけど……僕らと一緒に旅をすれば、自分も少しは鍛えられて、今より強くなれるかも、っていう思惑もあるらしい。向上心豊かなことだ。
……お望みなら強くしてあげるよ? 『否常識魔法』という名の反則技で……ふふふ。
さて、それはそうと――。
「喉が渇いたから、ちょっと飲み物でももらおうかと思って呼んだの。ほら、紅茶があったでしょ? あれ、いれてくれないかしら」
「かしこまりましたー。えっと、見たとこ、お風呂上がりだし……アイスティーでいい? あ、それとミナトさん紅茶苦手だよね? コーヒーか何かにする?」
「うん、お願い。僕のもアイスで頼むよ。あ、でもブラックは嫌だから……」
「いつも通りミルクとシロップで甘くして、だよね。りょーかいっ!」
びしっ、と敬礼して部屋を後にするターニャちゃんを見送る。
うんうん、よく働いてくれるなー、頼もしい限りだ。
最初は何ていうか、雇ってるとはいえ、知り合いで仲のいい女の子にあれこれと雑用を頼むのに抵抗があったんだけど……それを遠まわしに言ったら「いやいや、雇用関係ってそういうもんでしょ」ってちょっと呆れられたっけ。
ちなみに、彼女には雇用契約を結んだ際、この『オルトヘイム号』で働くのに便利なマジックアイテムをいくつか貸与している。
その一つが、この船の各部屋に置いてある「呼び鈴」の「子機」だ。
この『オルトヘイム号』のほとんど全ての部屋には、さっきエルクが使っていたハンドベルが置いてあるんだけど、それを鳴らすと、ターニャちゃんの持ってる「子機」が鳴って、どの部屋で呼んでるかわかるのだ。
ターニャちゃんがどこにいても、迅速に駆けつけられるようにってことで、作ったアイテムである。
「しかしまあ、見事になじんでるね、ターニャちゃん」
「ホントよね。人見知りも緊張も元々しない娘だから心配はしてなかったけど……この異常な職場に素早く適応できるあたりはさすがだわ。まるで自分の家みたいにくつろいで楽しみながら働いてるもの」
「異常て……まあ、否定できないけど……ん?」
ふと思いついた、今のエルクの言葉を聞いて……。
「……家、か。それもありかな……?」
……盲点だったな。
でも……『ゆっくりくつろぎたい』んであれば、これも選択肢の一つとして考えていいんじゃなかろうか。
「? どうしたの、ミナト?」
「いや、今思いついたんだけどさ……」
ゆっくりと顔をあげて、言葉を続けた。
「久々に、実家に帰ってゆっくりするのもありかな、って」
懐かしき『グラドエルの樹海』の洋館に、さ。
☆☆☆
「里帰り」ってフレーズを聞くと、田んぼや畑が広がるのどかな村にトランクを担いで帰る光景を想像する僕は田舎者だろうか。前世、そんな感じだったんだけど。
「実家」が新宿や六本木のネオンギラギラな場所に建ってるアパートとかマンションだったら、あてはまらないイメージだね。
まあそんなことはともかく、僕は今『邪香猫』の皆とともに、なつかしき我が実家……洋館に向けて走っている最中である。
……危険度AAランクの『グラドエルの樹海』を突っ切って。
「ちょっと!? 森をわざわざ歩かなくたって、いつも通り船で飛んでいけばいいじゃないのよ! 何でこんな危険な……」
「いやあ、こっちの方がなんか『帰ってきた』って感じするから」
「んな感覚を抱くのはアンタだけだ!」
『樹海』をけっこうな早足で歩きつつ、さっきから息を切らし気味のエルクがぎゃーぎゃーと僕の耳元で怒鳴っている。
まあ、もっともなんだけども。彼女の怒りも。
何せ、ひっきりなしに魔物に襲われてるんだから。
軒並み実力Aランクオーバーなうちのチームでも、高ランクの魔物があっちゃこっちゃから出てくるこの森では、気の休まる暇はない。
何せ危険度AA。『暗黒山脈』と同じく、この大陸屈指の危険地帯の一つ。
以前、ギルドの最高責任者であるアイリーンさんが「気を抜けば正規軍の精鋭部隊すら全滅する」とか「ってか気抜かなくても全滅するけどね♪」とか、身も蓋もない評価をしていただけある。
あらためて来てみると、何だろーねこの人外魔境。
地図を見て初めて知ったんだけど、この樹海って、『ネスティア』と『ジャスニア』の国境に接する形で位置してるらしい。
かなり前にエルクが「大陸の最果てにある魔の森」と言っていたが……最果てってわりに普通に大国に接してるんだな。
位置的には南西部分の端っこだから、一応『最果て』には違いないか。
にしても、変わってないなー、このへん。
相変わらず殺気に満ちた獣や、殺気に満ちた怪鳥、あるいは殺気に満ちた巨大昆虫しかいない。
「この森の基本構成ってほぼ殺気なわけ!? どーりでさっきからどこ行っても色んな魔物に喧嘩売られるわけだわ、縄張り意識強すぎ。しかも全部が全部、見敵必殺で来るし」
「昔はもうちょっとマシだったらしいんだけどさ、僕と母さんが住み着いてから、修業のために、十年くらいあちこちの魔物の縄張りで喧嘩売りまくって暴れまわった結果、こんな感じの殺気百二十パーセントの素敵な森になっちゃったっぽい」
「犯人はあんたらかああああああ!!」
ちなみにこの地獄のピクニックに参加してるのは、『邪香猫』の六人とギルドから派遣されてきたセレナ義姉さんだけ。
『オルトヘイム号』で雇ってるターニャちゃんとシェーンは船で待機。
メンバーであるミュウの『召喚』を使うと、船と一緒にその中にある荷物や人員も一緒に呼び出せるのは、すでに確認済みだ。中に人が乗ってると『送還』や『召喚』を解除することはできないけど。
いやしかし、懐かしいねこの空気(バキィッ)!
☆☆☆
二時間後、僕らはようやく目的地にたどり着いた。
一年以上ぶりに訪れる僕の実家……森の洋館に。
がしゃん、と大きな音を立てて、門と呼ぶのか柵と呼ぶのか微妙な門(?)を閉じる。
これで、この門と塀に付与されている結界魔法が発動した。侵入不可能の安全地帯を作り出す、超防御力のバリアが。
まあ、んなもんなくてもこの家に近づいてくる魔物なんて、もともといないんだけど。
そして、振り返ると……難易度ベリーハードのピクニックでグロッキーになってる仲間たちが、適度に芝刈りされて綺麗に整えられた庭でへたりこんでいた。
まあ、『真紅の森』や『狩場』での戦いが退屈に思えるレベルの連中がひっきりなしに出てきてたわけだから、無理ないけど。
「は、ははは……か、覚悟はしてたけど、ここまでとはね……さ、さすがミナト君が生まれ育った魔境。人が住める場所じゃないなあ……」
「ほ、本気で死ぬかと思いました~……後から後から、すごいのがわらわらと……」
「ほんとにもう……何ちゅうとこで子育てしてたのかしら、我がお義母様は……何か昔より非常識っぷりがひどくなってる気がするわ」
「退屈は確かにしなそうだけど……限度ってもんがあるわよね。ここまでくると戦いが好きか嫌いか以前の問題っていうか、ほぼ野生の中の生活っていうか……」
「ミナトさんのどこか達観した、けど本質はやっぱり子供っぽい性格とか考え方は、この厳しすぎる大自然での生活に由来する部分もあるんでしょうか……?」
「……アンタら、わりと余裕ね……」
順に、ザリー、ミュウ、義姉さん、シェリー、ナナ、そしてエルクである。
こうして見ると、実力に応じた疲弊具合ってやつがよくわかる気がするな。
まだAもしくはAAくらいの実力のザリーやエルク、ミュウは、僕らがサポートしながらだったけど、かなり消耗している。やっぱAランク以上の怪物共が跋扈する危険地帯はきついようだ。
対して、シェリー、ナナ、義姉さんといったAAA以上の超手練は疲れこそ見えるものの、そこまでギリギリという感じではない。
このへんは地力の差だろうな……。
エルクたちだって弱いわけじゃ絶対にない。この『グラドエルの樹海』を少人数で突破するなんていう、非常識極まりない強行軍に耐えられただけで、相当な実力だ。
『弱いか強いか』じゃなく、『超強いか普通に強いか』、ってレベルだし。
逆に考えれば、このメンバー誰もが疲弊しつつも切り抜けられるということは……。
「ひょっとして、『グラドエルの樹海』は修業場所としては悪くないっていう……」
「こーら、非常識な思考やめ、義弟」
「あたっ」
ぽかっ、と僕の頭のてっぺんに軽く義姉さんのゲンコツが当たる。
「ここには羽を伸ばしに来たんでしょうが……まったく、テーガンさんじゃないんだから、すぐに修業とか研究に結びつけるの、やめなさい。ワーカホリックは嫁さんに愛想つかされるわよ?」
「あたた……そのテーガンさんってのが誰なのかは知らないけど、エルクに愛想つかされたらショック死するかもしんないから肝に銘じるよ……」
「だってさ、愛されてるわねエルクちゃん」
「はいはいどーも……」
肉体的にも精神的にも皆さん疲れてるようなので、さっさと家に入りましょーかね。
応援ありがとうございます!
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