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第1章
第7話
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しばらく洞窟を進んでいくと、モンスターに出遭った。
ジャッカルに似た犬面を持つ、小柄な人型モンスターが五体だ。
手には思い思いに、小型の武器を持っている。
小型の木の盾を持っている者もいた。
場所は十分な広さのある、洞窟内の広間だ。
五体のモンスターは、こちらの姿を認めるなり、すぐに襲い掛かってきた。
「で、出たな、モンスター!」
「ごくっ……。は、初めての実戦だって、うまく戦ってみせるわ」
「う、うちのほうには来るなっすよ! うちなんか食べても、おいしくないっすからね!」
ユキ、セシリー、ルシアの三人が緊張した面持ちで身構える。
俺は腰から二本の短剣を抜いて、モンスターのほうへと駆け込みつつ、少女たちに伝える。
「コボルドだ。モンスターレベルは1。モンスターとしては最弱の部類だが、数が多いと初級冒険者は苦戦もありうる。俺が数を削るぞ」
「はい、お願いします、クリード先輩! ボクも行きます! ──はぁあああああっ!」
ユキもまた、コボルドのうちの一体に向かって駆けていく。
俺は適当に戦いながら、彼女の戦闘の様子を見守ることにした。
「てぇやああああっ!」
白兵戦の距離まで近付くと、ユキは上段への回し蹴りを放つ。
だがそれは、慌てて身をかがめたコボルドによけられてしまう。
「なっ……!?」
体勢を崩したユキ。
その脇腹めがけて、コボルドが短剣を突き出す。
「くぅっ……!」
ユキはそれを、ギリギリどうにか躱してみせた。
しかしそれで、さらにバランスを崩して、転倒してしまう。
慌てて立ち上がろうとするユキ。
そこにコボルドが、短剣を振り下ろそうとして──
「──【ファイアボルト】!」
そのとき、凛とした少女の声とともに、火炎弾が飛来。
ユキに攻撃しようとしていたコボルドに直撃した。
犬の鳴き声のような悲鳴をあげて、苦しむ様子を見せるコボルド。
それで倒れはしないが、ユキが体勢を立て直す隙はできた。
「ありがとう、セシリー! ──てぇりゃああああっ!」
ユキが再び蹴りを放つ。
炎のダメージから立ち直ろうとしていたコボルドに、今度は命中し、そのコボルドを吹き飛ばした。
そのコボルドは地面をごろごろと転がり、ついには動かなくなった。
それを確認したユキは、一つ息をつく。
「ふぅぅっ……! ──よし、次のやつ、来い! ……って、あれ?」
ユキはきょろきょろと、あたりを見回す。
そして──
「えっ……あ、あの……クリード先輩……?」
ぽかーんとした様子で、俺の方を見てくるユキ。
俺は二本の短剣を腰の鞘にしまいつつ、彼女をねぎらう。
「おう、お疲れさん。戦闘見てたけど、ちょっと危なかったな。次は気をつけろよ」
「は、はい、すみません! 大ダメージを狙って、大振りの攻撃をしてしまって──って、そうじゃなくて!」
「ん? どうした」
「どうした、じゃないですよっ! その四体、全部クリード先輩が倒したんですか!? いつの間に!?」
ユキは、俺の周囲に倒れている、四体のコボルドを指さして驚愕していた。
俺がユキの戦闘を見ながら「適当に戦って」倒したやつらだ。
「いつの間にって、ユキが戦っていた間にだけど」
「はあ……。で、でも、ボクとセシリーの二人掛かりで、ようやく一体を倒したところですよ……?」
「ああ。だからそんなもんだって」
こっちは武器が二本だし、攻撃力も素早さもユキたちとは数倍の差があるからな。
というか、駆け出し冒険者と中堅冒険者だと、普通にそのぐらいの差にはなる。
「そうそう、モンスターを倒した経験値の心配なら、しなくても大丈夫だ。俺と同時に迷宮に入った時点で、ユキたちには俺との『パーティリンク』が発生している。俺が倒した分のモンスター経験値も、パーティメンバー全員で均等に分配されるからな」
「あ、いえ、その……」
「そういう話じゃなかった?」
「そういう話じゃなかったです……」
かくんと肩を落とすユキだった。
とまあそんな感じで、俺は三人の駆け出し冒険者の少女たちを連れて、第一迷宮の地下一階をゴリゴリと探索して回った。
さて、迷宮探索というのだが、その要諦は「モンスターを撃破しながら目的地に向かう」である。
迷宮のお宝は過去の探索で回収し尽くされているので、必然的にそうなる。
モンスターは、とある理由によって、迷宮には半ば無限に湧く。
そいつらを倒して、武具やその他アイテムの材料となるモンスター素材を狩ることで生活費を稼ぎつつ、レベルを上げて深い階層を目指し、ゆくゆくはより難易度の高い迷宮を目標としていくというのが、冒険者にとっての黄金の道となる。
未だ探索がろくに進んでいない第五迷宮までたどり着ければ、未発見のお宝を探り当てての一攫千金もありうる。
またモンスターが闊歩しているのは迷宮内だけではないし、人間同士の争いだってあるわけだから、十分にレベルの上がった冒険者は、騎士や用心棒などとしてどこの国でも重用される。
だがその高みに到達するまでの間に、命を落とす冒険者も少なくない──というか、非常に多い。
夢と身の安全を天秤にかけつつ、大胆さと慎重さをケースバイケースで使い分ける必要があるのが、冒険者という生業である。
まあ、そんな先の話はさておくとして。
今、俺たちがいるのは、第一迷宮の地下一階──
すなわち、あらゆる冒険者が最初に通過する、最も難易度の低い迷宮のスタート階層である。
それでも通常、駆け出し冒険者のパーティがこの地下一階を攻略するには、最低でも三日はかかると言われている。
俺はユキ、セシリー、ルシアの三人を連れ、そこを半日で踏破した。
蹴散らしたモンスターの数は、五十は超えるが、百には及ばないといったところだろう。
やがて俺たちは、地下二階へと続く下り階段の前までたどり着いた。
「はあっ、はあっ、はあっ……こ、これで、地下一階……クリア……?」
ユキが地下二階への階段の前で、ぺたんと床に座り込み、疲れ切った様子で言う。
「し、死ぬかと思ったわ……」
「うち、もう何度も、いっそ殺してって思ったっす……」
セシリーとルシアもまた、互いに背を預けるようにして床に座り込み、ぜぇぜぇと荒く息をついていた。
「三人ともお疲れさん。よくついてきたな」
探索ペースをどうしようか迷った俺が三人と相談したところ、ユキとセシリーが「どんなにキツくてもついていく」と言ったので、俺は自分のペースで探索を続けた。
その結果、駆け出し冒険者である三人とっては、かなり負担の大きい探索行になってしまったようだ。
ちなみにルシアは「うちはそんなこと言った覚えないっすよ!」と泣き言を言いながらも、結局ついてきた。
意外と根性があるのかと思ったが、迷宮内ではぐれたら死ぬからだったのかもしれない。
「はあっ、はあっ……ど、どうしてあなたは平気なのよ、クリード……」
「そりゃまあ、鍛え方が違うからな。二年も冒険者として迷宮に潜り続けていれば、誰でもこうなる」
「絶対ウソっす……人間そんな化け物に進化するわけないっすよ……クリードの兄貴が普通じゃないんすよ……」
「大丈夫大丈夫、慣れるまでの辛抱だって」
「が、頑張ります、先輩……と言いたいけど、さすがに、今日はもうダメ……街に帰って休みたいです、先輩……」
ついに根性の塊のようなユキまでもが、泣き言を言い始めた。
さすがに限界みたいだな。
「よし、じゃあ今日はこれで帰るぞ。ただしこの階段を下りてからだ。そこに中継地点があるからな」
「「「はぁーい……」」」
俺はへとへとの三人を連れて、階段を下りていった。
そして、地下二階に到着。
階段を下りた先には、地下一階の最初の小広間と同じような形状の広間があった。
石造りの足場と女神像も、地下一階のそれと同じようにある。
ただし女神像の向きが、片方、地下一階にあったものとは別の方向を向いていた。
「この女神像の向きを覚えておくと、次に来たときにこの地下二階からスタートできる。ただし、メンバー全員がこの場所に来たことがないとダメだけどな」
「わ、分かったから……そういう説明は、また今度にして……お願い」
セシリーが懇願してくる。
ほかの二人も、こくこくとうなずいていた。
しょうがないな。
俺は三人を石の足場に立たせると、女神像の向きを動かして、自分も足場の上に立つ。
わずかの後、俺たちは地上へと瞬間転移した。
そして街まで戻ると、少女たちは真っ先に宿を取り、女子用の三人部屋にふらふらと吸い込まれてしまった。
その後、少し疲労が回復したのか、夕食時になって俺の前に現れた三人。
俺は彼女らを連れて、冒険者ギルドへと繰り出した。
ジャッカルに似た犬面を持つ、小柄な人型モンスターが五体だ。
手には思い思いに、小型の武器を持っている。
小型の木の盾を持っている者もいた。
場所は十分な広さのある、洞窟内の広間だ。
五体のモンスターは、こちらの姿を認めるなり、すぐに襲い掛かってきた。
「で、出たな、モンスター!」
「ごくっ……。は、初めての実戦だって、うまく戦ってみせるわ」
「う、うちのほうには来るなっすよ! うちなんか食べても、おいしくないっすからね!」
ユキ、セシリー、ルシアの三人が緊張した面持ちで身構える。
俺は腰から二本の短剣を抜いて、モンスターのほうへと駆け込みつつ、少女たちに伝える。
「コボルドだ。モンスターレベルは1。モンスターとしては最弱の部類だが、数が多いと初級冒険者は苦戦もありうる。俺が数を削るぞ」
「はい、お願いします、クリード先輩! ボクも行きます! ──はぁあああああっ!」
ユキもまた、コボルドのうちの一体に向かって駆けていく。
俺は適当に戦いながら、彼女の戦闘の様子を見守ることにした。
「てぇやああああっ!」
白兵戦の距離まで近付くと、ユキは上段への回し蹴りを放つ。
だがそれは、慌てて身をかがめたコボルドによけられてしまう。
「なっ……!?」
体勢を崩したユキ。
その脇腹めがけて、コボルドが短剣を突き出す。
「くぅっ……!」
ユキはそれを、ギリギリどうにか躱してみせた。
しかしそれで、さらにバランスを崩して、転倒してしまう。
慌てて立ち上がろうとするユキ。
そこにコボルドが、短剣を振り下ろそうとして──
「──【ファイアボルト】!」
そのとき、凛とした少女の声とともに、火炎弾が飛来。
ユキに攻撃しようとしていたコボルドに直撃した。
犬の鳴き声のような悲鳴をあげて、苦しむ様子を見せるコボルド。
それで倒れはしないが、ユキが体勢を立て直す隙はできた。
「ありがとう、セシリー! ──てぇりゃああああっ!」
ユキが再び蹴りを放つ。
炎のダメージから立ち直ろうとしていたコボルドに、今度は命中し、そのコボルドを吹き飛ばした。
そのコボルドは地面をごろごろと転がり、ついには動かなくなった。
それを確認したユキは、一つ息をつく。
「ふぅぅっ……! ──よし、次のやつ、来い! ……って、あれ?」
ユキはきょろきょろと、あたりを見回す。
そして──
「えっ……あ、あの……クリード先輩……?」
ぽかーんとした様子で、俺の方を見てくるユキ。
俺は二本の短剣を腰の鞘にしまいつつ、彼女をねぎらう。
「おう、お疲れさん。戦闘見てたけど、ちょっと危なかったな。次は気をつけろよ」
「は、はい、すみません! 大ダメージを狙って、大振りの攻撃をしてしまって──って、そうじゃなくて!」
「ん? どうした」
「どうした、じゃないですよっ! その四体、全部クリード先輩が倒したんですか!? いつの間に!?」
ユキは、俺の周囲に倒れている、四体のコボルドを指さして驚愕していた。
俺がユキの戦闘を見ながら「適当に戦って」倒したやつらだ。
「いつの間にって、ユキが戦っていた間にだけど」
「はあ……。で、でも、ボクとセシリーの二人掛かりで、ようやく一体を倒したところですよ……?」
「ああ。だからそんなもんだって」
こっちは武器が二本だし、攻撃力も素早さもユキたちとは数倍の差があるからな。
というか、駆け出し冒険者と中堅冒険者だと、普通にそのぐらいの差にはなる。
「そうそう、モンスターを倒した経験値の心配なら、しなくても大丈夫だ。俺と同時に迷宮に入った時点で、ユキたちには俺との『パーティリンク』が発生している。俺が倒した分のモンスター経験値も、パーティメンバー全員で均等に分配されるからな」
「あ、いえ、その……」
「そういう話じゃなかった?」
「そういう話じゃなかったです……」
かくんと肩を落とすユキだった。
とまあそんな感じで、俺は三人の駆け出し冒険者の少女たちを連れて、第一迷宮の地下一階をゴリゴリと探索して回った。
さて、迷宮探索というのだが、その要諦は「モンスターを撃破しながら目的地に向かう」である。
迷宮のお宝は過去の探索で回収し尽くされているので、必然的にそうなる。
モンスターは、とある理由によって、迷宮には半ば無限に湧く。
そいつらを倒して、武具やその他アイテムの材料となるモンスター素材を狩ることで生活費を稼ぎつつ、レベルを上げて深い階層を目指し、ゆくゆくはより難易度の高い迷宮を目標としていくというのが、冒険者にとっての黄金の道となる。
未だ探索がろくに進んでいない第五迷宮までたどり着ければ、未発見のお宝を探り当てての一攫千金もありうる。
またモンスターが闊歩しているのは迷宮内だけではないし、人間同士の争いだってあるわけだから、十分にレベルの上がった冒険者は、騎士や用心棒などとしてどこの国でも重用される。
だがその高みに到達するまでの間に、命を落とす冒険者も少なくない──というか、非常に多い。
夢と身の安全を天秤にかけつつ、大胆さと慎重さをケースバイケースで使い分ける必要があるのが、冒険者という生業である。
まあ、そんな先の話はさておくとして。
今、俺たちがいるのは、第一迷宮の地下一階──
すなわち、あらゆる冒険者が最初に通過する、最も難易度の低い迷宮のスタート階層である。
それでも通常、駆け出し冒険者のパーティがこの地下一階を攻略するには、最低でも三日はかかると言われている。
俺はユキ、セシリー、ルシアの三人を連れ、そこを半日で踏破した。
蹴散らしたモンスターの数は、五十は超えるが、百には及ばないといったところだろう。
やがて俺たちは、地下二階へと続く下り階段の前までたどり着いた。
「はあっ、はあっ、はあっ……こ、これで、地下一階……クリア……?」
ユキが地下二階への階段の前で、ぺたんと床に座り込み、疲れ切った様子で言う。
「し、死ぬかと思ったわ……」
「うち、もう何度も、いっそ殺してって思ったっす……」
セシリーとルシアもまた、互いに背を預けるようにして床に座り込み、ぜぇぜぇと荒く息をついていた。
「三人ともお疲れさん。よくついてきたな」
探索ペースをどうしようか迷った俺が三人と相談したところ、ユキとセシリーが「どんなにキツくてもついていく」と言ったので、俺は自分のペースで探索を続けた。
その結果、駆け出し冒険者である三人とっては、かなり負担の大きい探索行になってしまったようだ。
ちなみにルシアは「うちはそんなこと言った覚えないっすよ!」と泣き言を言いながらも、結局ついてきた。
意外と根性があるのかと思ったが、迷宮内ではぐれたら死ぬからだったのかもしれない。
「はあっ、はあっ……ど、どうしてあなたは平気なのよ、クリード……」
「そりゃまあ、鍛え方が違うからな。二年も冒険者として迷宮に潜り続けていれば、誰でもこうなる」
「絶対ウソっす……人間そんな化け物に進化するわけないっすよ……クリードの兄貴が普通じゃないんすよ……」
「大丈夫大丈夫、慣れるまでの辛抱だって」
「が、頑張ります、先輩……と言いたいけど、さすがに、今日はもうダメ……街に帰って休みたいです、先輩……」
ついに根性の塊のようなユキまでもが、泣き言を言い始めた。
さすがに限界みたいだな。
「よし、じゃあ今日はこれで帰るぞ。ただしこの階段を下りてからだ。そこに中継地点があるからな」
「「「はぁーい……」」」
俺はへとへとの三人を連れて、階段を下りていった。
そして、地下二階に到着。
階段を下りた先には、地下一階の最初の小広間と同じような形状の広間があった。
石造りの足場と女神像も、地下一階のそれと同じようにある。
ただし女神像の向きが、片方、地下一階にあったものとは別の方向を向いていた。
「この女神像の向きを覚えておくと、次に来たときにこの地下二階からスタートできる。ただし、メンバー全員がこの場所に来たことがないとダメだけどな」
「わ、分かったから……そういう説明は、また今度にして……お願い」
セシリーが懇願してくる。
ほかの二人も、こくこくとうなずいていた。
しょうがないな。
俺は三人を石の足場に立たせると、女神像の向きを動かして、自分も足場の上に立つ。
わずかの後、俺たちは地上へと瞬間転移した。
そして街まで戻ると、少女たちは真っ先に宿を取り、女子用の三人部屋にふらふらと吸い込まれてしまった。
その後、少し疲労が回復したのか、夕食時になって俺の前に現れた三人。
俺は彼女らを連れて、冒険者ギルドへと繰り出した。
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