世界で唯一の探索系上級職になったけど、駆け出しを育てながらのんびりやろうと思う

いかぽん

文字の大きさ
14 / 22
第2章

第14話

しおりを挟む
「まただ……」

 地下二階の探索をさらに進めていくと、しばらくした頃に、再び同じような光景に遭遇した。

 すなわち、洞窟の通路の壁の一角が、俺の【サーチ】スキルに反応したのだ。

「先輩、『また』っていうのは、さっきの宝箱があったところと同じということですか?」

「ああ、ここなんだが──お、やっぱり開いたな」

 ──ゴゴゴゴゴッ!

 俺が前のときと同じように壁に触れると、その近くの壁がズレて動いていく。

 やがて先と同じような小部屋が、姿を現した。

「おーっ、今度は宝箱が二つあるっすね」

 ルシアがそう言うとおり、今度の小部屋には宝箱が二つ置いてあった。

 大盤振る舞いも甚だしいな、おい。

「ねぇ、クリード。冒険者を始めたばかりの私にはまだよく分からないんだけど、こうやって次々と宝箱に遭遇するのって、おそらくは相当に異常なことなのよね?」

「ああ、めちゃくちゃ異常だ。というか宝箱一個目の時点で驚天動地だ」

 いや、【マスターシーフの書】を見つけたあたりからもう、なんか色々とおかしいんだけどな。
 夢でも見てるんじゃねぇかなって思うぐらいだが、頬っぺたをつまんでも痛いだけだ。

 まあそれはさておき、問題の宝箱だ。

 二つのうちのいずれにも、【サーチ】スキルによるトラップの反応はない。

 俺は宝箱の一つに手をかけ、ゆっくりとそのフタを開ける。
 中に入っていたのは──

「──ククリタイプの短剣、それも二本か」

 宝箱の中には、湾曲した刃型を持つ短剣が、二振り入っていた。
 ククリナイフと呼ばれる形状のものだが、これも単なるククリではあるまい。

 俺は短剣を凝視して、【アナライズ】のスキルを使用する。

 俺の頭の中に流れ込んできたのは、こんな情報だった。



【名 称】 神獣のククリ
【ランク】 A
【種 別】 短剣
【攻撃力】 40
【特 殊】 魔族、アンデッドに特攻



「……なんだこの、めちゃくちゃな性能は」

 俺は再び呆れた。

「先輩。その短剣って、やっぱり強いんですか?」

「ああ、ありえないぐらい強い。こんなの第一迷宮で手に入っていい代物じゃねぇって」

 横から覗き込んでくるユキに、そう答える。

 シーフやウィザードなどが修得可能な【アナライズ】のスキルでは、武器の情報を確認すると、【攻撃力】という数値が提示されてくる。

 一般には、この【攻撃力】が高いほど、強力な武器であるという評価になる。

 例えば短剣であれば、【攻撃力】が高いものは、その分だけ切れ味や強度などに優れていることを意味するわけだ。

 第一迷宮都市で一般的に購入できる短剣だと、その【攻撃力】は安物で5程度、高価な上級品で10程度というのが相場だ。

 俺が今装備している、第三迷宮に棲息するモンスターの牙を素材として作られた極めて高品質の短剣でも、その【攻撃力】は23だ。

 そこにあって【攻撃力】40って、もうアホかと。
 これを使ったら、そんじょそこらの子供でもホブゴブリンぐらいは倒せるんじゃないかってぐらいの逸品だ。

 ちなみに、もう一振りのほうも【アナライズ】してみたが、そちらもまったく同じアイテムだった。

「こんな極上の短剣が二振りも……ありえねぇ……」

 俺は大きくため息をつく。
 まあこれも神聖器なのだと思えば、当たり前といえば当たり前なのかもしれないが。

 だが驚きはもちろん、それだけでは終わらなかった。

 もう片方の宝箱を開いてみると──

「──こっちはコートか。おそらくは防具なんだろうが……」

 宝箱の中に折りたたまれて入っていたのは、漆黒のロングコートだった。

 こちらも【アナライズ】で識別すると、以下のようなアイテム情報が手に入った。



【名 称】 常闇の外套
【ランク】 A
【防御力】 20
【特 殊】 装備者の職業が【シーフ】または【マスターシーフ】の場合、【筋力】と【敏捷力】+10%



「……いやいやいやいや、落ち着け。どうかしてる」

「んー、クリードの兄貴も、ちょっと落ち着いたほうがいいと思うっすよ? さっきからやたらと驚きまくっていて、クールな兄貴らしくないっすよ」

「バカお前。これが驚かずにいられるか」

「バ、バカ……!? う、うちのことバカって言ったっすね! ひどいっす! お詫びとしてうちのことをぎゅーって抱きしめることを要求するっすよ! 恋人みたいに、恋人みたいに!」

「やっぱり脈絡がないんだよなぁ……」

 まあルシアの相変わらず意味の分からない妄言は放っておくとして。

【神獣のククリ】に続いて【常闇の外套】だが、こちらもやはり異常な性能だ。

 武器系アイテムに【攻撃力】があるのと同様、防具系アイテムには【防御力】という値が存在する。

 防具は一般に、【防御力】が高いほど優れていると言える。

【防御力】が高い防具ほど、頑丈だったり、防刃性能に優れていたり、衝撃吸収力が高かったり、防御範囲が広かったりするわけだ。

 第一迷宮都市で購入できる一般的な衣服系防具だと、【防御力】は安物で3、高価なものでも6程度だったはずだ。

 俺が今装備している第三迷宮由来のものでも、【防御力】は13。

【防御力】20なんて、第一迷宮ではオーバースペックもいいところだ。

 それに加えて、【シーフ】向けの強力な追加効果まで付いている。
 まったくもって意味が分からない。

「短剣は二本とも、どう考えてもクリード先輩が持つべきですよね。こっちのコートも、なんだか【シーフ】向けっぽく見えますし。ただでさえものすごく強い先輩が、さらに強くなっちゃいますね♪」

 ユキがそう言って、笑顔を向けてくる。

 だが俺は、少し考えてから、宝箱の中から【常闇の外套】を手に取って、それをユキへと手渡した。

「確かにこれも【シーフ】向けの装備なんだが──ユキ、これはしばらくお前が着ておいてくれ」

「へっ……? ボ、ボクですか?」

 ユキは闇色のロングコートを両腕で受け取りつつ、ぽかんとする。

 俺はそんなユキに、自分の考えを説明する。

「ああ。少なくとも第一迷宮で活動している範囲では、俺はまずモンスターの攻撃を被弾することはない。それよりも前衛で攻撃を受けやすいのはユキだから、防具を厚くしておいた方がいい。また状況が変わったら、俺が着ることになるかもしれないけどな」

「そ、そうですか……。分かりました、先輩がそう言うなら」

 ユキはそう答えると、俺から受け取った【常闇の外套】を、もそもそと羽織っていく。

 男性用なのか丈が少し長いかと思ったが、ユキが着用したら、背丈に合わせて袖や裾がほどよく短くなった。

「ど、どうですか? 似合ってます……?」

 ユキは長袖の袖先を手でつかみながら、そわそわした様子で自分の格好を見る。

 俺はそんなユキの姿を見て、ふむと顎に手を当てる。

「まあ正規の装備じゃないし、不思議な感じではあるな。でもユキみたいに可愛いと、何を着ても似合うところはあるからな。俺はその格好のユキも可愛いと思う」

「ふぇっ……!? ……ううっ……ひょ、ひょっとして先輩って、呼吸をするように女の子を口説く人だったりします……?」

 ユキが頬を真っ赤に染めてうつむき、恨めしげな上目遣いで俺を見てくる。
 恥ずかしくてたまらないという様子だ。

「まあ可愛いと思った女の子に、可愛いとは言うよな。それをどう受け取るかは相手次第だと思うけど、俺としては率直な感想を言ってるだけだな」

「うううっ……わ、分かりました。……すみません、変なことを聞いて」

 俺はそんなユキに、笑顔を向けることで応えた。

 それから俺は【神獣のククリ】の二振りを宝箱の中から回収すると、それぞれ腰のベルトの左右に引っかけて着用する。

 そしてユキ、セシリー、ルシアの三人を連れて隠し扉の先の小部屋を出ると、壁を元通りにしてから探索を再開した。

 ちなみに、三人の少女たちは──

「だからぁ、うちはずっと言ってるじゃないっすか。兄貴は女誑しだって」

「そうかなぁ……。ボクには誠実で優しい人に見えたんだけどなぁ……。──で、でもでも、自分のことしか考えてない悪い人だったら、ボクが怪我することを心配して、こんな大事なアイテムを渡してくれたりしないと思わない?」

「や、別にうちだって、悪い人だとは思ってないっすよ。ていうかそんな悪い女誑しだったら、うちだってついていこうとは思わないっすよ」

「女誑しに、良いとか悪いとかあるんだ……」

「まあ大きな実害がなければ、何でもいいけれどね。少なくとも度の過ぎた悪人には見えないから、私はそれでいいわ」

 ──と、何やらこそこそと話し合っていた。

 俺ってわりと耳がいいから、そういう内緒話とか結構聞こえてしまうんだが……まあいいか。

 俺の人物評は、彼女らの間で適当にやっておいてもらおう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...