世界で唯一の探索系上級職になったけど、駆け出しを育てながらのんびりやろうと思う

いかぽん

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第2章

第15話

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 と、そんな調子で、俺、ユキ、セシリー、ルシアの四人パーティは、第一迷宮をざくざくと攻略していった。

 毎日、一階分をまるまる攻略──すなわち、初日に地下一階、二日目に地下二階を踏破したあとも、三日目に地下三階、四日目に地下四階を攻略するという超ハイペースである。

 通常だったら、順調に進んでもここまでで一ヶ月から二ヶ月ほどはかかる。

 初日は俺のペースに振り回されて最後には虫の息になっていたユキ、セシリー、ルシアの三人も、この頃になるとまあまあ俺についてくるようになってきていた。

 そして、第一迷宮の探索を始めて、五日目の朝。

 俺と三人の駆け出し冒険者たちは、地下四階の終点である「ボス部屋」のすぐ近くまで来ていた。

 その折、俺たちは目的地の直前で、モンスターと遭遇して戦闘になったのだが──

「いくよ──【稲妻蹴り】!」

「落としてみせるわ──【アイスジャベリン】!」

「ふははっ、このハンマーの力にひれ伏すがいいっす──【ホーリーインパクト】!」

 ユキ、セシリー、ルシアの三人は、その一斉攻撃で牛頭巨人ミノタウロスの巨体を一息に撃沈させる。

 ずぅんと地鳴りを上げて、地面に倒れるミノタウロス。

 一方で俺も、いつものように残る二体のミノタウロスを一人で撃破していた。
 戦闘終了を確認した俺は、二本の【神獣のククリ】を腰の鞘に収める。

「ユキ、セシリー、ルシア、三人ともお疲れさん。みんなだいぶ強くなったな。この迷宮に潜り始めた初日と比べると、見違えるほどだ」

 俺が三人のもとに歩み寄ると、ユキが俺に笑顔を向けてきた。

「はい、先輩のおかげです! たった四日の迷宮探索でここまで戦えるようになるなんて、自分でもびっくりしています」

「ま、半分はこのトンデモアイテムたちの力だけどね」

 一方のセシリーはそう言って、左手で自身の服をつまみ、右手に持った杖をふりふりと振ってみせる。

「別にアイテムの力だって、気にすることないっすよ。クリードの兄貴のスキルで手に入れたアイテムなら、それは兄貴の力っす。でもって兄貴の愛人であるうちらは、兄貴の力の一部を寵愛として受け取れるって寸法っすよ──ぁ痛たっ」

「人聞きが悪い。愛人にした覚えはないし、そもそも正規の嫁もいないんだよなぁ」

 俺は相変わらずのボケをかますルシアのおでこに、ツッコミのチョップを入れていた。

 するとルシアは瞳いっぱいに涙をためて、お涙頂戴の演技を始める。

「そんな、ひどいっす……! 兄貴にとって、うちのことは遊びだったんすね! うちの体だけが目当てだったなんて──うわぁん、ユキっち~! 兄貴に身も心も弄ばれたっす~!」

「はいはい。いつも通り、先輩に失礼だからねー」

 ユキに泣きつき抱きつこうとしたルシアを、ユキは華麗にかわして、同時に腕を取って関節技に持ち込む。

「はへ……? って、痛い痛い痛いっ! ギブッ! ギブアップっすよユキっち!」

「もう、毎度毎度、少しは反省すればいいのに。……というか先輩、一応確認ですけど、ルシアの言っているような事、ないですよね……?」

「ないない。いや心は知ったことじゃないが、少なくとも身のほうをどうこうした覚えはない」

「で、ですよね。あはは、ボクってば何を聞いているんですかね」

「それよりユキっち、早く放してほしいっすよ! 折れる! 腕折れるっす! ぽきっていっちゃう!」

「相変わらずルシアは騒がしいわね」

 蚊帳の外で様子を見ていたセシリーが、呆れたように肩をすくめ、俺に向けてかすかな微笑みを見せてきた。
 俺もそれに、俺も笑顔で応じる。

 ユキもほどほどでルシアを解放し、ルシアは涙目になりつつ腕をさすっていた。

 このメンバーでの呼吸も、最近はお互いに幾分かつかめて、関係もやわらかくなってきたように思う。

 昨日までの四日間の探索で、ユキ、セシリー、ルシアの三人も、まあまあの水準まで実力を上げてきた。

 第一迷宮の範囲内なら、もう一人前として十分に通用するレベルだ。

 第一迷宮の一般モンスターの中で最強種であるミノタウロスを、三人がかりとはいえ一息で倒してみせたところからも、彼女らの現在の実力が片鱗が窺える。

 だがその実力は、彼女ら本人の力だけではなく、強力な武器防具の力もあってのことだ。
 そうでなければ、たったの四日ではさすがにここまでは届かない。

 地下二階で宝箱を次々と見つけた俺たちだったが、宝箱ラッシュは地下三階以降も続いた。

 そして地下三階、地下四階の宝箱の中からも、予想を裏切らず強力な武器防具やその他アイテムが次から次と出てきたのである。

 中には職業適性が合わずに、パーティメンバーの誰が使うにも不適切なアイテムも出てきたが、それを抜きにしても収穫は大きかった。

 まずはユキ。

 彼女の装備は、パーティの中では今のところ一番おとなしい。
 ユキが今装備している神聖器は、彼女が身に着けている道着一着だけだ。



【名 称】 神龍の道着
【ランク】 A
【防御力】 20
【特 殊】 装備者の職業が【モンク】または【マスターモンク】の場合、【筋力】と【敏捷力】+10%



 これは「龍」と呼ばれる、東方の国に棲息するドラゴンの亜種が刺繍された【モンク】向けの道着だ。

 この道着を地下三階の宝箱で発見した当時、東国出身のユキは目を輝かせて興奮していたものだ。

 ちなみに、これがユキの防具としてぴったりだったので、それまでユキが装備していた【常闇の外套】は回収して、今は俺が着用している。

 ついで、セシリーの装備だ。

 彼女が現在身に着けている神聖器は、杖とローブの二つである。



【名 称】 フェンリルスタッフ
【ランク】 B
【種 別】 杖
【攻撃力】 30
【特 殊】 装備者が【ウィザード】または【アークウィザード】の場合、【魔力】+30%。さらに装備者が使用する氷属性魔法の威力+30%。


【名 称】 賢者のローブ
【ランク】 A
【防御力】 20
【特 殊】 装備者の【魔力】+10%



 ローブのほうは、いかにも大魔法使いという雰囲気のものだ。

 セシリーは、地下三階の宝箱からこのローブが出てきて初めて身に着けたときには、「まだ大した実力もないのにこういうのを着るのは、なんだか落ち着かないわね」と言って、そわそわした様子を見せていた。

 まあそれも最初のうちだけで、今では堂々と着こなしているのだが。

 一方の杖は、氷を思わせるアイスブルーの宝石が先端部に填まった立派なものだ。

 この杖は氷属性魔法を使うときに特に高い能力を発揮するので、セシリーはこの杖を手に入れたのち、氷属性の初級攻撃魔法【アイスジャベリン】を修得して、今ではそれを愛用の攻撃魔法としていた。

 そして最後、ルシアの装備だ。



【名 称】 破邪の戦鎚
【ランク】 B
【種 別】 槌鉾
【攻撃力】 45
【特 殊】 魔族、アンデッドに特攻

【名 称】 ミスリルの鎖帷子
【ランク】 B
【防御力】 25



 宝箱から出てきたアイテムを適材適所で渡していったら、ハンマーに鎖帷子という、意外と肉弾戦仕様の装備になってしまった【プリースト】のルシアである。

 ただこの【破邪の戦鎚せんつい】というのがなかなかの代物で、さほど【筋力】が高くないルシアが振り回しても、かなりの威力を発揮する。
 それはもう、ホブゴブリンぐらいなら一撃で吹き飛ぶほどだ。

 これに加えて【ミスリルの鎖帷子】の防御力もあって、今やルシアは、ユキと並んでもさほど遜色がないほどの前衛物理戦闘キャラに育ってしまっていた。

 一方で俺はというと、【神獣のククリ】が二本と【常闇の外套】、それに【神速のブーツ】という、地下二階の宝箱で見つけたシリーズを身に着けている。

 どれも異常なまでに強力な性能で、俺の戦力はこれらの装備を発見する前と比べて倍増、あるいはそれ以上に増していると言っても過言ではない。

 まあそんなわけで、これらの強力なアイテムの力もあってごりごりと迷宮探索を進めてきた俺たちは、ついに第一迷宮の「ボス」がいる部屋の前までやってきていた。

 この全四階層にも渡る広大な第一迷宮──その終点にふさわしい荘厳で巨大な石扉が今、俺たちの目の前に威圧的にそびえたつ。

「ここが第一迷宮のボス──『ゲートキーパー』が待ち受けている部屋だね」

 ユキが巨大な扉を見上げ、ごくりと唾を飲む。

「たしか、この先にいる『ゲートキーパー』というのを倒せば、第二迷宮への入場資格が得られるっていう話だったわね?」

 セシリーが確認してくるので、俺はそれにうなずいてみせる。

「ああ。ここにいる『ゲートキーパー』を倒せば、セシリーたちも晴れて第一迷宮を卒業ってわけだ。──じゃあ準備が整ったら、ユキが扉を開けてくれ」

「はい、先輩! ──セシリーもルシアも、準備はいい?」

 ユキが最後の確認をすると、セシリーとルシアの二人がしっかりとうなずく。

「じゃあ──開けます……!」

 ユキが両開きの石の大扉に両手を当て、押し開けていく。

 ゴゴゴゴッと荘厳な音を立てて、大扉が開いていった。
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