世界で唯一の探索系上級職になったけど、駆け出しを育てながらのんびりやろうと思う

いかぽん

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第2章

第19話

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 夜中にユキとセシリーを連れて街を出て、ランプの灯りを手に、森の中の指定された広場へと向かう。

 広場にたどり着くと、灯りの焚かれたその場には、三人のチンピラ冒険者のほかにもう一人、大柄なスキンヘッドの斧使いらしき男が待ち構えていた。

 そして──

「……あ、兄貴……来ちまったんすね……悪いっす……うちとしたことが……ちょっと、ドジっちまったっすよ……」

 そう言って力なく笑いかけてくる【プリースト】の少女は、ひどい姿をしていた。

 両手を頭上で組んだ形でロープに縛られて、ギリギリ足が地面につくぐらいに調整され、木に吊るされている。

 いつも彼女が身に着けている純白のローブはずたずたに引き裂かれ、肌や下着が大幅にあらわになっており、さらにその腹部には痛々しい青痣がいくつもできていた。

 彼女の足元の地面には、【破邪の戦鎚】と【ミスリルの鎖帷子】がご丁寧に揃えて置かれている。

 そして彼女の背後には、一人のチンピラ冒険者がついており、短剣を少女の首筋へと突き付けていた。

 現在のルシアは、おそらく「戦闘不能」の状態だ。
 あの短剣で首を切り裂かれれば、その一撃で絶命を余儀なくされるだろう。

 俺とユキ、セシリーが、男たちと対峙する位置まで行くと、腕を組んで立っていたスキンヘッドの大男が威嚇するように一歩前に出てくる。

「よう、優男。テメェがクリードって野郎だな。──おおっと、迂闊に動くなよ。この女の命が惜しければな」

 そんな露骨な悪党台詞を吐いてくるスキンヘッドの男。

 だが俺は、この男がそうそう侮れる相手でないことを、なんとなくだが察していた。
 少なくとも、第一迷宮クラスの冒険者ではないだろう。

 おそらくは斧使い系のパワー型職業【ウォーリア】──いや、その上級職である【ウォーロード】の可能性が高い。

 俺はスキンヘッドの男を警戒しながら、言葉を返す。

「メモには『リベンジマッチ』って書いてあったんだがな。人質を取って無抵抗の相手をなぶり殺しってのが、あんたたちの言うリベンジマッチか?」

「くくくっ、まあな。俺様にとってはリベンジも何もないが、なんにせよ勝つことがすべてよ。だが完全に無抵抗というのも面白くねぇ。だからこうしようぜ。──優男、テメェは装備している武器を全部捨てろ。素手で俺と戦って、それでテメェが俺に勝てたら、この女は返してやるよ。──もちろん、俺様はこの斧を使うがなぁ」

 スキンヘッドの男は、背中にくくり付けられていた大型の戦斧を手に取り、肩に担ぐ。

 どうやら俺を素手にさせたうえで、向こうさんは武器を使うつもりのようだ。
 なかなか見事な下衆っぷりだ。

「そうかい、そりゃあなんとも大盤振る舞いだな。ちなみにあんた、見た感じ【ウォーロード】だろ? レベルはいくつだよ」

「30だ。そう言うテメェはどうなんだ、【シーフ】の優男さんよぉ」

「こっちも30だ。互角だな」

「はっ、レベルだけならなぁ! だがこっちは戦闘の専門職で、テメェは探索職。そして俺は上級職で、テメェは下級職だ。互角なもんかよ」

「その上に武器まで捨てろってか。ずいぶんと臆病なこった」

「……チッ。口の利き方には気を付けろよ。こっちには人質がいるってことを忘れるな」

「はいはい、わかったよ。俺が悪かった」

 俺はお手上げというように両手を上げてから、腰に提げている四本の短剣を引き抜いて、一本ずつ近くの太い木の幹に投げつけていく。

 四本の短剣は、すべて木の幹に突き刺さり、俺の手元には一切の武器がなくなった。

「……本当にそれで全部だろうな?」

「疑り深いなやつだな。なんなら俺も裸にひん剥いて、身体チェックでもしてみるか?」

「いや、まあいい。仮に隠し持っていたとしても、その程度で俺様が負けるはずがないからな」

 先ほどの臆病発言が効いたのか、それ以上の要求はしてこなかった。
 まあ実際にも、ほかに「武器」は持っていないんだが。

「……あ、兄貴……ダメっすよ……うちのことは、どうなってもいいから……こいつらのこと、コテンパンにしてやってほしいっす……どうせこいつら、約束を守るつもりなんて……」

 ルシアがそう訴えかけてくるが、そんなわけにもいかない。
 俺はルシアに向かって首を横に振る。

「大丈夫だ、ルシア。素手でもこいつに勝って、すぐにお前を助けてやるから。大船に乗ったつもりで待ってろ」

「あ、兄貴……そんな格好つけてる場合じゃ……」

 俺はなおも食い下がってくるルシアに、優しく微笑みかけてやる。

 それを見たスキンヘッドは、ペッと地面に唾を吐いた。

「おう、優男。そこまで言うんだったら見せてくれよ。テメェが素手でも俺様に勝てるってところをよ?」

「ああいいぜ。いつでも見せてやるから、さっさとかかってこいよ」

 俺は普段通りに二本の短剣を構えるような姿勢でこぶしを握り、身を低くしてスキンヘッドの男の前に立つ。

 スキンヘッドの男は、再び不愉快そうに唾を吐く。

「ちっ、どこまでもスカした野郎だ。──おい、テメェら二人は、そっちの女二人を捕まえとけ。駆け出し冒険者の相手ができねぇとは言わせねぇぞ」

「「も、もちろんです、ゴンザレスさん!」」

 チンピラ冒険者たちのうち、ルシアに短剣を突き付けているのと別の二人が、ユキとセシリー、二人の少女たちの前に立つ。

 俺は二人の連れに声をかける。

「ユキ、セシリー。さすがに援護には行くのは難しい。そっちはそっちで何とかしてくれ」

「はい、先輩! ──ボクたちも、こいつらには借りがありますから」

「ええ。クリードさえうまくやってくれれば、こっちはどうにかしてみせるわ」

 ユキとセシリーは、精悍な顔つきで敵のほうを向いて、構えを取る。

 セシリーが言うとおり、彼女たちのほうはおそらくどうにかなるだろう。

 向こうさんはそんなことは知らないだろうが、今やユキもセシリーも11レベルまでレベルアップしている。

 それに加えて、強力な武具の力もある。
 特にセシリーの【アイスジャベリン】の攻撃力は、11レベル【ウィザード】の水準からは大きくかけ離れているほどだ。

 純粋な実力勝負なら、あのチンピラ冒険者たちを相手にして、負けることはまずないはずだ。

 問題は──人質に取られているルシア。
 あれをどうにかすることが、最大の課題だ。

 俺は木の幹に投げつけた短剣を、敵に気付かれないよう視界に収める。
 加えて、ルシアの首に短剣を当てている、チンピラ冒険者の動き。

(60%……いや、50%だな)

 俺は方針を固めると、スキンヘッドの男を待ち構える。

 スキンヘッドの男は、大斧を頭上で一回軽々と振り回してから、俺に向かって悠然と歩み寄ってくる。

「さあ、パーティを始めるとしようぜ、優男。──少しは楽しませてくれよなあっ!」

 男は武器の間合いに入った途端、暴風のような勢いで斧を振り下ろしてきた。
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