世界で唯一の探索系上級職になったけど、駆け出しを育てながらのんびりやろうと思う

いかぽん

文字の大きさ
21 / 22
第2章

第21話

しおりを挟む
 俺は常人のおよそ十五倍の速度で、スキンヘッドの男の懐へと駆け込んでいく。

 こちらもすでに大ダメージを負い、これ以上の被弾は許されない状態だ。
 相手を翻弄するために余裕ぶってはいるが、一手もミスるわけにはいかない。

 俺は集中力を研ぎ澄ませて、相手の動きを見極める。

「くっ──【轟刃乱舞】!」

 俺のスピードに焦ったらしきスキンヘッドは、苦し紛れに連撃系の大技を放ってきた。
 斧を猛烈な勢いで、連続して振り回す乱舞技だ。

「──悪手だな」

 俺は瞬時に横手にステップして、スキンヘッドの正面から離脱する。

 ひとたび連撃技を放てば、後戻りができない。
 途中で動作をキャンセルしたとしても、反動で大幅な隙が生まれてしまう。

 正面に向かって乱舞技を放ったスキンヘッドは、横手に回った俺に対して無防備だった。

「──【パラライズブレード】! 【パラライズブレードⅡ】」

「ぐはっ!」

 俺はその隙に乗じて、両手の【神獣のククリ】による攻撃を二セット叩き込むと、一度ターゲットから距離を取る。

 ターゲットは金属製の鎧を着ていたが、神聖器の短剣はそれをものともせずに引き裂いて、相手の胴に四条の浅くない爪跡を残した。

 一度の交戦を終えたスキンヘッドは、傷口を手で押さえながら、苦悶の声をあげる。

「く、くそっ……! こんなの、短剣の攻撃力じゃねぇぞ、どうなってやがる……! こ、殺してやる、この野郎……!」

 手負いの野獣のような目で、憎々しげに俺を睨みつけてくるスキンヘッド。

 俺はそれに、温度のない声で返す。

「それはもう無理だと思うぜ。さっきまではまだ目があったが、もう終わりだ。勝負はついた」

「もう……勝負がついた、だと……! ──ふざけるな! まだ俺様より、テメェのほうがダメージはでかいだろうが! 勝った気でいるんじゃねぇぞ!」

「純粋な物理ダメージだけなら、確かにあんたのほうが傷は浅いかもな。──だがあんた自身、もう分かってるだろ。もう体がまともに動かないはずだ」

 俺のその言葉に、スキンヘッドはぎりりっと歯を軋ませる。

「くそっ……! この体の痺れ……やっぱり【麻痺】だってのかよ……!」

「そういうことだ。しかも普通の【麻痺】じゃない。【マスターシーフ】の固有スキルによる、とっておきの代物──【強化麻痺】だ」

「き、【強化麻痺】だと……!?」

 バッドステータスの【麻痺】を与えると、相手の体には軽度の痺れが出て、通常どおりには動けなくなる。

【シーフ】のスキル【パラライズブレード】は、対象に通常攻撃と同等のダメージを与えると同時に、【麻痺】を与えることができる。

 加えて、【マスターシーフ】のスキル【パラライズブレードⅡ】は、通常の【麻痺】をすでに受けている相手に使うことで、さらに強力な【強化麻痺】を与える。

 強力な痺れに侵食されたやつの体は、もはや通常の半分ほどの能力でしか動かないはずだ。

 だがスキンヘッドは、それでもなお、闘志をむき出しにしてくる。

「み、認められるか……! 俺様は攻撃力最強──戦闘系上級職の【ウォーロード】だぞ! 探索職ごときに、これだけのハンデがあって負けるわけがあるかぁあああっ!」

 スキンヘッドは夜空に向かって雄叫びをあげ、斧を振り上げて襲い掛かってくる。

 だがその速度は、11レベル【モンク】のユキのほうが、よほど速いぐらいのものだ。
 30レベルの上級職同士の戦いで、まともに通用する水準ではない。

「──だらぁあああああっ!」

「遅ぇよ」

 俺は振り下ろされる大斧を、横に跳んで悠々と回避する。
 そして二本の【神獣のククリ】を手に、手持ちで最も威力の高い攻撃スキルを発動。

「終わりだ──【サウザンドブレード】!」

 ──ズババババババッ!

 二本の短剣を使った怒涛の連続攻撃で、スキンヘッドの男の全身を滅多切りにした。

「ぐわぁあああああっ……!」

 全身から血を噴き出し、白目をむいて崩れ落ちるスキンヘッドの男。

 冒険者だから死んではいないはずだが、確実に戦闘不能だ。

「──乱舞技ってのは、確実に決められるときに使うんだよ」

 俺は両手の【神獣のククリ】をくるくると手元で回してから、腰の鞘に収める。
 こちらの戦闘は終了だ。

 そして、ユキとセシリーの戦いへと視線を向ける。
 二人の戦いも、最後の締めくくりのようだった。

「これで終わりだ──【稲妻蹴り】!」

「ぐはっ……! バ、バカな……このガキっ……なんで、こんなに強く……」

「落ちなさい──【アイスジャベリン】!」

「ぐぁあああああっ……! あ、ありえ、ねぇ……」

 少女たちからの攻撃を受けて、バタバタと倒れていく二人のチンピラ冒険者。

 彼らが戦闘不能状態に陥ったのを確認して、ユキとセシリーはハイタッチで勝利を祝った。

 だが二人は笑顔も束の間、俺の姿を見て、慌てて駆け寄ってくる。

「せ、先輩、その怪我は……!」

「大丈夫なの、クリード……?」

 俺は心配してくれた二人に向かって、穏やかに笑いかける。

「ああ。見た目は派手だが、それほどのダメージじゃない。ま、そこそこ痛いけどな。──それよりもルシアのほうが重傷だ。命に別状はないと思うが……ユキ、セシリー、悪いが彼女を、宿まで運んで休ませてやってくれ」

「分かりました、先輩。……でも、先輩は?」

 ユキが首を傾げて聞いてくる。

 俺は倒れたチンピラ冒険者たちや、スキンヘッドの男を見据えて答える。

「俺には一つ、やるべきことが残っている。それが終わったら戻る」

「……それって、私たちがここにいては、いけないことなの?」

 セシリーが瞳に真剣な色を宿して、俺の目をまっすぐに見てきた。

 どうやら俺がやろうとしていることを、薄々察しているようだが──

「ああ。セシリーも、頼む。ルシアを連れて、ユキと一緒に宿に戻ってくれ」

「……そう、分かったわ。──行きましょう、ユキ」

「で、でも……!」

「わがままを言う子は、大好きな先輩に嫌われるわよ」

「はぁっ……!? な、なんだよそれ!」

「いいから、クリードが行けって言っているんだから、さっさと行くの。ほら、ルシアを背負って。ユキのほうが私よりも【筋力】があるでしょう」

「……わ、分かったよ。──先輩、それじゃあボクたち、宿で待ってますから!」

「ああ、俺も用事が終わったら、すぐに追いかける」

 そうして俺は、ユキとそれに背負われたルシア、セシリーの三人を見送った。

 しかる後に、森の中の広場に戦闘不能状態で倒れている、四人の男たちへと視線を移す。

「さて──」

 俺がゴミを見るような目で見下すと、男たちはびくりと震える。

「ま、待て……! ま、まさかお前みたいな正義の味方が、俺たちのこと、殺したりはしねぇよな……?」

「わわわ、分かってんのか。ひ、人殺しは、犯罪だぞ!」

 男たちが口々に、的外れなことを言ってくる。

 俺はそれを鼻で笑いつつ、一度鞘にしまった二振りの短剣を抜いて、倒れている男たちのほうへゆっくりと歩いていく。

「まったく覚えがないんだが──俺はいつ正義の味方になったんだ? しかも人殺しは犯罪だって? 笑わせるなよ」

 ──ズシャッ。
 まずは一人を始末、次へと向かう。

「街の外で起こることまでは、そうそう公権力の手の及ぶところじゃない。だからお前らだって、この場所を選んだんだろ? ──それが相手にとっても都合がいいなんてことは、考えもせずにな」

 ──ずぶりっ。
 もう一人を始末、さらに次の一人へと向かう。

「警告は二度もした。一度目は冒険者ギルドで武器を抜いたとき、二度目は街中で出会ったとき。二度も警告だけで済ませた結果、ルシアが酷い目に遭った。俺の失敗だ。お前らに生存本能すら欠如しているとは思わなかったんだ。──そんな見込み違いをした俺が、危機感もなく三度目の慈悲を与えられると思うか?」

 ──ドシュッ。
 三人目を始末、最後の一人に向かう。

 すると最後の一人、スキンヘッドの男が必死に命乞いをしてきた。

「ま、待て。俺はテメェ……いやいや、あんたに手を出したのは初めてだ。この三人とは違う。俺が悪かった、もうあんたには、それにあんたの女にも、二度と手は出さねぇ。な、だから見逃してくれよ……頼むよ、へへへっ……」

 俺はそんなスキンヘッドの首筋に、短剣の刃を押し当てる。

「ヒッ……!? な、なんで……!?」

「なんで、じゃねぇよ。都合のいいことばっか言ってんじゃねぇぞ。──いいか、テメェらは喧嘩を売る相手を間違えたんだよ。限度を知らないチンピラ同士の抗争に負けた、それだけの話だ。残念だったな」

 ──ズブシュッ!
 最後の一人を始末した。

 それから俺は、二本の短剣を鞘に収め、月の綺麗な夜空を見上げてふぅと一息をつく。

 その後、骸を適当に近くの草むらへと放り込むと、俺は何食わぬ顔で街へと帰還した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...