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思惑(しわく)は交わる
魔法の代用品【悪役令嬢視点】
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生誕祭も無事終わり、三ヶ月の月日が経った。あの場で多くの交流も得てスイーツ事業の基盤も安定し、後に一ヶ月も経(た)てば一号店を開業できる見解にある。
こんな順調極まりない異世界生活を謳歌(おうか)する私だけど、忘れてはいけないのがこの世界が乙女ゲームで、私はその『悪役令嬢』であるということだ。
しかもモブとさして変わらない扱いであるにも関わらず人との伝達手段もない過酷(かこく)な修道院で生涯を過ごすことを強(し)いられる可哀想キャラ。
私はこの未来をどうしても変えなければならない。誰だってそんな修道院に入りたくない。私なりに調べてみても年の死亡率が二割を越えている時点でお断りである。
幾らか忙しい合間を縫って何とか思い付いた解決策。魔法のある世界で対抗することができるのは、同じく『魔法』だけである。
黒髪(くろかみ)紅瞳(こうがん)という不吉の象徴を持って生まれたと言うのに魔力がないなんて、本当に救われない体の持ち主だったのだろう。
笑っちゃうのがグラニッツ公爵家が代々皇室より『魔法』を司(つかさど)る家紋だったこと。
そもそもが異端(いたん)であることに加えて何よりも魔法を重要視する家柄なんて、そりゃあ周りに辺り散らかすわけである。ま、どんな理由があろうと許されたことじゃないけどね。
だからまぁ、異世界転生と言うの最高のシチュエーションで魔法を使えないのは私も流石に泣いた。だって『魔法』って言ったら全人類の夢だよ? 「魔法が使えたら~」なんて何度願ったことか。
この世界の人は魔法使いでなくとも初級な魔法なら日常的に使う。だから魔力がそもそもない私はさぞ奇怪的な目で見られていたのだろう。
そんなこの世界で最低辺の私が『魔法』に対抗するためには、【知略】と【道具】。
【知略】は既に基盤が整っている。グラニッツ商会をこの帝国最大の商会として成長させる。そうすることで私の価値は上がり、最低限の安全が買える。
もう一つの【道具】は、乙女ゲームでよくある『隠しアイテム』を利用すればいい。本当は主人公が大神官に贈る好感度上げアイテムだけど、そんな好感度なんかより私の命を救うためにぜひ役立ってほしい。
魔力を必要とする『魔道具』とはまた違い、更に希少性が高い、値打ちのつけられないモノ。全て神殿にて記録・管理されている【聖遺物】である。
本来であれば神殿で厳重に保管されているはずの聖遺物。しかしそこは乙女ゲーム。見事なご都合主義で「裏カジノ」のオークションという異世界心をくすぐる場所で競売に掛けられていたのだ。
確かこの競売にかけられたのは今年の夏頃。その効能とは裏腹にあまり見目の良いモノではなかった為適当な下級貴族の元に渡り、その貴族を助けた対価として主人公の手に渡ったのだ。
いやぁ、こうやって見るとやっぱりご都合主義って凄いね♪ だって聖遺物が神殿から盗まれて、それがたった数度の媒介(ばいかい)で主人公の手に渡るって、もうそれは奇跡という名の猿芝居(さるしばい)だもん。
今回競売に出される聖遺物の効果はひとえに言って【結界】。遥か古代に創られた魔力を必要としないが、現代の魔道具とは比べ物にならないほどの威力を誇る聖遺物の中でも汎用性(はんようせい)の高い効能である。
この【結界】とは指定した範囲の物理的・魔法的攻撃を全て無効化(むこうか)するというチート級の代物。聖遺物は一度所有者を定めると死ぬまでその人間の命令しか受け付けないため、これまで数多くの権力者がそれを手にするために戦争を起こした。
そんな醜い禍根(かこん)を断ち切るために存在が確認されている聖遺物は全てアルティナ教の本拠地(ほんきょち)の奥深くに厳重に保管されていたのだ。それは優(ゆう)に百年経った今で変わらない…。
というのが教会の主張であるが、実際は違う。何十年か前、一時(いちじ)の勢力の弱体化により警備が疎(おろそ)かになった宝物殿(ほうもつでん)に盗賊が入り、聖遺物を含め何点かの貴重な代物が盗まれた。
しかしそれを公表してしまえば教会の信頼性に傷がつく。ただでさえ勢力が弱まっていたときだったため内密(ないみつ)に処理され、盤石化(ばんじゃくか)された今必死になって回収にあたっているのだ。
そしてその聖遺物の場所を私だけがゲームの知識として知っている。あとはどうやって手に入れるかだけど、そこは準備万端。
前もってお父様におねだりして何とかカジノの招待状を貰った。これに二週間も粘(ねば)ったのだからその分の報酬が欲しいものだ。
ついでに護衛として公爵家の影である【白銘(びゃくめい)】が何人かつけられて、安全面では十分という程になった。
いよいよ当日。決行(けっこう)は深夜過ぎだ。お昼寝もしたし目はバッチリ冴えまくっている。廃れた馬車で目的地まで向かい、小一時間ほど揺られていると丁度馬車が止まった。
やっと着いたと思って馬車から降りると、扉の前には門番と言い争うフードを深く被った男がいた。そして少し下がった所には私と同じか私よりも幼い少女が一人。
う~ん…、これは計画早々問題発生かな…?
こんな順調極まりない異世界生活を謳歌(おうか)する私だけど、忘れてはいけないのがこの世界が乙女ゲームで、私はその『悪役令嬢』であるということだ。
しかもモブとさして変わらない扱いであるにも関わらず人との伝達手段もない過酷(かこく)な修道院で生涯を過ごすことを強(し)いられる可哀想キャラ。
私はこの未来をどうしても変えなければならない。誰だってそんな修道院に入りたくない。私なりに調べてみても年の死亡率が二割を越えている時点でお断りである。
幾らか忙しい合間を縫って何とか思い付いた解決策。魔法のある世界で対抗することができるのは、同じく『魔法』だけである。
黒髪(くろかみ)紅瞳(こうがん)という不吉の象徴を持って生まれたと言うのに魔力がないなんて、本当に救われない体の持ち主だったのだろう。
笑っちゃうのがグラニッツ公爵家が代々皇室より『魔法』を司(つかさど)る家紋だったこと。
そもそもが異端(いたん)であることに加えて何よりも魔法を重要視する家柄なんて、そりゃあ周りに辺り散らかすわけである。ま、どんな理由があろうと許されたことじゃないけどね。
だからまぁ、異世界転生と言うの最高のシチュエーションで魔法を使えないのは私も流石に泣いた。だって『魔法』って言ったら全人類の夢だよ? 「魔法が使えたら~」なんて何度願ったことか。
この世界の人は魔法使いでなくとも初級な魔法なら日常的に使う。だから魔力がそもそもない私はさぞ奇怪的な目で見られていたのだろう。
そんなこの世界で最低辺の私が『魔法』に対抗するためには、【知略】と【道具】。
【知略】は既に基盤が整っている。グラニッツ商会をこの帝国最大の商会として成長させる。そうすることで私の価値は上がり、最低限の安全が買える。
もう一つの【道具】は、乙女ゲームでよくある『隠しアイテム』を利用すればいい。本当は主人公が大神官に贈る好感度上げアイテムだけど、そんな好感度なんかより私の命を救うためにぜひ役立ってほしい。
魔力を必要とする『魔道具』とはまた違い、更に希少性が高い、値打ちのつけられないモノ。全て神殿にて記録・管理されている【聖遺物】である。
本来であれば神殿で厳重に保管されているはずの聖遺物。しかしそこは乙女ゲーム。見事なご都合主義で「裏カジノ」のオークションという異世界心をくすぐる場所で競売に掛けられていたのだ。
確かこの競売にかけられたのは今年の夏頃。その効能とは裏腹にあまり見目の良いモノではなかった為適当な下級貴族の元に渡り、その貴族を助けた対価として主人公の手に渡ったのだ。
いやぁ、こうやって見るとやっぱりご都合主義って凄いね♪ だって聖遺物が神殿から盗まれて、それがたった数度の媒介(ばいかい)で主人公の手に渡るって、もうそれは奇跡という名の猿芝居(さるしばい)だもん。
今回競売に出される聖遺物の効果はひとえに言って【結界】。遥か古代に創られた魔力を必要としないが、現代の魔道具とは比べ物にならないほどの威力を誇る聖遺物の中でも汎用性(はんようせい)の高い効能である。
この【結界】とは指定した範囲の物理的・魔法的攻撃を全て無効化(むこうか)するというチート級の代物。聖遺物は一度所有者を定めると死ぬまでその人間の命令しか受け付けないため、これまで数多くの権力者がそれを手にするために戦争を起こした。
そんな醜い禍根(かこん)を断ち切るために存在が確認されている聖遺物は全てアルティナ教の本拠地(ほんきょち)の奥深くに厳重に保管されていたのだ。それは優(ゆう)に百年経った今で変わらない…。
というのが教会の主張であるが、実際は違う。何十年か前、一時(いちじ)の勢力の弱体化により警備が疎(おろそ)かになった宝物殿(ほうもつでん)に盗賊が入り、聖遺物を含め何点かの貴重な代物が盗まれた。
しかしそれを公表してしまえば教会の信頼性に傷がつく。ただでさえ勢力が弱まっていたときだったため内密(ないみつ)に処理され、盤石化(ばんじゃくか)された今必死になって回収にあたっているのだ。
そしてその聖遺物の場所を私だけがゲームの知識として知っている。あとはどうやって手に入れるかだけど、そこは準備万端。
前もってお父様におねだりして何とかカジノの招待状を貰った。これに二週間も粘(ねば)ったのだからその分の報酬が欲しいものだ。
ついでに護衛として公爵家の影である【白銘(びゃくめい)】が何人かつけられて、安全面では十分という程になった。
いよいよ当日。決行(けっこう)は深夜過ぎだ。お昼寝もしたし目はバッチリ冴えまくっている。廃れた馬車で目的地まで向かい、小一時間ほど揺られていると丁度馬車が止まった。
やっと着いたと思って馬車から降りると、扉の前には門番と言い争うフードを深く被った男がいた。そして少し下がった所には私と同じか私よりも幼い少女が一人。
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