5 / 56
細入村
しおりを挟む
細入村――T県最南端に位置する人口二千人ほどの小さな村。
現在、始発から電車を乗り継ぎ、宗介たちが向かっている場所である。
光の話では、山間に面した自然豊かな村らしい。
依頼があったのは、その村の有力者である佐々村家。除霊対象はその家の一人娘(年齢は宗介と同じ十七歳)だそうだ。
彼女の状態に関して詳しいことは不明。つまりは、現場に行って直に確認し、迅速に対処しろということ。遠方からの除霊要請ではよくある話だ。
朝一番で出発したにも関わらず、宗介たちが細入村の最寄り駅に到着した時には、すでに午後三時を回っていた。
自動改札機などは存在しない小さな駅舎。
宗介は駅員に直接切符を渡し、駅の外へ出る。
外には申し訳程度の小さなロータリー。その脇にタクシーが数台。駅前だというのに人影もまばらで、絵に描いたような寂れた田舎の風景が広がっていた。
(マジで田舎だな……。駅前だってのに何もないじゃん)
そんな感想を抱いていると、
「ちょ、ちょっと待ってよ、宗介君」
と、しんどそうな声が後ろから聞こえてきた。
振り返ると、遅れて駅舎を出てくる光の姿。今日の彼女の服装は、ブルーデニムのジーンズにストライプのシャツ。長い髪も今日は一つに束ねられており、昨日のワンピース姿に比べると、比較的機能性を重視した格好に思えた。
しかし、そんな彼女の両手には旅行用の大きなトランク。そして、背中には大きなリュックまで背負っている。身軽そうな服装とは対照的に、見ているだけで暑苦しくなってしまう荷物の量だ。
額に汗を滲ませながら宗介の元まで来ると、光はドラムバック一つという軽装の宗介を恨めしそうな目で見上げてきた。
「あ、あのさ、宗介君。私だって一応か弱い女の子なんだけど……」
「だから?」
「『ちょっとくらい手伝ってやろうかな』って思ってくれてもいいんじゃないかな~って。女の子には優しくしろって教わったでしょ?」
「世の中にレディースデーがある以上、これ以上女に優しくする必要なんてねえよ」
「な、なんてドライな考え方……。宗介君って結構――あっ!?」
ちょうどその時、二人の間に携帯の着信音が鳴り響いた。聞き慣れないメロディー。鳴っているのは光の携帯らしい。
「あ、あれ? 携帯、どこだっけ?」
ぱたぱたとシャツやズボンのポケットに手をやる光。しかし、携帯は見つからない。その間も、「早く出ろ」と急かすように音楽が鳴り続ける。
「あ、そ、そうだ! さっきリュックの中に入れたんだった! きゃっ!!」
慌てて下ろしたリュックがぶつかり、そばに置いていたトランクが倒れた。その拍子に蓋が開き、はちきれんばかりに入っていた中身が辺りに散乱する。
漫画染みたバカらしい展開に宗介は呆れてしまう。
「なにやってんだよ。ガキじゃあるまいし」
「し、仕方ないじゃない! そ、それより、ぼーっと見てないで宗介君も片付けるのを手伝ってよ!」
「俺が手伝ってもいいのか? そんなものも落ちてるけど?」
宗介が地面に落ちている純白の下着を指差すと、光は「ぎゃ~」と言って顔を真っ赤に染め上げた。見た目は清楚で落ち着いた雰囲気を纏っている彼女だが、実は案外と抜けているようだ。
「や、やっぱりダメ!! あっち行ってて!!」
「手伝えだのあっちへ行けだの忙しい女だな……」
肩をすくめつつ、宗介は言われた通り近くの自販機へと移動する。
購入したスポーツドリンクを飲みながら辺りを見回すが、駅周辺だというのに、コンビニすら視界に入ってこない。しばらくこんな場所に滞在しなければならないのかと思うと、少しばかり憂鬱な気分になった。しかも、目的地である細入村はここよりさらに山の中だ。
宗介は軽く溜息を吐きつつ視線を光に戻す。
彼女は携帯電話を片手に、まだ散らばった荷物を拾い集めていた。
そして、そんな光に近づいてくる人影が一つ――。
現在、始発から電車を乗り継ぎ、宗介たちが向かっている場所である。
光の話では、山間に面した自然豊かな村らしい。
依頼があったのは、その村の有力者である佐々村家。除霊対象はその家の一人娘(年齢は宗介と同じ十七歳)だそうだ。
彼女の状態に関して詳しいことは不明。つまりは、現場に行って直に確認し、迅速に対処しろということ。遠方からの除霊要請ではよくある話だ。
朝一番で出発したにも関わらず、宗介たちが細入村の最寄り駅に到着した時には、すでに午後三時を回っていた。
自動改札機などは存在しない小さな駅舎。
宗介は駅員に直接切符を渡し、駅の外へ出る。
外には申し訳程度の小さなロータリー。その脇にタクシーが数台。駅前だというのに人影もまばらで、絵に描いたような寂れた田舎の風景が広がっていた。
(マジで田舎だな……。駅前だってのに何もないじゃん)
そんな感想を抱いていると、
「ちょ、ちょっと待ってよ、宗介君」
と、しんどそうな声が後ろから聞こえてきた。
振り返ると、遅れて駅舎を出てくる光の姿。今日の彼女の服装は、ブルーデニムのジーンズにストライプのシャツ。長い髪も今日は一つに束ねられており、昨日のワンピース姿に比べると、比較的機能性を重視した格好に思えた。
しかし、そんな彼女の両手には旅行用の大きなトランク。そして、背中には大きなリュックまで背負っている。身軽そうな服装とは対照的に、見ているだけで暑苦しくなってしまう荷物の量だ。
額に汗を滲ませながら宗介の元まで来ると、光はドラムバック一つという軽装の宗介を恨めしそうな目で見上げてきた。
「あ、あのさ、宗介君。私だって一応か弱い女の子なんだけど……」
「だから?」
「『ちょっとくらい手伝ってやろうかな』って思ってくれてもいいんじゃないかな~って。女の子には優しくしろって教わったでしょ?」
「世の中にレディースデーがある以上、これ以上女に優しくする必要なんてねえよ」
「な、なんてドライな考え方……。宗介君って結構――あっ!?」
ちょうどその時、二人の間に携帯の着信音が鳴り響いた。聞き慣れないメロディー。鳴っているのは光の携帯らしい。
「あ、あれ? 携帯、どこだっけ?」
ぱたぱたとシャツやズボンのポケットに手をやる光。しかし、携帯は見つからない。その間も、「早く出ろ」と急かすように音楽が鳴り続ける。
「あ、そ、そうだ! さっきリュックの中に入れたんだった! きゃっ!!」
慌てて下ろしたリュックがぶつかり、そばに置いていたトランクが倒れた。その拍子に蓋が開き、はちきれんばかりに入っていた中身が辺りに散乱する。
漫画染みたバカらしい展開に宗介は呆れてしまう。
「なにやってんだよ。ガキじゃあるまいし」
「し、仕方ないじゃない! そ、それより、ぼーっと見てないで宗介君も片付けるのを手伝ってよ!」
「俺が手伝ってもいいのか? そんなものも落ちてるけど?」
宗介が地面に落ちている純白の下着を指差すと、光は「ぎゃ~」と言って顔を真っ赤に染め上げた。見た目は清楚で落ち着いた雰囲気を纏っている彼女だが、実は案外と抜けているようだ。
「や、やっぱりダメ!! あっち行ってて!!」
「手伝えだのあっちへ行けだの忙しい女だな……」
肩をすくめつつ、宗介は言われた通り近くの自販機へと移動する。
購入したスポーツドリンクを飲みながら辺りを見回すが、駅周辺だというのに、コンビニすら視界に入ってこない。しばらくこんな場所に滞在しなければならないのかと思うと、少しばかり憂鬱な気分になった。しかも、目的地である細入村はここよりさらに山の中だ。
宗介は軽く溜息を吐きつつ視線を光に戻す。
彼女は携帯電話を片手に、まだ散らばった荷物を拾い集めていた。
そして、そんな光に近づいてくる人影が一つ――。
0
あなたにおすすめの小説
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
【完結】ホラー短編集「隣の怪異」
シマセイ
ホラー
それは、あなたの『隣』にも潜んでいるのかもしれない。
日常風景が歪む瞬間、すぐそばに現れる異様な気配。
襖の隙間、スマートフォンの画面、アパートの天井裏、曰く付きの達磨…。
身近な場所を舞台にした怪異譚が、これから続々と語られていきます。
じわりと心を侵食する恐怖の記録、短編集『隣の怪異』。
今宵もまた、新たな怪異の扉が開かれる──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる