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ゲロ女
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「あの馬鹿、部屋に戻ってろって言ったのに」
座敷牢を出た宗介は光を探しながら愚痴をこぼす。
けれど、内心では彼女を一人にしてしまったことを激しく後悔していた。光は御堂家の一人娘。もしものことがあったら、と宗介の中で不安が広がる。
暗い廊下で宗介の目に飛び込んできたのは、悲鳴を聞いて駆けつけたと思われる乃恵と、倒れた光の姿だった。
「おい、どうした!? 何があった?」
宗介は急いで二人の元へ駆け寄る。近くで見ると、光は泡を吹いて倒れており、乃恵はそんな光を見ながらオロオロと狼狽していた。
「あ、あの、御堂様が……わ、私、そんな……」
「落ち着け! 一体何が起こったんだ?」
乃恵は完全に取り乱してしまっている。
光の身に何かが起こり、乃恵がそれを目撃したのかもしれない。
「わ、私、鍵の見回り中だったんです。そうしたら、廊下の先に御堂様が見えて……」
「何かに襲われていたのか?」
子供たちの亡霊が光にも襲いかかった。その可能性は十分に考えられる。
しかし、乃恵の返事は予想の斜め上を行くものだった。
「い、いえ。迷っておられる様子だったので、後ろから声を掛けたのです。すると、驚かれてしまったらしく、悲鳴を上げて……」
乃恵は申し訳なさそうに、そう告げた。
「……それで倒れたのか?」
宗介が尋ねると、乃恵は気まずそうに「はい」と頷く。
それを聞いて、宗介は眩暈と共に言いようのない脱力感に襲われた。どこの世界に、後ろから声を掛けられただけで気絶する除霊師がいるのか。
個人的には朝までここに放置してやりたい気分だったが、流石にそういうわけにもいかない。小柄な乃恵では光を部屋まで運ぶのは大変だろうから、必然的に宗介がおぶってやるしかなかった。
(どこまで迷惑かければ気が済むんだよ、こいつは……)
そう思いながら宗介は光を背負う……が、本当の迷惑はこれからだった。
「オゥェェエェェ……」
宗介が光を背負い立ち上がった瞬間――背中から呻き声と共に、何とも言えないすっぱい臭いが漂ってきた。宗介の背中に目はついていない。けれど、目の前にある乃恵の困惑した表情が、何が起こったのかを全て物語っていた。
「あ、あの、黒宮様……。もう一度、お風呂の用意をした方がよろしいでしょうか?」
おずおずと尋ねてくる乃恵。
「ああ……よろしく頼む……」
こうして除霊一日目は、最悪の形で幕を閉じた。
座敷牢を出た宗介は光を探しながら愚痴をこぼす。
けれど、内心では彼女を一人にしてしまったことを激しく後悔していた。光は御堂家の一人娘。もしものことがあったら、と宗介の中で不安が広がる。
暗い廊下で宗介の目に飛び込んできたのは、悲鳴を聞いて駆けつけたと思われる乃恵と、倒れた光の姿だった。
「おい、どうした!? 何があった?」
宗介は急いで二人の元へ駆け寄る。近くで見ると、光は泡を吹いて倒れており、乃恵はそんな光を見ながらオロオロと狼狽していた。
「あ、あの、御堂様が……わ、私、そんな……」
「落ち着け! 一体何が起こったんだ?」
乃恵は完全に取り乱してしまっている。
光の身に何かが起こり、乃恵がそれを目撃したのかもしれない。
「わ、私、鍵の見回り中だったんです。そうしたら、廊下の先に御堂様が見えて……」
「何かに襲われていたのか?」
子供たちの亡霊が光にも襲いかかった。その可能性は十分に考えられる。
しかし、乃恵の返事は予想の斜め上を行くものだった。
「い、いえ。迷っておられる様子だったので、後ろから声を掛けたのです。すると、驚かれてしまったらしく、悲鳴を上げて……」
乃恵は申し訳なさそうに、そう告げた。
「……それで倒れたのか?」
宗介が尋ねると、乃恵は気まずそうに「はい」と頷く。
それを聞いて、宗介は眩暈と共に言いようのない脱力感に襲われた。どこの世界に、後ろから声を掛けられただけで気絶する除霊師がいるのか。
個人的には朝までここに放置してやりたい気分だったが、流石にそういうわけにもいかない。小柄な乃恵では光を部屋まで運ぶのは大変だろうから、必然的に宗介がおぶってやるしかなかった。
(どこまで迷惑かければ気が済むんだよ、こいつは……)
そう思いながら宗介は光を背負う……が、本当の迷惑はこれからだった。
「オゥェェエェェ……」
宗介が光を背負い立ち上がった瞬間――背中から呻き声と共に、何とも言えないすっぱい臭いが漂ってきた。宗介の背中に目はついていない。けれど、目の前にある乃恵の困惑した表情が、何が起こったのかを全て物語っていた。
「あ、あの、黒宮様……。もう一度、お風呂の用意をした方がよろしいでしょうか?」
おずおずと尋ねてくる乃恵。
「ああ……よろしく頼む……」
こうして除霊一日目は、最悪の形で幕を閉じた。
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