黒の解呪録 ~呪いの果ての少女~

蒼井 くじら

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宗介の見ていた世界

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一人になった光は、美守のいる座敷牢へと向かう。
 
 別に美守に会って何かをするわけでもないし、何かができるわけでもない。だが、光はどうしても美守に会っておかねばならない気がしていた。
 
 座敷牢へと続く廊下は暗くて不気味。光がここを一人で通るのは勿論初めてだ。竦んで震えそうになる足を拳で小突き、光は廊下を進む。
 
 扉を開け中に入ると、牢の中では美守がぐったりと横になっていた。動きはない。だが、纏わり付いている怨念はぐねぐねと彼女の身体を這いずり回っていた。


(最初にここを訪れた時は、この怨念が恐くて気持ち悪くて……)
 

 そんなことを考えながら、光は一歩柵へと近づく。


(ああ、そうか……。やっぱりそうだったんだ……)
 

 光はこの時になって、ようやく分かった。
 
 今、光の前にいるのは、醜く変わり果ててしまった怪人でも、見ているだけで吐き気を催しそうな怨念の塊でもなく、光とそう年も変わらない一人の『女の子』なのだ。苦しみながら必死に助けを求めている普通の女の子なのだ。
 
 美守を救うと覚悟を決めた光は、やっと自分も宗介と同じものを見られた気がした。


「ごめんなさい。私は……あなたからずっと目を逸らしていた。あなたを助けるために、ここへ来たはずだったのに……」
 

 光は牢の中の美守に話し掛けるが、当然のごとく美守に反応はない。


「でも、もう逃げないって決めたから。あなたのことは絶対に私が助ける。だから、もう少しだけ頑張って」
 

 胸に手を当て、光は美守に固く誓う。
 
 無論、美守から言葉が返ってくることはない。
 
 だが、光には、ほんの少しだけ美守が顎を引いたように見えた。
 
 美守も戦っている。
 
 そう思うと、光の心に勇気が湧いてきた。
 
 芽生えた感情を確かめるように、光は胸に当てた手をきゅっと握る。
 
 覚悟は決まった。
 
 勇気も持った。
 
 あとは、前に進むだけ。
 
 光は気持ちを新たに座敷牢をあとにした。



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