3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 8学年生

新学期

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 結局、翌日にトリコローレにララさんと一緒に買い物に行って、トルタ・カプレーゼというチョコレートケーキを買ってきた。ホール売りだったからそのまま渡したら、先生の執務室で一緒に頂く事になってしまった。

「一応誕生日プレゼントなのですが?」

「こんなに食べきれないよ。一緒に食べよう。マリアも楽しみにしてるし」

 後ろを見たら、マリアさんがお皿とフォークを4人分用意していた。お茶はダニエルさんが淹れている。

 トルタ・カプレーゼはアーモンドパウダーを使ったチョコレートケーキだ。アーモンドパウダーはフェルナー領の物を使っている。「美味しいから、これからも取引を」って言われちゃったけど、私は即答出来なくて、帰ってお義父様に伝えておいた。

「よろしいのでしょうか?」

「仮とはいえ婚約者だからね。大目に見てもらおう」

 トルタ・カプレーゼの大きさは4号。つまり12センチ。セシルさんには「2~4人分」と言われた。だから4人で分けるならちょうど良いのかしら。

 しっとりした食感と、濃厚なチョコレートの味わい。甘すぎなくて美味しい。

「美味しいです」

「甘さが控えめで、私にもちょうど良いと感じるよ。これは例の店で買ったの?」

「はい。セシルさんのお店、トリコローレで買いました。セシルさんに色々聞かれてしまって」

「彼女は情報を掴む話術に長けてそうだね。キャシーちゃんと組んだら怖い存在になりそうだ」

「なんですか、それ」

「ロシュフォール嬢が情報を集めて、キャシーちゃんがそれを分析する。宰相職に必要な能力だよ。王宮の宰相は5人で知恵を出しあっているけども、キャシーちゃんはひとりで出来てしまいそうだ」

「買いかぶりですよ。わたくしにそこまでの能力はありません」

「そんな事無いと思うけどね。あのピアスの色は、全員同じなのかい?」

「同じでしたけど、ララさんによると、魔力で色が変わるようです。ララさんのピアスは水色っぽい色になったそうです。セシルさんは黄色に、リーサさんは鮮やかな緑だったそうです」

「へぇ。キャシーちゃんは何色になるんだろうね」

「困ってしまいます」

「ん?」

わたくしって属性が、その……」

「あぁ。まぁ、光魔法使いだから、白っぽくはなるだろうね。ピアスホール、開けてあげようか?」

 耳朶耳たぶに触れられた。ちょっと色気が……。

「サミュエル様?」

「マリア、物騒な物は仕舞いなさい。ダニエルも」

 マリアさんがナイフを構えていた。ダニエルさんは何かを持っている?

「ダニエルさん、何を持っていますの?」

鉄飛礫つぶて。これを指の力で飛ばすんだよ。鉄だから人体なんか簡単に穴が開くよ」

「お止めくださいね?」

「お嬢ちゃんに不埒な想いを抱いている男に対しても?」

「先生はそのような事はなさいません」

「信頼頂き、光栄だね」

 ちょっと苦笑いして、先生が言う。

「でもね、キャシーちゃん。私はともかくダニエルの言う通りだよ。キャシーちゃんはどんどん可愛く綺麗になっていって、キャシーちゃんの意思なんて無視して思い通りにしようとする男はこの先、絶対に出てくるし増える。私達が守りきれなくなる事態もきっと出てくる」

「先生が仮婚約者になっているのは、その為もございますか?」

「そうだね。私はこれでも公爵の息子だ。婚約者であるキャシーちゃんを傷付けたら、フェルナー侯爵家だけじゃなくブランジット公爵家までも敵に回す事になる。貴族社会に身を置く者で、それを分からない者は居ないだろう。王宮のフォゥギィ古狸共は、私がキャシーちゃんを思い通りにする事を、期待してるんだろうけどね」

「思い通りにですか」

「キャシーちゃんじゃなかったら、有効な手法なんだろうけどね。キャシーちゃんには悪手だって、ああいう連中は分からないんだよ。自分がそういう事をして来たんだろうね」

「嫌な考え方です」

「だよねぇ。ま、学院に居る間は私が守れるけどね。ダニエルやマリア達も居るし。問題は卒業してからだ」

「そうですね。学院を離れてしまえば……」

「聖女認定されれば、聖騎士が守るだろうけど。それこそ24時間体制で」

「それはそれで……。でも仕方が無いのですわよね?」

「キャシーちゃんはもう少し自覚を持った方がいい。光魔法使いはただでさえ貴重なんだ。その中で聖女と認定されるなんて、本当に奇跡の存在なんだよ」

「それは炎の聖人様からお聞きしました」

「前世の記憶持ちゆえかもしれないね。キャシーちゃん、光魔法使いは貴重だと理解はしていても、自分が貴重な存在だと思っていないでしょ?」

「それはまぁ……」

 だって、私は私だ。光魔法使いは少なくて、貴重だと言われてもそれ光魔法は私の中では当然の事で、自分が貴重な存在だとは思えない。貴重なのは光魔法だから。

「その自覚も育ってほしいんだけどね。この先絶対にキャシーちゃんの身体を狙う、ゲスな奴等も出てくるから」

「……もしかして、卒業後すぐに聖国に行くのは……」

「認定は早い方がいいからね。キャシーちゃんの身を守る為にも」

「ありがとうございます」

 私はそこまで考えていなかった。光魔法が貴重なのは分かっていても、真に理解しきれていなかったんだろう。私が居なくても先生も居てくれるし、ララさんだって居る。スタヴィリス国内にだって光魔法使いは何人も居る。

 光魔法使いが貴重なのは相対数が少ないからで、その中に自分が含まれているという自覚が無かった。

「キャシーちゃん、アレク・セジャンから連絡があった」

「アレクお兄さんから?」

 いきなり変わった話題に、理解が追い付かない。アレクお兄さんが、私じゃなくてサミュエル先生に何か言ってきたの?

「弟が刑期を終えたそうだ」

「弟?」

「ブレイク・セジャン。どうやらセジャン家が没落したのはキャシーちゃんの所為せいだと逆恨みしているらしいね。当然アレク・セジャンにも恨みは向いているだろうけど、もっとも危険なのはキャシーちゃんだ。だから身辺に気を付けてくれって。学院が始まった時で良かったよ。キャシーちゃんの守りはなんとかなるからね」

「アレクお兄さんは大丈夫なのでしょうか?」

「あちらにも護衛はつけているよ。ブレイク・セジャンの方には監視もね」

 アレクお兄さんは自分は見ていただけで、何もしなかったと言っていた。私を虐待する事も止める事もしなかったと。私はあの家族に何かしたのだろうか?表向きの理由は私に前世の記憶があったから。でも殺されかけるまで行く?自分自身にその記憶がないから何も言えないんだけど、何かしちゃったんだろうか?

「キャシーちゃん?」

「私はあの家族に何をしたんでしょうか」

「ん?」

「殺されかける程の何かをしたのでしょうか?アレクお兄さんは何もしていないと言ってくれたけど、本当にそうかは分かりません。何をしたんでしょうか。私は理由を知りたいです」

「理由を知りたい?本当に?一応奴らの調書はあるし、閲覧出来るよ?キャシーちゃんは関係者というか、当事者、被害者だし。でもおすすめはしないね」

「ですよね」

 先生のお誕生日のお祝いを終えて、寮に帰る。

 サミュエル先生のお誕生日祝いの数日後、寮に帰るとガブリエラ様とイザベラ様が待ち構えていた。

「おかえりなさい、キャスリーン様」

「ただいま帰りました。ガブリエラ様、イザベラ様。どうなさいましたの?」

「「第2王子妃殿下と、どういうご関係ですの?」」

 わお、見事なユニゾン。2人だからちょっと違うかな?

「「お答えくださいませ」」







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