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本編

03 何考えてんだお前

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◇◆


「すごい熟睡してる……嘘でしょ~! これでも起きないの? 先輩、もう起きていいんですけど~?」
「んん……?」

 ぺちぺちと軽く頬を叩かれて、意識が少しだけ戻る。眩しくて目が開けられない。ふわふわする。まだ寝ていたいのに、どうして邪魔をされているのだろうか。

「せーんぱい、起きました?」
「みなせ……? も、朝? ……ってなんでお前が上に!」

 黒戸が驚きの声をあげるのも無理はなかった。ガウン姿の水瀬はあろうことか黒戸の腰に跨って、彼が結んでいたはずの腰紐を手に持っていたのだから。

「ばっ、やめ……! は?! 何考えてんだお前!!」

 咄嗟に押し退けようと手を伸ばそうとするのだが、何かに阻まれてうまく腕が動かない。およそパニックに陥りながら水瀬を見上げると、ぱちりと目が合った。

「先輩こそ何考えてるんですか? 夜のホテルで、お風呂上がりで、ほどよくお酒も入ってる男女ですよ? 何もないほうがおかしくないですか? 何寝ちゃってんの?」
「は……? いや、お前椅子で寝るって……」
「先輩がベッド使うって言ってくれて助かりました。椅子でも悪くはないですけど、さすがに初めてはベッドがいいかな~って。どうやって誘導するのがいいのか考えてたんで、手間が省けました」

 水瀬の顔はすっかりと上気していて、話ながら、熱い指先でガウンを左右に開いていく。下着も何も着けていないことが気がかりだったが、水瀬が腰に跨っているおかげで、下半身に目がいかないことが唯一の救いだった。

「やめろバカ、どけって」

 必死に水瀬を退けようと身を捩るが、うまくいかない。それもそのはずだ。黒戸の両腕は彼のベルトで纏め、ヘッドボードに括りつけられていたのだから。

「やめませんよー。先輩だってそろそろ辛くないですか? 身体、熱いでしょ?」
「あ? そんなこと、あるわけ」

 そう言いながら、挑戦的な笑みを浮かべる水瀬から視線を下げた。ガウンを羽織ってはいるが、下着の着けていない胸元は開いていて、大きな乳房がこぼれそうになっている。更に視線を下にずらすと、腰紐は結んでいるが黒戸に跨っているために裾がはだけ、薄桃色のレースのショーツが丸見えだった。
 明らかに誘ってる女の姿に、黒戸は喉を鳴らし、生唾を飲み込んだ。いけないと思いつつもその煽情的な光景に、彼の雄の部分が大きく首をもたげたのがわかった。
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