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恨力
怯え
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煙が、突風によって霧散した……? 後ろから、もしかして美輝さん?
美輝さんの方を見ると、両手剣を振りかざした状態でこっちを見てる。
あぁ、助けられてばかりだ。私は何も出来ない。
弱いのは分かってる。でも、こんなにも違うんだ。もっと、役の立ちたい。助けられなくてもいいように、自分で何とかできるように。
もし、ここでもう一人の私なら少しは違ったのだろうか……。
「つまんねぇーこと考えてんじゃねぇー!!」
「っ?!」
い、いきなり叫ばれた?!
あれ、美輝さんの所にいたはずの幡羅さんがいなくなってる?
どこに行ったの──というか、どこから声が?
っ、真後ろから、金属がぶつかり合う音が……?
「なっ──」
何故か男性の振りかざした大鎌を、幡羅さんが二本の短剣をクロスして受け止めて……。いつの間にここまで来てたの。気配、足音、どちらも感じなかった。
「ちっこいのに頑張るねぇ。でも、もうそろそろ限界じゃないのかい? 腕が震えているよ?」
「ニシシッ。ちっこいは余計だ、おっさん」
幡羅さんは汗を滲ませながらも、男性の大鎌を押し返し腹部に蹴りを食らわせた。でも、あまり遠くへとぶっ飛ばすことが出来ていない。男性は足を地面に付け勢いを殺し、余裕な笑みを幡羅さんに向けながら蹴られた腹部を余裕そうに摩ってる。
逆に幡羅さんは、右腕や背中から血を流してる。止血できてない!
もう、体はぼろぼろのはずなのに。動くことすら、辛いはずなのに。なのに、どうして私のことを助けてくれるの。こんな、役に立たない私なんて。
悔しいよ。また、助けられて……。
「酷いねぇ。食べ物を口にしたあとだったらどうするつもりだったんだい? 取り返しのつかないことになっていたよ」
「俺には全く関係のない事だな。次は必ず仕留める」
幡羅さんがこっちを見てきた。あぁ、多分役立たずと思っているに違いない。ただのお荷物で、邪魔だと思っているんだろうな。私も思う。こんな私、最初の攻撃で死んじゃえばよかった……。
「…………はぁ。確かにお前は弱いし、お荷物だ。今回の相手は、俺達妖裁級でもこんなに手間取るんだ、約立たずなのは当然だろ」
「え、なんですかいきなり……」
「だからよぉ、輪廻。今は、俺達に任せちゃぁくれねぇか?」
幡羅さん? いきなりどうしたの、意味がわかんない。
任せてほしい? いや、任せてほしいも何も。幡羅さん達がいないと何もできないし、二人に任せっぱなしなんですけど、今までの私も。
「楽羅、自分が弱いと思えるということは、君はまだ強くなれるということ。今ここでいなくなられては困る。これからの妖裁級を背負ってもらわんとならんからな」
美輝さんが私の頭に手を乗せ、優しく言ってくれる。
これからの妖裁級。そんなの、私には到底無理――……
「強くなろうと意識するな。意識すればするほど、体に力が入り思うように動かなくなる。今は自分の安否を優先し、俺達の戦い方を見て、学べ。難しいは考えなくていい、何もしようとしなくていい。そうすることにより、お前の力は自然体になり、思うように体が動くだろう」
え、どういうことなの。
「話はここまでだ。俺はあいつを仕留める」
カランと、幡羅さんが手に持っていた短剣を落としてしまった。
あれ、仕留めるんじゃないの? なんで短剣を地面に落とすの? 一体何をする気なんだろう。
迂闊に近付けば、今度は幡羅さんが幻覚を見せられちゃうんじゃ……。
ん? 幡羅さんがいきなり左の袖に右手を入れ何かを探り始めた?
「何かまだ、隠しているみたいだねぇ」
「ニシシッ。さぁ、どうだろうなぁ??」
いや、何か隠しているのは確実でしょ。一体何を隠しているの幡羅さん。
「ニーシシッ。ここからはガチバトルの時間だ」
っ?! な、なに。なんか、さっきまでと違う……? さっきまでのはガチじゃなかったってこと……なの?
口元にはいつもと違う、威圧的な笑み。右手をゆっくりと動かし、前髪をかきあげた。そこから顕になったのは真紅の瞳──いや、違う。
右目は変わらず真紅の瞳をしている。すごく綺麗に輝いている。でも、もう片方の瞳は違う色になっていた。
「左側の目、なんで真っ黒なの?」
幡羅さんの左目は何も映さないような、漆黒の闇が広がっている。その瞳には光が宿っていない。
"無"の世界が、幡羅さんの左目に宿っている。
見ていると吸い込まれてしまいそうな闇。目が離せない。
「ニシシッ、んじゃ。行くぞ」
いつもと同じく独特な笑いを零しながら、幡羅さんは男性へと風のごとき速さで突っ込んで行った。
もう、私では全く目で追えない。残像すら……。
「また、防がれてる……」
私なんて幡羅さんを目で追うことすら出来ないのに、男性は目で追うだけでなく、大鎌でしっかりと受け止め跳ね返していた。
跳ね返された時、一瞬だけ幡羅さんの動きが止まる。その時に何とか見えたのは、クナイ……? え、刀にワイヤー銃。短剣に、クナイ……すご。
クナイで大鎌を受け止めてるけど、やっぱり体格の差があるからかな。すぐに吹っ飛ばされてる。それでも、すぐに体を空中で回転させ、地面に足から着地し再度突っ込む。
大きな一発がないにしろ、徐々に削っていけば必ず相手は疲弊する。
私が、疲弊した相手を切れれば……。
「君は何もしなくていいと、さっき京夜が言っていただろう」
「でも!!」
「私もさっき言ったはずだ。今君に死なれては困ると。無理に動く必要はない。動ける時は、考える前に体が勝手に反応するものだ。その時が来るまで待て」
「そんな悠長なこと、言っている場合じゃないでしょう?!」
何を言っているんだ美輝さん。たしかに今すぐ貴方達みたいな動きをするのは無理だと思いますが、何もしないのも絶対に嫌だ。何かして、少しでも役に――……
「私は、京夜に教えてもらった。無闇に動くことの愚かさを。そして学んだ、自分の本来の力を引き出す方法を」
本来の力を引き出す方法?
まだ血が止まっていないのか、白い包帯が赤く滲んでる。それでも、美輝さんは両手剣を構え、目をギラギラと光らせた。
「私はどうやら、援護に適した力を持っていたらしい。自分では先陣を切った方がよいと思っいたんだがな。だから楽羅。君も、もしかしたら、自分が思っている力とは、また違う物を持っているのかもしれない。視野を狭めるな、もっと広く持つんだ。そうすれば、体は勝手に動き、自由になれる」
美輝さんが、笑ってる……?
「自由に動けるのは、本当に、楽しいぞ。だから、楽羅。諦めるな。何があっても、自身を陥れるな。希望を探せ、希望を見つけろ。お前は、今より必ず強くなる」
適当な言葉じゃない、慰めようとして言っている言葉じゃない。
心から、思っているんだ。本気で、思っているんだ。
希望を、探せ、希望を、待て……。自由を、手に入れるために。
「──っ!!」
何が、役に立たないだ。そんなの当たり前だ。私はまだまだ、自由になっていないんだ。だから、弱いし動くことが出来ない。
今、私がやるべきことは、自分の自由を手に入れることだ!!
美輝さんの方を見ると、両手剣を振りかざした状態でこっちを見てる。
あぁ、助けられてばかりだ。私は何も出来ない。
弱いのは分かってる。でも、こんなにも違うんだ。もっと、役の立ちたい。助けられなくてもいいように、自分で何とかできるように。
もし、ここでもう一人の私なら少しは違ったのだろうか……。
「つまんねぇーこと考えてんじゃねぇー!!」
「っ?!」
い、いきなり叫ばれた?!
あれ、美輝さんの所にいたはずの幡羅さんがいなくなってる?
どこに行ったの──というか、どこから声が?
っ、真後ろから、金属がぶつかり合う音が……?
「なっ──」
何故か男性の振りかざした大鎌を、幡羅さんが二本の短剣をクロスして受け止めて……。いつの間にここまで来てたの。気配、足音、どちらも感じなかった。
「ちっこいのに頑張るねぇ。でも、もうそろそろ限界じゃないのかい? 腕が震えているよ?」
「ニシシッ。ちっこいは余計だ、おっさん」
幡羅さんは汗を滲ませながらも、男性の大鎌を押し返し腹部に蹴りを食らわせた。でも、あまり遠くへとぶっ飛ばすことが出来ていない。男性は足を地面に付け勢いを殺し、余裕な笑みを幡羅さんに向けながら蹴られた腹部を余裕そうに摩ってる。
逆に幡羅さんは、右腕や背中から血を流してる。止血できてない!
もう、体はぼろぼろのはずなのに。動くことすら、辛いはずなのに。なのに、どうして私のことを助けてくれるの。こんな、役に立たない私なんて。
悔しいよ。また、助けられて……。
「酷いねぇ。食べ物を口にしたあとだったらどうするつもりだったんだい? 取り返しのつかないことになっていたよ」
「俺には全く関係のない事だな。次は必ず仕留める」
幡羅さんがこっちを見てきた。あぁ、多分役立たずと思っているに違いない。ただのお荷物で、邪魔だと思っているんだろうな。私も思う。こんな私、最初の攻撃で死んじゃえばよかった……。
「…………はぁ。確かにお前は弱いし、お荷物だ。今回の相手は、俺達妖裁級でもこんなに手間取るんだ、約立たずなのは当然だろ」
「え、なんですかいきなり……」
「だからよぉ、輪廻。今は、俺達に任せちゃぁくれねぇか?」
幡羅さん? いきなりどうしたの、意味がわかんない。
任せてほしい? いや、任せてほしいも何も。幡羅さん達がいないと何もできないし、二人に任せっぱなしなんですけど、今までの私も。
「楽羅、自分が弱いと思えるということは、君はまだ強くなれるということ。今ここでいなくなられては困る。これからの妖裁級を背負ってもらわんとならんからな」
美輝さんが私の頭に手を乗せ、優しく言ってくれる。
これからの妖裁級。そんなの、私には到底無理――……
「強くなろうと意識するな。意識すればするほど、体に力が入り思うように動かなくなる。今は自分の安否を優先し、俺達の戦い方を見て、学べ。難しいは考えなくていい、何もしようとしなくていい。そうすることにより、お前の力は自然体になり、思うように体が動くだろう」
え、どういうことなの。
「話はここまでだ。俺はあいつを仕留める」
カランと、幡羅さんが手に持っていた短剣を落としてしまった。
あれ、仕留めるんじゃないの? なんで短剣を地面に落とすの? 一体何をする気なんだろう。
迂闊に近付けば、今度は幡羅さんが幻覚を見せられちゃうんじゃ……。
ん? 幡羅さんがいきなり左の袖に右手を入れ何かを探り始めた?
「何かまだ、隠しているみたいだねぇ」
「ニシシッ。さぁ、どうだろうなぁ??」
いや、何か隠しているのは確実でしょ。一体何を隠しているの幡羅さん。
「ニーシシッ。ここからはガチバトルの時間だ」
っ?! な、なに。なんか、さっきまでと違う……? さっきまでのはガチじゃなかったってこと……なの?
口元にはいつもと違う、威圧的な笑み。右手をゆっくりと動かし、前髪をかきあげた。そこから顕になったのは真紅の瞳──いや、違う。
右目は変わらず真紅の瞳をしている。すごく綺麗に輝いている。でも、もう片方の瞳は違う色になっていた。
「左側の目、なんで真っ黒なの?」
幡羅さんの左目は何も映さないような、漆黒の闇が広がっている。その瞳には光が宿っていない。
"無"の世界が、幡羅さんの左目に宿っている。
見ていると吸い込まれてしまいそうな闇。目が離せない。
「ニシシッ、んじゃ。行くぞ」
いつもと同じく独特な笑いを零しながら、幡羅さんは男性へと風のごとき速さで突っ込んで行った。
もう、私では全く目で追えない。残像すら……。
「また、防がれてる……」
私なんて幡羅さんを目で追うことすら出来ないのに、男性は目で追うだけでなく、大鎌でしっかりと受け止め跳ね返していた。
跳ね返された時、一瞬だけ幡羅さんの動きが止まる。その時に何とか見えたのは、クナイ……? え、刀にワイヤー銃。短剣に、クナイ……すご。
クナイで大鎌を受け止めてるけど、やっぱり体格の差があるからかな。すぐに吹っ飛ばされてる。それでも、すぐに体を空中で回転させ、地面に足から着地し再度突っ込む。
大きな一発がないにしろ、徐々に削っていけば必ず相手は疲弊する。
私が、疲弊した相手を切れれば……。
「君は何もしなくていいと、さっき京夜が言っていただろう」
「でも!!」
「私もさっき言ったはずだ。今君に死なれては困ると。無理に動く必要はない。動ける時は、考える前に体が勝手に反応するものだ。その時が来るまで待て」
「そんな悠長なこと、言っている場合じゃないでしょう?!」
何を言っているんだ美輝さん。たしかに今すぐ貴方達みたいな動きをするのは無理だと思いますが、何もしないのも絶対に嫌だ。何かして、少しでも役に――……
「私は、京夜に教えてもらった。無闇に動くことの愚かさを。そして学んだ、自分の本来の力を引き出す方法を」
本来の力を引き出す方法?
まだ血が止まっていないのか、白い包帯が赤く滲んでる。それでも、美輝さんは両手剣を構え、目をギラギラと光らせた。
「私はどうやら、援護に適した力を持っていたらしい。自分では先陣を切った方がよいと思っいたんだがな。だから楽羅。君も、もしかしたら、自分が思っている力とは、また違う物を持っているのかもしれない。視野を狭めるな、もっと広く持つんだ。そうすれば、体は勝手に動き、自由になれる」
美輝さんが、笑ってる……?
「自由に動けるのは、本当に、楽しいぞ。だから、楽羅。諦めるな。何があっても、自身を陥れるな。希望を探せ、希望を見つけろ。お前は、今より必ず強くなる」
適当な言葉じゃない、慰めようとして言っている言葉じゃない。
心から、思っているんだ。本気で、思っているんだ。
希望を、探せ、希望を、待て……。自由を、手に入れるために。
「──っ!!」
何が、役に立たないだ。そんなの当たり前だ。私はまだまだ、自由になっていないんだ。だから、弱いし動くことが出来ない。
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