輪廻を周り、恨みを払う刃となれ

桜桃-サクランボ-

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恨力

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「ちょこまかと、鬱陶しいねぇ」
「ニシシッ。これが俺の武器だからな」

 輪廻は風織かおりが見ているから問題なさそうだな。

 まったく、面倒なことばかり考えやがって。今あいつが弱いのは仕方がねぇだろ、天才じゃねぇんだから。

 凡人に生まれてきてしまった俺達みたいな奴は、コツコツ色んな物を少しずつでも積み重ねていかねぇとならん。じゃなかったら、この世界では死ぬのみ。
 生きたければ、強くなりたいのなら。最後まで、積み続けなければならない。そうやって、生きるしかねぇんだよ。

 この、怨みの世界では――……


 ひとまず、今はこいつをその場から動かねぇようにしねぇと。だが、足場がここにはあまりない。森の中に引きずり込みてぇが、この男は俺の誘いなんぞ乗らねぇだろうな。

 今も腕や足などより、首や視力などを重点的に守ってやがる。せめて片方の目だけでも潰せれば殺りやすいんだがな……。

 クナイだけじゃ削ることが出来ねぇ。ワイヤー銃を使うか。

 ワイヤー銃は移動だけではない。使い方は様々なんだよ。

 まず、おめぇに放ってやる。

「おっと。危ないねぇ~。飛び道具も使うのかい?」

 ま、だよな。簡単に体を捻るだけで避けられる。まぁ、仕留められないのはわかってるし問題ねぇわ。そのままワイヤーを切り離し足場を作り、空中でてめぇをクナイで斬りつけてやるよ。

 避けられても、避けられても。ワイヤー銃で撃ちまくり、クナイで切り付ける。これで足場も生成できるし、もっと機動力をあげてやるよ。空中戦は、俺にとって得意分野だ。

 ワイヤー銃の銃口には切断する刃が入っているから、簡単にワイヤートラップを張ることが可能。足場だけでなく、罠も作る。本当にこの銃は役に立ちすぎるな。

 まずは、足元からだ。

 大鎌をクナイで捌きながらも、ワイヤー銃を至る所に放ちまくる。
 男が足を少し動かし、俺のクナイを避けようとした。ニシシッ、狙い通りだ。

 しっかりとワイヤーに引っかかり、男は後ろへと倒れそうになる。この隙を、逃すかよ。

「おっ、足元かい」
「ニシシッ。チビでもやりようなんだよ、おっさん」

 普段はこの身長は忌々しいが、戦闘時のみは活用させてもらう。というか、マイナス要素だけで終わらせるのは癪に障る。絶対に活用してやるよ。
 活用しなければ、俺が妖裁級にいることなんてできやしねぇからな。

 男がワイヤーに引っかかりよろめいたところを、スライディングするように男の足元を潜り抜ける。その際、足に深い切り傷を付けて。

 切り落としたかったが、人間相手にそんな事をすれば下手すると死ぬかもしれねぇし、動けなくなるくらい深く斬るしかねぇ。

 男は深く斬られたことでその場に崩れ落ちる。アキレス腱を斬ったからな。動くことすら出来ないはずだ。

 まずは機動力を奪う。次はずっと守っていた視力。腕もどうにかしたいが、足を崩したからな。腕力だけでは限界があるはずだ。なら、先に視力を潰した方がいい。

 膝を地面につけながら、クナイを持ち直す。
 狙いは外さねぇよ。必ず両目とも潰す。

 持ち替えたクナイを二本構え、男の両目を狙う。

 アキレス腱を斬られたからな。その場から動こうとはせず、無表情のまま俺を見続けている。

 ちっ、くそっ。気持ちわりぃ顔を向けてんじゃねぇぞ。

 どんなに見られたところで、俺は狙いを、外さねぇ。
 右手で二本のクナイを投げる。それと同時にワイヤーを使いその場から走る。

 男は右の指だけで二本のクナイを止めたが、それは想定内。俺は次の攻撃を仕掛ける。

「っ! ちょこまかと──」

 途中で上空に舞い、そのまま数少ない木や建物を使って張り巡らせたワイヤーを渡る。
 スピードを減速させねぇように駆け回っている俺を目で追えなくなったらしいな。目線だけを動かし探してる。
 
 そう簡単に見つかるほど、俺は甘くねぇぞ。

 さっき、俺は主様の恨力を解いた。つまりは、恨力解放中というわけ。

 普段から発動されている【相手の思考を読み取る】に関しては解放しても変わらないけどな。

 俺が使う恨力は────

「ニシシッ、丸わかりだぞ。お前の先の動きが!!!」

 あいつは煙を操り自身を覆い隠そうとしている。なら、こっちは風で煙を妨げればいい。

 風織と一瞬目を合わせた。その際、俺の両目が非対称になっていることに気付いたらしく、何も疑いなく男に向かって突風を吹かせてくれた。

「なにっ──」

 男は煙を吐き出そうと煙草を口から離そうとした時に突風が吹いたたからか、顔あたりを両手で防ぐ。

 ────目を、隠したな。

 煙を払うために吹かれた突風を利用し体を浮かせ、そのまま男へと突っ込む。
 まだ、隠し持っていたクナイを構え、今度は足ではなく上腕二頭筋辺りを深く斬りつけた。本当は両目を潰したかったが隠されているしな。腕で妥協してやるよ。

 鮮血が舞い、男は歯をかみ締め血走った目を後ろに居る俺に向けてきた。

 やべぇな、ぞくぞくする。これだ、これだ。


 ────俺を舐めるから、こうなるんだ。残念だったな。




 昔から、身長が小さいことで最初は色々言われていた。
 小さいくせに生意気、小さいくせにでしゃばんな。小さいくせに……小さいくせに……。

 身長が小さいからなんだと、心から思っていた。
 身長が小さくてもお前らよりは頭が良い、速く走れる。先を読めるから動きを封じることだって、倒すことだって出来た。
 それなのに、誰も俺を認めてくれなかった。兄でさえも、俺を見てはくれなかった。

 そう、主様以外は────





『君は才能の塊だね。どうだい、俺達と君のために、その力を妖殺隊のために使ってみないかい?』






 主様。必ずこの力、貴方の為に使います。貴方の為に使い、この世界にある恨み怨みを浄化し続けます。

 転生者がいなくなる、その日まで────
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