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冨岡の提案

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 悲しそうに事情を話すアメリア。
 話を聞いた冨岡は彼女がしばらく何も食べていない事情を察する。
 身寄りのない子どもの世話をしながら働いて孤児院を維持するのは困難なはずだ。そのために借金まで背負い、自分の食べる分まで子どもに譲っているのだろう。
 全ては冨岡の推測だったがどれも概ね正解だった。
 アメリアの言葉を聞いた冨岡は心に小さな痛みを感じる。
 おそらく自分よりも歳下だろうアメリアが自分の身を削って困っている人を助けていた事実。冨岡は心を傷めずにはいられない。
 途中まで話を聞いた冨岡は根本的な質問を投げかけた。

「あの、アメリアさんはどうしてそこまで孤児院を・・・・・・もちろん子どもたちが心配なのもわかるのですが、文字通り自分の身を削って・・・・・・慈悲の心で片付けるにはあまりにも献身的ではないですか?」

 問いかけられたアメリアは優しい微笑みを浮かべて答える。

「誰よりも子どもたちの気持ちがわかるんです。私も孤児でしたから」
「アメリアさんも・・・・・・」
「ええ、私が守っている教会は私が育った教会なんですよ。もう亡くなりましたが血は繋がっていなくても父と呼べる存在があり、家族のいなかった私に家庭の暖かさを教えてくれました。寒さも飢えも知らずに生きていくことができたのです。ですから次は私の番・・・・・・私があの教会を守り、子どもたちが愛情を持った大人になるのを見届けたい」

 そう語るアメリアの言葉は何よりも温かく優しかった。
 そして冨岡の中で自分と重なる。血の繋がらぬ祖父、源次郎に育てられ『困っている人を助けられる人間であってくれ』という言葉を受け継いだ冨岡。孤児である自分を育ててくれた教会を守り続けるアメリア。
 何か運命のようなものを感じずにはいられなかった。
 もしかすると冨岡はアメリアを救うためにこの世界へ通ずる鏡を見つけたのかもしれない。漠然とそう思い始めていた。
 
「アメリアさん!」

 冨岡は自然と彼女の名前を呼ぶ。
 心の赴くままに。心の命じるままに。
 力強く名前を呼ばれたアメリアは少し驚きながらも返事をする。

「え、あ、はい!」

 どうやらお互いに緊張しているようだ。
 それでも冨岡は自分の思いをアメリアに伝える。

「どうか俺に・・・・・・俺にアメリアさんのお手伝いをさせてください!」
「え?」

 突然の提案に戸惑うアメリア。そんな彼女の表情から自分が先走っていると自覚した冨岡は言葉の意図を説明する。

「その、俺も血の繋がらない祖父に育てられたんです。だからアメリアさんの事情が他人事に思えなくて・・・・・・俺にできることがあるのなら、協力させて欲しいんです」

 冨岡がそう話すとアメリアは少し悲しげな表情を浮かべた。

「トミオカさん・・・・・・私の話に同情してくださったのは嬉しいのですが、孤児院に携わるのは大変なことです。思いつきやその場の同情でできることではありません。途中で投げ出すことなど許されない・・・・・・軽い気持ちで言葉にしてはいけませんよ」
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