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魔法を使わない魔法みたいなもの

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 レボルの言葉の意味を理解していない冨岡だったが、本人がやる気になってくれたのならばこれ以上言うことなどない。

「楽しみにしてますね」

 とだけ言って、微笑んだ。
 その後、昼のピークを迎え一気に客が押し寄せる。
 昼食休憩をもらった労働者がこのタイミングで並ぶのだ。
 元々普通に働いていた冨岡からすると、貴重で短い昼休みの時間を行列に並ぶことで浪費させるのは申し訳ない。そこで、各職場への宅配サービスなんかがあればもっと効率的に売れるだろう、なんて考え始めた。
 接客しながら冨岡の思考は、さらに進む。昼の時間だけでなく料理の宅配サービスは、この世界でも重宝されるはずだ。
 多少割高になるが、美食を欲する貴族たちならばいくらでもお金を払うだろう。そうなれば、それ専門の従業員が必要になる。
 
「バイクを持ち込めば、元の世界と遜色のない宅配サービスができるか?」

 ふと思考の狭間でそう呟いた冨岡。
 その言葉を聞いていたレボルが、調理の手を止めずに問いかける。

「タクハイサービス?」
「ああ、なんでもないですよ。こんなのあったらいいのかなぁ、ってアイデアを練ってただけです」
「ほほぉ、どんなアイデアか聞いてもいいですか? せっかくなので、トミオカさんのように突飛なことを考えられる人のアイデアを聞いてみたい」

 そこまで期待されるほど斬新なアイデアではないのだが、わざわざ隠すものでもない。
 冨岡は『宅配サービス』について説明する。
 作った料理を温かい内に家庭や職場に届けること。その分、料金を割増にすること。
 それだけを簡潔に説明すると、レボルは不思議そうに首を傾げた。

「料理を温かい内に届ける・・・・・・そうは言っても簡単じゃないでしょう? この街だってそこそこ広いですから。人の足で届けていたのでは冷めてしまいませんか? 保温の為に魔法使いを雇うのも、資金的にどうかと思いますし」

 バイクのことを言っていなければ、レボルのように考えるのも無理はない。
 慌てて冨岡は情報を付け足す。

「人の足じゃなくて、乗り物を使おうと思ってます」
「乗り物? フォンガをってことですか? 確かにそれならば温かい内に届けられるでしょうけど・・・・・・フォンガは専門の業者を介さなければならないし、現実的ではないかもしれないですね」
「もちろん、フォンガじゃなくて・・・・・・なんて説明すればいいのかな。自動で走るカラクリというか・・・・・・」

 何とか説明しようとする冨岡だが、レボルには伝わらない。

「自動で走るフォンガじゃないもの? 他の魔物とかですか?」
「それでもないですね。めちゃくちゃ簡単に言えば、魔力を使わずに使える魔法みたいなものです。今度実物を持ってきますね。宅配サービスを始めるかはともかくとして、何かに使えるかもしれませんから」
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