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約束の先の先

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 レボルの言うように、逆から考えていけば問題の原因がはっきりする。
 原因がわかれば解決までの道のりも見えていくものだ。
 レボルが何をしたいのか、輪郭を掴んだ冨岡は頷く。

「そうですね。ブルーノさんの焦燥感はそこから」

 風邪の原因でも解き明かしたかのように言う冨岡。
 それに対してレボルは優しく頷いて返した。

「トミオカさん。私たちがすべきことは、ブルーノさんを責め立てることじゃない。そうでしょう? ブルーノさんの気持ちと原因がわかったのなら、何ができるかを考えるべきです」

 これこそまさに建設的な意見である。
 正論を受けた冨岡は再び「そうですね」と答え、自分に何ができるかを考えた。
 今すぐお金を渡すことは簡単だ。そうすればしばらくは食べていけるだろう。
 しかし、ブルーノの中にある焦燥感は消えず、酒をやめることもできない。結果、アレックスの望みが叶えられるとは思えなかった。
 酒の悪魔に呪われている、なんて表現されるブルーノが、自分の意思で酒をやめることは可能なのだろうか。そこには確固たる決意が必要。
 焦燥感に襲われている中では不可能に近い。
 
「生きていくのに十分な賃金が得られる仕事・・・・・・それさえあれば、ブルーノさんは前を向いてくれますか?」

 冨岡は真剣に思考した末、そう問いかける。
 するとブルーノは視線を左右に揺らしてから、口を開いた。

「林業に戻ることは不可能で、木しか触っていない俺に他の仕事なんてできるはずがねぇ」
「できない話を聞いてるんじゃないです。仕事があれば、酒とギャンブルをやめてアレックスを幸せにできるかを聞いているんですよ」

 これまでの強い口調とは変わり、優しく尋ねる冨岡。それはブルーノに手を差し伸べるような言葉だった。

「あ、ああ。俺にできる仕事があるのなら・・・・・・酒なんてやめる」
「約束できますか?」
「やめる」
「絶対に?」

 冨岡はしつこく問いかける。この約束だけは反故にさせられない。強く強く誓ってもらわなければ困るのだ。

「絶対にやめる。恥ずかしい話だが、俺は・・・・・・俺はずっと自分が嫌いで仕方なかったんだ。けど、自分ではもう止められなかった。いっそ誰かが俺を殺してくれないか・・・・・・そう思っていた。そんな俺に生まれ変わるチャンスをくれるのなら、俺は酒くれぇ捨てる」
「何のために?」
「何の・・・・・・自分の・・・・・・いや、アレックスのために!」

 その言葉を聞いた冨岡は、ふっと緊張が溶けたように目元を緩める。

「わかりました。俺はブルーノさんの言葉を信じます」
「で、でも、さっきも言ったように俺が働ける場所なんてねぇよ。林業はあの家が睨みを効かせてるし、他の職種で工房の徒弟になれるほど若くもねぇ。一体どうすりゃ・・・・・・」
「それは大丈夫です」

 冨岡がそう言うと、ブルーノだけでなくレボルも不思議そうに首を傾げた。
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