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 そう前置きをしてから冨岡は、思い出したように「あ」と一音で話を続けた。

「そういえば、新しい子を引き取る話ってどうなってます? 確か、今日にでも来るって言っていましたよね」

 するとアメリアは少し申し訳なさそうに答える。
 
「あ、そうですね。来るはずだったので待っててもらうよう書き置きを残していたのですが、ちょうど手紙が届いていたんです。先方の都合で変更になりまして、明日の夕方に来てくれるそうですよ。できればトミオカさんにも立ち会ってもらいたいのですが、大丈夫ですか?」

 冨岡としては今日一日バタバタしていたのでありがたいくらいだったが、急な予定変更は困らせてしまうと思ったようだ。
 
「先方の都合で、ですか?」
「ええ、とは言っても問題があったわけではないんですよ。教会で引き取るという旨の手紙を送ったところ、荷造り等があるので日時を変更してほしいと」
「ああ、なるほど。それは仕方ないですね。えっと、明日の夕方ですね」

 改めて冨岡は明日の予定を確認する。
 朝一番で元の世界に荷物を取りに行き、そのまま屋台の開店準備。アメリアとレボルに屋台を任せて、ブルーノと一緒にミルコの工房に向かう。
 人を雇うとなればキュルケース家にも挨拶が必要だ。何か手土産を持って、キュルケース家に顔を出すことも予定に含めるべきである。
 どの程度時間がかかるか、多めに見積もっても夕方には終わるだろう、と冨岡は頷いた。

「わかりました、夕方には戻ってくるようにしますね。移動販売『ピース』の方も早めに終わってもらって、貧民街での配布に移り余裕を持って迎えられるようにしましょう」
「はい!」

 アメリアは嬉しそうに返事をする。
 今日の情報共有と明日の予定確認を終わらせたところで、三人は明日に備え早めに解散することにした。
 料理人であるレボルは、当然のようにハンバーグの仕込みが必要だと気づき、手伝うと申し出てくれたのだが、明日屋台を任せることもあり帰宅を促した。
 帰る際に気に入った酒を一本持って帰るように勧めると、レボルは迷わずに梅酒を選ぶ。馴染みのある果実酒の中で一番口に合ったのだろう。
 レボルを見送った後は、いつも通り冨岡とアメリアで仕込みをしてそれぞれの寝室に向かった。

「じゃあ、おやすみなさい」

 冨岡が言うと、アメリアは優しく手を伸ばした。
 そのまま冨岡の袖口を掴み、引き止めるようにして「あの・・・・・・」と絞り出したような声で呼びかける。

「アメリアさん?」
「あ、すみません。その・・・・・・いえ、なんでもないです」
「そ、そうですか? 何かあるのなら」
「・・・・・・ありがとうございます」

 突然、礼を言われた冨岡は何のことか分からずに首を傾げた。

「え?」
「アレックスのこともトミオカさんがいなければ助けられなかったと思います。新しく引き取る子だって・・・・・・そう考えたらどうしてもお礼が言いたくなって。変ですかね?」
「いや、ははっ・・・・・・改めて言われると照れますね。でも俺はしたいようにしているだけですよ。そしてこれからも・・・・・・だからアメリアさんもしたいようにしてください。したいことは言ってください」
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