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これからの希望に!

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 自分の父親が他の子を抱き上げるという行為は、ローズにとって喜ばしいものではない。しかし、ローズはグッと堪えて冨岡の服を引っ張る。

「トミー、私を抱き上げなさい」
「ローズ? どうしたんですか?」
「いいから」

 催促された冨岡は、失礼にならないよう、慎重にローズの体を持ち上げた。
 結果的にそれは周囲の人間に『公爵家の二人は庶民相手でも気取らず接してくれる』という印象を与え、固まった空気を解す。
 他の参加者たちがホース公爵を歓迎するムードになったところで、冨岡は屋台の方を指差した。

「ホース公爵様、あっちに席を用意しますのでどうぞ」
「ああ、ありがとうトミオカ殿。ローズ、ダルク、行こうか」

 公爵はフィーネとリオをその場に降ろすと、冨岡に案内されるまま着いていく。
 屋台ではレボルとアメリアが肉を分けており、それを大工たちに配っていた。
 冨岡が近づいてきたことに気づいたアメリアが、手を挙げて呼びかける。

「お帰りなさい、トミオカさん。どこかへ行ったと聞いていたんですが、一体どちらに・・・・・・って、まさか、キュルケース公爵様!?」

 アメリアは持っていた皿を落としそうになりながら驚いた。
 その身なりとダルクを見て、一瞬でそう判断したのだろう。アメリアは即座に背筋を伸ばして、頭を下げる。

「こんなところへ、わざわざお越しくださり、その、恐悦? 至極? えっと、えっと」

 再び萎縮されてしまったホース公爵は、苦笑しながら手のひらを見せた。

「ははっ、君がアメリアさんだね。どうか楽にしてくれ。私は公爵としてではなく、トミオカ殿の友人として招いてもらった側だ。お邪魔するよ。そうだ、ダルク、あれを」
「かしこまりました」

 ホースに指示されたダルクは、どこからか持ってきた大きめの木箱を取り出す。
 木箱を開けると、その中には新鮮な野菜と酒樽が入っていた。

「急だったもので、大したものはご用意できておりませんが、これも晩餐にお加えください。こちらの酒は公爵家が持っている農園で作られた果実酒でございます」
 
 アメリアはその言葉を聞いて、木箱に歩み寄る。

「わぁ、食材やお酒まで。本当にありがとうございます。では、こちらで食べやすいように切らせてもらいますね。あ、そうだ、どうぞこちらに座ってお待ちください。すぐにご用意しますので」

 ホース公爵たちを冨岡が持ってきた折りたたみの椅子に座らせ、バーベキューの準備を進める。
 缶ビールを大人全員、缶ジュースを子ども全員に配り、バーベキュー台ごとに肉と野菜を置いていく。途中、ミルコが買ってきた食材もレボルが切り分けた。
 また大工たちやその家族の机は、廃材を利用して手早く作ってもらう。
 肉や酒、ちょっとした惣菜のおかわりは完全に自由だ。これ以上にないほど豪華な食べ飲み放題、というやつである。

「じゃあ、トミオカさん、乾杯の音頭を」

 アメリアに背中を押された冨岡は、まさか自分がするとは思っておらず、ホース公爵に視線をやった。
 だが、公爵は笑顔で首を横に振る。
 これ以上目立つのはごめんだ、ということだろうか。
 仕方なく冨岡は自分の缶ビールを掲げる。

「それじゃあ、みなさん! これまでの頑張りと、これからの希望に・・・・・・乾杯!」
「かんぱーい」
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