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(10)取り敢えず親密度を★2にしたい男 映画館行きのプレ
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王都には映画を鑑賞する場所が数ヶ所ある。
単独の建物のもの、ショッピングセンターに併設されたもの、巨大ホテルの中にあるもの、など形態は様々であるが、娯楽としては大昔から変わらない。もうずっと以前から鑑賞方法はバリエーションが増え、人々は各々に合った方法で楽しむようになって幾数百年。手の平に収まるサイズで超大作を観る事が当たり前になっても、自宅の大画面で臨場感溢れる音で観ようとも、束の間日常を離れられる"場"をいつの時代も人々は求めて止む事はない。
ケイトがジョルジオに誘われたのは単独の建物の方だ。その昔王立劇場で華やかな社交が行われていた歴史ある土地である。
現在は今や大陸中に根を張る大財閥が土地を買い取り、何故か映画館が建設されていた。映画館にした理由を財閥は明かしておらず、単に創始者の趣味に違いない説が有力視されている。しょーがない人だよねー、が聴こえてきそうな話である。
建物は数年前に建て替えられていた。
映画館には軽食から予約すれば一流料理人による昼夜コース料理が味わえる高級レストランに、仮眠室、必要とあらばホテルを手配してくれたりや、交通機関の案内や他の娯楽施設の予約をしてくれたりするコンシュルジュと同等の従業員が常駐しており、映画館としては他と一線を画す施設である。だが、これだけなら実は他所ににない事はない。
しかし、この施設をただの映画館と侮ることなかれ。
建設当時は平和ボケした誰もが予想し得なかった、対魔族用に攻撃を防ぐ魔法障壁が作動するシステムが完備されていた。このシステムは時々お忍びでやって来る王族も利用するロイヤルプレミアム席のみにではあるが、実は地下には利用客全員が避難出来る程広く、生存する為に必要な物資は全て揃っている対魔法及び対物理攻撃用のシェルターが存在した。
プレミアム席も地下シェルターの存在も一部の者しか知る人はいない。
使わずに済めばそれに越した事はない設備達である為、公表されていない。
「大昔は都市丸ごと守護結界を張れる魔法使いがいたそうです。その人はやがて大賢者と呼ばれ、この国のみならず大陸中に多大な貢献をしたそうです。その人が亡くなり魔法の効果がやがて薄れても、まだ生きている魔法の数々により王家は護られているそうですよ」
へええええーー。
ケイトが目を輝かせてジョルジオの話を聞き入る。
上映前の会話である。
子供の様に、というか造り自体が童顔の為、年相応の社会人にはまるで見えないケイトが瞳をキラキラさせて背の高い自分を見上げる表情が可愛いとジョルジオが思う。
ただし内容が過去の対魔族だのだったりするのだが。
「まだ生きている魔法っていうのは魔法陣?」
「が多いですね。後は魔石が埋められていたりとか」
「埋めるのか、そうなんだ」
「どちらも魔力の循環形で完結する様に描かれていたりとか設置してあったりしてます。自己完結型なので魔力の残量を気にしなくて済みます」
「面白いね」
「そうですか?」
「使い切りとか補充型じゃなくて、どこかから引っ張るでもなくて自分で力を発生させて、消費する事で力を生むんだよね」
「はい」
「すごいなあ」
ケイトはこういう話題が好きそうだ。
楽しそうで何より。
が。
にこっと笑ってジョルジオがこっそり溜め息を吐く。
焦って追い駆けると引かれて距離を取られそうだし、焦らないで追い駆けているつもりでも歩くスピードが違うからいつの間にか追い越してしまって振り返るといなかったりする危険性が大。距離感大事。俺の一歩をケイトさんの一歩に合わせるのだ。出来る、俺には出来る。
なので、今日はあくまでも"お出掛け"または"遊びに来た"である。
小中高生かな。
でもオッケーしてくれただけでも…。
若干黄昏れるジョルジオをよそに、ケイトの機嫌は良さそうだった。
「あの、ケイトさん」
ジョルジオが頼りない声でケイトを呼ぶ。
「…ここに来る事、強要してしまってすみません」
ケイトが目を瞬きジョルジオを見た。
「ここまで来てそんな事言われても」
「そうなんですけど」
「やっぱり別の人と来たかった?」
今すぐ帰る雰囲気を勝手に察し、ジョルジオが頭と手をぶんぶん振った。
「違います違います違います」
ケイトが微笑む。
「多分、こういう機会でもなかったらロイヤルプレミアム席なんか一生座れなかったし、誘われなかったら映画館なんか行く気もならなかったし。休みの日に外に出るのも良いね、たまには」
「そう言って貰えると気が休まります」
「ジョルジオ君、俺に気、遣い過ぎ」
「過ぎる位がいいんです」
変に気負っているジョルジオにケイトが肩をすくめた。もう何も言うまい。
笑顔は貼り付けたままに。
「それにしても凄いね、このロイヤルプレミアム席」
「そうですね、舐めてましたね。いえ、舐めてました俺」
ケイトとジョルジオが座るロイヤルプレミアム席はプレミアム席とは別で本当に王族用のボックス席だった。
『夕食付きだそうです。どうします?』
『どうしますって?』
『俺、ケイトさん家に迎えに行きます』
………………送迎付きとは思わなかった。
単独の建物のもの、ショッピングセンターに併設されたもの、巨大ホテルの中にあるもの、など形態は様々であるが、娯楽としては大昔から変わらない。もうずっと以前から鑑賞方法はバリエーションが増え、人々は各々に合った方法で楽しむようになって幾数百年。手の平に収まるサイズで超大作を観る事が当たり前になっても、自宅の大画面で臨場感溢れる音で観ようとも、束の間日常を離れられる"場"をいつの時代も人々は求めて止む事はない。
ケイトがジョルジオに誘われたのは単独の建物の方だ。その昔王立劇場で華やかな社交が行われていた歴史ある土地である。
現在は今や大陸中に根を張る大財閥が土地を買い取り、何故か映画館が建設されていた。映画館にした理由を財閥は明かしておらず、単に創始者の趣味に違いない説が有力視されている。しょーがない人だよねー、が聴こえてきそうな話である。
建物は数年前に建て替えられていた。
映画館には軽食から予約すれば一流料理人による昼夜コース料理が味わえる高級レストランに、仮眠室、必要とあらばホテルを手配してくれたりや、交通機関の案内や他の娯楽施設の予約をしてくれたりするコンシュルジュと同等の従業員が常駐しており、映画館としては他と一線を画す施設である。だが、これだけなら実は他所ににない事はない。
しかし、この施設をただの映画館と侮ることなかれ。
建設当時は平和ボケした誰もが予想し得なかった、対魔族用に攻撃を防ぐ魔法障壁が作動するシステムが完備されていた。このシステムは時々お忍びでやって来る王族も利用するロイヤルプレミアム席のみにではあるが、実は地下には利用客全員が避難出来る程広く、生存する為に必要な物資は全て揃っている対魔法及び対物理攻撃用のシェルターが存在した。
プレミアム席も地下シェルターの存在も一部の者しか知る人はいない。
使わずに済めばそれに越した事はない設備達である為、公表されていない。
「大昔は都市丸ごと守護結界を張れる魔法使いがいたそうです。その人はやがて大賢者と呼ばれ、この国のみならず大陸中に多大な貢献をしたそうです。その人が亡くなり魔法の効果がやがて薄れても、まだ生きている魔法の数々により王家は護られているそうですよ」
へええええーー。
ケイトが目を輝かせてジョルジオの話を聞き入る。
上映前の会話である。
子供の様に、というか造り自体が童顔の為、年相応の社会人にはまるで見えないケイトが瞳をキラキラさせて背の高い自分を見上げる表情が可愛いとジョルジオが思う。
ただし内容が過去の対魔族だのだったりするのだが。
「まだ生きている魔法っていうのは魔法陣?」
「が多いですね。後は魔石が埋められていたりとか」
「埋めるのか、そうなんだ」
「どちらも魔力の循環形で完結する様に描かれていたりとか設置してあったりしてます。自己完結型なので魔力の残量を気にしなくて済みます」
「面白いね」
「そうですか?」
「使い切りとか補充型じゃなくて、どこかから引っ張るでもなくて自分で力を発生させて、消費する事で力を生むんだよね」
「はい」
「すごいなあ」
ケイトはこういう話題が好きそうだ。
楽しそうで何より。
が。
にこっと笑ってジョルジオがこっそり溜め息を吐く。
焦って追い駆けると引かれて距離を取られそうだし、焦らないで追い駆けているつもりでも歩くスピードが違うからいつの間にか追い越してしまって振り返るといなかったりする危険性が大。距離感大事。俺の一歩をケイトさんの一歩に合わせるのだ。出来る、俺には出来る。
なので、今日はあくまでも"お出掛け"または"遊びに来た"である。
小中高生かな。
でもオッケーしてくれただけでも…。
若干黄昏れるジョルジオをよそに、ケイトの機嫌は良さそうだった。
「あの、ケイトさん」
ジョルジオが頼りない声でケイトを呼ぶ。
「…ここに来る事、強要してしまってすみません」
ケイトが目を瞬きジョルジオを見た。
「ここまで来てそんな事言われても」
「そうなんですけど」
「やっぱり別の人と来たかった?」
今すぐ帰る雰囲気を勝手に察し、ジョルジオが頭と手をぶんぶん振った。
「違います違います違います」
ケイトが微笑む。
「多分、こういう機会でもなかったらロイヤルプレミアム席なんか一生座れなかったし、誘われなかったら映画館なんか行く気もならなかったし。休みの日に外に出るのも良いね、たまには」
「そう言って貰えると気が休まります」
「ジョルジオ君、俺に気、遣い過ぎ」
「過ぎる位がいいんです」
変に気負っているジョルジオにケイトが肩をすくめた。もう何も言うまい。
笑顔は貼り付けたままに。
「それにしても凄いね、このロイヤルプレミアム席」
「そうですね、舐めてましたね。いえ、舐めてました俺」
ケイトとジョルジオが座るロイヤルプレミアム席はプレミアム席とは別で本当に王族用のボックス席だった。
『夕食付きだそうです。どうします?』
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