お兄ちゃんは付いてる娘！？〜双子の妹に魔法少女を押し付けられた〜

『妹の失踪』④

『妹の失踪』④
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　背後で高温に熱した鉄板に水滴を垂らした様な音。
　振り返ると道路が溶け穴が開いていた。
　穴自体は大きくないが、熱を持っているのか一部が赤く光っている。

　今の一撃でアスファルトを溶かしたのか？
　あれが頭に当たっていたらと思うと……

「なに、今の？」

「おそらくヴィランなのじゃ！」

　いや、それは分かってるんだけどね。

　とりあえず、生身のままは相手にするのは危険すぎる。
　魔法少女に変身しないと。
　今のままじゃ、何処から攻撃されてるのかも把握できず一方的にやられるだけだ。

　仮に変身したとしても、あの攻撃が急所にあたればどうなるか……
　いや、余計なことを考えてる暇はない。

　一刻も早く変身して、

　嫌な予感がし、その場を飛び退く。
　アスファルトを溶かす音。
　振り返らずとも分かる、穴が一つ増えた様だ。

　これほど強力な攻撃なのに、リロード時間が長い訳という訳ではないらしい。
　理不尽なヴィランだ。
　変身にはわずかな隙しかないとはいえ、コイツの前ではその隙が命取りだな。

　とりあえず、目に魔力を集中し視力を底上げする。
　僕が隙を晒さない範囲で出来る最大限がこれ。
　謎の攻撃の僅かな予兆、それを見逃せば僕は即お陀仏だ。

「マスコットさん、どうすればいい？」

「魔法少女に変身するのじゃ！」

「それが無理だから聞いてるの！」

　話してる間にも敵の攻撃が飛んでくる。
　視力を強化してたおかげで今度ははっきりと見えた。
　敵の攻撃の正体は光線、レーザーの様だ。

　僕が避けられてる時点で光速までは出てない、仕組みとしてはおそらく僕の必殺技と似たようなもののはず。
　道路に開いた穴を見るに、流石に威力は劣るようだが。
　それにしたってこのスピードで連射出来るのはチートである。

　くそっ、マスコットも無茶を言う。
　こんなレーザー飛び交う中で変身とか無謀だって分からないのか？

　そもそも、ヴィランが何処から攻撃してるのかすらいまいち把握出来ていない。
　レーザーの軌道から大雑把な位置はわかるのだが、いかんせんかなり距離が離れているっぽいのだ。
　まぁ、そこまで遠いのが幸いして今もまだ避け続けられている訳だが。

　とりあえず何処か身を隠したい。
　あの威力なら、何か建物があれば1、2発は耐えられるはず。
　それだけ時間があれば変身が通る。

　だが、周りは田畑ばかりの開けた場所。
　隠れるのは不可能だ。
　その向こうに雑木林があるが、遠ざかるにしてもヴィランから視線を外すのは悪手だし、ヴィランの方に向かって行くのはあまり現実的じゃない。

　一応こう着状態ではある。
　向こうは有利な現状を早々に崩す気は無いだろうし、僕は不利だが詰みじゃない。
　だが、ミスれば終了の綱渡りだ。

　こんな事を続けて、一体いつまで命が持つか……

　何か、何か無いのか？

　ここはおそらく奴の狩場なのだろう。
　遠距離攻撃を持たない者にとって、反撃手段もなければ身を隠す場所もない。
　僕には必殺技があるが、マジック・ウェポンを出したとしても結局変身しなきゃ必殺技は使えない。
　メイスはこの距離じゃ無力だし。

　あぁ、もう！
　考えてる間にも敵のレーザーが飛んでくる。
　まともに対策を立てる暇もない。

「マスコットさん何かないの！？」

「ちょっと待つのじゃ」

「っ、、、」

　と言うかさ、あのヴィランはこんなところで何やってるわけ？
　暴れるなら街中って話じゃないのかよ。
　変身前の魔法少女を狙った事といい、せっかく魔法少女を排除したのに目立つ行動を起こさなかったことといい、かなりイレギュラーなヴィランらしい。

　今だって、あんな遠くからチクチクと……

　そう言えば、マスコット。
　例のヴィランが居るであろう位置を視界に収めたまま横目に見る。
　僕の横で慌ててるような動作をしている。

　こいつ、よくまだ生きてるよな。
　意外と俊敏なのだろうか。
　そんな現実逃避的な思考のおり、ふと気がついた。

　避けるような動作こそしているが、マスコットの周りの道路は真っさら。
　レーザーで開けられた様な穴はなく綺麗なままだ。
　もしかして、ヴィランのレーザー僕の方にしか飛んできてない？

　なぜ、マスコットは狙われないんだ……

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