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『ヴィランという存在』③
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『ヴィランという存在』③
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魔法少女に何かを投げ入れられたのだ。
インターホン鳴らしても応じる気配のなかったヴィランだが、流石にこれを無視する気はないらしい。
実際はただのスマホなんだが、無害な物である保証なんてどこにもないしね。
ドアの向こう、距離にすれば1メートルもない所にヴィランが居る。
濃厚な死の気配、強者の覇気、そんな物が強烈に伝わってくる。
ニュースを見た時点で分かってはいた事だが、間違いなくかなりの強者だ。
罠なんかでは無いと理解してくれただろうか?
一応直接触らなくても見える様に画面をつけたまま郵便受けに投入したが、スマホがどう落下したかは不明だし。
落としたトーストの法則の原理的に、これぐらい高さなら画面が上を向いて落ちてくれたと思うけど。
……このタイミングでマーフィー関連は縁起でも無いな。
自分で思い出しておいてあれだが。
原理はともかく元ネタの方、“失敗する余地があるなら失敗する”って現状その余地しかない。
先輩と仲良く肉ジャムになる未来は流石にごめん被りたい。
あの写真さえ見てくれれば、ただの魔法少女では無いことぐらいは理解してくれるはず。
色々と誤解は生じるかもしれないが、それは別にいいのだ。
戦いに来た輩では無いと、それだけ分かってもらえたなら幸いなのだが。
「……魔法少女が俺に何の用だ」
よし、来た!
ドアの向こうから声が聞こえた。
渋い声だ。
想像通りの声すぎて、ちょっと笑みが浮かんだ。
とりあえず、いきなり襲いかかって来るつもりは無さそうだ。
それだけで土産の効果が実感できると言うもの。
「話がしたい」
「俺と、ヴィランと話がしたいだと?」
「あぁ、そうだ」
「魔法少女のお前が?」
「写真を見て、その上で僕らがただの魔法少女に見えるか?」
「まぁ、見えねぇな」
「その写真に写ってるのは手土産代わりだ。欲しければそっくり渡す、どうだ?」
「……」
ヴィランとやり取りする僕の横でポンコツ先輩がプルプルと震えている。
いや、怖いのは分かるけど。
どこか過剰にも見えるが、ヴィラン相手に本能的な恐怖でも感じるのだろうか?
向こうも僕たちの事、事前に気づいてたぐらいだし……
魔法少女とヴィランの間でそんな特殊な感覚があるのかもしれない。
残念ながら魔法少女になったばかりの僕はその辺の感覚が育ってないらしい。
ドアの向こうに気配こそ感じるが、それだけ。
それがヴィランのものかどうかなんて気配だけじゃ判別できる気がしない。
先輩が僕の袖を掴んでぐいぐい引いてくる。
言葉にこそ出していないが、言いたいことは分かる。
逃げたいって顔に書いてあるし。
いや、いくら引っ張られても今更逃げるわけないだろ?
さっさと覚悟を決めろ。
魔法少女で1年がベテランって言えるのかは知らないが、少なくとも僕よりは先輩なんだから。
ヴィランを狩る仕事をしておいて、ヴィラン相手にいちいち怯えるんじゃない。
「……分かった。今、開ける」
よし!
どうやら、話し合いに応じてくれるつもりらしい。
思ったよりもあっさりだったな。
この手土産、想像以上に価値があったのかもしれない。
まぁ、嬉しい誤算だ。
それに、ここからが本番だ。
気を抜かずに、
ガチャ
鍵の音、それがやけにはっきり聞こえた気がする。
……っ!
ドアがわずかに開く。
瞬間、その動きを無視して拳がドアを突き破った。
なっ、
完全に虚を突かれた。
咄嗟に防御体制を取ろうとするが、腕の伸びる方向は僕じゃない。
拳の先にいたのは先輩だ。
ポンコツとはいえ先輩も魔法少女ではある。
拳自体は見えてはいる様で、表情が驚愕に染まる。
が、それだけ。
普段から遠距離戦ばっかだったせいか動けそうにない。
そう言うとこだぞ!
そんなんだから、新人の僕に負けるんだ。
助けてやる義理は無いが、便利な駒をただで殺されるのは癪だ。
腕を直接掴んでもよかったが、昼間の黒い炎が頭をよぎる。
このヴィランがどんな能力を持ってるのかなんて知らないが、掴んだ瞬間そこから燃え上がるなんて事になったら最悪だ。
そんなリスク犯すわけない。
拳と先輩の間、そこに咄嗟にメイスを滑り込ませる。
不意こそ突かれたが、それだけ。
ヴィランの拳自体は別段早いわけじゃない。
いくら遠距離タイプとはいえ、先輩も既に魔法少女には変身済み。
これぐらい自力で避けて欲しい所だ。
想定通り、メイスは間に合った。
が、想定以上の衝撃だった。
メイスごと持っていかれそうになる。
くそっ、
無理な体勢で受けたせいで冷や汗かかされた。
敵は予想通りの実力って事だ。
追撃があると僕はともかく先輩の方は諦めるしかない、か。
マーフィーの法則なんか思い出したせいだ。
完全にフラグだったじゃないか!
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魔法少女に何かを投げ入れられたのだ。
インターホン鳴らしても応じる気配のなかったヴィランだが、流石にこれを無視する気はないらしい。
実際はただのスマホなんだが、無害な物である保証なんてどこにもないしね。
ドアの向こう、距離にすれば1メートルもない所にヴィランが居る。
濃厚な死の気配、強者の覇気、そんな物が強烈に伝わってくる。
ニュースを見た時点で分かってはいた事だが、間違いなくかなりの強者だ。
罠なんかでは無いと理解してくれただろうか?
一応直接触らなくても見える様に画面をつけたまま郵便受けに投入したが、スマホがどう落下したかは不明だし。
落としたトーストの法則の原理的に、これぐらい高さなら画面が上を向いて落ちてくれたと思うけど。
……このタイミングでマーフィー関連は縁起でも無いな。
自分で思い出しておいてあれだが。
原理はともかく元ネタの方、“失敗する余地があるなら失敗する”って現状その余地しかない。
先輩と仲良く肉ジャムになる未来は流石にごめん被りたい。
あの写真さえ見てくれれば、ただの魔法少女では無いことぐらいは理解してくれるはず。
色々と誤解は生じるかもしれないが、それは別にいいのだ。
戦いに来た輩では無いと、それだけ分かってもらえたなら幸いなのだが。
「……魔法少女が俺に何の用だ」
よし、来た!
ドアの向こうから声が聞こえた。
渋い声だ。
想像通りの声すぎて、ちょっと笑みが浮かんだ。
とりあえず、いきなり襲いかかって来るつもりは無さそうだ。
それだけで土産の効果が実感できると言うもの。
「話がしたい」
「俺と、ヴィランと話がしたいだと?」
「あぁ、そうだ」
「魔法少女のお前が?」
「写真を見て、その上で僕らがただの魔法少女に見えるか?」
「まぁ、見えねぇな」
「その写真に写ってるのは手土産代わりだ。欲しければそっくり渡す、どうだ?」
「……」
ヴィランとやり取りする僕の横でポンコツ先輩がプルプルと震えている。
いや、怖いのは分かるけど。
どこか過剰にも見えるが、ヴィラン相手に本能的な恐怖でも感じるのだろうか?
向こうも僕たちの事、事前に気づいてたぐらいだし……
魔法少女とヴィランの間でそんな特殊な感覚があるのかもしれない。
残念ながら魔法少女になったばかりの僕はその辺の感覚が育ってないらしい。
ドアの向こうに気配こそ感じるが、それだけ。
それがヴィランのものかどうかなんて気配だけじゃ判別できる気がしない。
先輩が僕の袖を掴んでぐいぐい引いてくる。
言葉にこそ出していないが、言いたいことは分かる。
逃げたいって顔に書いてあるし。
いや、いくら引っ張られても今更逃げるわけないだろ?
さっさと覚悟を決めろ。
魔法少女で1年がベテランって言えるのかは知らないが、少なくとも僕よりは先輩なんだから。
ヴィランを狩る仕事をしておいて、ヴィラン相手にいちいち怯えるんじゃない。
「……分かった。今、開ける」
よし!
どうやら、話し合いに応じてくれるつもりらしい。
思ったよりもあっさりだったな。
この手土産、想像以上に価値があったのかもしれない。
まぁ、嬉しい誤算だ。
それに、ここからが本番だ。
気を抜かずに、
ガチャ
鍵の音、それがやけにはっきり聞こえた気がする。
……っ!
ドアがわずかに開く。
瞬間、その動きを無視して拳がドアを突き破った。
なっ、
完全に虚を突かれた。
咄嗟に防御体制を取ろうとするが、腕の伸びる方向は僕じゃない。
拳の先にいたのは先輩だ。
ポンコツとはいえ先輩も魔法少女ではある。
拳自体は見えてはいる様で、表情が驚愕に染まる。
が、それだけ。
普段から遠距離戦ばっかだったせいか動けそうにない。
そう言うとこだぞ!
そんなんだから、新人の僕に負けるんだ。
助けてやる義理は無いが、便利な駒をただで殺されるのは癪だ。
腕を直接掴んでもよかったが、昼間の黒い炎が頭をよぎる。
このヴィランがどんな能力を持ってるのかなんて知らないが、掴んだ瞬間そこから燃え上がるなんて事になったら最悪だ。
そんなリスク犯すわけない。
拳と先輩の間、そこに咄嗟にメイスを滑り込ませる。
不意こそ突かれたが、それだけ。
ヴィランの拳自体は別段早いわけじゃない。
いくら遠距離タイプとはいえ、先輩も既に魔法少女には変身済み。
これぐらい自力で避けて欲しい所だ。
想定通り、メイスは間に合った。
が、想定以上の衝撃だった。
メイスごと持っていかれそうになる。
くそっ、
無理な体勢で受けたせいで冷や汗かかされた。
敵は予想通りの実力って事だ。
追撃があると僕はともかく先輩の方は諦めるしかない、か。
マーフィーの法則なんか思い出したせいだ。
完全にフラグだったじゃないか!
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