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二章 外伝

外伝2

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外伝2 宿屋の店員
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 はぁ~、失敗した。

 昨日の事だ。
 久しぶりの合コンだって事で、ちょっと調子に乗りすぎてしまったのかもしれない。
 勢いよく酒を飲んで、気がついたら眠ってしまっていた。

 近くで男の声が聞こえる。
 なかなか良い声だ。
 今日の合コンは当たりも多かったし……

 目を開けたら、顔を顰めた店主がいた。
 もう閉店するから出ていってくれ。
 慌ててお金を払おうとしたらそれはもうもらってたらしい。

 そそくさと店を出る。
 あれ?
 頭にいくつかのハテナが浮かぶ。

 少し歩いてようやく少し酔いがさめた。
 なんで私1人で寝てたの?
 こういう時の定番って、起きたらベットに寝ててとかだよね?

 今日、職場に来たら同僚がやけにツヤツヤしていた。
 まさかと思いカマをかけるとあっさりゲロった。
 と言うか、別にその事を隠すつもりも無かったっぽい。

 何があなたもくればよかったのにだ。
 お前らが置いてったんでしょうが。
 その言葉をぐっと飲み込んで笑顔で接する。

 ちょっと引き攣ってたかもしれないけど。
 大切な友好関係だ。
 合コンだって組んでくれるし。

 ここは田舎とは違う。
 放っておけば親が結婚相手を見つけてくれるわけでもない。
 このまま独身はごめんだ。

 誰か良さそうな人を。
 そうやって暇な時は男漁りばかりしている。
 最早趣味になりつつある。

 自分で言っていて思う。
 なんて悲しい趣味なんだろうか、と。

「……いらっしゃいませ」

 考え事をしていたらお客さんが来た。
 いけない、仕事中だ。
 ここをクビになったら田舎に帰る以外なくなる。

 そうすれば夫紹介してもらえるしありか?
 一瞬そんな考えが頭をよぎったが、田舎者の夫なんてごめんである。

 村で私と同年代なんてどう考えてもあいつしかいない。
 デリカシーのないやつだ。
 結婚しても苦労するに決まってる。

 実は結婚してましたとかなっても立ち直れないし。
 うん、田舎に帰るって選択肢は無しだな。
 クビにならない程度には真面目に仕事しないと。

 改めて見ると、変な客だった。
 別にこの手の客が入ってこないわけじゃない。
 人通りの多い場所だ。

 少なくとも、商店街以上には雑多な人々が通りかかる。
 ただ、冒険者ギルド周りのドヤ街よりは治安がいいとは思うけど。
 もちろん、スラム街よりも。

 頭からローブをすっぽり被った格好。
 明らかに、顔を隠してますって感じだ。

 分かることといえば背格好から言って子供っぽいってことぐらいか。
 少なくともこの宿に泊まれるような人間には見えない。
 面倒ごとじゃなければいいんだけど。

「冒険者ギルドの紹介で来たんだけど」

 女の子?
 なんか、そんな声だった。

 子供だし、声変わり前ならあんまり区別つかないけど。
 少なくとも可愛い声ではあった。
 私の中で警戒度がガクンと下がったのが、我ながら単純だと思う。

 冒険者カードと紹介状を渡された。
 とりあえず、お客さんではあるらしい。

 ただ、ランクはDだ。
 上級以外の冒険者が泊まれるとは思えないんだけど。
 ギルドはもっと見合った場所を紹介してほしい。

 見窄らしいローブを改めて見る。
 泊まれる金はあるのだろうか?

「一泊、いくら?」

「銀貨4枚の部屋と銀貨10枚の部屋がございます」

 別にこの宿の値段は高くはない。
 相場通りだ。
 なんなら部屋にしては安いって評判だし。

 ただ、冒険者ギルド周りのドヤと比べればかなりの値段。
 最安値の値段帯からだと、10倍は違う。
 この人、本当にここに泊まる気なのだろうか?

 少なくとも、宿代を聞いても帰るつもりはなさそうだ。

 この手の人間は値段を聞けば無理と悟ってすぐ帰るものなんだけど。
 意外とお金持ち?
 Dランクなのもまだ始めたばっかりなのか真面目にやってないのかって所か。

 でも、背格好が明らかに子供なんだよね。
 ますます良く分からない。

「じゃあ、10枚の方で」

 あ、高い部屋選ぶんだ。

「ギルドの紹介なので、一泊の値段が銀貨9枚ですね」

 まぁ、高いとは言っても絶対に払えない額ではないか。
 Dランクの冒険者からすれば、たまの贅沢って言える額でもないけど。
 必死に貯めれば年一回ぐらい自分へのご褒美で泊まれるかってぐらい。

 お金を払うならお客さんだ。
 余計な詮索はやめよう。

「2泊目以降は正規の値段だよね?」

「あ、はい。そうです」

 えっと……?

「じゃあ、とりあえず10泊お願いしていい?」

 10泊?
 え、10泊??

 銀貨10枚の部屋を。
 Dランクの冒険者が。
 10泊。

「了解しました。銀貨99枚です」

 見窄らしいローブの内側から金貨が出てきた。

 ……

「銀貨1枚のお返しと、こちらお部屋の鍵になります。荷物などあれば部屋まで運ばせていただきますが、いかがなされますか?」

「大丈夫」

 後ろ姿を見送る。

 我ながら良くまともに対応できたものだと思う。
 普段からやってる仕事だし。
 そこまで真面目にやってるつもりはなかったが、案外身についていたらしい。

 本当に変な客だった。
 何者なんだろうか?

 さっきの手、綺麗な手だった。
 とても冒険者の手ではない。
 冒険者の手ってのは、もっとゴツゴツしているものだ。

 なんで知ってるかって?
 固いのが良いところに当たって気持ちよかったから。

 そんな話はどうでもいい。
 けど、まぁ。
 女の子っぽかったし、そう言うことなのかもしれない。

 上級冒険者を相手にした。
 ならきっかけ作りにも冒険者カードはあったほうがいいのか。
 Dランクに上がってるのもそういう理由。

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 次の日、男の子部屋に連れ込んで行くのを目撃した。
 予想は当たった。
 でも、随分と可愛らしい見た目の子だ。

 羨ましい、爆発しろ!

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