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本編
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「百合ちゃん、ごめんね。席外してて。コピー用紙取りに来てくれたって聞いて」
同じ部署の川澄冴子が入ってきた。
冴子は百合よりも五歳年上で入社当初から指導係をしてくれている今では気心のしれた良き先輩である。
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。でもこれでストックなくなっちゃったんで注文かけないとですね。なにかほかに備品在庫足りてないのなかったですっけ?」
「事務所戻ってから一緒に確認しよっか。それより、これ」
棚の扉を閉めて冴子の言葉に振り向いたら、冴子の手には金色の包装紙に包まれた有名ブランドのチョコレート。
「わ!どうしたんですか?」
「さっき営業さんにもらっちゃった。百合ちゃんチョコ大好きでしょ?一個だけどお裾分け」
「わぁーん、嬉しい!」
不思議と奥歯の痛みも感じない。薬が効いてきただけだろうが大好きなチョコを目の前にした百合にはそんなことはもう気にもならなくなっていた。
「今内緒で食べちゃお?」
冴子が楽しそうに笑うから百合も一緒になって笑う。冴子はとても可愛い。性格もだけれど顔も華やかで男女ともに好かれるタイプで、百合は仕事の先輩としても、同じ女としても目標にしてひそかに憧れていた。
「いただきまーす」
四×四センチほどの少し大ぶりのチョコレート。一口で食べるには大きいし勿体ない、そう思った百合は半分にかじろうと奥歯で噛んだ。
〈ガリッ!!〉
「!!」
とても嫌な音がした。同時に痛みも襲ってきて百合の顔が一気に青ざめた。
「ひ……ひたぁい……」
「な、なんか変な音しなかった?百合ちゃん?大丈夫?」
心配する冴子の声が遠くに聞こえた。百合は口元を手で覆いながら口の中の違和感を探りながら舌を動かした。
異物はある、先ほど噛んだチョコレートだ。けれどそれは次第に形をなくしていく。なのにまだ舌の上になにか異物が残っているのだ。
(な、なに?なんかいる……口の中になにかいるぅ!!)
溶けて液体と化したチョコレートと唾液を飲みきり、口の中に残るものをティッシュの上に吐き出したらそれは現れた。
「うそぉ」
ティッシュの上にはいつつけたかわからない銀歯が落ちていた。そして百合の奥歯は痛み止めを無視するほど痛みも伴いだしていた。
そして悟るのだ、自分をもう誤魔化すことはできないと。その現実を受け入れたら百合の目に涙が滲んで冴子が心配そうに百合の顔を伺う。
「百合ちゃん?ええ、大丈夫?そんなに痛いの?」
「うう、嫌ですぅ……」
「え?」
グズグズと泣き出した百合に冴子の方が慌てた。普段からさほど愚痴や弱音を吐かない百合がこんな風に子供のように泣き出したのが初めてだった。それほどまで嫌となる原因がなにか冴子にはまだわからなかった。
「百合ちゃん、どうしたの、なにがそんなに嫌なの?大丈夫?」
「あうう……きら、嫌い、嫌いなんですぅ……歯医者ぁ」
「え、あ……そっか。えー、歯医者嫌いなのかぁ」
幼子みたいに泣き出した百合に冴子は若干呆れつつも、妹のように思う百合はやはり可愛くて。とりあえず抱きしめて宥めてやることにした。
それから冴子は百合を説得することになるが、落ち込みまったく聞き入れようとしない百合をなんとか立ちあがらせて病院へ向かわせられたのは間違いなく冴子の手腕であった。
同じ部署の川澄冴子が入ってきた。
冴子は百合よりも五歳年上で入社当初から指導係をしてくれている今では気心のしれた良き先輩である。
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。でもこれでストックなくなっちゃったんで注文かけないとですね。なにかほかに備品在庫足りてないのなかったですっけ?」
「事務所戻ってから一緒に確認しよっか。それより、これ」
棚の扉を閉めて冴子の言葉に振り向いたら、冴子の手には金色の包装紙に包まれた有名ブランドのチョコレート。
「わ!どうしたんですか?」
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「わぁーん、嬉しい!」
不思議と奥歯の痛みも感じない。薬が効いてきただけだろうが大好きなチョコを目の前にした百合にはそんなことはもう気にもならなくなっていた。
「今内緒で食べちゃお?」
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「いただきまーす」
四×四センチほどの少し大ぶりのチョコレート。一口で食べるには大きいし勿体ない、そう思った百合は半分にかじろうと奥歯で噛んだ。
〈ガリッ!!〉
「!!」
とても嫌な音がした。同時に痛みも襲ってきて百合の顔が一気に青ざめた。
「ひ……ひたぁい……」
「な、なんか変な音しなかった?百合ちゃん?大丈夫?」
心配する冴子の声が遠くに聞こえた。百合は口元を手で覆いながら口の中の違和感を探りながら舌を動かした。
異物はある、先ほど噛んだチョコレートだ。けれどそれは次第に形をなくしていく。なのにまだ舌の上になにか異物が残っているのだ。
(な、なに?なんかいる……口の中になにかいるぅ!!)
溶けて液体と化したチョコレートと唾液を飲みきり、口の中に残るものをティッシュの上に吐き出したらそれは現れた。
「うそぉ」
ティッシュの上にはいつつけたかわからない銀歯が落ちていた。そして百合の奥歯は痛み止めを無視するほど痛みも伴いだしていた。
そして悟るのだ、自分をもう誤魔化すことはできないと。その現実を受け入れたら百合の目に涙が滲んで冴子が心配そうに百合の顔を伺う。
「百合ちゃん?ええ、大丈夫?そんなに痛いの?」
「うう、嫌ですぅ……」
「え?」
グズグズと泣き出した百合に冴子の方が慌てた。普段からさほど愚痴や弱音を吐かない百合がこんな風に子供のように泣き出したのが初めてだった。それほどまで嫌となる原因がなにか冴子にはまだわからなかった。
「百合ちゃん、どうしたの、なにがそんなに嫌なの?大丈夫?」
「あうう……きら、嫌い、嫌いなんですぅ……歯医者ぁ」
「え、あ……そっか。えー、歯医者嫌いなのかぁ」
幼子みたいに泣き出した百合に冴子は若干呆れつつも、妹のように思う百合はやはり可愛くて。とりあえず抱きしめて宥めてやることにした。
それから冴子は百合を説得することになるが、落ち込みまったく聞き入れようとしない百合をなんとか立ちあがらせて病院へ向かわせられたのは間違いなく冴子の手腕であった。
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