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後日談~ふたりのはじめての×××のお話~
episode-7
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目の前にフリフリのフリル満載の白エプロンをつけた百合がいる。三嶌は自室にカメラを仕込んでいなかったことを後悔した。百合が料理を作り出したら即ネットで買って取り付けようと考えている。
「キッチン、お借りしますね。先生はゆっくり待っていてください」
膝まづいて可愛く微笑む百合がそんなセリフを吐くので正直このまま押し倒したいくらいである。
「ありがとう。楽しみに待ってるよ。百合は料理が得意なんだね」
「いえ!普段全然しません!」
「え」
自信たっぷりに言う割にセリフと合っていない。
「お菓子を作るのが得意なの?」
料理をしないくせにいきなりのプリンアラモード?さすがの三嶌もここは突っ込んだ。
「いえ!お菓子こそ食べる専門です!」
だから自信たっぷりに言う割に内容がズレている。
「でもこれは作れる気がするんです!りりなちゃんのレシピ本は何度も読んでますので!」
読んでいるだけで作った経験はなさそうである。それなのに無駄に自信を持っている、しかも作れる気で作ろうとしている百合に呆気に取られた。
「頑張ります!」
もはやりりなちゃんのせいで百合のテンションがおかしくなっていると三嶌は若干不安になった。いつもの百合と違いすぎて可愛いはそうでも違和感がすごい。百合の抱える妄想と暴走はまだまだ未知であった。三嶌には計れない領域が百合にあることを今日思い知らされる。
「百合」
「はい」
キッチンに向かおうと立ち上がった百合の手を取る三嶌は優しい声で諭すように言う。
「慣れないキッチンだとわからないこともあるだろ?近くで見ていてもいい?」
「え、でも……」
「百合の邪魔はしないから」
邪魔など思うわけがない、百合は三嶌にそんな言葉を吐かせたことがむしろ申し訳なくなる。
「先生が邪魔になるなんかあるわけないじゃないですか……私はただ先生にゆっくりしてもらいたくて……」
「別にソファに座ってなくてもゆっくりはできるし……そうだな。百合のそばにいれる方が僕には嬉しいし心安らぐんだけどな。ダメ?」
あざとく首を傾げて指を絡めてくる。熱が伝わって百合の顔が一瞬で赤くなった。
「……わわ、わたしも……先生のそばにいれたら嬉しいです」
ちょろい百合は一瞬で三嶌の言葉に言いくるめられて二人で手を繋いでキッチンまで向かった。買ってきた品をカウンターに並べる百合の横で三嶌はレシピ本を広げている。そして思っていた。
(……普段料理しない人間にこれが作れるのか?)
何度も読んだと豪語するだけあって百合はぶつぶつ何かつぶやきながら材料の下準備を始めている。
「まずは卵を割ります!」
勢いよく発せられた声に何気なく視線をレシピ本から百合に向けて三嶌はギョッとする。百合の片手に卵が二個、あえて二個持つ理由はなんだ!
「りりなちゃんは二個一気に割ります!」
だからりりなちゃんはもういい!三嶌が止めようと声を発する前に百合の手は豪快にボウルに叩きつけられた。案の定二個の卵は派手に割れて殻も盛大に入れてボウルの中に零れ落ちた。
「ぎゃー!なんでぇ!」
「……百合、一個ずつ割ろう」
「でもりりな……「いいから。一個ずつ!」
いつも優しくて穏やかな声しか出さない三嶌が一瞬初めて厳しい声で窘めた。
かくして始まった百合のメイドごっこは三嶌の予想(理想)をしょっぱなから裏切る形で始まった。
「キッチン、お借りしますね。先生はゆっくり待っていてください」
膝まづいて可愛く微笑む百合がそんなセリフを吐くので正直このまま押し倒したいくらいである。
「ありがとう。楽しみに待ってるよ。百合は料理が得意なんだね」
「いえ!普段全然しません!」
「え」
自信たっぷりに言う割にセリフと合っていない。
「お菓子を作るのが得意なの?」
料理をしないくせにいきなりのプリンアラモード?さすがの三嶌もここは突っ込んだ。
「いえ!お菓子こそ食べる専門です!」
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「でもこれは作れる気がするんです!りりなちゃんのレシピ本は何度も読んでますので!」
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「頑張ります!」
もはやりりなちゃんのせいで百合のテンションがおかしくなっていると三嶌は若干不安になった。いつもの百合と違いすぎて可愛いはそうでも違和感がすごい。百合の抱える妄想と暴走はまだまだ未知であった。三嶌には計れない領域が百合にあることを今日思い知らされる。
「百合」
「はい」
キッチンに向かおうと立ち上がった百合の手を取る三嶌は優しい声で諭すように言う。
「慣れないキッチンだとわからないこともあるだろ?近くで見ていてもいい?」
「え、でも……」
「百合の邪魔はしないから」
邪魔など思うわけがない、百合は三嶌にそんな言葉を吐かせたことがむしろ申し訳なくなる。
「先生が邪魔になるなんかあるわけないじゃないですか……私はただ先生にゆっくりしてもらいたくて……」
「別にソファに座ってなくてもゆっくりはできるし……そうだな。百合のそばにいれる方が僕には嬉しいし心安らぐんだけどな。ダメ?」
あざとく首を傾げて指を絡めてくる。熱が伝わって百合の顔が一瞬で赤くなった。
「……わわ、わたしも……先生のそばにいれたら嬉しいです」
ちょろい百合は一瞬で三嶌の言葉に言いくるめられて二人で手を繋いでキッチンまで向かった。買ってきた品をカウンターに並べる百合の横で三嶌はレシピ本を広げている。そして思っていた。
(……普段料理しない人間にこれが作れるのか?)
何度も読んだと豪語するだけあって百合はぶつぶつ何かつぶやきながら材料の下準備を始めている。
「まずは卵を割ります!」
勢いよく発せられた声に何気なく視線をレシピ本から百合に向けて三嶌はギョッとする。百合の片手に卵が二個、あえて二個持つ理由はなんだ!
「りりなちゃんは二個一気に割ります!」
だからりりなちゃんはもういい!三嶌が止めようと声を発する前に百合の手は豪快にボウルに叩きつけられた。案の定二個の卵は派手に割れて殻も盛大に入れてボウルの中に零れ落ちた。
「ぎゃー!なんでぇ!」
「……百合、一個ずつ割ろう」
「でもりりな……「いいから。一個ずつ!」
いつも優しくて穏やかな声しか出さない三嶌が一瞬初めて厳しい声で窘めた。
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