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14話 純友ちゃん

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「海賊討伐ですか」
「それは海軍の仕事では?」
「それは分かり切ってるのだが、どうにも上手くいかない様でな」

僕たちが港町に帰って一週間、平穏な日々の合間に海上では不穏な事が進行していた。
僕とマリーとルナシャ達がギルマスの部屋に呼ばれている。
最近このシュチエーション多いよね。

「しかし海賊団となると冒険者にも犠牲が出るでしょう」
「だからこのメンバーしか集まっておらんし、募集を掛けたても誰も来んかった」
「そりゃ~、船の上で戦闘するのは分が悪いでしょう。私等大体は岡場所仕事だし」
キャサリンさんが岡場所って···言うと、あれだね、その。

「マリー」
「はい」
「最近その服よく見かけるが流行っているのか?」
「そっそれは···」
「あら~ギルマスは知らないの。
コーヘーがマリーにプレゼントした服を、町の裁縫屋が真似て作り出したのよ。
何て言ったかしら、コーヘー」
「セーラー服です」
「これかわいいよな」
「うんマリーに凄く似合う」
「そっそんな」
「コーヘーからのフーレゼントか、そりゃ何時も着てる訳だ」
「コホン!、ギルマス脱線してますよ」
ギルドのお姉さんに睨まれて、ギルマスが話を元に戻す。

「あ~それでだな。
海賊だが30人規模の様で、2つの部隊に分かれて襲っているみたいだな。
分かれてと言っても一つは偵察で、もう一つが襲っている間に、周りに軍がいないと見ると加勢してくるが、軍が近付くとあっという間に逃げるようだ」

「商船等に軍の人間は」
ルナシャのリーダーが聞く。
「うん、勿論乗船する事も有る。
が、何故かそこは襲われない」

「···何だよそれ、内通してんじゃん」
ルナシャの若い方の男性が言う。
「そうそれだ、問題なのは。だから冒険者にお鉢が回って来た」
「でもあたし等5人で迎え討つには人数多過ぎない」
キャサリンさんの言う通りだ。

「風待、潮待ちそして夜では港に停泊するから、昼間にしか襲撃して来ん。
昼間ならコーヘーのスキルとマリーの召喚獣で、奴等の乗り込みはある程度抑えられるだろ。
今回は漁師は護衛しなくても良い。
彼らも戦闘員だ。
だから海賊討伐に専念してくれ。
それとコーヘー船は多少壊れても構わん。
そう言う話はつけてある」
「わかりました。航行不能に成ったら、ゆ~ちゃんで曳航しますね」
「おっお手柔らかにな」
「命の方が大事ですので、そうはいきません」
「···」
マリーもルナシャの面々も口を押さえて笑っていた。
実際何処に弾が当たろうが、知ったこっちゃない。
そんなんで他の人が死んだら目も当てられない。
船は修理出来ても人はそうは成らない。


僕達は今海運ギルドで作戦会議をしている。
漁師の息子達が5人傭兵として乗ってくれるみたい。
「先ず乗り込もうとしてる海賊はそのまま放っておいて下さい」
「いやいやソレはまずいだろ」
「大丈夫です。と言うかそいつ等に近付くとゆ~ちゃんの邪魔になります」
「「「「「ゆ~ちゃん?」」」」」

バラパララバリバリバリ。
広場に立てられた木の的が砕け飛ぶ。
仕方無いので一旦外に出て、ゆ~ちゃんの射撃を見てもらった野田阪神。
「「「「「何だー今の?」」」」」
「今のがゆ~ちゃんの機銃攻撃です。
乗り込もうとする海賊はこれで木っ端微塵です。
だからあなた方が乗り込む海賊に構うと、ミンチに成るおそれが有りますから、ご忠告申し上げます」
「「「「「マジかぁ~」」」」」

「それと船主さん、多少の船の損壊は勘弁して下さい。
命より大事なものは有りませんから」
「うむ承知した。存分にされよ」
おぅふ、肝が太いね。

それからギルド内に入り綿密な作戦を練る。
二人ぐらいは生かして捕らえる事。
海賊船は逃げたらゆ~ちゃんにマストか舵を破壊してもらい、拿捕し曳航する事。
その際手向かうものは殺しても良い事。
最終的にはその辺まで話し合った。


「こちらとしても犠牲者は出したくないので、宜しく頼む」
「一度立て籠もり事件を解決した事が有りますので、こちらに犠牲が出ようとも動きは止めません。
そちらもそのつもりで行動して下さい。
他の犠牲者で作戦を止めるとそれ以上の犠牲が出ますから」
ルナシャのリーダーのこの言葉は重い。
仲間が死んでも無視して作戦を遂行しろと言う事なのだから。
でも実際問題そこで行動を止めると確かに他の仲間が死ぬ。
あれだけ見事に作戦を遂行したのに子供が腕を切られたのだから。
一見血も涙もない無い言葉だが、その重みは充分承知している。


それから次の日僕らは、ある商船に乗り込んで話している。
そしてある伯爵領の港に向かった。

「でもオリオ伯爵の領地に集中してるわね」
「マリーちゃんそれはね、海賊の頭目がオリオ伯爵側の元役人だったからよ」
「恨みですか?」
「そうとも言えねえな。
あの役人はオリオの野郎が、漁師たちに重税を掛けてたのを不満に思ってたらしくてよ、漁師たちと結託して海賊に成っちまったって話だ」
海運ギルドの傭兵さんの一人が内情を教えてくれた。
「でもよ、商船を襲っちまったら。
関係ねー奴等に犠牲が出てるからなあ。
理由はどうであれ討伐するしかねえよな」
側の傭兵さんが付け加えてくれる。
「その通りね。感情移入は出来ないわ」
「うん、犠牲者は他の領民だ。
ここは心を鬼にするべきだ」
キャサリンさんの意見をリーダーが強調してくれた。

「その頭の名前はなんて言うんですか?」
僕は何気も無く聞いてみた。
すると先程とは別の傭兵の方。
「スミトモって言ってたな」
「えっ、?!」
「どうしたのコーヘー」
「あっ、いや何でも無い···」
「?」
マリー達にはわかる訳もない。
スミトモって日本名なんて。


出来たら殺さずに捕まえたいが。
仲間に犠牲者は出せない。
生死は諦めよう。


だけど名字なのか名前なのか?。
名前なら名字はフジワラとか。
んな馬鹿な。




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