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第二章 地獄編
54話 三大将軍
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ジェームズに礼を言い、俺達は出発した。
ジェームズが用意してくれた荷物の中にはざっくりとした大陸の地図も入っていて、商店がホメロス公爵領にあると言う事も教えてくれた。とりあえずはそこから北上し、東の地を縦断することにした。
「東の地を縦断した後はどうする? どこか具体的な目的地を考えてるのか?」
レオが俺とエヴァに聞く。
「とりあえずはヘレリル公爵領に向かう。そこに宛があってな」
「そうか。そういえば聞いてなかったが、お前らの旅の目的は何なんだ?」
「そうだな……」
ちらっとエヴァを見ると、エヴァは完全に酔っていた。三年の修業を経て魔力、魔術共に頭一つ抜けた強さに成長したエヴァも、この辺は変わっていない。
「とりあえずは魔王を倒す」
「魔王? 四人いるとされている魔族の王……の事か?」
「ああ、そうだ」
「そりゃまた、でかい目的だな」
「まぁな。その為の仲間探しだ」
「だが、それはおれにとっても好都合かもな」
レオは愛刀の二代銀月の手入れをしながら答える。
「都合が良い?」
「おれは強い奴を求めてこの大陸に来たんだ」
「出身は別の大陸なのか?」
「生まれたのは東の大国、大和帝国だ」
「へぇ……」
大和帝国。エルトリア帝国と同等の規模を持つ別大陸の帝国だっていうのは知っている。レオが持っている二代銀月やグレイド達が使っていた刀も大和帝国の産物らしい。
あまり詳しくは知らないが、話では何度か聞いた事がある。でも実際に出身だって奴と会うのは初めてだな。
「強い奴を探しに来たって事はそれなりには強いんだろ? 逆にこの大陸に来て、戦いたい奴とかは居るのか?」
「エルトリア帝国三大将軍の一人、剛力将軍ってのが強いんだろ? だからそいつと戦うのがおれの今の目標だ」
なるほどな。俺の復讐の優先順位が今は魔族だが、いずれ帝国にも喧嘩を売る時が来るだろう。そうなればレオの望みも叶う日が来るかもしれない。
「剛力将軍か。本人には会った事が無いが、その息子になら会ったことあるぜ」
「息子か。本人より強いのか?」
「流石に今はまだ将軍の方が強いだろうな」
「じゃあ興味ねぇな」
あーそうかい。と流し、パトリックを思い出す。
人理限界を持つ三流派の使い手。入学時点でアラン団長といい勝負をしていたし、対抗戦でも一戦交えた相手だ。とは言っても雷化・天装衣で蹴散らして、後は他の皆に任せたから、いまいち印象に残ってないんだよな。
「よし、ここら辺で野営の準備をしよう」
日が沈みだしているのを確認した俺は馬を止める。
「そろそろエヴァを降ろしてやんねーと」
「わかった」
◇
「その乗り物酔い、なんとかならないのか?」
俺は焚き火に薪をくべながらエヴァに聞く。
「んー……」
「心頭滅却すれば馬車なんかで酔わない」
「レオと一緒にしないでよ」
「グー……グー……」
「寝てる?」
自由人かよ。
「とりあえずエヴァももう寝ろよ。見張りはしておくから」
「うん、ありがとう! おやすみ」
「ああ、おやすみ」
◇
エルトリア帝国。
漆黒の鎧を身にまとった男と青い服を着た初老の男が廊下でばったり鉢合わせる。
兵士や貴族、王族ならば知らぬ者など居ない二人。この帝国が強国であり続ける理由の一つでもあり、軍事力をたった三人で支えている将軍の名を与えられた者達。そのうちの剛力将軍と冬将軍である。
「おお、ファリオスか」
「レボ、よくわかったな」
「何年一緒だと思う。この何も見えぬ目でもお前の事ぐらいわかる」
冬将軍、レボの目は常に閉じられており、その目にはもはや一片の光すら届かない。この目になってから既に数年の歳月が流れており、レボ自身も別の五感を研ぎ澄ます事で建物の内部構造や、人の識別ぐらいは出来るようになっている。
「そうか。暫く見なかったが、遠征にでも行っていたのか?」
レボは柱にもたれ掛かりながらゆっくり頷く。
「三年前、突如帝国に出現した人を斬りまくる通り魔、通称ハンターと呼ばれる者が居たろう?」
「ああ、アランが接触したと言っていた奴か」
「うむ。そいつがアランとの接触を機にめっきり出て来なくなっておったんじゃが、一年前再び現れたとの報告が上がっての」
「なに? そんな話、俺の所には一度も届いてなかったぞ」
「うむ。その情報自体かなり曖昧なものだったからデルタアール皇帝と相談して極秘にする事にしたんじゃ。不確定な情報に踊らされ、こちらの戦力が分散していると魔族の連中に知らせるのも愚策じゃろうとな。例え三代将軍のファリオスとて、耳に入れないようにと皇帝がおっしゃったのだ」
「なるほど、理にかなった話だ。して、その情報とは?」
「これまた奇妙な話じゃが、大魔森にふらふらと入っていくハンターの姿をアルバレス兵が目撃した、と」
「ほぅ」
「極秘にはしたが調べないわけにもいかないので、ワシと一角獣騎士団で調べに行ったんじゃ」
「それで……?」
「結論から言えば何もなかった。いくらワシらでもそうやすやすと大魔森の奥までは行けん。少なくとも人の身で行ける所までは全て調べた。だが、人の気配はおろか、何者かが生息している形跡すら発見は出来なかった。無論、魔物ならうじゃうじゃおったがの」
「その話は初耳ですね。かなり興味があります」
そこに、廊下の奥から突如として第三者の声が響いてくる。ファリオス、レボにとっては馴染み深い声でもある。
「ヴァールハイトか……」
「…………」
レボはいち早く気づき、ファリオスは渋い顔をしている。廊下の奥から現れたのは三人の中で一番若い最後の将軍、魔将軍ヴァールハイトだ。
よく兵士らの中で、三人で最強を決めるとしたら誰が最強かという議論が上がる。専ら人気なのはファリオスだが、このヴァールハイトという男は強さが未知数な為に密かな注目を集めている。
「うーん、やはりファリオスさんには嫌われているようですね……」
「そんな事はない。お前も俺達と同じ将軍の名を持つものだ。仲間だと思ってる」
口ではそう言っているが、ファリオスの顔は依然渋いままだ。本人曰く本当に嫌っているわけではないそうだが、どうにも近寄りがたい何かを感じるらしい。
「参ったな……」
丁度その時、廊下の向こうの方から声が飛んでくる。
「伝令! 伝令! ヘレリル公爵領に魔族出現!!」
「……ッ!! 行くぞ!!」
◇
「村が見えてきたぞ」
俺達はジェームズの店を出て一週間ほど順調に馬を進め、東の地を縦断していた。東の地に関しては、三人の中で俺が一番土地勘があったのだが、その俺でもリブ村以外の土地はほとんど知らない。つまり誰一人としてどこを歩いているのかわからず、彷徨っていたのだ。
そうして一週間もするうちにようやく東の地に点在する村の一つを見つけたのだ。幸いにして平原に魔物はほとんどおらず、良い意味では安全に、悪い意味では退屈に馬を進めてきた。
「寄ってみるか?」
「あー」
「うっ……気持ち悪……」
退屈のあまりやる気をなくしてしまったレオと、一週間も馬車に揺られ続ける生活に限界を迎えているエヴァをどうにかせねばと思い、休憩も兼ねて村に寄る事に決めた。
しかしこの一週間、特に何の問題も起きなかった。魔物にも遭遇しなければ盗賊団と思われる奴らにも遭遇しなかった。東の地は統治している公爵が居ない事から、魔物の討伐や盗賊団の抑制が行われていない。なので、公爵領に比べて治安は悪い方なのだが、全くそんな風には見えない。
まぁ、何も起きないに越した事は無いんだが……何か妙な違和感を感じる。
ジェームズが用意してくれた荷物の中にはざっくりとした大陸の地図も入っていて、商店がホメロス公爵領にあると言う事も教えてくれた。とりあえずはそこから北上し、東の地を縦断することにした。
「東の地を縦断した後はどうする? どこか具体的な目的地を考えてるのか?」
レオが俺とエヴァに聞く。
「とりあえずはヘレリル公爵領に向かう。そこに宛があってな」
「そうか。そういえば聞いてなかったが、お前らの旅の目的は何なんだ?」
「そうだな……」
ちらっとエヴァを見ると、エヴァは完全に酔っていた。三年の修業を経て魔力、魔術共に頭一つ抜けた強さに成長したエヴァも、この辺は変わっていない。
「とりあえずは魔王を倒す」
「魔王? 四人いるとされている魔族の王……の事か?」
「ああ、そうだ」
「そりゃまた、でかい目的だな」
「まぁな。その為の仲間探しだ」
「だが、それはおれにとっても好都合かもな」
レオは愛刀の二代銀月の手入れをしながら答える。
「都合が良い?」
「おれは強い奴を求めてこの大陸に来たんだ」
「出身は別の大陸なのか?」
「生まれたのは東の大国、大和帝国だ」
「へぇ……」
大和帝国。エルトリア帝国と同等の規模を持つ別大陸の帝国だっていうのは知っている。レオが持っている二代銀月やグレイド達が使っていた刀も大和帝国の産物らしい。
あまり詳しくは知らないが、話では何度か聞いた事がある。でも実際に出身だって奴と会うのは初めてだな。
「強い奴を探しに来たって事はそれなりには強いんだろ? 逆にこの大陸に来て、戦いたい奴とかは居るのか?」
「エルトリア帝国三大将軍の一人、剛力将軍ってのが強いんだろ? だからそいつと戦うのがおれの今の目標だ」
なるほどな。俺の復讐の優先順位が今は魔族だが、いずれ帝国にも喧嘩を売る時が来るだろう。そうなればレオの望みも叶う日が来るかもしれない。
「剛力将軍か。本人には会った事が無いが、その息子になら会ったことあるぜ」
「息子か。本人より強いのか?」
「流石に今はまだ将軍の方が強いだろうな」
「じゃあ興味ねぇな」
あーそうかい。と流し、パトリックを思い出す。
人理限界を持つ三流派の使い手。入学時点でアラン団長といい勝負をしていたし、対抗戦でも一戦交えた相手だ。とは言っても雷化・天装衣で蹴散らして、後は他の皆に任せたから、いまいち印象に残ってないんだよな。
「よし、ここら辺で野営の準備をしよう」
日が沈みだしているのを確認した俺は馬を止める。
「そろそろエヴァを降ろしてやんねーと」
「わかった」
◇
「その乗り物酔い、なんとかならないのか?」
俺は焚き火に薪をくべながらエヴァに聞く。
「んー……」
「心頭滅却すれば馬車なんかで酔わない」
「レオと一緒にしないでよ」
「グー……グー……」
「寝てる?」
自由人かよ。
「とりあえずエヴァももう寝ろよ。見張りはしておくから」
「うん、ありがとう! おやすみ」
「ああ、おやすみ」
◇
エルトリア帝国。
漆黒の鎧を身にまとった男と青い服を着た初老の男が廊下でばったり鉢合わせる。
兵士や貴族、王族ならば知らぬ者など居ない二人。この帝国が強国であり続ける理由の一つでもあり、軍事力をたった三人で支えている将軍の名を与えられた者達。そのうちの剛力将軍と冬将軍である。
「おお、ファリオスか」
「レボ、よくわかったな」
「何年一緒だと思う。この何も見えぬ目でもお前の事ぐらいわかる」
冬将軍、レボの目は常に閉じられており、その目にはもはや一片の光すら届かない。この目になってから既に数年の歳月が流れており、レボ自身も別の五感を研ぎ澄ます事で建物の内部構造や、人の識別ぐらいは出来るようになっている。
「そうか。暫く見なかったが、遠征にでも行っていたのか?」
レボは柱にもたれ掛かりながらゆっくり頷く。
「三年前、突如帝国に出現した人を斬りまくる通り魔、通称ハンターと呼ばれる者が居たろう?」
「ああ、アランが接触したと言っていた奴か」
「うむ。そいつがアランとの接触を機にめっきり出て来なくなっておったんじゃが、一年前再び現れたとの報告が上がっての」
「なに? そんな話、俺の所には一度も届いてなかったぞ」
「うむ。その情報自体かなり曖昧なものだったからデルタアール皇帝と相談して極秘にする事にしたんじゃ。不確定な情報に踊らされ、こちらの戦力が分散していると魔族の連中に知らせるのも愚策じゃろうとな。例え三代将軍のファリオスとて、耳に入れないようにと皇帝がおっしゃったのだ」
「なるほど、理にかなった話だ。して、その情報とは?」
「これまた奇妙な話じゃが、大魔森にふらふらと入っていくハンターの姿をアルバレス兵が目撃した、と」
「ほぅ」
「極秘にはしたが調べないわけにもいかないので、ワシと一角獣騎士団で調べに行ったんじゃ」
「それで……?」
「結論から言えば何もなかった。いくらワシらでもそうやすやすと大魔森の奥までは行けん。少なくとも人の身で行ける所までは全て調べた。だが、人の気配はおろか、何者かが生息している形跡すら発見は出来なかった。無論、魔物ならうじゃうじゃおったがの」
「その話は初耳ですね。かなり興味があります」
そこに、廊下の奥から突如として第三者の声が響いてくる。ファリオス、レボにとっては馴染み深い声でもある。
「ヴァールハイトか……」
「…………」
レボはいち早く気づき、ファリオスは渋い顔をしている。廊下の奥から現れたのは三人の中で一番若い最後の将軍、魔将軍ヴァールハイトだ。
よく兵士らの中で、三人で最強を決めるとしたら誰が最強かという議論が上がる。専ら人気なのはファリオスだが、このヴァールハイトという男は強さが未知数な為に密かな注目を集めている。
「うーん、やはりファリオスさんには嫌われているようですね……」
「そんな事はない。お前も俺達と同じ将軍の名を持つものだ。仲間だと思ってる」
口ではそう言っているが、ファリオスの顔は依然渋いままだ。本人曰く本当に嫌っているわけではないそうだが、どうにも近寄りがたい何かを感じるらしい。
「参ったな……」
丁度その時、廊下の向こうの方から声が飛んでくる。
「伝令! 伝令! ヘレリル公爵領に魔族出現!!」
「……ッ!! 行くぞ!!」
◇
「村が見えてきたぞ」
俺達はジェームズの店を出て一週間ほど順調に馬を進め、東の地を縦断していた。東の地に関しては、三人の中で俺が一番土地勘があったのだが、その俺でもリブ村以外の土地はほとんど知らない。つまり誰一人としてどこを歩いているのかわからず、彷徨っていたのだ。
そうして一週間もするうちにようやく東の地に点在する村の一つを見つけたのだ。幸いにして平原に魔物はほとんどおらず、良い意味では安全に、悪い意味では退屈に馬を進めてきた。
「寄ってみるか?」
「あー」
「うっ……気持ち悪……」
退屈のあまりやる気をなくしてしまったレオと、一週間も馬車に揺られ続ける生活に限界を迎えているエヴァをどうにかせねばと思い、休憩も兼ねて村に寄る事に決めた。
しかしこの一週間、特に何の問題も起きなかった。魔物にも遭遇しなければ盗賊団と思われる奴らにも遭遇しなかった。東の地は統治している公爵が居ない事から、魔物の討伐や盗賊団の抑制が行われていない。なので、公爵領に比べて治安は悪い方なのだが、全くそんな風には見えない。
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