最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

愛鶴ソウ

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第六章 七星編

152話 潮風香る街〈シーゼロッタ〉

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「じゃあ、またな」


 別れも簡潔に済ませ、俺達レヴィアタン組は出発した。
 とは言っても〈鬼帝殺し三極柱〉組は作戦会議が夜中まで続き、今はまだ寝ている。ので、見送りに来てくれたのはシエラとリンリ、それに〈シルク・ド・リベルター〉のグラブスやボーンマンらだけだ。


「シーゼロッタまで確か二日程度だったわよね」

「何事もなく、行けばだけどな」


 草原に出てまだほんの少ししか時間は流れていない。二日もあればいくらかの障害が立ちふさがるとは思っていたが……
 視界を遮るものが無い一面草原の中、前方に映る多くの影は間違いなく木々ではない。


「あれって、魔物?」

「いや、どうも人っぽい」


 最初はゴブリンの群れかと思ったが、よくよく見れば身なりは統一された黒装束だし、持っている武器もゴブリンが持っているにしては上等だ。


「あれは……盗賊じゃない? ウェヌス盗賊団が身を引いたから、今まで大人しくしていた盗賊団がここぞとばかりに出しゃばってるんだわ!」


 なるほど。ウェヌス盗賊は解散こそしていないが活動は控えるようになっている。それはあまりに衝撃的なニュースで、早くも大陸全土に知れ渡っているそうだ。
 思わぬ弊害だったか。


「エヴァ! 一戦交える。行けるか?」

「ま、任せ……うう」

「よし、無理だな。行くぞリュウ、サエ」

「え、ええ。俺も!?」

「ほら、行くわよ!」


 姿をはっきりと捉えられる位置まで接近した所で馬車を止める。盗賊達がニタニタと笑いながら半円形に広がって俺達を逃がすまいと周囲を囲う。数は二十弱。サーベルのような武器を持った者が大多数。奥に二人、弓持ちがいるな。


「おいおい、兄ちゃん達。ここを通りてぇなら俺た……」

「弓持ちからやれ」


 俺の指示で荷馬車の二人が大きく上に飛びながら外へ出る。


〈竜鎧装 右腕アーム


「行くぞ……」


我龍殲滅弾カノン・オブ・ドラゴ


 リュウの右腕から放たれたエネルギーの雨が弓使いどころか盗賊団の半数を消し飛ばす。


〈水術 水刃〉


 サエの右手から放たれた一枚の水刃が残った弓使いを的確に斬り裂き、無力化させる。水術の初歩的な術のはずだが、極めればそこらの名刀より斬れるらしいな。


「な、なんだこいつら……話全然聞かねーし」

「あの男を仕留めろ!」


 残った半数が未だ何もしていない俺に狙いを定め、にじり寄ってくる。手綱を離し、前板に立ち上がってシュデュンヤーを抜くと同時に攻撃を放つ。


〈雷帝流 雷斬砲・獄〉


 螺旋を描きながら飛んだ斬撃は盗賊を吹き飛ばし、盗賊団は残り数人にまで減った。実力は大したこと無い。まぁあいつらウェヌス盗賊を恐れてた盗賊団じゃこの程度か。


「隙あり!」


 目の前の盗賊を吹き飛ばして一瞬油断したサエを狙い、盗賊の一人が剣を振るう。


「……ちょっ」

「ハァッ!」


 それを間一髪のところでリュウが立ち塞がり、振り下ろされる剣に合わせて拳を振るい、竜鎧装りゅうがいそうの硬度も相まって、刀身を砕く。続けざまに裏拳を振るい、無力化する。


「大丈夫? サエちゃん」

「あ、ありがとう……」

「く、くそが……こうなれば俺が……」

「だ、団長! こいつら、この前記事に載ってた〈魔狩りの雷鳴ディアブロ・トニトルス〉です!」

「な、なんだと……じゃあこいつらがウェヌス盗賊を撃退したっていう……」

「み、見てくだせぇ あっちの二人は〈凱龍がいりゅう〉と〈海の現身うつしみ〉! 向こうは〈雷撃ライトニングボルト〉のクロト! 荷台には〈氷姫〉まで……本物だ! 本物の……」


 ご丁寧に全員の紹介までしてくれやがった。この二つ名はシルバー級以上なら自然に付くらしいが、俺達の場合は経歴が経歴だけにメンバー全員がめでたく二つ名を付けられている。
 レオは〈獅子の牙〉、シエラは〈月女神アルテミス〉、リンリは〈炎刀の巫女〉だったか。パーティ名を決める時に付けたがってた名前が二つ名になって、全員満更でもなさそうだったな。


「か、勝てるわけねぇ! 逃げろ!」


 一目散に逃げる団長とその取り巻きを追おうとするリュウとサエを手で制し、両手を突き出し、向かい合わせに構えた掌間に電流を流す。


「遅い」


〈雷術 雷砲〉


 レーザー砲の如く放たれた雷が地面に着弾し、全員纏めて吹き飛ばす。


「他愛ないな。こんなもんか」


 シュデュンヤーを鞘に戻し、二人が荷台に乗るのを手伝いながらもふと思ったことを呟く。


「元を知らないから何とも言えないけど……いい? あんた達ウェヌス盗賊に勝ってるのよ? そんじょそこらの盗賊団に苦戦するわけがないの! 大陸中探してもあんた達を苦戦させられる相手なんて両手でギリギリ数えきれないぐらいなんだから!」


 サエが人差し指だけを立てて俺の顔に突きつける。


「両手でも数えきれないんだな」

「そりゃそうよ。帝国には大将軍だっているし、三極柱だっているわ。でも逆に言えばそんな連中と肩を並べるレベルに来てるんだから、ちゃんと自覚しなさいよ」

「あ、ああ……わかったよ」

「お、俺はそんなことないけどね!」


 ゴンザレスとエリザベスに出発の合図を出し、後方の会話に耳を傾けつつも考えに耽る。
 四魔王、そして大魔人を倒す為にがむしゃらに戦っていたが、気づけばこんなにも強くなっていた。もう少し自覚も必要か。同時にこれだけ世間的に評価されているなら、それらを利用するっていう手も使えるかもしれないな……


「よし、遅れた分上げていくぞ!」

「おお!」

「お……おうぷ……」

「と、止めるか?」

「大丈夫……うっ」





「意外と……」

「あっさり着いたね」


丘を数回越え、一度野営した後に見えてきた街は、今まで見て来たカサドルやケルターメンと比べるとずいぶん小さな街だ。水平線の彼方まで広がる海と青空、そこから吹いてくる潮風は初めて感じる感覚だ。
 それに今までの街とは街の雰囲気が違う。何というか、キラキラして見える。


「初めて見たがあれが海か……」

「いいものでしょ? まるで私のようだわ!」

「確かに荒れるとどんなものでもなぎ倒す所とか似てるかも」

「リュウ? どれはどういう意味よー!」

「あ……」


 元気が有り余っているのか二人共走って行ってしまった。追う者、追われる者の構図だったのは気にしなくてもいいだろうか……


「でもクロト。街の様子変じゃない?」


 言われてみれば……
 海に面しているからには漁業が盛んとは思っていたが、港には船が多く停泊している。レヴィアタンのせいで漁に出れないのだとしても、それレヴィアタンを目当てに来た冒険者が多くいるはず。海に生息するレヴィアタンを倒すためには船を出す必要があるから、てっきり船もすっからかんかと……
 もしかして……


「もうレヴィアタンは討伐されたのか?」

「それだと漁が行われてないのが気になるね。どちらにしてもまずは色々聞いてみた方がいいかも」

「そうだな」


 海の街シーゼロッタは町の入口の方が高く、海の方に行くにつれてどんどん下り坂になっている。故に入り口からは町が一望出来る。民家は二十軒ほどだろうか。商店もいくつか見える。あとで行ってみようか。
 それより先に行くべきは……


「冒険者ギルドか、港か……」

「港に行ってみよ! 海も見たいし」

「わかった、行こう」





「あ、サエちゃん 見てよあれ」

「そのサエちゃんってのやめなさいよ、子供みたいでしょ。……で、どれ?」


 追いかけっこは体力的に勝るリュウの勝ちに終わり、二人は切り替えて観光に映っていた。あくまで情報収集という名目でだが。


「ほら、あれ。冒険者ギルドでしょ?」

「そうね……でも何あの感じ、まるで失業者の吹き溜まりだわ!」


 何故か多く冒険者たちが皆揃って肩を落としており、その数はギルド内に収まりきらず、外にまで溢れている。全員が気力をなくしたように暗い顔をしている。


「ねぇ! どうかしたの?」


 冒険者とは、もちろんピンからキリまでいるが基本的に騒がしい。そんな連中がこれだけ集まっているのに、奥のカウンターで資料整理をしている受付嬢のため息が聞こえてきそうなほど静かだ。
 これを「まぁそういう日もあるわよね!」と流せなかったサエは思わず声をかける。


「なんだアンタら。アンタらもレヴィアタン倒して一旗揚げようってか?」

「ま、まぁそんなところね!」

「じゃあやめときな。金のあるうちに帰れ」


 外に座り込んでいた男の冒険者はシッシと追い払うように手を払う。


「話ぐらい聞かせなさいよ!」

「……ハァ、俺達……俺達ってのはレヴィアタン目当てで来たこいつらの事な」


 親指で背後のギルド内で項垂れる冒険者たちを指さしながら話を続ける。


「俺達はレヴィアタンの情報を聞き意気揚々とこの街にやって来た。あんたらも同じ冒険者ならわかると思うが、レヴィアタンは超級魔物だ。そいつを倒したとあれば報酬はもちろん階級だって一つや二つ平気で上がる。俺達ゴールド級からすればオリハルコンへの大きな躍進だ。だがこの街に来て、思いっきり出鼻を挫かれた」


 男の話によるとこの街の船乗りや漁師たちをまとめているのは一つの海賊団らしい。とは言っても支配的にまとめているのではなく、漁師が漁に集中出来るように海の魔物から漁師達を守る代わりに、その漁で捕れた魚の一部をもらうというギブアンドテイクの関係だ。
 海賊達は町人に手を出すことはないし、むしろフレンドリーに接している。町人たちも彼らを信頼しており関係は固い。というわけでこの街で船を出すには海賊団の船長に許可をもらうのが一番手っ取り早いのだが……


『お前達がレヴィアタン討伐を手伝ってくれる冒険者か』

『ああ、そうだ』

『早く船を出してくれよ』


 集まった冒険者は我先にと海賊のもとに集まった。そんな彼らを迎えたのは巨漢……と見間違うほどたくましい女。海賊団の船長だ。
その巨体と筋肉量をいかんなく晒しながらギロッと冒険者一同を睨む。


『我々が奴を発見したのは一週間ほど前、沖合の辺りだ。それは突然やってきて、一瞬で全てを薙ぎ払っていった。海中から高水圧の咆哮ブレスが放たれ、船一隻が丸々消え去った。乗員は大怪我を負い、今も目を覚まさない者が居る。幸運にも死者は出なかったが、我々は憶病にも逃げ帰る事しか出来なかった』


 船長の説明を聞き、怖じ気付く者も居たが大半はだから何だという様子だ。


『だからそれを倒すために俺達を集めたんだろ?』

『早く船出そうぜ。さっさと倒してやるから』

『あれがいる限りは漁も出来ん。だから貴様らを呼んだ。だが、これより船に乗せるのはこの私に膝をつかせられた者だけだ。有象無象を連れて行っても負けて終わるだけだ。大事な船も乗員クルーも無駄には出来ん』
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