美しい影を持つ女神

あきすと

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陰は堕落に潜る

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「一つ、言っておきたいんだけど…いいかしら?」

美影は、本の中に入る前にいつも感じている事をため息混じりに話す。
「終わりがないわ、人がいる限り本は出現するだろうし。私だっていつまでもこの件に携われる訳でもない。」

黒くのたまう美影の影が、地面の中に潜って消えた。
「美影、これはね…八千代の家からの依頼なのよ。」

宮坂の家は、美影の生家である八千代家とは真逆の北東に位置して居を構えていた。
つばめからの呼び出しに応じて、
美影が宮坂家に出向いたのは、何年振りの事だろうか。

まだ中学生にして、あまりにも落ち着き払ったつばめの言動や行動には
大人である美影でも、目を見張るものがある。

奥座敷にまで案内をしてくれた
三毛猫が、つばめの膝の上に上がっている。
制服を気負いなく着れる年齢が、
美影には少し羨ましく思えた。

「えっ…、まさか?ウチからの依頼だなんて、一体どう言う事」
つばめは、三毛猫の頭を撫でながら
重くまばたきをし
「ある、本をね…探して欲しいの。」
と答えた。
「えぇ、もう影が探しに向かったわ。」

「それがね、その本は…どうも今までの物とは違うらしくて。とても不完全な本なの。」

美影は、ゆっくりと考えるポーズをしながら畳の上を歩く。

「不完全な、本…?」
「そう。本来なら、本は本人以外を取り込む事はないとされて来た。でも、今回の本は不完全であるが故に、本人以外までもを飲み込んでしまった可能性があるの。」

今までの事例には、そんな現象は無かったとされて来たが。まさか、と
美影は腕を組み中空へと視線を上げる。

「つばめ、もう本の内部の調査をして来たのね。」
「うん。調べに行って来た。でも、」
「駄目じゃない…、無茶して。私が心配するでしょ?つばめ。とにかく、ここからは私が進めるから。つばめはサポートをお願いね。」

つばめは、うつむき顔を上げて
年相応の あどけない笑顔で美影に
「わかった、任せといて!」
言うと、三毛猫を抱きかかえて
立ち上がる。

「あ、その人の名前ね…新島 玲二って言うんだって。」

その名前には、聞き覚えがあった。
美影は、悟られまいと聞き流して
表情を出さない事に努めた。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

2021.09.03 あきすと

スパークノークスさん、ご感想ありがとうございます。不定期更新にはなりますが、続けて書いて行きたいと思います。

解除

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