9 / 13
ま た 一 彼 方 が そ こ に い た
しおりを挟む
「……ねむ」
あの後、バスから降りた僕らはまず荷物を置き、早めの昼食を取った後集団練習を行った。この集団練習が長く、昼から夕方にまで行われた。控えめに言って足を殺す気かこの学校。
そして今は夕食が終わって、大部屋で就寝までの時間を待つ時だった。もちろんこの大部屋には男子しかいない、女子がいたら大変である。
「……ねてぇ」
久々に体を酷使したせいか、脳が睡眠を求めていた。
「……ん?」
ふと気が付けば、男子たちが円を作ってなにかこそこそと会話をしている。
少し興味が湧いた僕は耳を傾けてみた。
「お前ら、準備は良いか……。覗くぞ」
このクラスは馬鹿ばかりしかいないのか。
「偵察部隊! 覗きスポットはあったか?」
「ありました! 少し遠いですけど、双眼鏡があれば見えるレベルです!」
「……よし、流石だ」
覗きをこんな念入りに計画してる奴ら初めて見た。
「……なにやってんだか」
その男子たちの様子を僕は白い目で見ていた。
「というか僕当たり前のようにハブられてるの面白いな」
男子一丸となって覗きをしようとしているというのに、その中に僕は混じっていない。そしてもちろん誘われてもいない。
少しだけ寂しい気持ちになったのは秘密である。
そうして、男子たちは覗きに出かけて行った。
僕一人取り残して。
「ジュースでも買いに行くかな……」
確かこの旅館には自動販売機が一階の方にあったはずだ。喉も乾いたし、それにこんな大部屋に一人でいたくもないし、行くことにしよう。
腰を上げて大部屋を後にし、階段を降り一回に向かう。
「……ん?」
自動販売機が目に入ったと同時に、見知った女が視界に入った。
「一彼方か……」
忘れもしない、こいつは僕の大切な休日を奪い取った女だ。というかこいつなんで今ここにいるんだ? 今風呂の時間だった気がするが……もしかしなくとも風呂に入ってないのかこいつ。
と心中で思いつつ一彼方の前に出て小銭を入れ、スポーツドリンクを買った。
そうして僕はどこで暇を潰そうとくるりと体を翻して、
「なんで話しかけないんですか!?」
一彼方のうるさい悲鳴に似た絶叫に思わず体を止めてしまった。
あの後、バスから降りた僕らはまず荷物を置き、早めの昼食を取った後集団練習を行った。この集団練習が長く、昼から夕方にまで行われた。控えめに言って足を殺す気かこの学校。
そして今は夕食が終わって、大部屋で就寝までの時間を待つ時だった。もちろんこの大部屋には男子しかいない、女子がいたら大変である。
「……ねてぇ」
久々に体を酷使したせいか、脳が睡眠を求めていた。
「……ん?」
ふと気が付けば、男子たちが円を作ってなにかこそこそと会話をしている。
少し興味が湧いた僕は耳を傾けてみた。
「お前ら、準備は良いか……。覗くぞ」
このクラスは馬鹿ばかりしかいないのか。
「偵察部隊! 覗きスポットはあったか?」
「ありました! 少し遠いですけど、双眼鏡があれば見えるレベルです!」
「……よし、流石だ」
覗きをこんな念入りに計画してる奴ら初めて見た。
「……なにやってんだか」
その男子たちの様子を僕は白い目で見ていた。
「というか僕当たり前のようにハブられてるの面白いな」
男子一丸となって覗きをしようとしているというのに、その中に僕は混じっていない。そしてもちろん誘われてもいない。
少しだけ寂しい気持ちになったのは秘密である。
そうして、男子たちは覗きに出かけて行った。
僕一人取り残して。
「ジュースでも買いに行くかな……」
確かこの旅館には自動販売機が一階の方にあったはずだ。喉も乾いたし、それにこんな大部屋に一人でいたくもないし、行くことにしよう。
腰を上げて大部屋を後にし、階段を降り一回に向かう。
「……ん?」
自動販売機が目に入ったと同時に、見知った女が視界に入った。
「一彼方か……」
忘れもしない、こいつは僕の大切な休日を奪い取った女だ。というかこいつなんで今ここにいるんだ? 今風呂の時間だった気がするが……もしかしなくとも風呂に入ってないのかこいつ。
と心中で思いつつ一彼方の前に出て小銭を入れ、スポーツドリンクを買った。
そうして僕はどこで暇を潰そうとくるりと体を翻して、
「なんで話しかけないんですか!?」
一彼方のうるさい悲鳴に似た絶叫に思わず体を止めてしまった。
20
あなたにおすすめの小説
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる