未来の貴方にさよならの花束を

まったりさん

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意地を貫き通す

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「奈羅君は意地でもその考え方を貫き通そうとしてるように見えます。なにか、縛られてるみたいな感じで……」
「縛られてる、か」
 まぁ、確かに縛られていると言えば縛られてるのかな?
「どうかしました?」
「なんでもない。まぁぶっちゃけて言うとさ、貫こうとしてたんだけど、その考え方が少し変わっていってるような気がするんだ。変わっちゃいけないはずなのに、変わっていってる」
「なんで変わっちゃいけないんですか?」
「……なんでって」
「別にいいじゃないですか、変わっても」
 彼方はコーヒー牛乳を飲みながら、
「人間なんて変わるもんですよ、姿形も、考え方も。なんだって変わっていく」
「なんだか詩人みたいなこと言うんだな」
「父がポエマーですので」
 そう言って彼方はくすりと笑った。
「変わらないものなんてない、これが私の父の口癖です。あと例え話をするならば、恋人が付き合い始めた頃はあんなにも可愛らしかったのに、付き合っていくうちに段々と我儘を言い始めたみたいな」
「なんだか、妙にリアリティのある例えだな」
「カップルのあるあるですからね」
「恋人出来たことないくせして」
「……うるさいです」
 頬を膨らませてそっぽを向く彼方。
「……まぁ、なにが言いたいのかと言うとなんでも変わるもんなんです。貴方が変わっちゃいけないなんて理由はないんですよ」
「そんなもんか?」
「そんなもんですよ。逆に言えば私は貴方には変わって欲しいと思いますけどね」
「今の僕を全否定か?」
「当たり前です、誰にでも壁を作る貴方を否定しないわけがないでしょう? 私にとって貴方はもう友達なんですからね。だから私は貴方の考え方が変わって、私やユキちゃんのことを友達と認めてくれる、そんな人に変わってくれることを願ってますよ」
「そっか」
 飲み終えたペットボトルをゴミ箱に入れる。
「戻るんですか?」
「話すことは話したしな」
「そうですか」
 すると彼方は凄い勢いでコーヒー牛乳を飲み干して、
「それじゃ、私もそろそろ戻りますかね」
 そして、瓶を瓶置き場に置いて、僕から離れた。
「それでは、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
 ぺこりと彼方はお辞儀をしたあと、小走りで自分の部屋に戻って行った。
「変わることを祈ってる、か」
 一人になった僕は彼方との会話を思い返しつつ、そう言葉を呟くのだった。
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