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【義妹SIDE】母が流行病にかかる

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「ふっふっふ! これでこの屋敷もあの根暗女の婚約者であるロズワール様も、私のものですわ!」

 そう、アイリスの義妹であるディアンナはギルハルト家の屋敷で勝ち誇っていた。

 全ては順調であると思っていた。当然のようにアイリスが毒薬の開発をしているというのもディアンナを妬ましく思い、毒を盛ったというのも嘘である。
 しかし嘘も周りのもの全てが信じれば真実になる。

母は自分の言うことを無条件で真実だと思い込むし。そして義父は継母の言いなりである。

問題なのは婚約者のロズワールではあったが、元々地下で引きこもり気味であったアイリスにロズワールは若干、愛想を尽かしていたようだ。

ディアンナからすれば男など単純な生き物である。少し隙を見せてきただけでロズワールはディアンナに食いついてきた。男は美しい女に弱いのだ。籠絡する事などディアンナにとってはいとも容易い出来事であった。

その矢先の事であった。アイリスから寝取った婚約者--ロズワールが屋敷に駆け込んでくる。

「た、大変だ! ディアンナ!」

「なんですか? ロズワール様!」

「き、君のお母様が!!」

「母がどうしたのですか? ロズワール様」

「倒れられたんだ!」

「な、なんですって!」

 ディアンナは叫んだ。全てが順調だと思っていた計画の歯車がここに来て狂い出したのである。

 ディアンナとロズワールはアイリスにとっての継母のところまで向かう。

 ◇

「お母様! しっかりしてください! お母様!」

「ど、どうしてなのよ……どうして私がこんな病に犯されなきゃなのよ」

 ディアンナの母は嘆いていた。ベッドに横になっている。その顔色は悪く、何らかの病魔に侵されたのは確実であった。

「し、しっかりしろお前!」

 そう、義父が手を握って叫ぶ。

「どうしてこんな事に。私は悪い事なんて一度もした事もないのに。神様はどうしてこんな理不尽な真似を。ううっ!」

 悪意を働く時、大抵人は自分のした事を悪いと思っていないのだ。その為、ディアンナと継母はアイリスにしてきた数々の仕打ち。

 例えばわざと食事を与えなかったりとか、数々の悪口。体罰という名の暴行。様々な悪意ある行いを悪い事だとすら認識していなかったのである。

「そ、そうよ! お母様がこんな事になるなんて間違ってるわ!」

 ディアンナもそう主張する。彼女は自分が嘘をついたとしてもそれをすぐに真実だと信じ込む異常な性格の持ち主であった。彼女にとっては実際にアイリスが毒を作り、自分も毒を盛ろうとしたのだ。それこそが彼女にとっての真実である。

 だからこそ彼女は自分達が悪い事をしたなど一切思っていない。全ての非はアイリスにあると思っていた。

「ま、待っていろ! すぐに医者を呼んでくるからっ!」

 父はそう言って駆けていった。しかし、この後、まずます自分達を追い詰めていくという事をディアンナ達は知らなかったのである。
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