Fat,Nerd&Gay【連載版】

ROSE

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 大学を卒業する頃、中学生の頃から買っていたヘビが寿命を迎え少し寂しく感じた。
 相変わらず俺の体型は太めで、やっぱり好きな女の子は現れなかった。
 まだ運命の相手に出会っていないだけなんて言ってくれる人もいるが、たぶん一生女の子を好きになれないのだと思う。
 そして、ヴァイオリンに触れる度に朔を思い出す。
 あの夏からずっと寄り添ってくれている楽器はよく手に馴染むようになった。
 間違いなく、朔が俺の初恋の相手だったと思う。
 そう言えば、失恋の曲ばかり弾いている気がする。
 デブで根暗で、しかもゲイ。
 相変わらず同世代に馴染めなくて、家でひっそり楽器を弾いている。
 朔はもう夢を叶えただろうか。
 年に一度、律儀にクリスマスカードを送ってくる以外は手紙も電話もないような関係だ。彼が今なにをしているかも知らない。
 ときどきじいちゃんにはメールがあるらしいけれど、俺はその内容を訊ねたりはしない。
 もうガット弦でも安定した演奏ができるようになったんだぜ。なんて見せびらかすこともまだできていない。
 もしかしたら向こうで結婚しているのかも。いや、だったらじいちゃんに連絡が入るか。
 いつまでも残るあの微妙な感情が、感傷的な響きを生み出す。
 根暗でも、音でなら気持ちを伝えられるかも。
 けれども、きっと俺はそうしない。
 次に会った時も朔の友人のままでいたいから。
 この先もずっと心を隠し続け、母さんが望むような『普通』を目指す。
 もう、ガラスケースの中に爬虫類たちは居なくなってしまった。その隙間を埋めるように練習漬けになる。
 やはり寂しい音が多いと思う。失った物の隙間を埋めるために弾くから。
 それでも、それなりに上達はしただろう。
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