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第三章

第105話『イベント荒らし』

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 それから、私達は四時間ほど掛けて西大陸全ての街を回り、第二段階────郊外のゴーレム狩りに移行していた。

 今までは出現率の高い街を虱潰しに回って来たが、これからはデマ情報覚悟で、目撃情報の少ない場所を見て回ることになる。
もちろん、目撃情報の多い場所から優先的に見るつもりだが、西大陸全体の攻略状況がどうなっているのか分からないため、討伐した後である可能性もあった。
掲示板や公式チャットにゴーレムの目撃情報はあれど、討伐完了報告はないからね。
入れ違いになる可能性は充分ある。

 『レオンさんの時なんて、特にそう』と考えながら、私は流れ行く景色を眺めた。

 これからは他のプレイヤーとの情報共有が課題になりそうだな。

 郊外のゴーレム狩りに繰り出してから何度かハズレを引いているため、私は少し憂鬱な気分になる。
────と、ここで徳正さんが何の前触れもなく足を止めた。
そのせいでブワァッと風が巻き起こり、徳正さんの背中を殴りつける。

「ちょっ、何でいきなり止まるのー!?危うく、ぶつかるところだったじゃん!」

『落ち着け、シムナ。徳正は何の意味もなく、急ブレーキを掛けるような奴じゃない。何かあったんだろ』

「でも、ゴーレムは居ないみたいだぞ?」

「確かに何も見当たらないね」

 慌てて足を止めた面々に対し、徳正さんは無反応を貫く。
そして、静かに辺りを見回すと────ある一点に視線を集中した。

「早く出て来なよ~?そこに隠れているのは、バレバレだから~」

 数メートル先にある草むらに向かって、徳正さんは声を掛ける。
その瞬間────武装した男性集団が、ゾロゾロと姿を現した。
殺意と敵意で爛々としている彼らの瞳を前に、私は唖然。
他のメンバーも少し驚いたような素振りを見せた。

「うわぁ……何このおじさん達ー!」

『なるほど。徳正はこいつらの存在に気づいて足を止めたのか』

「こいつら、気配遮断でも使ってたのか?全然、気づかなかったんだけど」

「仮に気配遮断が使われていたとしたら、徳正の気配探知能力はソレを軽く凌駕する精度の高さだね。尊敬するよ♪」

 手放しで褒め称えるリアムさんに、私は共感を示す。
が、今はそれどころじゃなかった。
だって、わざわざ足を止めたということは────あちらから危険を感じ取ったということだから。
じゃなきゃ、普通に素通りしている筈。

 そういえば、情報収集の過程で盗賊まがいの物取り集団が居るって情報を見たな。
曰く、そいつらは全員武装していて不意をついて襲ってくるらしい。
で、アイテムボックスの中にある物を全て出すまで解放してくれないんだとか……最悪の場合、殺されることも。

 イベントに積極的に参加している私からすれば、『この忙しい時に何やってんの?』って感じだけど、今彼らの装備を見て納得した。
恐らく、彼らは────お金がないんだ。
気配遮断を使えることから、それなりに腕は立つんだろうけど、でもそれだけって感じかな?
多分、街中で暮らすにあたり宿代で金をむしり取られたのだろう。
だからと言って、このような行いはいただけないけど。

 『上層だけでもいいから、ダンジョンに潜ればいいのに』と呆れ、私はかぶりを振った。
────と、ここで場違いな機械音声が流れる。

『ゴーレムの討伐数1000を超えました。おめでとうございます。次のアナウンスは討伐数が1500を超えた時です』

 やっと、三分の一か……今日中に2000体は行きたいな。
でも、その前に────イベント荒らしも同然の行いをする彼らにキツいお灸を添えなくては。

 厭らしい目付きでこちらを見てくる武装集団を一瞥し、私は徳正さんの腕から降りた。
すると、彼が私を庇うように一歩前に出る。
その手には、妖刀マサムネが握られていた。
他のメンバーも全員武器を手にしており、やる気満々である。
特にシムナさんは久々の対人戦闘に、興奮を抑え切れない様子だった。
一触即発という雰囲気が流れる中、私はスッと目を細める。

「皆さん、殺さない程度に遊んであげてください────さあ、狩りの時間です!」
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