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新・二千兵戦争
新・二千兵戦争/反転
◆◆◆◆◆◆◆◆
何の変哲もないはずの朝だった。
しかし、家の扉は開いていて、サナは既に家にいなかった。
明らかに何かおかしいと思いつつ周りを観察すると、テーブルの上に紙切れが置いてあった。
紙切れの内容は王城を出て、そこからある場所が示されている地図だった。
「行くしか……ないか」
罠なんだろうな、などと察しつつ、刀を取り上げる。
先程まで朦朧としていた意識は完全に覚醒し、脳内は既にいつでも戦いに臨める体勢に移っていた。
開いた扉から外へ出る。
家の前の少し大きな道はかなり散らばっており、明らかにここを誰かが大人数で通った痕跡が至る所に残されていた。
外に出てからはすかさず王都を飛び出し、地図を頼りにそのまま進むと、森の中にある開けた平野に出た。
いつか見た光景。
「そこ」が、地獄と化す前のものとほぼ同じ光景が、そこには広がっていた。
王都を飛び出した時から空には暗雲が立ち込め、灰色の空模様が頭上に広がっている。
その下には、幾千もの雑兵。
その数、以前の二千兵戦争とは比べ物にならないほど。
俺が平野に出た瞬間、その人だかりの中から、担がれた台座に縛り付けられたサナが出てきた。
「……何、してんだ?」
なぜ。頭に浮かんだのはそのような困惑だった。
なぜ、サナは縛り付けられているのか。
なぜ、サナを持ち去ったのか。
なぜ、わざわざ俺をこんなところに呼び出したのか。
……でも、俺だけ捕らえられずに、こんなところに呼び出されたのだから、大体相手の要件は察していた。
と、そこで、前にいた少年が声を上げる。
「人斬り白郎だーっ! 人斬り白郎を殺せーーーっ!」
そう言うと少年含む人だかりは、皆刀を構え一斉にこちらに向かって走ってくる。
……あーあ、やっぱりそうだった。
わざわざ俺と戦わなくても、復讐したいなら眠ってる間に殺せばよかったのに。
……何で同じことを、どうしてそんな無意味なことを繰り返すんだろうか。
木刀を構える。
前から来た敵から、ありったけの力で薙ぎ払う。
「ふんっ! ふううっ!」
敵の数にキリはない。
何度振り払っても、また絡まってくるツタのようにしつこく飛びかかってくる。
1人、また1人と、首の付け根や頭を狙い慎重に叩いていく。
間違っても、殺す事のないように。
それが師匠との約束だから。
ある程度の敵を木刀で気絶させた後、走ってくる者はいなくなった。
皆少し退き、防御を固めている。
かかってこい、という合図だろうか。
こんな奴ら、何人集まろうと倒す事は造作もな———
ドスッ、と。
腹部に電撃が走る、重い音と共に。
恐る恐る、腹部に目をやる。
冷たい鉄の刃が、その肉を貫いていた。
「……ぁ………あ……」
「死ねっ! 人殺しっ!」
後ろから俺を突き刺した男はさらに力を強める。
激痛でまともに動きそうのない腹を捻り、木刀を男の頭にぶつける。男は倒れたが、その際に見えたのが、
先程木刀で気絶させたばかりの敵が、生気のない顔をして立ち上がっている姿だった。
冷たい刃を引っこ抜く。
歯を食いしばって、噛み砕いてもなお耐えがたい激痛が自身を襲うが、そんな事目の前 (と後ろ)の敵を目にした時には構ってられなかった。
後ろからも前からも、俺を突き刺そうとして走ってくる人だかり。
飛べば切り抜けられる状況だ。
しかし、
自身の腹から流れ出た血を目にして、そこから目が離せなくなった。
頭がボーっとして、揺らぎながら、それでもなお自身の血を見つめ続ける。
そんな時。思い出した。
あの地獄を、この手で作り上げた時の感覚を。
全てが終わった後、貪り食った肉と血の味を。
人を斬り殺した時の、快感を。
撃鉄が落とされる。
自身の心の中で、カチッと言う針音が鳴った後、止まらなくなった。
タガが外れる。
完全に決壊する。
自身の理性よりもエゴを優先する。
鼓動は速くなる一方。
身体の奥が熱くなる。
はちきれんばかりの衝動がこの身を飲み込む。
その渦の中で、もう1人の自分が囁いた。
「コロせ、コロせ、タベロ、シタガエ、チをノメ、ムサボリツクセ」
———反転。
先程抉れた腹をさらに自身の手で抉る。
血に汚れ、濡れたその手を。
人差し指だけ、口に突っ込んだ。
瞬間、木刀が割れる。
「……へっ……へへっ……」
不気味な笑いを浮かべる。
だが、これで。ようやく。
殺せる。
斬れる。
食べれる。
好きなだけ、好きなだけ。
「約束」も、「夢」も、「名前」も、「戦う理由」も、「仲間の存在という認識」も、全てどこかに捨ててきた。
今の俺は。
人を食べる、怪物に変貌した。
何の変哲もないはずの朝だった。
しかし、家の扉は開いていて、サナは既に家にいなかった。
明らかに何かおかしいと思いつつ周りを観察すると、テーブルの上に紙切れが置いてあった。
紙切れの内容は王城を出て、そこからある場所が示されている地図だった。
「行くしか……ないか」
罠なんだろうな、などと察しつつ、刀を取り上げる。
先程まで朦朧としていた意識は完全に覚醒し、脳内は既にいつでも戦いに臨める体勢に移っていた。
開いた扉から外へ出る。
家の前の少し大きな道はかなり散らばっており、明らかにここを誰かが大人数で通った痕跡が至る所に残されていた。
外に出てからはすかさず王都を飛び出し、地図を頼りにそのまま進むと、森の中にある開けた平野に出た。
いつか見た光景。
「そこ」が、地獄と化す前のものとほぼ同じ光景が、そこには広がっていた。
王都を飛び出した時から空には暗雲が立ち込め、灰色の空模様が頭上に広がっている。
その下には、幾千もの雑兵。
その数、以前の二千兵戦争とは比べ物にならないほど。
俺が平野に出た瞬間、その人だかりの中から、担がれた台座に縛り付けられたサナが出てきた。
「……何、してんだ?」
なぜ。頭に浮かんだのはそのような困惑だった。
なぜ、サナは縛り付けられているのか。
なぜ、サナを持ち去ったのか。
なぜ、わざわざ俺をこんなところに呼び出したのか。
……でも、俺だけ捕らえられずに、こんなところに呼び出されたのだから、大体相手の要件は察していた。
と、そこで、前にいた少年が声を上げる。
「人斬り白郎だーっ! 人斬り白郎を殺せーーーっ!」
そう言うと少年含む人だかりは、皆刀を構え一斉にこちらに向かって走ってくる。
……あーあ、やっぱりそうだった。
わざわざ俺と戦わなくても、復讐したいなら眠ってる間に殺せばよかったのに。
……何で同じことを、どうしてそんな無意味なことを繰り返すんだろうか。
木刀を構える。
前から来た敵から、ありったけの力で薙ぎ払う。
「ふんっ! ふううっ!」
敵の数にキリはない。
何度振り払っても、また絡まってくるツタのようにしつこく飛びかかってくる。
1人、また1人と、首の付け根や頭を狙い慎重に叩いていく。
間違っても、殺す事のないように。
それが師匠との約束だから。
ある程度の敵を木刀で気絶させた後、走ってくる者はいなくなった。
皆少し退き、防御を固めている。
かかってこい、という合図だろうか。
こんな奴ら、何人集まろうと倒す事は造作もな———
ドスッ、と。
腹部に電撃が走る、重い音と共に。
恐る恐る、腹部に目をやる。
冷たい鉄の刃が、その肉を貫いていた。
「……ぁ………あ……」
「死ねっ! 人殺しっ!」
後ろから俺を突き刺した男はさらに力を強める。
激痛でまともに動きそうのない腹を捻り、木刀を男の頭にぶつける。男は倒れたが、その際に見えたのが、
先程木刀で気絶させたばかりの敵が、生気のない顔をして立ち上がっている姿だった。
冷たい刃を引っこ抜く。
歯を食いしばって、噛み砕いてもなお耐えがたい激痛が自身を襲うが、そんな事目の前 (と後ろ)の敵を目にした時には構ってられなかった。
後ろからも前からも、俺を突き刺そうとして走ってくる人だかり。
飛べば切り抜けられる状況だ。
しかし、
自身の腹から流れ出た血を目にして、そこから目が離せなくなった。
頭がボーっとして、揺らぎながら、それでもなお自身の血を見つめ続ける。
そんな時。思い出した。
あの地獄を、この手で作り上げた時の感覚を。
全てが終わった後、貪り食った肉と血の味を。
人を斬り殺した時の、快感を。
撃鉄が落とされる。
自身の心の中で、カチッと言う針音が鳴った後、止まらなくなった。
タガが外れる。
完全に決壊する。
自身の理性よりもエゴを優先する。
鼓動は速くなる一方。
身体の奥が熱くなる。
はちきれんばかりの衝動がこの身を飲み込む。
その渦の中で、もう1人の自分が囁いた。
「コロせ、コロせ、タベロ、シタガエ、チをノメ、ムサボリツクセ」
———反転。
先程抉れた腹をさらに自身の手で抉る。
血に汚れ、濡れたその手を。
人差し指だけ、口に突っ込んだ。
瞬間、木刀が割れる。
「……へっ……へへっ……」
不気味な笑いを浮かべる。
だが、これで。ようやく。
殺せる。
斬れる。
食べれる。
好きなだけ、好きなだけ。
「約束」も、「夢」も、「名前」も、「戦う理由」も、「仲間の存在という認識」も、全てどこかに捨ててきた。
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人を食べる、怪物に変貌した。
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