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アーティフィシャル・マインド
私の、マスター/約束
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……言ったはずだ。言ってやったはずだ、悲しそうな顔をやめてくれ、と。
———もう、見たくなかったはずだ。
目の前で、大切な人に死なれるのは……!!
俺が———俺が信じる剣は、俺が重んじる『雪斬流』は———人を護る剣だろうっ!
……そうだよな、何やってんだ、俺は。今は塞ぎ込むより、よっぽどやるべき事が、あるだろう———!
「センっ、1回離れろっ! そいつは俺がやるっ!」
「……待って白さん、後ろからも……!」
「そいつは……私……がっ……食い止める!」
背後より迫るは、黄色に染まった触手。リーの機体より染み出したソレは、今なお広がり続け、無数の触手として形を成していた……!
肝心の機体は、まるで操り人形かのように、手足をツタで縛られ宙に浮いており、それでもなお、その顔面はこちらを凝視している。
「ヒェ 、ヘハ ヘ 、。ヘ ヘヘ ハ」
あまりにも不気味な形容しがたい、生物とは思えない奇妙な笑い声。
不自然にとられた合間が余計にその不気味さに拍車をかける。
「さ、あ! 戦争の、大戦の、[[[[終末戦争]]]]、、、 の。、! 開始で す!!」
「あいつ……雰囲気が……変わった?」
先程までの威厳のある物言いは何処かへと消え去り、残されたのは狂気だけであった。
「ソウ でス白、、 。様!! 私、私私私私。この身体……に、な 、じみマスター!」
「ダメだサナ、もうアイツと対話を試みちゃいけない」
「そのようね……身体が馴染んだ……とはいえ、知性と威厳溢れる元魔王軍幹部が聞いて呆れるわ!」
「おやおやおやおやおやおやおやおや???? 今、今私をバカにしたコケにしました! ですね?」
支離滅裂もいいところだ、何が起きたかは知らんが、どうやら本当に狂っちまったらしい……!
「……とりあえず、俺はコックを奪還するが……2人とも、それでいいか?」
「ええ、やってやるわよ!」
「僕も……頑張ります……! できる範囲で……!」
「それじゃあ2人は左右に分散して、ヤツの触手のおとりになってくれないか……?」
「物言いだけだと私たちが一番危険そうだけど、本当に危険なのは……正面きってコックを奪取する白だって分かってる?」
「もちろん、だからこそ、俺がやらなきゃいけない……!」
「グレイシアフリーズクリスタルっ!」
サナが杖を掲げそう叫んだ瞬間、リーの体液で満たされそうになっていた地面は、一面透明な氷で覆われる。
「そ、、、れはっ、はっ!! 私を殺した……! [バカにしたコケにしました]技 で、すすね?!?!?! この[NEW]な! な、身体に! そんなモの効くと思イマスカ? 答えは[NO]! [NO MORE映画泥棒]!!!!」
———映画って何だ?
「センっ! パスよ!」
サナから、雑にセンの方に放り投げられる魔法使い用の杖。
……だが。
「ありがとうございますっ!」
その効果は絶大であり、ただの爆発魔術でも数段上の魔術に引き上がる……!
2人が両端からじわじわとリーに詰め寄る中、リーの視線を掻い潜り懐へと移動する。
案外、詰め寄るのは簡単であり、何の困難もなくコックを抱き抱える事ができた。
……リーの体液のせいで、かなりヌメヌメしているが。
「サナさんっ、白さんが!」
「ええ、分かってる!」
「モチノロン! 私モ分か 、っておりマスター!.,」
氷の上を滑り、リーから距離をとり、コックを揺り起こす。
「コック、起きろコック!」
「……私……は……」
機巧天使は、その光り輝く瞳を開く。
「マスター認証……創造主:ジェネラル・グレイフォーバス……眼前のオブジェクト……登録概念照合……アレン・セイバーと断定…………なぜ? なぜ私はこの人間を知って……」
「さ、、、あ!! さあ、、、、! コックピット、よ!! 現時点統一体当機より伝える。速やかに、眼前の敵を排除せよ。繰り返す、速やかに、眼前の敵を排除せよ。以上…………です!!」
「眼前の敵を……排除。……ならば、死んでくださ———」
コックの左手が筒状へと変形し、その口端をこちらへ向ける。
が、コックが何かを撃ち出すより前に、こちらが言ってやった。
「お前の、マスターは!……俺だ!」
……と。コックは一瞬戸惑い、発射を躊躇う。
「何を……我がマスターは創造主ジェネラル・グレ———」
「違う、俺が! お前のマスターだ! 俺がお前のマスターになってやる!」
「理解不能。速やかに排除の対象と……」
「うるさい、俺がマスターだ、だから俺の意見を聞け!」
「……発射許可を求め……」
「いいや許さない、俺の話が終わるまで絶対に……!
……お前は、今のままでいいのか? 自分が自分じゃなくなる事に、何の恐れも感じないのか?!」
「自分が自分じゃなくなる……推測……現時刻と完成日を照合……誤差、許容範囲外。推測……仮定……もし、私の全てがリセットされているとなれば……?」
「もう1度よく、冷静にアイツを見てみろ、アイツは本当に———お前のマスターなのか?」
********
導き出した仮定。
……がしかし、それがもしも合っているとなれば……?
記憶にある「虚」「無」の記録に、私は手を伸ばす。
「マス……ター」
そこには、思い出の数々。
もう既に消え去った、過去の自分。その記憶の断片。
正確には、その消え去った自分ですら、自分とは証明できはしない。
……だけど。そこで見てしまった。あまりにもか細い、記憶の断片———前の私の、最後の姿を。……そして。
「マスター、これは……この記憶は、一体……?」
マスターが、マスターでなくなる瞬間。
自分が、自分でなくなる瞬間を。
……だからこそ、もう1度冷静に、誰の指示も受けず、状況を鑑みる。
「アレは……マスター……では、ない……?」
その眼に捉えたマスターであったモノの魂。
魔気は、酷似こそするものの、マスターのソレとは明らかに違い、
「……ならば……マスターは…………誰……?」
当然の疑問。自分は一体今まで、誰の命令を聞いていた———?
「マスターは……マスターは、どこ? 私の、マスターは……ど……」
「……だからこそ、俺がここにいるんだろ」
横から聞こえたその声は、自分こそ主だと傲岸にも主張する。
記憶の断片で見た、その男をマスターと断定する証拠など1つもない。
だが。
「俺は……約束したんだ、お前と」
必死に記憶をかき集める。しかし、そのようなモノは発見できず。
「約束」がどのような内容か、など、そんなものは分かるはずもなく。
それでも、目の前の男は———私に対し訴え続けた。
********
「お前に、悲しい顔はさせない。なぜかは分からないけど、お前が悲しい顔をすると、こっちが無性に腹が立ってくる」
「だから……だから……?」
「お前のマスターは、もういない。とっくの昔にいなくなった。……だからこそ、俺がお前のマスターになってやる」
「貴方が、私の、マスターに……?」
「そうだ」
「……私をいやらしい目でこれでもかと見つめ続けるのは?」
「俺だ」
「嬉々として、私の胸を揉みしだくのは?」
「……俺かも?」
「私に、いやらしい行為を持ちかけるのは?」
「それは俺じゃない」
「………………私の、記憶を、消去、するのは……?」
それまで、あくまで機械的に、淡々と話していたコックは、突然目に涙を浮かべそう問うた。
……だが、答えは1つ。もう決まっているだろう。
「俺は……そんな事、しない。お前の、お前が悲しい顔になるような事は、決して。それだけは約束する、だから力を、力を貸してくれ……!」
「———契約、成立……です。後悔させないでくださいね、マイマスター……!」
———もう、見たくなかったはずだ。
目の前で、大切な人に死なれるのは……!!
俺が———俺が信じる剣は、俺が重んじる『雪斬流』は———人を護る剣だろうっ!
……そうだよな、何やってんだ、俺は。今は塞ぎ込むより、よっぽどやるべき事が、あるだろう———!
「センっ、1回離れろっ! そいつは俺がやるっ!」
「……待って白さん、後ろからも……!」
「そいつは……私……がっ……食い止める!」
背後より迫るは、黄色に染まった触手。リーの機体より染み出したソレは、今なお広がり続け、無数の触手として形を成していた……!
肝心の機体は、まるで操り人形かのように、手足をツタで縛られ宙に浮いており、それでもなお、その顔面はこちらを凝視している。
「ヒェ 、ヘハ ヘ 、。ヘ ヘヘ ハ」
あまりにも不気味な形容しがたい、生物とは思えない奇妙な笑い声。
不自然にとられた合間が余計にその不気味さに拍車をかける。
「さ、あ! 戦争の、大戦の、[[[[終末戦争]]]]、、、 の。、! 開始で す!!」
「あいつ……雰囲気が……変わった?」
先程までの威厳のある物言いは何処かへと消え去り、残されたのは狂気だけであった。
「ソウ でス白、、 。様!! 私、私私私私。この身体……に、な 、じみマスター!」
「ダメだサナ、もうアイツと対話を試みちゃいけない」
「そのようね……身体が馴染んだ……とはいえ、知性と威厳溢れる元魔王軍幹部が聞いて呆れるわ!」
「おやおやおやおやおやおやおやおや???? 今、今私をバカにしたコケにしました! ですね?」
支離滅裂もいいところだ、何が起きたかは知らんが、どうやら本当に狂っちまったらしい……!
「……とりあえず、俺はコックを奪還するが……2人とも、それでいいか?」
「ええ、やってやるわよ!」
「僕も……頑張ります……! できる範囲で……!」
「それじゃあ2人は左右に分散して、ヤツの触手のおとりになってくれないか……?」
「物言いだけだと私たちが一番危険そうだけど、本当に危険なのは……正面きってコックを奪取する白だって分かってる?」
「もちろん、だからこそ、俺がやらなきゃいけない……!」
「グレイシアフリーズクリスタルっ!」
サナが杖を掲げそう叫んだ瞬間、リーの体液で満たされそうになっていた地面は、一面透明な氷で覆われる。
「そ、、、れはっ、はっ!! 私を殺した……! [バカにしたコケにしました]技 で、すすね?!?!?! この[NEW]な! な、身体に! そんなモの効くと思イマスカ? 答えは[NO]! [NO MORE映画泥棒]!!!!」
———映画って何だ?
「センっ! パスよ!」
サナから、雑にセンの方に放り投げられる魔法使い用の杖。
……だが。
「ありがとうございますっ!」
その効果は絶大であり、ただの爆発魔術でも数段上の魔術に引き上がる……!
2人が両端からじわじわとリーに詰め寄る中、リーの視線を掻い潜り懐へと移動する。
案外、詰め寄るのは簡単であり、何の困難もなくコックを抱き抱える事ができた。
……リーの体液のせいで、かなりヌメヌメしているが。
「サナさんっ、白さんが!」
「ええ、分かってる!」
「モチノロン! 私モ分か 、っておりマスター!.,」
氷の上を滑り、リーから距離をとり、コックを揺り起こす。
「コック、起きろコック!」
「……私……は……」
機巧天使は、その光り輝く瞳を開く。
「マスター認証……創造主:ジェネラル・グレイフォーバス……眼前のオブジェクト……登録概念照合……アレン・セイバーと断定…………なぜ? なぜ私はこの人間を知って……」
「さ、、、あ!! さあ、、、、! コックピット、よ!! 現時点統一体当機より伝える。速やかに、眼前の敵を排除せよ。繰り返す、速やかに、眼前の敵を排除せよ。以上…………です!!」
「眼前の敵を……排除。……ならば、死んでくださ———」
コックの左手が筒状へと変形し、その口端をこちらへ向ける。
が、コックが何かを撃ち出すより前に、こちらが言ってやった。
「お前の、マスターは!……俺だ!」
……と。コックは一瞬戸惑い、発射を躊躇う。
「何を……我がマスターは創造主ジェネラル・グレ———」
「違う、俺が! お前のマスターだ! 俺がお前のマスターになってやる!」
「理解不能。速やかに排除の対象と……」
「うるさい、俺がマスターだ、だから俺の意見を聞け!」
「……発射許可を求め……」
「いいや許さない、俺の話が終わるまで絶対に……!
……お前は、今のままでいいのか? 自分が自分じゃなくなる事に、何の恐れも感じないのか?!」
「自分が自分じゃなくなる……推測……現時刻と完成日を照合……誤差、許容範囲外。推測……仮定……もし、私の全てがリセットされているとなれば……?」
「もう1度よく、冷静にアイツを見てみろ、アイツは本当に———お前のマスターなのか?」
********
導き出した仮定。
……がしかし、それがもしも合っているとなれば……?
記憶にある「虚」「無」の記録に、私は手を伸ばす。
「マス……ター」
そこには、思い出の数々。
もう既に消え去った、過去の自分。その記憶の断片。
正確には、その消え去った自分ですら、自分とは証明できはしない。
……だけど。そこで見てしまった。あまりにもか細い、記憶の断片———前の私の、最後の姿を。……そして。
「マスター、これは……この記憶は、一体……?」
マスターが、マスターでなくなる瞬間。
自分が、自分でなくなる瞬間を。
……だからこそ、もう1度冷静に、誰の指示も受けず、状況を鑑みる。
「アレは……マスター……では、ない……?」
その眼に捉えたマスターであったモノの魂。
魔気は、酷似こそするものの、マスターのソレとは明らかに違い、
「……ならば……マスターは…………誰……?」
当然の疑問。自分は一体今まで、誰の命令を聞いていた———?
「マスターは……マスターは、どこ? 私の、マスターは……ど……」
「……だからこそ、俺がここにいるんだろ」
横から聞こえたその声は、自分こそ主だと傲岸にも主張する。
記憶の断片で見た、その男をマスターと断定する証拠など1つもない。
だが。
「俺は……約束したんだ、お前と」
必死に記憶をかき集める。しかし、そのようなモノは発見できず。
「約束」がどのような内容か、など、そんなものは分かるはずもなく。
それでも、目の前の男は———私に対し訴え続けた。
********
「お前に、悲しい顔はさせない。なぜかは分からないけど、お前が悲しい顔をすると、こっちが無性に腹が立ってくる」
「だから……だから……?」
「お前のマスターは、もういない。とっくの昔にいなくなった。……だからこそ、俺がお前のマスターになってやる」
「貴方が、私の、マスターに……?」
「そうだ」
「……私をいやらしい目でこれでもかと見つめ続けるのは?」
「俺だ」
「嬉々として、私の胸を揉みしだくのは?」
「……俺かも?」
「私に、いやらしい行為を持ちかけるのは?」
「それは俺じゃない」
「………………私の、記憶を、消去、するのは……?」
それまで、あくまで機械的に、淡々と話していたコックは、突然目に涙を浮かべそう問うた。
……だが、答えは1つ。もう決まっているだろう。
「俺は……そんな事、しない。お前の、お前が悲しい顔になるような事は、決して。それだけは約束する、だから力を、力を貸してくれ……!」
「———契約、成立……です。後悔させないでくださいね、マイマスター……!」
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