Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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C・C・C(カーネイジ・クライシス・クラッシャー)

最適解

「……あっ、イデアさん、こんにちは……それと……はじめまして」

「パーティメンバーだろ、今更そんな挨拶堅苦しい」

「……そ、そうですよね、よろしくです、イデアさん」

「…………ああ、よろしくだ」



 まあイデアさんも、何もないのに僕に話しかけた訳ではなく。

「……それで、誰に魔王が潜んでいると踏んでいる?」
「聞いてたんですか?!」



「誰だと思うと聞いているはずだ」
「白さん……かサナさん……本人に自覚はないって言ってたからあなたも怪しい……かと」

「……そうか。……だが俺は、それより前の話の方が気になった」

「魔王軍が全世界に……宣戦布告する……まるで終末戦争のような———」

「……そうだ、まるで、終末戦争のような、全世界を巻き込んだ戦争が始まる。……お前は、どうする?」

「自分の強さに自信がないんだろ、だったらお前はどうするのかって聞いているんだ、戦場では1人の強大な敵に立ち向かうんじゃない。

 ———戦場では、アレンも俺も、等しくただの兵隊だ。だからこそ、今までサポートしかしてこなかったお前に何ができるのか、とそう思っただけだ」

「…………それでも、やっぱりどうしても、立ち向かうしかありませんよね」

「自分が弱いと……知っているのにか?」

「そうだろうと、僕には立ち向かう、以外の道が思いつきません」


********

 ……そうか、コイツも俺と同じだ。
戦う理由などいざ知らず、何かの為にひたすら戦って、ただ先へと。

 ……ならば、俺とコイツが違うのは、「気の持ちよう」、そして「力」。

 後者に関してはどうしようもない問題かもしれない。しかし、「気の持ちよう」ならば話は別だ。

「お前は、戦う時に何をイメージし、何を思う?」

「……どうすれば死なないか、どうすれば効率よくサポートできるか……」

「ならばダメだ」

「……え」
「お前に足りないのは、自分のイメージだ」

「イメージ?」

 そう、イメージ。


「……だったらお前は、戦う前にまず負ける姿を想像して戦うってのか?」
「……普段は」

「ならばその思考はすぐに捨てろ。考えるのは、勝って、勝って、勝ち誇った顔で戦場に立つ自分の姿だ。

 負ける姿など、惨めに殺される姿など、想像する意味はない」

********



 勝った……姿を……?
 この僕が……?

「そもそも、魔術はイメージだ。俺の扱う『幻想模倣魔術』も、イメージが全てで成り立っている。……だからこそ、俺の勝つ為のモノ、と言えばイメージしか浮かばんのだ」

「あまりも強大すぎて戦慄してしまうような敵を前に、勝つ姿を想像しろ……って……?」

「……くだらない、自分が弱いなどと言う固定観念はすぐに捨て去れ。

 ———そして想像しろ、勝者の自分を。綿密に、徹底的に。そして勝った姿から、今の自分の最適解を導き出せ。

 ……それが、俺からのアドバイスだ。勘違いするなよ、お前の事を気遣った訳じゃない、パーティメンバーがこんな体たらくでは締まりがないからな」

「……あ、ありがとう、ございます……」

 わかりやすいツンデレ(?)だ……
 ……それでも、そのアドバイスはとても的確だった。


 敗北、敗北、どこまで行っても敗北続き。
「努力すりゃ報われる」そう言う人もいるけれど。
 それでも僕はどうやったって報われなくって。

 ……でも、イデアさんは、僕の弱さについては触れなかった。
 多分その事についてはあの人も分かってて、なおかつ触れなかったんだと思う。それでも、あの人は、僕の直すべき点を述べてくれたんだ。
 …………今の自分の……最適解……








「セン。……ヤツはおそらく……アレンをも越える逸材だろうに。惜しいヤツだよ、ホントに」

 ———イデアは1人、誰にも聞かれないように呟いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇




『この概念武装は『逆転』の概念が付与されておるのじゃ。……まあ使う機会のないオンボロ品だしな』

 数年前、じいちゃんが言ってたな。

 『逆転』の概念武装、アンチバレル。
 僕の家に伝わる2大概念武装の1つ。

 展開長身逆転概念弾装填可能式狙撃銃、『アンチバレル』。

 ……いつ聞いても長すぎんだろとかいう名前だけども。
 銃って、そもそもなんだって話だけども。

 紅黒き銃身、その砲身に刻まれた水色の線。
 僕の身体よりも数倍デカい銃身に、いつ使うかも見極められないその代物だが、ようやく使える時が来たのか……?

 ……それと。
 遥か昔、神域に達した魔術師がその概念を付与してみせた、概念防護『アルビオン・プロテクトアーマー』。

 2大概念武装、そのもう片割れ。
 ……昔々、本当に気の遠くなるような昔。
「アベル・セイバー」なる魔術師が、こことは違う、遥か遠くの次元、この世界と平行にある世界より持ち出した、ある「伝説」を概念として刻んだ鎧。

 どちらも僕には扱えないような代物であるが。

 あの白さんならば扱いきれるかもしれない、と。


 本当ならば、2人の力を1つにできる『融合』の概念装置、『フュージョンコイル』を使うのもいい……のだが、それは今どこにあるのかは全くもって分からない……から。

◇◆◇◆◇◆◇◆


 今、僕が出せる最適解。
 それは、大戦が、世界を巻き込んだ最悪の戦争が始まる前に、この2つの概念武装を白さんたちに届ける事。

 ……何の役に立つかは分からないけど、それでも戦場にいて、足手まといになるくらいなら。
 ……その為には、またあの村に帰らなきゃならない。
 それでも。

「白さん」

「……どうした、セン?」

「ちょっと、パーティを離れようと思います。少し、やらなきゃいけない事ができて……」

「……そうか、何がなんだか分からないが、俺たちと一緒にいなくて……」
「……はい、大丈夫です。それじゃ、行ってきます」



********



 ……センに、どんな事情があるかは知らないが。
 パーティを離れようと思います、って言ったからには、まあそのうち帰ってくるだろうな。
 理由もなしにパーティを離れるわけもないしな。


 ……帰ってこなかったらマズいのだが。
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