Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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激震!勇魔最終戦争…!

極限の闘い!

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「………………やはりそうだった……人間には価値がまだあるじゃないか、カインよ、兄者よ! 貴様の計画は瓦解だ、プロジェクト:エターナルは終わりを告げる事になる!……この、によって!


 やはり貴様の計画は完全に終わりだ……! 元より人間が不完全ゆえにと、人間には価値がない事が大前提の計画……貴様には荷が重すぎた……っ!」

「誰と話してやがるっ! 逃がすかぁぁぁぁあっ!」



「……こ……ふっ………」

 互いの一撃は、それぞれお互いの身体を貫きあった。
 2人して失墜する。

 世界が、一瞬の一撃を以て崩れ去るように。
 この2人も、どちらもかつて「救世主」と謳われた2人でさえも、あまりにも呆気なく、堕ちてゆく。








 目を覚ませば、そこは地上。
 すぐそばには、血を流し横たわっている……魔王が。

 足は……よろけて上手く動かない。
 それでも立ってみせる。
 希望を見据えて。

「神威……きてくれ……」

 もはや神威はエクスカリバー聖剣としての輝きを失っており。

 魔王も勇者も、正真正銘全てを、全力を出し尽くしていた。


 手元に刀が収まる。

「終わりだ、魔王……俺の、いや、俺たちの、勝ちだ……!」


 これは、1人でもぎ取った勝利じゃない、みんながいたからこそ、もぎ取れた勝利だ。

 事実、誰1人でも欠けていれば、ここには到達できておらず、誰1人でもいなければ、俺はここまで頑張れなかった。

 だからこそ、ここで終わらせる。

「おしまい……だ……!」








「他の魔族の為にも……まだまだ、終われんのでな……!」
「何———だとっ?!」

 魔王はまるで死人のような、生気のない顔をして起き上がる。

「まだ来るか……!」

 何度、コレで終わると思ったか。
 もう全て、諦めかけた。
 もちろん白だけに限らず、両者とも。だが。

 覚醒したのは白だけではなかった。

「余は、嬉しい! 貴公のような強者と、人類の要を繋ぐ今の救世主と出会えた事がな!」

「うるせえ……いい加減にしてくたばっちまえ……!」

 もう折れそうになった身体を。

 既に息絶えそうになった身体を。

 両者ともに、限界の最後まで酷使し使い果たす。

 どちらかの身体が折れる、その時まで。



「背水の陣……!」
「させん……!」

 一歩踏み出し、最期の力を振り絞り斬りかかる。

 しかし、やはりというかその攻撃は防御され。

「さらばだ……!」
「終われないん……だよっ!」

 神速を超える速さで繰り出された斬撃を、完全に受け流す。

 攻め、守り、攻め、守り。
 その繰り返しだったが、その先にこそ勝利はある……!
 幾度となく続けられた打ち合いは、たった一撃の、最大出力の攻撃にて終わりを告げる。



「ガイア・コンソール……80%……!」
「神威、踏ん張ってくれ……!」

 神核の込められた、2つの創世概念武装の衝突。

 魔力を纏った斬撃の擦れる先に、赤雷がほとばしる。
 逆光の先に。

「刀が……!」
「肉弾戦といこうではないかっ!」

 両者の剣が、そのあまりにも凄まじい、神域のぶつかり合いに耐えられず後ろに吹き飛ぶ。



 ……が、戦う意志は、未だ折れず……!


「見よう見真似だ……多重幻覚境界面ホロウ・ミラーディメンジョン!」


「魔術領域か……! だがしかし、この神域の魔術師に通用するとでも……!」



 多重幻覚境界面、ホロウミラーディメンジョン。
 今まで見てきた技、つまり兄さんの技……!

 ……実際には見てはいないのだが、これが兄さんの技だと、この血が、この身体が、この神技がそう言っているのだから。


 兄さん、少し技、借りるからなっ……!

「素晴らしい技術だが……無意味だっ!」

 辺りに充満し始めた魔力がかき消される、しかし。

「ならば……背水の陣、手ノ項……!」

 攻撃の手を休める訳にはいかない。
 隙を見せれば、すぐさま斬首。
 極限のせめぎ合い、もはや我慢比べ。
 たったの一撃でも、ほんの少しでも多く、ダメージを与える!

「拳で余を止めようなどと……!」

 魔王から発せられる、無数の紫の魔力斬撃。

「極ノ項……」

『白の世界』に入る。
 目を閉じ、魔力の流動、空気の動き、僅かな音、それら全てを感知し完璧に攻撃を避ける。

 もはや動かないと思われた身体に鞭を打ち、はち切れんばかりの脳髄をフル回転させる。

「避けられた……! 一体どうやって……!」

 あまり俺を……

「ナメるなあっ!」


 顔面に、その拳一発。
 それもとびっきりのやつを。

「があっ……?!」

 ここまで来たら、一気に畳み掛ける……!
「やられっぱなしな訳がなかろうっ!」

 ……が、一瞬にして自身の身体に叩きつけられる、魔王の拳の数々……!

「貴公と余では、くぐり抜けた死線が違う!」

「だから……何だってんだあっ!」

 吐血しながらも、それでも倒れない。
 絶対に、何があっても。
 一度攻撃の手を休め、守りの体制に移る。

「怖気付いたか……?」

「違うな……見えたぜ、勝機……!」

 迫り来る拳を避けながら、軽やかに後退する。
 ……そう、後ろには。



「……来い、神威……!」


 ほんの少し、ほんの少しの勝機。
 神剣は主を見つけた犬のように、すぐさまその右手に戻る。
 だが、この一瞬が運命を分ける。

「……ぐ、はあ……っ!」

 アルビオンアーマーが、その与えられた拳に耐えられず破損する。
 同時に胸の骨も何本か折れる。




 ……がしかし、吹き出す熱気。
 まるで燃え上がる今の決意のように。

「雪斬流……」


 そう、今までの経験がものを言うこの戦い。
 ならば、今こそ使う時だ。





「第一ノ奥義! 『月光雪下』!」


 夜の闇に紛れ、その銀刃は轟く。
 暗闇の中、雪降る夜に、一筋刺す月光の如く。
 迫り来る金の残刀。
 神の刃が今、煌めく……!



 最後の一撃、月光雪下。
 亡き師匠の、概念を形にした刃、無形的擬似概念武装。

 できるかどうかは賭けだった。
 しかし、やってみせた。
 イメージから発動へ。
 約1秒の間に、さまざまな思考が交錯する。
 しかし残ったのは、決意のみであった。



「楽し……かったぞ、我が子孫、よ……」

 歪曲する赤き血の弓。
 最後に魔王は吐血し、それで完全に事切れた。

 ……訳ではなく、最後の悪あがきが残っていた。
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