Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

運命の人

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 だからこそ、私は愛したかった。
 愛されたかった。
 一目で、恋をした人に。
 運命の人と、私が結論付けた人に。
 おそらく、私と彼を結びつける「」で繋がった人に。

「…………白に、愛して……もらいたかった」


********

 結局、またその答えなのか、ニトイ。
 お前は、またお前は、愛を出すか。

 なぜだ? コイツの行動理念は何なんだ?

「愛してもらいたかった」から、記憶を消して、『ツバサ』と『ニトイ』という2人の人間として暮らすことを、俺とニトイ(まあ実際のところ、ニトイとアテナは同一人物なのだが)に強要させた……?

 そんな……そんなこと、アリか?
 そんなこと、アリなのかよ……!


「……宗、呪羅が、教えてくれた。……この、胸が熱い気持ち、は、運命の人が現れる、まで……大事にとっておいて、って」


 宗呪羅……?

「……なぜ、何でお前がその名前を知ってる、アテナ……!」



 雪斬宗呪羅。
 既に故人であるが、の『師匠』にして『恩人』。

 俺にとっての過去は、全てこの人で埋め尽くされていたくらいには、俺はこの人と親密な関係にあったが———。

「……私は、あの人から……アイを、恋を、教えてもらった」

 宗呪羅が、コイツに愛を教えた……?
 師匠、が……か……?

「だから……白、を、一眼見た時、運命の人だと確信した、から……胸が熱くなって、どうしようもない……気持ちに、なって、だから、白を、愛して……白に、愛して、もらいたかった……!」


「あ……あ……」

 唖然、だった。
 空いた口が塞がらない。
 どこまでも、結局どこまでも、ニトイは一途だっただけなのだ。

 俺の感じた、俺の確信した仮定は、ニトイにとって結局のところ変わっていなかったのだ。



 ニトイが、アテナがどう答えようと、俺の結論は揺るがなかったのだ。

「…………白、は、結局……ニトイを、アイする、の……?」

「……………………愛する、しかない……だろ」

 本当に、本当に運命の人だったんだ、アテナは。
 宗呪羅師匠に導かれた、運命の人。

 愛と恋、そして運命が導いた、本当の運命の人。それが、アテナだった。


 それは、俺にとっても、アテナにとっても、互いが互いにそうだと運命付けられたような偶然で。

 それは何をどう取っても、切っても切れない、赤い糸で紡がれた運命としか言いようがなく。

 同時に俺は、本当に愛するべき人が誰かを理解した。


 理解したくは、なかった。
 そうすればきっと、サナを蔑ろにする結果に、終わってしまうことになるだろうから。

 だから俺は、『好き』という表面上の気持ちなどではなく、そんな感情論などではなく、こんな……運命だとか言う、認めることにしたってのに。


 どっちも———どっちも、好きだったんだ。
 どっちだって、大切で。どっちだって、俺の運命だった。

 そんなのダメだ、と必死に言い聞かせたが。
 どちらもダメだ、と、運命がそう言うのなら。
 選ぶしかないと言うのなら、俺は決断をしてみせた。

 だって———そばにいるって。
 信じてみせるって、愛してみせるって……俺が決めたんだから。


 それが英断かどうかなどは、俺にはわからない。
 それこそ、眼前の神サマにも分かりはしなかった。



 だからこそ、決着はつけなきゃ、落とし前は、

 そんなクソッタレな時間が、もう来ちまったようだ。
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