Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

強弓滅沈神作戦

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「……それで、ここが……こうなって、アテナさんは…………を……して、くいなは僕と一緒に…………して、後に残った第5機動部隊は全員陽動のために動く……でいいかな」
 
 センの長々とした説明がようやく終わる。
 何やら各機にさまざまな作戦を出していたようだが———。

「……ヤンス……とか言ったか、頼んだぞ。……お前の腕に、世界の運命がかかってるんだからな」

 ポン、と、その可愛らしいまんまるの身体にそっと手を置き、薄く微笑みかける。

「俺にプレッシャーをかけにくるのはやめてくれでヤンス……相手は仮にもカミ、こっちだってそんなことは分かってるでヤンスから……」





「…………よし!……行きましょう、地上へ!」

 何やらひと段落終えたらしいセンは、疲れ切った顔をしてそう言った。
 すると、センはある1機のサイドツーにしがみつき、さらなる命令を出す。


「……最後にもう一度確認します、まず、比較的高位置に鎮座する機神Aの討伐は、僕とくいな、そしてアテナさんでおこないます。

 ……白さんとヤンスは、2人で比較的低位置にいる機神Bの陽動係です、その他12機のサイドツー搭乗者は、ジェットパックを利用した撹乱、及び周囲の警戒に向かってください」


「おう、俺たち2人で……陽動だな……なんか地味だな……」

 そう言いつつも、ヤンスの乗るサイドツーのコンテナ……らしきものへとしがみつく。

 直後、けたたましい声が、通路一帯を震わせるように鳴り響く。




『サイドツー全機、発進!……作戦名、強弓滅沈神……発動!!!!』

『カッコいいでヤンス……!』
「ごうきゅう……めっちんしん……?」


『…………いつも、通りの……ネーミング、センス』

「……くいな、だっけか、いつもセンってこんな感じなのか?……なんかこういう作戦名とかに興味を持ってる感じじゃあ……」

 何気なく事情を知ってそうな獣人の少女、くいなに無線越しで問いかける。


『もってる。……直近、だと、オリュンポスの外壁を壊すための……作戦、を、『ブレイク&ダウン・堕神作戦』とか……言ってた、し』

「…………ネーミングセンスは壊滅的だな、『ワンダー・ショウタイム』の俺たちが言えた話じゃないんだが!!」


 脚部のローラーでキュルルと音を立て、細い通路を疾走するサイドツー15機。
 機神を打ち倒すのに、これじゃあ心許ない気持ちもあるのだが……ここはセンの作戦を信じるしかないだろう。


 そもそも機神なんて、俺にとっちゃ未知の敵。勝てるかどうかなんて、そんなの———。

『……あと30秒で地上へ出ます。……すぐに状況判断を。……司令塔たる僕ですが、『神爆』起動準備に手間取るかもしれません……だからこそ、陽動部隊は臨機応変な対応を試みてください』
 

『3……2……1……出ます!』


 地上は———赤と朱色に染まりきっていた。
 既に落ち始めた陽の光、それを覆うように存在する、低空飛行の機神B。
 そして、肝心の機神Aはというと———。





『……あれ、は……どういう……事だ、まさかヤツは、大空から砲撃を行なっているとでも……?!』

 センたちが見上げたソラを覆うは、その鉄の翼を広げ、薄く消えかかった機神の影。

「おい、セン!……どうした、何か問題でもあったのか?!」

 眼前に置かれた状況に、混乱するセンをよそに、各部隊は行動を始める。
 もちろん、俺の乗ったヤンスだってそうだった。……が。





『……待てよ、ならば……ここから神爆を撃ち込むことは……嘘だ、そんな一方的な話……あっていいはずが……』

「…………ン、セ…………セン!」

 その呼びかけに、絶望を肌に感じていたセンは、ハッとその意識を戻す。

『……セン、もう状況は……動いてる。……このままだったら……あっちで、戦ってる人界軍にも…………甚大な被害が……でる、だから、アイたちが……ここで決めなきゃ、いけない……の……だから……!』

『そう、だった、ありがとう、くいな。できない、守れやしないとぼやいていても仕方がない。…………もう、あんなことにならない為にも。

 ……アテナさん、くいな、僕たちはA-4ビルの屋上に向かいます。……僕たちは、サイドツーのワイヤーを用いて、アテナさんは浮遊法で上へと向かってください』








「……アイツ、やっぱり逞しくなってるな。……流石は、世界を守った勇者だ」

 その会話を無線全回線越しに聞いていた俺は、微量ながら思わず笑みをこぼしてしまった。……自分でも分かったんだ。本当に思わず、こぼれてしまった。

『……センは……強いヤツでヤンスよ、あんな強大な敵を前にしたって、ほとんど弱音をこぼさないんでヤンスから』

「そう、だな……アイツは強いヤツだった。……でも、アイツだって弱音ぐらい吐くさ。……それは俺が———一番知ってる」

 そう言いつつも、俺が乗るヤンス専用サイドツーが舞い上がった場所にて有ったのは、同じく翼を広げんと展開状態に入っている、機神Bであった。



「……さあて、来やがれよ、機神っ!……その力、数倍にして返してやるぜ!」

 刀を構え、機神の周辺にはまるで渦潮のように渦巻く神力が収束する。


 そうか、人間であるはずの俺たちを、早くもヤツ機神だと認識したか……!!

『白さん、攻撃は、ある程度は魔力斬撃で相殺してくれでヤンス。……この機体は常に動かすので、振り落とされないようにも気を付けてくれでヤンス』

「分かってるさ、さあ……いくぞ……っ!」
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