Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-セン: 分岐

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 そうして、彼らはその分岐点にて分たれた。
 その分かれ道のうち、1番左端の道に進んだセンとイデアの2人は。


********


『結局どこまで行ったって通路のままですね……無線での情報共有も未だなし……もしかして、もう既に罠にはまっている……だとか』
「それはない」

 ———へ?
 それは……それはない、って、なんでイデアさんがそんな事を断定できるんだ……?

「微小だが……俺を中心とした魔術領域を展開しながら移動している。なんらかの魔術、神力的攻撃、反応があったのなら、すぐさま俺の魔術領域が察知しているはずだ、だからこのまま進め」

『やっぱり前のまんまだ、イデアさんが1番頼りになる』
「…………そうか」

 ディスプレイ越しに見えるその顔は、少しばかり曇っていたのだ。
 まるで何かに失望したかのように。


 何に、失望したのだろうか。
 今の僕の実力に、だろうか。
 こんなガラクタを乗りこなす僕に、だろうか。

 それとも、失望ではないのだろうか。


 ———と。

『……イデアさん、開けたところに……』
「分かっているが……その先に生体反応だ」

 照明はない、その開けた部屋は、鉄の通路同様に暗闇で満ちていた———が。



 
「……主に代わり、代行の務めを果たしましょうぞ」

 聞こえたのは、中年くらいの男の声。
 おそらく、眼前にて背を伸ばし立ち尽くす人影。それがこの男なのだろう。

 ……と、男はこのサイドツーの巨体を前にしようとも、微塵たりとも動揺する様子を見せなかったが———。


『イデアさん、しっかり捕まっててください』

 そう言いながらも僕のサイドツーが構えたのは、主武装であるCキャノン。

 そう、この男が何を言おうと、ここに、前に立ち塞がったということは、紛れもない敵意の証明になっているのだから。

「……分かっている」


「———そう易々と、撃たせるとでも思うか」

 その言葉と共に伸び行くは、薄く灯った光を覆う謎の影。

 ———攻撃が、来る———!



 その瞬間、場に響き渡ったのは、銃声と金属が擦れる音ばかりであった。
 少しばかり高く、そして鈍い音と共に、その砲身からは煙と微音が漏れ出す。


「お前が攻撃用意をしているというのに、こちらが何もしていないわけがないだろう」

 そう、いつの間にやら、イデアの魔術領域、多重幻覚境界面ホロウ・ミラーディメンジョンが展開していたのだ。

『イデアさん、ありがとうございます。……ただ、これは———』


 直後、投擲された何かによって軌道が逸れた爆裂概念弾が、部屋の奥の方で光と轟音を震わせながら破裂する。

 破裂の衝撃による爆風と光が吹き荒れる最中、状況はそれでも動き続ける。


 サイドツー、その周りを囲うように、そして繊細に展開された魔術領域内部にて、計12丁のトランスフィールド製らしき小銃が顕現していたのだ。

「———危なかったな、ヤツが投げた剣———らしきものは3本。

 1本は概念弾の軌道を逸らす為、残り2本で俺たちを仕留める気だったのだろうが———こっちの方が一枚上手だったな」

 そうイデアが告げた直後、サイドツーの背後にても爆発が巻き起こる。





 つまり、敵が———ヤツが投げたのは、『祝福儀礼の爆剣』ということ……!


「……素晴らしい、素晴らしいではないか———流石はヴォレイ2番隊隊長を打破した勇者。我が名にそぐわない訳では無さそうだ」

「———ならば、そういう貴様の名は何だ?……そこまで勿体ぶるなら、さっさと言ってほしいものなのだが」

「そうか、我が名を……聞きたいと申すか。……ならば告げようぞ、我が名は———、



 ———ゴルゴダ機関第1番隊隊長、レイン・ヴァープナー。……尊き我が主の代行者、天罰の地上執行者……なり……!」
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