Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-セン: 白兵戦

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 蒸気が音を立てながら、ユニットコンテナはサイドツーより分離した。……はずだろう、衝撃緩和装置がうまく作動しているからか、揺れはほとんど感じなかったが。

 ———だが、ここから出るのが問題だ。
 おそらく———おそらくだが、ここより這い出た瞬間……木っ端微塵になることは間違いなしだ、レインは確実にこちらを待ち構えている。

 ならばここに籠れば———とも考えたが、爆剣を2、3発投げ込まれて、爆風と熱波で死ぬのがオチだ。


 どうする。

『存在覚醒』———までは至ってない今の僕には、ヤツを1秒でもまともに相手取るのは難しいだろう。
 イデアさんはいない、おそらく既にやられた。

 あのイデアさんがそう簡単に殺される———とは、僕自身も毛頭信じられる話ではないのだが、そうじゃないにしろ今は行動不能と考えるのが自然だ。


 とりあえず状況報告だ、いつ通信不能に陥るかも分からないのだから。

『……こちら01。繰り返す、こちら01。応答を願う』

 既に欠けたディスプレイをサーモグラフィーカメラに回し、レインの様子を伺いながらトランシーバーをつける。

 レインは……未だ動かず。
 沈黙を保ったままだ、僕をロボットかなんかと勘違いしているのだろうか。

『…………了解。こっちは14。繰り返す、こっちは14。要件を言うでヤンス』

『了解、こちら01。状況報告を———っ、嘘だろ……?!』

 ディスプレイに映った影、どうやらあっちは待ち伏せをする間も無くこちらを殺す気らしい!


 既に投げられ突き刺さった爆剣。それが爆発するまでの0.1秒間でドアを蹴り飛ばし、衝撃緩和用の魔力障壁を張りながらコンテナの外へと転がり出る!!




「———っ、はあ、は……っっ?!」

 3本の爆剣の連鎖爆発によって生じた爆煙を、魔力を纏わせた生身の手刀で薙ぎ払う。

 もはやサーモグラフィーカメラは使えない、貧弱なこの生身の肉体での白兵戦だ。

 おまけにこちらは武器なし、レインはおそらく無尽蔵に爆剣を持っているのだろう、投擲の際に全く躊躇がないのもそのためだろうか。

「……ようやく、見せたか。…………しかし———鬼族の生き残り、だとはな」

『鬼族』。
 ……珍しい名前も出てきたものだ。




 2度と聴きたくなかったが。

「鬼族は全て殲滅したつもりであったが……やはり生き残っていたか、魔族と人類の最強の混合種ハイヴリッド、亜人の一種」

「それがですね、もう1人いるんですよ。一度クソでも食らうべき———僕のとも言えるべき人がが」

「凄まじい言いようだな」
「貴方がそれを言う資格なんて、ないと思いますけどね———っ!」
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